破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった…   作:ハンバーグ男爵

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※独自設定、いつもの
短くてごめーんね
モモンガくんの一人語り回は続くよどこまでも




…今後の流れ的にマジでしばらく主人公出てこねえぞこれ




32 鈴木悟の憂鬱

 

エ・ランテル冒険者組合にて

 

 

「はい、お疲れ様でした。

建設現場の護衛、ゴブリンとオークの追加討伐報酬全部合わせて銀貨30枚と銅貨50枚になります」

 

「ありがとう、助かります」

 

「こちらこそ、モモン様。

依頼者の方からも感謝の言葉を頂いております。

お二人の実力ならすぐに金級に到達できますよ」

 

「っそうですか!」

 

「はい!残念ながら昇格試験に見合うような依頼は今のところございませんので、暫く待ちの状態が続くと思われますが…」

 

「あー…分かりました。

また良さそうな依頼があればお願いします」

 

「承知致しました」

 

 

にこやかな営業スマイルを浮かべる受付嬢と別れ、ナーベラルの居る卓へと戻る。

 

異世界転移してから少し、カルネ村を賊から救い現地の人達から有益な情報を得た俺は本格的にこの世界で冒険者として活動し始めた。

 

冒険者といっても、回ってくる仕事は商人の乗る馬車の護衛やモンスター討伐が殆どを占めるので傭兵みたいな感じだが…

思ってたのとちょっと違うが、現地の貨幣を稼ぐ数少ない手段だ

 

現在の階級は下から3番目の(シルバー)

エ・ランテルの冒険者の中では中堅よりちょい下くらい。

なので必然的に依頼も相応のもの、現在は護衛依頼3割の他7割くらいか。

 

迷い猫探しとかの街中でこなせる小さい依頼で小銭を稼ぎ宿代に当てている。

 

ユグドラシルの細々しいサブクエを黙々とこなしている気分だ。

でも最初の頃もこんな感じで稼いでいたな、とノスタルジックな気分に浸れるのでヨシッ!

 

 

 

『パーフェクトウォーリアー』という魔法がある。

魔法職のレベルをそのまま戦士職に変換し、魔法職のスキル、及び魔法が一切使えなくなる代わりに魔法職では装備出来ない戦士の武装をそのまま纏う事のできる魔法だ。

 

これにより現在の俺はレベル100相当の戦士職になっている。

何故わざわざ職業を変えたのかというと、対プレイヤーへの身バレを防ぐカモフラージュの意図もある。が、本音を言うとせっかく始めるなら戦士の視点で冒険するのも楽しいじゃない。なーんて思惑もあったりするのだけど。

 

それから、カルネ村でガゼフさんの話してくれた『武技』だっけ?

魔巧と同じく、どうもユグドラシルのスキルシステムとは違いこの世界独自の技術のようだ。

 

あわよくばそれを覚えたい!

 

戦士状態の俺で習得できるならナザリックでもセバスやコキュートスに覚えさせて戦力アップも狙えるし?

決して興味本位などではない、趣味と実益を兼ねた冒険者なのだ。

 

旅のお供はナーベラルガンマ、彼女はレベルにしては60弱と少し心許ないが第8位階まで行使可能なプレアデスきっての攻撃力を誇る魔法職。

嘗ての盟友〝弍式炎雷〟さんの作ったNPCだ。

前衛は俺、後衛はナーベラルのバランスで良いパーティが組めたと思う。

 

……まあ、ここまでは良かったんだよ。ここまでは。

 

 

『ウジ虫が、スプーンで眼をくり抜かれたいの?』

 

『黙れナメクジ。

身の程を弁えてから声を掛けなさい、舌を引き抜きますよ?』

 

『人間ふぜいが…舐めた口を叩くなよ、ゴミがッ!!』

 

 

……この数週間、冒険者としてナーベラルガンマと活動を共にする間に彼女が他の冒険者に放ったお言葉を抜粋したものである。

 

…ウン。

 

 

絶 対 人 選 間 違 え ま し た

 

 

どおぉぉぉしてだよおぉぉぉぉッ!!!(ネット番組でチラッと見た大昔の俳優さん並感)

 

マイナス400て!極悪(デミウルゴス)の一歩手前やん!

 

なぁんで出発前に気付かなかったかなぁ〜…

 

もう冒険者登録しちゃったから今更交代なんてできないし、これから教えるしかないんだけどさぁ!

 

この子何回言っても態度直さないの!

 

辛うじて俺の事はモモンガではなく偽名のモモンと呼べるようにはなったみたいだけど、人間への当たりは相変わらずだ。

幸い整った容姿のおかげか最近は「ちょっと当たりのキツいかわい子ちゃん」くらいの反応で済まされているが、初対面の相手に罵倒で返す奴があるかっ!

 

確かに俺もアンデッドだしカルマ値極悪で人間は虫くらいの価値観しかもてなくなってるとはいえ、これから信頼関係を築いていこうとする相手にとる態度じゃない事くらい分かるし、良くない事も理解してる。リアルで培ってきた人としての経験があるからかも。

 

けどNPCにそんな経験は無い、まっさらだ。

テキストによって作り上げられた人格通りに動いているのだからそりゃそうなるわ!

 

学びを得た、彼女に必要なのは経験だ。

ナーベラルだけじゃない、場合によっては他の守護者達にも現地人との対応を教育しないとダメだ。

せめて取り繕うだけの努力はして欲しい、こんなんじゃいつ敵認定されるか分かったもんじゃない。

悪目立ちは避けたいんだよ!そのためのカモフラージュなの!

 

 

でも教育って言ってもな…生憎リアルじゃ部下なんて持った事ないし、仕事も事務処理と軽い接待くらいしか経験がない。

圧倒的な経験不足だ。

これではNPC達に何か教えるなんて夢のまた夢、彼らの忠誠心は本物だけど万が一にも反逆されて戦闘になったらレベル100の俺でも勝ち目は薄い。

 

シャルティアはもちろん、俺は後衛職だからアルベド、セバス、コキュートスあたりは近付かれただけで終了だ。

PvPの経験は俺の方が上とはいえ、レベル100NPCが束になったらプレイヤーでも単独じゃ簡単に勝てない。前衛後衛の役割がハッキリしてるナザリックの守護者達なら尚更だ。

 

とにかく、先ずはナーベにちゃんとした教育をしてやらないと…

 

でもなあ、言っても直さないし…自我の芽生えたNPCに『学習』する機能は備わっているんだろうか?

単純にカルマ値の関係で軽蔑しきってるから取り繕う気も起きないだけなのかも…様子を見る必要があるな。

 

 

カランコロン、と冒険者組合の扉の鐘が鳴り思考の海から呼び戻される。

 

入って来たのは大きな手篭を提げた修道服の女性、中には丸めた羊皮紙がたくさん詰まっていた。

 

あれはエ・ランテル中央にある法国の教会から冒険者に向けて販売される魔法の羊皮紙だ。中には《重傷治癒》が込められていて、驚くべき事に魔力を持たない戦士でも発動可能なスクロール。

 

『漆黒の剣』の魔法詠唱者、ニニャさんから教わった知識によれば、皮に加えて異世界で採れる植物を魔巧技術で掛け合わせ、込める魔法の条件を絞る事で強度を底上げしているんだとか。

 

ユグドラシルのスクロールとはまた違う、この世界独自の技術だ。

《重傷治癒》は第3位階のしょぼい回復魔法だが、ノーリスクで回復が行えるのは冒険者にとって非常に重宝する。

場合によってはポーションよりも有効だ、この羊皮紙1枚に命を救われた者は数知れない。

 

まあ、スキルでレベル60以下のダメージを常時無効化する俺には関係のない話だけど。アンデッドだから回復魔法で負傷するし。

 

そんな生死に直結する回復アイテムを供給している。

それも信仰系魔法を使えるシスター達が善意で作ってくれて、安値で取引してくれるのだから冒険者や組合は教会に頭が上がらない。

 

 

「おはようございます、シレーヌ様。

今週分のスクロールをお持ち致しました、アインザック様はいらっしゃいますか?」

 

「は、はい!直ぐにお呼びしますので少々お待ち下さい!」

 

 

シレーヌ、というのは受付嬢の名前だろう。

慌ててカウンターの奥へ走っていった受付嬢を待っていた彼女は直ぐに別の個室へ通され、部屋の奥へ消えていく。

 

噂じゃスクロール派とポーション派で軽い論争が起きてるんだってさ。

 

そういえばこの世界のポーション、青いんだよな。

安宿でベルタとかいう冒険者のポーションを壊して弁償をした際に分かったことだが、どうもポーションの水準はユグドラシルに遠く及ばないようだ。

原理は専門職じゃないから分からないがこの世界でポーションを作ろうとすると赤ではなく青くなる、ベルタへ弁償するのに手持ちのユグドラシルポーションを渡してしまって、それがゆくゆくカルネ村繋がりでンフィーレアに身バレしてしまったのは想定外だったけど…

 

まあ彼の指名依頼のおかげで漆黒の剣の皆さんとは仲良くなれたわけだし、結果オーライか。

 

それと、撃杖というマジックアイテムについて知れたのも僥倖だった。

 

 

……一言で言おう。

 

 

まんま銃やんけ!!!

 

 

かっっっっっこよッ!!

 

 

突然だか俺こと鈴木悟のリアル、生物学的には男性である。

今ではアンデッド、肉も皮も息子(意味深)もいなくなった全身骨だけ野郎ではあるが、その感性は一般男性そのものと言えるだろう。()()()

 

恥ずかしながらこの鈴木悟、小卒故にネットやギルメンから聞きかじった知識で人生の大半を育ってきた。

その中で大学教授をやっていたギルメン、『死獣天朱雀』さんから聞いた知識に一時期どハマりしていた時期がある。

 

その知識とはそう、『軍事関係の兵器』について。

 

俺は社畜だったので関係の無い話だけど、リアルではコロニー同士のいざこざで紛争のようなものは度々起きていた。

その度に各コロニーの治安維持部隊という名の軍人や、傭兵なんかが外でドンパチ争っている。

日本では長い事聞いていないが、海を越えた中国やインドの辺りなどでは宗教観の違いからしょっちゅう紛争が絶えないってニュースで見たことがある。

 

戦争はダメだ、人が沢山死ぬから。

 

でも戦争に使われる兵器や銃器には男の子を惹き付けるロマンがあった。

だってカッコイイんだもん!

当時の俺も例に漏れずその界隈に片脚を突っ込んで兵器のロマンにこれでもかと浸ってた。

 

格好いい、それは男の子にとって大切な事かな(脳内に響く謎のカンテレ音)

 

そうだよ。

 

特に第二次世界大戦時のドイツ第三帝国軍界隈は俺の数少ない心の青春だ。

なんだよメッサーシュミットって、マウザーヴェルゲって、アハトアハトってえ!

ゲシュタポ、シュタージ、アインザッツグルッペン…!当時の組織として悪辣極まりないのは重々承知しているけど、名前の響きは最高にイカしてる。

 

時を超えて俺を喜ばせるなよチョビ髭総統閣下!

 

当時なら不謹慎だなんだと言われるだろうが、100年以上後に生まれた俺が歴史のひとつまみをどう思おうと勝手だろ?

 

だからこそ生まれた黒歴史もある訳だけが…

 

そして戦争ものに欠かせないのが『銃器』。

流石に本物は見た事が無かったが、画像は何度も見たから形はよく覚えてる。

 

先日ペテルさん達と向かったンフィーレアの薬草採取の道中、ニニャの使っていた〝撃杖〟と呼ばれているそれ。

 

どう見てもマスケット銃じゃねえか!

 

いや木彫りのストック部分はKar98k小銃っぽかったけど(突然の早口)

 

そいつを構えたニニャは照準をゴブリンに合わせ、引鉄を引くと無詠唱で圧縮された《火球》が着弾と共にエネミーを黒焦げに変えていた。

 

無詠唱は俺でも使えるが、魔法の圧縮なんて聞いた事がない。ニニャは《魔法口径圧縮(マグナライズ・マジック)》だと呼んでいた。

見たところどうやら本来放たれるはずの魔法を固めて威力と速度を飛躍的に上昇させているらしい、その代わり相応の反動がありちゃんと狙わないと当たらない。

要は攻撃魔法を弾丸に変えて射出する魔法。

 

他にも彼は会得していないが、主に高位魔法で行う対物理に特化した《魔法対物理特化(アンチマテリアライズ・マジック)》、着弾した魔法を広範囲に爆散させ攻撃範囲を広げる《魔法榴化(ハウザナイズ・マジック)》、《魔法榴化》の高位魔法版《魔法集束化(マギア・クラスター)》が存在するそうだ。

 

どれもユグドラシルじゃ聞いた事ないんだが!?

 

それを可能にするのが〝撃杖〟というマジックアイテムという訳だ。

低位の位階魔法しか使えない異世界で少しでも攻撃の選択肢を広げる為に考案された魔法。この世界で生き残る為に人類が生み出した技術。

それを世に出したのはカルネ村でも語られた魔巧同盟で、行使できるのは魔力を有する魔法詠唱者のみ、と。

 

 

……………うん

 

 

楽しそうだね!!

 

 

俺も魔法詠唱者で冒険者登録すれば良かったァ!!!

 

 

ニニャと話してる間精神抑制がずっとかかりっぱなしだったよ!

挙動不審で変な奴だと思われなかっただろうか…

俺も撃杖使いてえ!《魔法口径圧縮》してえよ!

どおおぉぉぉして剣士で登録しちゃったかなあ〜…普段と違うことしてみようなんて思わなきゃ良かった。カモフラージュなんて考えなければ…トホホ。

 

 

実は今日、ニニャさんと約束してナーベの撃杖を見繕いに魔巧同盟の経営するマジックアイテム屋に向かう予定を組んで貰った。

 

撃杖を買う為には魔巧同盟に加入しなくてはならない、この機会にナーベを加入させて未知の情報を手に入れ、あわよくば撃杖を購入してみたいが…如何せんお値段がなあ。

 

 

「良いかナーベ、これから我々は未知の技術に手を伸ばす。

主体となるのは魔法詠唱者であるお前だ」

 

「はっ!

ですがモモンっさーーんの方が私などより圧倒的に優れた魔法詠唱者である事は…」

 

「私は今剣士職だろう。

正体を明かせぬ理由がある以上、お前にやって貰うしかない。

実験台にするようで気が引けるが、現状お前にしかできない仕事だ。頼むぞ」

 

「ッ〜…!!御身のお役に立てるのならば!」

 

 

ヨシ!やる気は充分だな!

店で無礼な態度を取らないようによくよく釘を刺しておこう。

 

 

「お待たせしましたモモンさん!」

 

 

ちょうど待ち合わせの時間にニニャも来たようだ。

こらナーベ、睨み付けるのを止めなさい。早速かよ。

 

漆黒の剣が受領し、俺たちを支援部隊として用立ててくれた依頼。坑道のトロール討伐の出発時刻までまだ一日ある。

今のうちにやれる事はやっておこう。

 

あと剣士の技術でガゼフさんの言ってた『武技』、どこかに教えてくれる場所はないものか。

 

 

「おはようございます、ニニャさん」

 

「すみません遅れてしまって、道中でちょっとやっかみを受けてしまって」

 

 

先輩冒険者である『漆黒の剣』は昇格にふさわしい依頼がタイミングよく舞い込んで来たので少し前に金級へランクアップした。

気まずそうな彼の顔で何となく察しはつく、十中八九イグヴァルジの仕業だろう。

 

この街を拠点にする高位冒険者『クラルグラ』、そのリーダーがイグヴァルジという男だ。

上昇志向の強い奴で性格に難アリというか、人格が歪んでるというか、ミスリル冒険者であることを鼻にかけ、乱暴者の域で収まらないほど素行が悪い。なまじ実力のある剣士だから周囲のメンバーも口を挟めないし、悩みの種だ。

この前も依頼の割り当てでペテルさんと一悶着あったし、俺たちもちょっかいを掛けられた事がある。

 

こっちは今にも無礼討ちしそうなナーベラルを諌めるので手一杯だったのだが…

 

 

「また彼らですか、執拗いですね」

 

「あはは…金級に上がってからはしょっちゅうでして。

仕事を奪われると思われてるんでしょうけど」

 

「本当に迷惑なら組合長に相談してみればいいのでは?」

 

「あれでも彼等はエ・ランテルの治安維持に一役買ってくれていますし、気にしてませんから大丈夫ですよ」

 

「なら良いのですが…」

 

「心配してくれてありがとうございます。

ではモモンさん、ナーベさん、気を取り直して行きましょう!」

 

 

《魔女の工房》へ!

 

 

 

 

 







☆モモンくん、クレマン襲撃がないのでゆっくり階級上げに勤しんでいる模様

☆漆黒の剣は金級に昇格、どっかのクラルグラとは違って素直で扱いやすいので組合長には気に入られている模様。トロール討伐依頼にモモン参加させるのを許可したのもペテルの人徳ありき

☆イグヴァルジ君は通常営業

☆ズーラーノーンにクレマン不在につき例のアレ大幅遅延、カジっちゃんはンフィーレアを攫うのにも手間取っている

☆そもそも叡者の額冠未所持、なのにンフィーレアを狙ってる

☆本作特有のイレギュラー要素あり、どんな地獄が待ってるのかな♪



次はエ・ランテルで魔巧のオリジナル回そのほか
主人公は出ません(無慈悲)
こいつオリジナル回しかしてねえな…


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