破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった… 作:ハンバーグ男爵
季節感、ZERO
清々しいほどオリジナル要素あるからそういうのfuckin'sitって人は帰ろう、カルデアに、テイワットに、ルビコン3に
年末は忙しいぞ
むか〜しむかし、世界に魔法がひとつありました
けれどその魔法は人間達には扱えなくて、当時繁栄を極めた一部の竜種のみが使える特別なものだったのです
そんなある時、突然生まれた新しい魔法
人も亜人も皆平等に扱う事が出来る画期的な魔法
【位階魔法】と呼ばれたそれは、人々の生活を助け、多くの窮地を救ってきました
けれど時が経つにつれて個体差で劣る人類はじりじりとその生活圏を大陸から追いやられ、このままではやがて絶滅してしまうでしょう
そんな時、立ち上がった7人の賢者たち
人も異形も関係なく、ただ魔法探求の為に集まった彼らは知恵と好奇心、時々コネとおカネを駆使し、努力の末に新しい魔法に辿り着きました
名を『魔巧』
魔法と
彼ら七つの星はこの世界に新たな道筋を示し、多くの功績を打ち立てました
これからも魔巧の光は人類を照らし、導いてくれるでしょう
さあ、貴方も無限の広がりを魅せる魔巧の知識を学んでみませんか?
今なら会員登録で《重傷治癒》のスクロール三枚と撃杖の割引き手当てが着いてくる!
お問い合わせはお近くの魔巧具販促店まで!
「…なんですか、この…
最初は昔話口調だったのにいつの間にか胡散臭いビジネスの匂いがする語り文句は」
「そういう触れ込みなんです魔巧って。
皆さま研究熱心な魔法詠唱者なので商業化に不慣れだったんじゃないんですかね」
要塞都市エ・ランテル
3層に囲まれた城塞、その二層目に当たる区画にその店はある。
木材とレンガを合わせた大きな三角屋根から今ももくもくと煙を吐き出す煙突が伸びる、この都市では珍しい造りをした建造物。
「OPEN(異世界文字)」のプレートが提げてある扉の上には横長の切株をあしらった看板、『魔巧の依頼、承ります』と記されていた。
「着きましたよモモンさん!
此処が王国で3つしかない魔巧関連アイテムを取り扱うお店、通称『魔女の工房』です!」
因みに残り2店舗は聖王国と王国を結ぶ数少ない流通の要、港湾都市エ・ナイウルの一等地と王都リ・エスティーゼの2箇所。
初めはエ・ナイウルで聖王国へ向けて魔道具販売を細々とやっていたのだが、王都に本店を移した際国王の目に留まり、その推薦でエ・ランテルに出張店を構える事になった。
これは現地の魔術師組合が諸手を挙げて誘致したのと他国の情勢を加味した結果である。
「現状、魔巧の取扱品はスレイン法国か竜王国に点在する大工廠からの輸入に頼っています。
なので地理的に取り寄せがしやすいのと、政治的な面もあるんだと思います。
帝国を治める皇帝は野心高いですから」
即ちエ・ランテルという二つの国を隔てるように建つ都市に魔巧同盟支店を置く事は「人類救済」を掲げるスレイン法国が2国へ監視の目を光らせている事に変わりない。
「なるほど、牽制ですか。
国王の政治手腕が見てとれますね」
「王国は魔法教育に疎く、法国に頼りっきりですからね。
どうせ他国から監視されるなら、いっその事国境付近も監視してもらおうという狙いがあるんでしょう。
実際それを気にしてかこの3年間は毎年恒例のカッツェ平原での小競り合いがありませんでしたから」
本来ならば帝国は王国の収穫時期を狙って戦争を仕掛けてくる、作物の収穫時期に合わせ人手を削るいやらしい戦法だがこれが効果的で、王国は徐々に疲弊していっていた。
それが魔巧が普及し始め法国が王国に手を貸すようになってからは過度な干渉を避け、今も沈黙を貫いている。
「スレイン法国はそれほど強大な国家なのですね」
「実際周辺国では一番に歴史の永い国家です。
それと魔巧を普及させた始まりの七賢者のうち3名、《水鏡星》、《雷冠星》、《氷極星》の御三方は法国の出身ですからね。
魔巧の本場といっても過言じゃないですよ!
僕も一度でいいからローグレンツの鉄騎馬に乗ってみたいなあ…」
「良いですよね鉄騎馬。私も一度相乗りさせて貰う機会を得ましたが、風を切るあの感覚はとても良い」
「モモンさん乗ったことがあるんですか!?羨ましい…
移動に最適ですし、大型種ならパーティー全員を楽に遠くまで運べるので是非とも欲しいんですが、如何せんお値段が…
撃杖もオーダーメイドだと一本で結構な額を張るので、ナーベさんもよくお財布と相談して下さいね」
「……善処します」
なお、ナーベはモモンと馴れ馴れしく話すニニャを陰で殺さんばかりに睨み付けている模様。
殺害予告が出ないだけ我慢した方なのでモモンも溜め息を吐く程度に留めた。
扉を潜ればほのかに香る木と薬品の匂い。
見回せば明るく清潔感のある店内に所狭しとマジックアイテムが並んでいる、魔巧同盟公認店舗という事もあり品揃えは豊富なようだ。
ユグドラシルでは見たことの無いマジックアイテムも多数存在し、モモンの精神抑制が止まらない。
「えへへ…いらっしゃいませ、魔女の工房へようこそ…」
カウンターに立つのは水色の髪が特徴的なちょっぴりダウナーな雰囲気をかもしだす短髪のエルフだった。
何日も寝てないのか隈もある、服装も作業着と呼べるような格好で、素は白であったろうに様々なインクがぶちまけられたような汚れが所々に付着した使用感のあるエプロンを身にまとっている。
「こんにちはソーラさん、予約してたニニャですけど」
「えへ、承ってます…
撃杖の購入見積もりと新規登録ですよね、準備しますのでお待ち下さい…
クーちゃん、ウルちゃん、お客様にお茶をお願いしますねぇ…」
「「はーい!」」
と、店の奥から元気よく少女の声がすると思ったら、パタパタと靴の音を響かせ子供服にソーラ同様のエプロンをまとった瓜二つの少女達が顔を出す。
「いらっしゃいませ、おきゃくさま!」
「そちゃですが、おかまいなくどうぞ!」
「その言葉使い間違えてないか?」
双子らしいその子達に差し出されたお茶は飲めない(アンデッド故に)のでナーベに代わりに飲むよう伝え、モモンは待ち時間に店内を見回してみる。
ふと、店内の片隅に佇み此方を見つめる全身甲冑鎧の剣士と目が合った。
咄嗟にナーベが前に出て警戒するも、ニニャは笑って「大丈夫ですよ」と声をかける。
「彼はこの店の用心棒なんです。
最新鋭のマジックアイテムを取り扱うお店なので、それを狙う盗難や荒事も多いそうで。
そこで彼のような用心棒を雇って抑止力になってもらってるんですよ。」
「……………俺の事は気にするな、おかしな事をしない限りお前たちに危害は加えない。
……………買い物を楽しめ」
そう壁にもたれながら微動だにしない彼、名はペッシュというらしい。
もとは竜王国を拠点におくワーカーチーム
「この子達は?」
「クーデリカです」 「ウレイリカです」
「2人とも立派な店員です。
魔巧は誰にでも開かれてますから、その気があればこの子達みたいな幼少の頃からでも勉強する事ができるんですよ。
お師匠様…《水鏡星》の教えが上手なのもあるんでしょうけど」
「幼少教育まで行っているのですか、凄いですね」
「本人の気質ややる気も必要ですが…
実はお2人の姉は帝国の《灼魔星》フールーダ翁のお弟子の一人、アルシェ・フルト女史なんです」
フールーダと聞いてモモンも思い出す、ガゼフの語ってくれたこの世界の国々の近状。
その中に登場するのがお隣の国バハルス帝国に仕える魔巧七賢者の一人にして帝国最強の魔法詠唱者、フールーダ・パラダインの事を。
要はこの少女二人も姉の例に漏れず、魔法詠唱者として才のあるサラブレッドという事だろう。
姉であるアルシェ・フルトは現在王都本店の方へ出張しているそうだ。
『最強』とか名の着いてるものは無意識で良く記憶出来てしまう男心を密かに恥入りながらもモモンは次の言葉を待つ。
「この子達も【
僕なんかはまだ基礎を終えたばかりの【
「クーデリカ、すごいよ!」
「ウレイリカも、ね!いっぱいぬりぬりできるよ!」
「ぬ、ぬりぬり…?」
「ああ、彼女達が修めているのは《水鏡星》レイン教授が考案した…」
「ニニャさん、準備できました…
今変えますのでそのまま座ってお待ち下さい…」
「あ、はい!
2人ともそのまま座ってて下さい、変わりますよ」
「「変わる…?」」
いつの間にか傍に寄ってきたペッシュの姿を確認した店主がカウンター裏の大きなレバーを引くと、ガコンという音を立てながら建物全体が揺れる。
途端に四方の壁が真ん中を軸に畳返しのように裏返り、さっきまで観葉植物の置いてあった棚には壁を埋め尽くさんばかりの撃杖が所狭しと架かっていた。
それだけではない、陳列してあったマジックアイテムも陳列棚ごと床に沈み、新たに生えてきた重厚感のある黒塗りの棚の中にはルーン文字の込められた武具、防具、ルーン石などが並ぶ。
ものの数秒の間にシックで落ち着いた店内は物々しい
最後に自分たちの目の前にあったテーブルから見たこともない魔法の装置がせりあがってきたのを目の当たりにしたモモンは
テンション爆上がりだった。
普通の内装だった店舗が一転、変形と共に秘密基地じみた武器屋に変わるさま。
壁にこれでもかと並べられているのは全て種類の違う撃杖。
そんで目の前にある見たこともない魔法の工作台。
全てユグドラシルには存在しない未知の数々。
男の子の夢が全て詰まったような情報の濁流に年甲斐もなくワクワクが止まらない。
「えへ、登録者名はナーベさん。でお間違いないですね?」
「チッ…そうよ」
「っとお、じゃあこの水晶に手を当てて見て下さい…
魔力の量と適性を計りますからぁ…」
言われるがままナーベは右手を近付け、水晶から淡い輝きが放たれる。
暫くそれを観察していたソーラは驚きの声を上げた。
「はええ!?魔力量は平均値の3倍、第8位階相当の魔法が行使可能なんですかぁ!?」
その答えにモモンはしまったと後悔する。
そういえば組合にはナーベの魔法詠唱者としての実力を偽って報告していたんだった。
というかちゃんと偽装用のアイテムを着用しているのに魔力量と行使可能な位階すら看破したこの装置に畏怖を覚える。
どう誤魔化したものかと考えていると、目を輝かせながら隣のニニャが笑った。
「そうなんです!
ナーベさんは僕なんて遠く及ばない程卓越した魔法詠唱者なんですよ。
けれどかなり遠くからいらっしゃって、混乱を避ける為に色々と力量を誤魔化していたみたいで…
なんとかならないでしょうか?」
「え、ええ。
そうだな、ナーベ」
「………はい、モモンーーーさんの仰る通りです」
嬉々として語るニニャのフォローが入るがちょっと苦しいか?と思ったが思いのほかすんなりソーラは納得してくれたようだ。
「た、確かにこの魔力量だと色んなトラブルに巻き込まれそうですし…
ご利用者様の個人情報は我々で固く管理させて頂きますけど、営利目的で漏洩する事はないので安心して下さいねぇ…
魔力量と発動可能位階は撃杖や鉄騎馬を購入する際、ご本人様確認の為に必要な記録ですからぁ…」
「助かります」
思ったより情報の管理しっかりしてるんだな…と異世界らしからぬプライバシーの尊重に関心するモモン。
下手するとリアルよりしっかりしてるかもしれない…
次にナーベの魔巧同盟登録に向けての説明がざっくりと行われる。
といっても規約など堅苦しいものはなく、口頭で魔巧を扱う際の注意点だったり最寄りの魔術師組合でこんなーサービスが受けられるよ、といった情報が殆どだったが。
どうやら文盲でも後から勉強する形で登録は可能らしい、まあ魔巧位階を上げる以上文字を覚えて勉強しないといけないのは当然の事なのでこれに関しては今後のナーベの頑張り次第だ。
「登録の方はこれで完了です…
ナーベさんにはこのバッチを差し上げますねぇ…」
手渡されたのは魔巧を使う者がみな着用する銀製の証。
階級は【
「これで晴れて撃杖の購入ができるようになったわけですけどぉ…どうします?」
「お願いします」
男心をこれでもかと刺激されたモモン、即答である。
彼の勢いに遅れてナーベも頷いて、再び水晶へ手を翳すように促された。
ソーラが操作すると水晶が淡い光を放ち、大小様々な光の板のようなものが皆の周りに現れる。
ホログラムウインドウとしか思えない光の枠にはそれぞれ撃杖に使われるパーツが幾つも映し出されており、それを慣れた手つきで指をスイスイと動かしながら操作していく。
やがて一丁の撃杖がホログラム上で組み上がった、これが基本の形なのだろう。
パーツひとつひとつにはそれぞれ違いがあり、個人に合った撃杖を製作するには相応の知識と技術が必要だ。
一見ダウナーで頼りない雰囲気のソーラだが、今まで何人もの撃杖を製作してきた紛れもない〝職人〟なのだとモモンは心の中で彼女の評価を上方修正する。
そんな彼女はナーベに幾つか質問を投げかけた。
「ナーベさんはぁ…戦闘中は後方からの魔法支援が主な戦法で間違いないですよねぇ…」
「ええ、そうね」
「他者への支援魔法は使われますかぁ?」
「いいえ、自己強化のみよ。
攻撃魔法の絨毯爆撃で叩き潰すのが私のやり方」
「えへっ了解ですぅ…
だったら突撃型をベースにして銃身は長めにとってぇ、不意の近接戦でも取り回しやすいように軽めの木製ストックを使いましょうねぇ…
排熱は中折れ式が初心者の方でも使いやすいんですけどぉ、長期利用を考えると冷却速度重視でボルトアクションかレバーアクションをお勧めしてますぅ…
コッキング式とスピンコック式どちらにしますかぁ?」
「す、すぴ…何?」
「撃杖は連射するとルーン石に熱が溜まって排熱が必要になるんですけど、その冷却方法の違いですねぇ…
通常の中折れ式は文字通り銃身の根本をパカッと開けて中のルーン石を放熱するんですが、手間が要らないぶんちょっと時間が掛かります…
これをオプションでレバーアクションに変えるとその工程を省略できて、再発射までの時間を短縮出来るんですよぉ…」
「因みに僕のは中折れ式です、癖がなくて使いやすいですよ」
参考資料ですぅ、と流れてきた三枚のホログラムにはそれぞれの冷却方法が映像で公開されている。
モモンはもちろん、ナーベも興味深そうに一連の映像を眺めていた。
「なるほどな。
ナーベはどれがいい、好きに決めろ」
「で、ではこのスピンコック式とやらに致します。
よく分かりませんが動作が一番しっくりきました」
スピンコック式はその名の通り撃杖を引き金を軸に一回転させることによって排熱を促す冷却方法である。
一般的な撃杖に用いられる中折れ式の冷却方法とは違い、より空気に触れる事で急速冷却が可能であるが回転動作に慣れが必要だ。
「ならそれにしよう」
(俺はコッキング式かなあ、レバーを引く動作が撃ってるって感じがするし)
「はいはい〜それからぁ〜…
得意な属性とかありますかぁ?」
「……」
「構わん、正直に話せ」
「はっ、雷系統の魔法を主に習得しているわ」
「なるほどなるほどぉ…」
ホログラムが入れ替わり立ち代わりモモンの前を交差する。やがて重なり合った時、再び一丁の撃杖が絵になってナーベの前に差し出された。
「こちらがナーベさんの撃杖、の完成図面ですぅ…
元の型番は三式ぃ…第三世代型って事ですねぇ、の突撃型撃杖【
ストック部分は取り回し重視で軽い竜王国産黒株の新木、ルーン石は雷属性を含む【風】。
その他
「【炎雷】…」
「えへ…も、もしかしてお気に召しませんでしたぁ?
第三世代の撃杖は2つ前の型落ちなので在庫も多くて直ぐご用意できるお手頃価格の商品なんですが。
最新式は高額ですしローグレンツの本工廠から取り寄せになるので時間かかっちゃいますけどぉ…」
「いいえ、これがいいわ。これにしなさい」
「はいぃ、ではこれからご用意させて頂くんですけど、予算は大丈夫ですかぁ?」
レバーアクション含め素の状態からカスタムしていくとお値段張りますよぉ?と問われナーベの視線はモモンへと向くが、モモンも正直心配だ。
基本の構成パーツひとつひとつがいい値段しているので全部足すとモモンの予想していた金額より上回りそうになっている。
悩みに悩んだ末、モモンは…
「……会員割引きとかありますか?」
およそ異世界モノで言わない台詞ベスト5くらいにノミネートしそうな言葉をなんとか絞り出した。
「はい、お待ちどうさまですぅ…
こちらナーベさん専用の撃杖になりますので、使用感を確認するために試し撃ちとかしましょうねぇ…」
目の前に差し出された出来たてホヤホヤの撃杖。
黒の木製ストックに鈍色に輝く銃身と撃鉄、引鉄。
弾を込めるはずの部分にはくり抜かれたルーン石がすっぽりと収まっている。
地下の射撃場へ案内された俺たち。
ナーベは一通りの動作を教えられ、片手で撃杖を構えながらその引鉄に指を掛けた。
「使いたい魔法を無詠唱で発動する」為のマジックアイテム、撃杖。
間近で見るのは2度目だが、やっぱりカッコイイ!
俺も、冒険でづがいだがっだ…ナァ!!
試しにナーベは《雷撃》を撃とうとするのだが、筒先に生まれた魔法陣が歪な形に変形してあらぬ方向に飛び出た《雷撃》が直線上の壁を焦がした。
結構な反動があるらしく、ナーベ自身も思わずよろけてしまうほどのものらしい。
「ありゃー…まあ最初はそうなっちゃいますよねぇ…
てか片手撃ちで肩も外れないなんて、ナーベさん力強ぉ…
えへ、ちょっとルーン石を拝借して…」
ソーラは銃身からルーン石を抜き取り、傍にあった加工台の上へ乗せると首のゴーグルを掛け直し弄り始めた。
削り形を整えるだけじゃない、中に刻まれたルーン文字にも装置を使って手を加えている。
結構繊細な作業なんだな…
「硬度も中のルーン文字も正常に機能してるので、問題は魔力の透過率でしょうかぁ…
人によっては内魔力とルーン石の波長を合わせてあげないとさっきみたいに歪んだ魔力陣が生まれて真っ直ぐ魔法が飛ばないんですよねぇ…
加えてナーベさんの魔力ってとっても
だから石の回路も純正に近いものにしてあげないとすぐ魔力が根詰まりして放熱周りが大変な事になっちゃいますぅ…」
「魔力が澄んでる、ですか」
「ですです、普通の人は大なり小なり魔力に淀みっていうかぁ…〝遊び〟がある筈なんですけど、ナーベさんのはまるで作り物みたいに魔力の純度が高く透き通ってて…
おかげで調整が大変なんですけど、私が《雷冠星》の弟子で良かったですねぇ…」
雷系統の調整は一番得意ですからぁ…と装置をつつきながらぼやいているが、動きに迷いはない。技師としての腕前は一流だ。
ルーン石について詳しくはないが取り扱いに相応の専門性を要するのは理解してる。
あまのひとつさんのような鍛冶職を修めたビルドを組んでいるんだろうか…?いやいやここは異世界だ、どんな外部スキルがあってもおかしくない。
隣にいるニニャだって『異能力』というユグドラシル外スキルを持っているのだし。
普通の人間と比べて魔力が澄んでいる、か。
ナーベラルガンマがNPCなのも起因しているんだろうか。
この世界の人達と俺たちの決定的な違いはそこだ。
彼女は造られたNPC、生まれた時からレベルを割り振られ与えられた使命を全うする人形のようなもの。
それが自我を得るなんてユグドラシル時代じゃ考えられなかった。
けど勝手が違うからって放っておく訳にもなあ。
ギルメンが遺した忘れ形見だと思っているけど、自我がある以上成長して貰わなきゃだし。
問題はNPCは自分の意思を持っているとして、ゲーム外の法則を覚えられるかどうか。
簡単なものだとさっき魔巧の説明でもあった語学力。
転移した俺達は異世界の言葉は何故か翻訳されて聞こえるが、文字についてはさっぱり分からない。だからこそ依頼を受けるのにもペテルさん経由で受けてもらったり、初回でやった芝居じみた行動で最適な依頼を引き出すしかなかった。
宝物庫を漁ればそれらしい翻訳アイテムが眠っているだろうか…幾つか心当たりはあるけどイベント専用アイテムとかで数が少ないんだよなあ。
ナーベラルにはその辺りの学習も兼ねて魔巧の勉強に励んでもらおう。
それに魔巧に関わるなら俺だって勉強が必要だ。
いつまでもゲーム気分でいられない。
仕事の片手間に勉強させられるよりモチベーションはよっぽど高いぞ!
「今度はこちらで…
透過率も限界まで上げてますのでさっきより銃身を通る魔力の流れがマシになってるハズですぅ…
それと銃床にもちょっぴり荷重を加えて銃身のバランスを取りましたので片手撃ちも安定するかと…」
俺が考え込んでる間にナーベはソーラの指示に従って撃杖の調整を続けている。
相変わらず片手撃ちだがLv60相当の筋力で無理やり取り回し、無詠唱で放つ《雷撃》はさっきよりも的の近くを掠めた。
的からの距離は20メートルほど。
どうやら透過率云々は解決して、当たらないのはナーベラルの射撃センスが原因のようだ。
ここから《魔法最大化》を無詠唱で重ねがけするとその分さらに反動も大きくなるらしい。
至近距離ならともかく、中遠距離の戦闘に備えるなら命中率も必要になるだろう。
ナザリックに戻ったらそれも特訓だな。
あっあっあっ…(精神抑制)レバーアクションのクイックリロードはやっぱ格好良いなあ…
スピンコックリロードといえばナザリックに保管されてる大昔の版権切れアクション映画の中にも登場している作品があったな。
当時有名だったアクション俳優がハーレーに乗りながらウィンチェスターライフルを撃ちまくってて、あのクルっと回すリロードが堪らないんだってアクション映画好きな武人建御雷さんや弐式炎雷さんも賞賛してたっけ。
最期、主人公の未来を守る為に自ら溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙無しには語れない。
あれだけ寡黙な役を演じてた俳優さんが別の作品では公衆電話を素手で持ち上げたり、筋肉モリモリマッチョマンの変態呼ばわりされるんだから、昔の映画は本当に面白い。
タブラさんも「これもギャップ萌えですよ」ってホラー映画以外で珍しくご満悦だったし。
「えへ…本来だったらナーベさんクラスの魔力量と発動可能位階なら本工廠で取り扱うような等級の高いルーン石が必要なんですけどぉ…
雷属性は私の得意分野なので在庫のルーン石をちょちょいっと弄ればお値段据え置きで何とかなりましたぁ…
その代わりこの撃杖で無詠唱発動可能なのは雷属性に限定されちゃいますけど、大丈夫ですかぁ?」
「助かります。
ナーベ、構わないな?」
「問題ありません。
あと、あのガガンボが使っていた《魔法口径圧縮》はこの杖で撃てないの?」
「ガガ…何ぃ…?それはご自分で習得して頂くのをお勧めしますよぉ…
ルーン石に予め魔法式を刻印しておけば発動魔法は自動的に口径圧縮されますけど、流石に魔法式一式を石内部に後入れで刻むのは王都のお師匠様くらいじゃないとできない作業ですし、かなーりお金が掛かりますからぁ…」
「そう、思ったより役に立たないのね」
コラっ!なんてこと言うんだこの子は!
無神経なことを口走るナーベに思わず拳骨を見舞ってしまったが、幸いソーラはとくに気にしている様子もなさそうだ。
そういう所だぞナーベラルガンマ!反省しろ!
「まあ《魔法口径圧縮》はさほど難しい魔巧でもないですしぃ、片手間に覚えられますよぉ…
それに駆け出しの【華】で石に口径圧縮の文字刻んじゃったら『私は魔巧の初歩の初歩もできない馬鹿です』って言ってるようなもんですぅ…
えへ…見る人が見ればおのぼりさんだと思われちゃいますよぉ…」
「は?人間如きに出来ることが私にはできないと言いたいの?」
「でもでもぉ…第8位階まで修めたナーベさんならすぐモノにしちゃうでしょうし大丈夫ですよぉ…」
へらへらと笑うソーラだけど、これはもしかしてナーベラルの学習能力が問われているのでは!?
よく勉強するよう言っとかないと!
その後何発か試し撃ち、納得のいく出来に仕上がった撃杖を俺達は無事に購入した。
ちなみに何とか予算内に抑えることはできた。
ルーン石が特にお高くて、この街にいる職人が彼女でなかったらナーベの魔力に適した純正の高級品を買わざるを得なかったらしい。
良かった良かった、これで買えなくてナーベが「じゃあ奪います」とか言い出したらいよいよ冒険者生活が終わってしまう。
…冗談じゃないのが怖いよ。
購入した後、あの少女ふたりに撃杖の『
カタログを渡され、眺めていたナーベはある1ページでふと手を止めた。
「どうした、決まったか」
「…はい、この色にしようと思います」
指さしたのは少しくすんだ鉄紺色、この色合いには見覚えがある。
『弐式炎雷』さん、ナーベラルを創造したギルメン。
「ザ・ニンジャ!」を自称し特大火力の一撃離脱戦法を得意としたかつての仲間がよく身にまとっていた頭巾と同じ色だった。
それを狙って選んだのか、偶々なのか…
「ぬりぬりするのはストックだけでいい?」
「ほかにも替えたいところはある?」
「無いわ、分かったら手早く済ませなさい。
失敗したら承知しない」
「「まっかせてー!」」
できたばかりの撃杖を持って工房の奥に駆けていく2人に若干の不安を覚えるも、ソーラに「大丈夫ですよぉ、『塗り』に関しては私よりあの子達の方が上手なんでぇ…」と補足され取り敢えず納得しておく事に。
それから撃杖の塗り作業が終わるまで変貌した店内を見て楽しんでいると、店の扉を勢いよく開け放ち魔法詠唱者らしき男が飛び込んできた。
首のプレートは【鉄】、何度か組合で見た事がある顔だ。絡みは全くないが、確かンフィーレアに身バレする原因になった件でポーションを渡したブリタという女冒険者と一緒にいた気がする。
「おい!店主はいるか!?」
「はいはーい…なんでしょぉ…」
どうやら随分と急いでいるようだが…
手に持つのはニニャと似たタイプの撃杖だ、銃身は少し短めでリアルで言うソードオフショットガンのような外見をしている。
「急に動かなくなったんだ!
明日の夜には依頼に出なきゃいけないのに困るんだよ、早く直してくれ!」
「ちょっと見せて下さいねぇ…
……あ〜〜…撃鉄が熱で溶けてるぅ…
もしかしてぇ、魔巧同盟非認可のお店でルーン石を買いましたぁ?」
ソーラの問いに男の顔色が曇る、どうやら図星らしい。
「そ、それがどうしたんだよ」
「粗悪品のルーン石を使ってますねぇ…
排熱量がこの撃杖の許容範囲を超えちゃって、一部のパーツが溶けて変形してますぅ…」
「はァ!?マジかよ、あのオヤジ…!」
どうやら男は粗悪品のルーン石を掴まされたようだ。
安物ゆえに正規品との噛み合いが悪く、熱を逃がしきれずに周りの金属が変形して動作不良を起こす…
こんな事も起きるのか。
「一応ルーン石は同盟公認の既製品をお勧めしてるって購入時にご説明したんですけどねぇ…」
「うっ…しょ、しょうがないだろ安かったんだから」
「変形したパーツの交換費考えたら既製品のルーン石買った方が安くつくのにぃ…」
「偽物、という事ですか?」
「最近多いんですよぉ…
魔巧をちょろっと齧っただけの未熟な魔巧技師が安値で粗末なルーン石や撃杖のパーツを売り付けて、買っちゃった人が動作不良でウチに文句言いに来るんですぅ…
注意喚起はしてるんですけどねぇ…
売った本人はだいたいが露店商で報告を受けた次の日にはトンズラこいてますし、足が付かないから取り締まりもままならなくって困ってますよぉ…」
また無駄な仕事がぁ…と虚ろな瞳でぼやくソーラ。
結局粗悪品を買わされた鉄級の魔法詠唱者は既製品との差額よりだいぶ高額なパーツ交換をする羽目になり、泣く泣く修理を依頼することになったようだ。
高い勉強料だったな。
彼には悪いが、そういった事案を先に見る事ができたのは幸運だった。
やっぱり公式が最大手なんだなって。
「モモンさんも気を付けて下さいねぇ…
基本的に王国内だと此処と王都、それからエ・アナセルの湾口都市にしか魔巧同盟の取扱店舗ありませんからぁ…
露店で売ってるようなのは間違いなくパチモンの粗悪品なのでぇ…絶対に買わないように…
ナーベさんのやつなんて特にですよぉ…ルーン石がカスタム品の特注なんで、おかしなパーツ組み込んだら波長がズレて最悪暴発、なんて可能性もありますからぁ…
不具合を感じたら面倒臭がらずウチに持ってきてくださいねぇ…割引きも利きますしぃ…」
「肝に命じます、分かったなナーベ。
異常があれば直ぐに知らせるように」
「承知致しました」
本当にな!割引なかったら金欠で冒険者人生(骨生)終わってるところだよ!
「因みに暴発、というと撃杖そのものが駄目になるという事でしょうか」
「そうですよぉ、撃杖のルーン石は魔力の通り道と同時に貯蔵の役割も果たしますからぁ…
ちょうど粗悪品もありますし、暴発するとどうなるかお見せしましょうかぁ…」
てくてくと俺たちは店の外へ招かれ、隣接する井戸のような施設へたどり着く。
重厚感のある土管のような入口に底の見えないほど深く縦に伸びる穴。
井戸、というには水気がない。というかだいぶ煤けているし、爆破実験でもやったのかってくらい辺りは黒焦げだ。
「ルーン石は宝石で作られてるって話はしましたよねぇ?
宝石は自然から生まれた鉱物ですので外魔力の通り道として最適ですぅ…
それにルーン文字を刻む事で鉱物内部に魔力を蓄積し、内魔力と外魔力を上手い具合に掛け合わせて放つ事が可能なわけですよぉ…
要するに無詠唱化してるのは撃杖本体で、魔力の流れや波長の管理は全てルーン石で行ってるって事ですぅ…その方がルーン石と本体の役割を明分化して量産も簡単になるのでぇ…
第三世代から後の撃杖は殆どコレに該当しますねぇ、第二世代、一世代は試行錯誤の時代だったので出力の問題とか、機構がかなーり複雑化してましたから生産数も少なく流通してるのはほんの僅かですぅ…
持ってるのは【星】の方々とぉ…教会の〝暴力聖女〟様くらいじゃないですかぁ?」
リアルでいうところのモニターとソフトウェアみたいな感じか…
魔法の制御はルーン石が主に担っているんだな。
っていうか撃杖の歴史深過ぎないか?
最新が第五世代ってことは既に何度もアップデートを繰り返されて今の形を得てるんだ。
イアンさんの話では魔巧が生まれてから異世界時間で3年と少しだと聞いていたけど、それにしたって技術の開発速度が異常だ。
この世界の人々の発展への意欲を凄い事だと思うと同時に、脅威になり得るかもしれないという危機感も覚える。
ナザリックには存在しない技術、初見殺しの技なんかがあったらと考えると気が気でない。
敵対しなきゃいい話なんだけど、やっぱりアンデッドになった影響なのか期待8割危機感2割くらいってところだ。
本当に、魔巧って異世界でホットな話題なんだな…
「って、暴力聖女…?とは?」
「法国からエ・ランテルに派遣されて来た神官団の筆頭聖女様ですね。
なんというか凄い方でして。
神官団の〝ケツ持ち〟だって本人は仰ってましたけど…
依頼すれば武技とか護身術を教えてくださるんです」
「ほう、武技もですか」
「ただ教え方が結構厳しいそうで…
ナンパ目的で尋ねたルクルットが翌日ズタボロになって帰ってきた事もありましたね。
アレはルクルットが全部悪いんですけど」
「
修理するこっちの身にもなって欲しいですよぉ…
話が逸れちゃいましたぁ…
で、魔力の波長処理をする時、ルーン石は熱を伴いますぅ…
粗悪品のルーン石は大概の場合、素になる宝石をケチって形だけ整える為に硝子とかの不純物を多く含んでるんですよぉ…
不純物が多いと処理速度も遅くなるし、技師の腕にも左右されて熱の逃がし方が追いつかなくなるんですぅ…
だから石に過度な負荷を掛けたり、ましてや傷つけちゃうとこのようにぃ…」
クレアという聖女の話も気になるが、今はルーンだ。
ソーラは傍にあったハンマーでルーン石を叩き、欠けさせる。
それを急いで縦穴の中に放り込んで少し、爆音と振動が響き縦穴から勢い良く伸びた火柱が空へ登った。地面はもちろん、鎧越しにも腹にズシンと響く振動が爆発の威力を物語る。
「どっかーん、ですぅ…
規模にもよりますけど、だいたい人の半身くらいは消し飛ぶ威力ですねぇ…」
「つまり俺が異変に気付かずあのまま使い続けてると…」
最悪、彼の手元であの規模の爆発が起きていた、という事だ。
俺がそう答えるとソーラは無言で頷いた。
とんだヒヤリハットだな…
さっきまで渋面だった男も青ざめて目を白黒させているぞ。
「撃杖が変形するだけで幸運でしたぁ…」
「……俺、次からはケチらずに既製品を買うよ。
いや買わせて下さい!」
「えへ…まいどありぃ…
モモンさんも、粗悪品の交換なら受け付けてますけど、明らかに意図的な破損や改造は保証対象外になっちゃいますのでお気をつけて…
中には中途半端な技術のまま自分で改造しちゃう人もいますけど、損害は自己負担でお願いしますぅ…」
「……本当に、肝に命じておきます。それはもう」
結論、撃杖は精密機器と同じだ。
あらゆる部分が計算され尽くしている情報の塊、下手に素人が弄るとロクな事にならない。
餅は餅屋、撃杖は専門家にメンテナンスしてもらうのが一番だってコト!
ホント、先に気付けて良かったァ!!
このあと出来上がった撃杖の塗り具合に大満足しながら宿へ戻った。
人間に作らせた物なのに思ったよりもナーベラルが大事そうに抱えているのが印象的だったけど、そんなに気に入ったんだろうか。
だったら大枚をはたいた甲斐があったかな。
「……以上、私が冒険者として得た情報だ。
疑問は恥ずべき事では無い。何か質問があるなら述べよ、私の知る範囲であれば答えよう」
玉座の間を静寂が支配する。
偉大なる御方の言葉に打ち震え、下僕達は涙を潤ませながら顔を上げた。
あのあと無事に撃杖の塗装も終わり、ニニャと軽く明日の予定を確認して心做しか満足気なナーベと共に宿に戻ったモモンガはドッペルゲンガーに代わりを任せ、ナザリックヘと帰還する。
不在の間の、下僕たちの動きを確認するためだ。
各階層守護者の定時報告から始まり、消費資材の確認、カルネ村に派遣したルプスレギナから伝わる村の復興状況、デミウルゴスが召喚した
ナザリックの支配者として頭に入れておかねばならない事は山のようにある。
それらを聞くより先に、先ずは自分の報告からだとモモンガは冒険者として得た情報を開示していくが、下僕たちは感極まってそれどころじゃないようだ。
(まあ、魔巧の知識に関してはソーラの言ってたことそのまま伝えただけなんだけど)
「手に入れた撃杖は現在ナーベラルガンマに所持させている。
今後の冒険者活動で利用し、ゆくゆくはナザリックでも生産できるか試すつもりだ。
デミウルゴスよ」
「はっ」
「このマジックアイテムを見てどう思った」
モモンガ的には軽いノリで「どう?カッコよくない?」くらいのニュアンスで問うた。
よりにもよってデミウルゴスに。
「人間が作ったにしては精巧な作りかと。
…成程、御方の目に留まるだけの価値はある、と言う事ですね」
「だろう?
この世界の人類はなかなかやる。
興味が尽きんよ」
ナーベラルに手渡された撃杖を何度か取り回し、納得したようにそれを彼女に返した後再び列に戻り跪く。
「アウラ、マーレ、後でコロッセオの一角を借してほしい。
ナーベラルの訓練を行いたいからな」
「はい!大丈夫です、幾らでも使って下さい!」
元気よく返事するアウラにつられるようにマーレも何度も頷いた。
借りるも何もナザリックは至高の御方のものなのだからわざわざ聞く必要ないのだが、律儀に問うて下さるモモンガに下僕達の畏敬の念がストップ高である。
「では私の話はこれくらいにして…
お前達の報告を聞こう、アルベド」
「はっ!」
そこから始まるのはアルベド主導による下僕達の報告会。
ルプスレギナによるカルネ村の監視は順調。
かつて助けたエンリにモモンガが渡したマジックアイテム《ゴブリン将軍の角笛》によるモンスター召喚も相まって復興は順調に進んでいるようだ。
これに関してはモモンとして訪問した際に様子を見ているので別段驚くような内容はなかった。
それと、かねてより話していたスレイン法国からの支援物資も届いたらしい。
衣類や食料など、生活必需品が大型馬車いっぱいに詰め込まれて運ばれて来たそう。切り詰めた生活を強いられる村人達にとってありがたい限りだ。
「それから、法国の救援物資と共にルプスレギナ経由でこちらの書状が届いております。
魔法による入念なチェックも行いましたが我々を害するトラップなどはございませんでした」
アルベドから手渡されたのは上等な作りの手紙、法国の蝋印が押されたものだ。
開封して確認…しようと思ったがモモンガはまだこの世界の文字を心得ていないため、翻訳用のマジックアイテムを持ってこさせた後これを確認。
ふむ、と一息吐き懐へそれをしまい込む。
「僥倖だな、これは先日知り合ったイアンという御仁から送られてきたスレイン法国への紹介状だ。
前に貰った分と合わせ、役に立つだろう」
「…なるほど、流石はモモンガ様です。
既に手を打たれていたのですね」
(…ん?)
何度も頷くデミウルゴスに若干の疑問符を浮かべながら、下僕の報告は続く。
影の悪魔による各国への密偵の件。
事前情報により判明した王国、帝国、竜王国、聖王国、法国の5カ国の人類国家に偵察を行った結果をつらつらと述べていく。
先ずはナザリックから一番近い王国。
肥沃な大地に育まれ、身を脅かす敵対種族も隣国に存在しない恵まれた土地にあるこの国は歴史も古く、数年前に代替わりした新王のもと人類圏の流通路として整備と発展を遂げている最中だ。
また魔巧の知識や魔法詠唱者の数において他国に劣るため講師を招き術者育成に励んでいる模様。
カルネ村で出会った彼、ガゼフ・ストロノーフが表向きの王国最強と謳われており、その他冒険者の最高位であるアダマンタイト級の者たちが複数王都へ居を構えている。
次に帝国。
表向き王国とは敵対関係にあり、《鮮血帝》とも称される国王による辣腕で繁栄を勝ち取ってきた。
戦力も組織化された重装部隊や飛竜による騎乗兵部隊などバリエーション豊かで、皇帝直々に選び抜いた帝国四騎士と呼ばれる実力者に加え、《灼魔星》と称される魔巧位階【星】の持ち主にして帝国最強の魔法詠唱者フールーダ・パラダインが在籍する戦争強国。
聖王国は地理的にナザリックから最も離れた国で、後述する法国とは宗教的対立関係にありながらも隣接する亜人との戦争において共同戦線を張りながら交流を持つ。
【星】の位階を持つ者が一名在籍しており、国の軍事責任者として様々なマジックアイテムや魔法戦略を考案し八面六臂の活躍を見せているのだとか。
他の国々とは毛色が違い、存亡の危機を迎えているのが竜王国。
竜の血を引くという女王が治める国で、現在進行形でビーストマンという亜人種から侵攻を受けている。
冒険者の最高位、アダマンタイト級に相当する冒険者チームとワーカーチームの力を借りながら、更に他国の助力も得る形で一進一退の攻防を繰り広げている一方、魔巧同盟のマジックアイテムを生産する大工廠を国内各所に揃えており、経済力は他国に勝るとも劣らない模様。
そして…
「最後にご報告なのですが…
スレイン法国についての情報は、得られませんでした」
「…何?」
「偵察に飛ばした影の悪魔は全て都市付近に近付いた瞬間に蒸発し消滅。
地形の把握はできれど各都市、村々に至るまで内部に近寄る事は叶いませんでした。
《遠隔視の鏡》またはニグレドの遠視を用いての試みも思案していますが…相当に強力な阻害結界が張られている模様です」
「遠視の類は止めておけ、カウンターを仕込まれていたら被害を受けるのはこちらだ。
しかしそうか…」
モモンガは顎に手を当て物思いにふける。
スレイン法国。
カルネ村で恩を売ったイアンが所属する国家であり、会話の端々から察するに魔巧技術の総本山と言っても過言ではない。
彼の言を信じる限り、六大神という神を信仰する宗教国家。現在の人類圏で一番栄えているであろう場所だ。
悪魔を瞬時に滅するような結界を各地に張り巡らせる用心深さなら遠隔視の類は全て対処していると見て間違いない。ならこれ以上の詮索は悪手。
深追い禁物、ユグドラシル時代に何度もあった事だ。
経験則からくる判断でデミウルゴスの提案を一蹴する、彼も疑問を呈す事無く即座に了承し頷いた。
(イアンさんのお誘いもあるし、直接行きたいなあスレイン法国。
そこで鉄騎馬…あわよくば俺用の撃杖を…
金どうしよう…あーあー欲しい物が多過ぎる。
また金欠のスパイラルに…)
「流石は至高の御方にあらせられます。
二手三手先を読むその智謀、やはり我々如きでは遠く及ばない」
(いまデミウルゴスが意味深な発言をしたような…
ああそれよりも金だ金!
現地の金貨の質を見る限り手持ちのユグドラシル金貨じゃ物が違い過ぎて換金は不可能だろう。
…まてよ、ルーン石の原料は宝石だ。
宝石ならデイリー消化で有り余った鉱石が大量に眠ってる!
宝物庫の宝石を幾らか持ち込んで換金するか材料にしてもらうかすれば代金はかなり浮くんじゃないか!?相場のバランスとか質とかの問題はあるだろうが可能性はある!
そうと決まれば早速宝物庫に…ぁ。
パ ン ド ラ に 会 わ な い と い け な い)
金欠具合を嘆き明滅を繰り返すモモンガは下僕の発言に気付かないまま、報告会は終了。
下僕達に下った新たな指令は「〝武技〟なる技術の扱える存在の確保」、「ナザリックに住まう者の為、居なくなってもいい人間の調達」、そして「魔巧技術に関する情報、人材を見繕う」だ。
采配はナザリックの誇る知恵者であるアルベドとデミウルゴスに任せておけば問題ないと判断したため一任する事になった。
「では私は所用につき宝物庫へ向かう。
シズ、ユリ、ナーベラルと伴をせよ」
「…はい、モモンガ様」
「かしこまりました」
「お待ちくださいモモンガ様!
私!アルベドも伴をしとうございます!」
「貴女は先程勅命を頂いたばかりでしょうアルベド。
守護者達と会議です、少しばかり根を詰める必要がありますからね。
逃がしませんよ」
「ご同行願います、アルベド様」
「ああああぁぁぁぁなんでメイド達ばっかりいぃぃ…」
「年増の断末魔は聞くに耐えないでありんすねえ。
さっ、モモンガ様♡共に宝物庫へ参りましょ「オ前モ守護者ダロウ、シャルティア」おいッ!コキュートス離すでありんす!離せッ…いやああああぁぁぁぁ…!」
セバスとデミウルゴスの2人がかりで肩を掴まれ引っ張られるアルベドと、コキュートスの巨体に担がれながらシャルティアが連行され、それをアウラが白い目で眺めている横で「ご、ご迷惑をおかけしました!」とマーレがペコペコと何度も頭を下げながら別室の扉を閉じた。
「う、うむ。
他の者も随時解散して構わない。
ナーベラル、ユリ、シズ、行くぞ」
ナザリックは今日も平和だな!
◆モモン(ガ)
ワクワクで精神安定が連発しまくってつらい
撃杖しゅごい…俺も欲しいのぉ…
◆ナーベ(ラル)
あたらしい ぶきを てにいれた!
しかし なーべ は もじが わからない!
たくさん勉強しようねぇ(ニチャア
◆ソーラ
実は過去にレイラがエルヤーから保護した奴隷3人組の一人
名前はオリジナル、公式で名前あったらすまん
給仕より職人作業に適正があったので《雷冠星》に弟子入りさせて【空】を得るまでになった
師匠に似て怠け者だが技術者としての腕は折り紙付きで、雷属性の調整に関して彼女の右に出る者はいない
◆暴力聖女クレア様
一体何マンティーヌなんだ…
年内最後の投稿かもdeath
うp主は31まで仕事する勢なので、死ゾ
最近オバロ2次の更新も増えてるし、このまま読み専になってフェードアウトするか…ワイもう要らんやろ
次は作者待望のパンドラ出して…話が進むといいなァ