ベトくんといっしょに   作:ゾネサー

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十人十色に染め上げて

「マシュ君はどうやって勝ったん?」

 

「ゴーストわざの効きやすさや『キングシールド』をすり抜ける『ゴーストダイブ』の存在も大きかったが……その上で『のろい』によるダメージの蓄積が大きかったな」

 

「そっか……」

 

(マシュ君はゴーストタイプの強みを十全に生かして勝ったんやね……)

 

「……さあ、オンステージよ!」

 

 二人が話しているとクルトとミユの準備が整い、二対ニのシングルバトルという名の舞台の幕が上げられた。ミユのかき鳴らすギターの音が鋼に反射してよく響き渡っていく。

 

「頼みましたよ。ドータクン!」

 

「星よりも輝いていくわよ! ルナルナ!」

 

(……! ミユの新しい仲間やけん)

 

(俺とのバトルでは使わなかったポケモンか……タイプは? ……岩・エスパータイプ、か)

 

 ドータクンと向かい合うようにミユが繰り出したのはルナトーン。三日月のような身体に浮かび上がる赤い瞳は観戦している二人が思わず身体を竦ませるほどの迫力がある。そんなルナトーンに対してマシュは観戦者として『ポケモン図鑑』を用いて理解を深めようとしていた。

 

(ルナトーンですか……そこまですばやさに秀でたポケモンではありませんね。なら、ここはまず真っ直ぐ攻めてみましょう)

 

「『ヘビーボンバー』で襲い掛かって下さい!」

 

「……! まずいか……? アイツ……ミユは、弱点に対しては無防備だったはずだ。岩タイプを含むルナトーンに鋼わざで仕掛けられては……」

 

「大丈夫やよ!」

 

「その根拠は?」

 

「だってミユはあたしと同じ東回りで来たんよ!」

 

「東回り? ……! そうか。草に格闘……!」

 

「まずはイントロから! 『リフレクター』を張り巡らせて!」

 

「……!」

 

 大きく跳び上がったドータクンが急降下していくと、ルナトーンが張り巡らせた半透明の障壁で勢いが軽減されてから突撃を食らわせていた。

 

「ぶつりわざの威力を半減させる『リフレクター』か……」

 

「これでぶつりわざには強く出られるけんね!」

 

(……ルナトーンも鋼と同様重い特徴を持つ岩タイプ。弱点をカバーされてしまっては、重量差を生かす『ヘビーボンバー』は有効打にはなりづらい。でしたら……)

 

「戻って下さい! お願いしますね。ギルガルド!」

 

「その隙に『めいそう』よ!」

 

「……! 『めいそう』ですか……!」

 

 交代の隙にルナトーンは心を落ち着かせ、身体に沿うようにピンク色のオーラを纏っていった。

 

「『シャドーボール』を!」

 

「そのまま『めいそう』を続けて!」

 

 その間に現れたギルガルドが剣先から闇色の球体を放つと、ルナトーンに直撃させた。

 

(とくこう・とくぼうを上昇させる『めいそう』を挟まれては、とくしゅわざで弱点を突いても短期決着は難しいですね……。プランを変えるべきでしょう)

 

「……こちらも『シャドーボール』を続けてください!」

 

「ジムリーダーらしからぬ愚直な攻めだが……?」

 

「……あっ! これは……あたしがギルガルドを『こんらん』させた時と同じで……?」

 

 『シャドーボール』と『めいそう』が交互に繰り返されていく。弱点を突く『シャドーボール』は的確に体力を削ってはいくものの、過ぎていく時間はルナトーンのオーラの増幅を意味していた。

 

(そろそろ良いわね。ここらでやっちゃえば勝ちはもらったも同然……。……!)

 

 その光景に笑みを湛えるミユだったが、ハッとした表情を浮かべると、脳裏にフェロのアドバイスが()ぎっていた。

 

「相手の警戒している部分をこじ開けるより、隙を突く方が容易く、また効果的ですわ。あなたが相手を見ているように、相手もあなたを見ている。その自覚を持つことです」

 

 ボールホルダーに視線を落としていたミユはそうした表情を浮かべると、クルトの方に目を向けた。すると背中に嫌な汗が滲み出てくる。

 

「……『つきのひかり』!」

 

「……! 『アイアンヘッド』を!」

 

 空に薄く浮かび上がる月が太陽光を反射してルナトーンを照らすと、その体力を回復させていった。そんなルナトーンに剣の柄が振り下ろされる。

 

(……! もう『リフレクター』が途切れてる!?)

 

 すると勢いは軽減されずに強烈な打撃が加えられた。思わずルナトーンは後退するものの、体力の回復もあって受け切っていた。

 

(そっか。ジリジリした展開になってたから、切れちゃったんだ。とくしゅわざばっかり続けるから意識からも消えてた……)

 

(まずい展開ですね……。もはや引くわけにはいきません)

 

「もう一度『アイアンヘッド』を!」

 

「『リフレクター』よ!」

 

 追撃の『アイアンヘッド』は再び巡らせた障壁で軽減され、ルナトーンはそれなりの余裕を持って耐えていた。

 

(ここしかない!)

 

「今よルナルナ! 『バトンタッチ』!」

 

「くっ……『おいうち』をかけて下さい!」

 

「えっ!?」

 

 そしてルナトーンが自らの意思でボールに戻ろうとした時だった。ギルガルドが振り下ろした剣が小さくなったルナトーンを捉える。が、辛うじて耐え抜いたルナトーンは無事ボールに収まった。

 

(あ、危なかったああ……! そんなところ狙ってくるの!?)

 

(とくこうも上がる『めいそう』をしたにも関わらず攻勢に移る気配がありませんでしたからね……。可能性としてあり得ると睨んだのですが。仕留めきれませんでしたか)

 

 一度体力を大きく回復されたことに加え、改めて張り巡らされた『リフレクター』により『おいうち』の勢いも抑えられていた。これにより決定打とはならず、両者は対照的な表情を浮かべる。

 

「ここからはサビに突入よ! ギラギラ! ミラーボールよりも輝いて!」

 

(……!? ヨーギラスじゃなか! あれは……?)

 

「『サナギラス』。だんがんポケモン。圧縮したガスを噴射してロケットのように飛び出す。岩盤のように硬く、鋼鉄にぶつかっても平気なボディだ」

 

(そっか。ケーちゃんみたいに進化したんや。それだけフェロさんのもとで頑張ったとね……)

 

 代わって現れたのはヨーギラスの進化形となるサナギラス。青い殻で覆われており、上部の穴から鋭い眼光を覗かせている。

 

「なんだあれは……?」

 

「もしかして……『めいそう』?」

 

 そんなサナギラスを嵐が飲み込むように、ピンク色のオーラが纏われていった。

 

「ルナルナが『バトンタッチ』で引き継いでくれたのよ!」

 

「えっ!? じゃあ今のギラギラは……」

 

「既にとくこう・とくぼうがかなり上がっているわけか……」

 

(この状況を打破するには……時間を稼いでリフレクターをもう一度消滅させるしかありませんね)

 

「ギルガルド! 『キングシールド』を展開して下さい!」

 

「させない! ギラギラ、『ちょうはつ』して!」

 

「……!」

 

 対面する相手に気圧されながらギルガルドは盾を構えようとした。しかしサナギラスの『ちょうはつ』に乗ってしまい、剣先を向けてしまう。

 

「『ちょうはつ』されたポケモンはしばらくの間、攻撃わざしか出せない。ミユのやつ、自分はあれだけ変化わざをやっておいて……」

 

「ミユらしか〜」

 

「このサビだけはアタシの独壇場(ワンマンショー)! 誰が相手だろうと舞台には上がらせないんだから!」

 

 中盤に入り激しくなってきたギターの音と同様にミユのテンションも最高潮に達していた。そのテンションで相手を押し潰そうとするかのようにリズム良く指示が送られる。

 

「『だいちのちから』でぶち上げて!」

 

(まずい……! 『キングシールド』が不発に終わってはギルガルドは『ブレードフォルム』のまま……!)

 

 『ちょうはつ』に乗って斬り掛かっていくギルガルドに対し、サナギラスはガスを噴射して鋼の地面へと突撃した。すると振動を通して地面から放たれた衝撃波がギルガルドを宙へと舞い上がらせる。

 

「ジャッ……!?」

 

 攻撃に気を取られていたギルガルドはこれをモロに受けてしまい、受け身も取れずに墜落してしまった。

 

「やられましたね……。お疲れ様です。ギルガルド」

 

 オーラも乗せた強烈な一撃で一気に戦闘不能まで持っていかれてしまい、苦い気持ちを抱いたクルトだったが、勝負の途中でそれを表に出すまいと、表情には出さずに労いの言葉をかけながらポケモンを交代した。

 

「もう一度頼みます。ドータクン」

 

「ドータッ!」

 

「『みがわり』を!」

 

「やらせない! 『ちょうはつ』よ!」

 

(『ちょうはつ』が入る前にと思いましたが……先に指示をしても、『トリックルーム』を生かすためにすばやさを鍛えなかったのが仇となっていますね……。その『トリックルーム』も使えないのですから)

 

 苛烈な攻撃をデコイを盾にして防ぐことでの『リフレクター』の解除を虎視眈々と狙うクルトだったが、ドータクンもサナギラスの『ちょうはつ』に乗って攻撃の構えに入ってしまう。

 

「撤退しているな……」

 

(ヒメノのバトルが有利になるよう誘導するスタイルなら、ミユは有利を徹底して押し付けるスタイルといったところか……)

 

「一気にアウトロよ! 『だいちのちから』!」

 

「簡単にはやらせませんよ! ……今です! 『ヘビーボンバー』で跳んで下さい!」

 

「躱された……!?」

 

 地面から衝撃波が噴き上げるタイミングに『ヘビーボンバー』の跳躍を合わせて回避に成功され、ミユは目を見開いた。

 

(……落ち着くのよ! まだ『リフレクター』は残ってる!」

 

「一旦ブレイクダウン! 受け止めて『あくのはどう』よ!」

 

 募る焦燥感を抑えながらミユは一度テンポを落とした。そして落下の衝撃も障壁によって抑えられると、サナギラスは顔を顰めつつも、オーラを黒色に染めて自分を中心として輪状に放った。

 

(今回『だいちのちから』から逃れるには空中しか選択肢が無かった……。故に宙に浮いている今、対空わざを放たれては躱しようがない。冷静に対処されてしまいましたね……)

 

 突撃をかましたドータクンの身体は宙に浮いており、かつサナギラスの至近距離。そのため広がる波動を避けることは出来ず、弾かれて地面に叩き落とされてしまう。

 

「リフレインを挟んで今度こそフィニッシュよ! 『だいちのちから』!」

 

「ギイッ!」

 

 一度落ち着いてから急激にテンポが速くなったギターと同様に、接地してすかさず放たれた衝撃波が体勢を崩したままのドータクンに襲い掛かった。やがて衝撃波が収まると共にギターの音色も鳴り止んだ。

 

「……参りました。どうぞ。チタンバッジをお受け取り下さい」

 

「やったー!」

 

「凄かったと……。おめでとう、ミユ!」

 

「ありがと!」

 

(不思議なものだな。初めて会ってからまだ半年も経っていないというのに、ここまで変われるものなのか。……俺も、変わらなくては)

 

「ミユさん。少しよろしいですか? ジムの方で念のため診察をさせていただきたいのですが……」

 

「えっ? そ、そこまでしてくれるの? ありがとうございます! ヒメノ! また後でね」

 

「うん!」

 

 こうしてジム戦の幕が降り、一度ミユと別れたヒメノはマシュと共に次なる目的地へと歩いていった。

 

「正直に言う。お前だけが敗北という結果になるとは思わなかった」

 

(ツラレさん並みに単刀直入やね……)

 

「ジム戦で負けたのはこれが初めてか?」

 

「ううん。初めてじゃないんよ。ばってん……」

 

「……!」

 

「何度負けても慣れんくらい悔しかね……! 足りないものを、埋められなかったってことやから」

 

(…………。ヒメノも、そんな顔をするんだな)

 

 抑えきれずに激情が顔に出てしまい、ヒメノは慌ててそっぽを向く。マシュがその表情を見たのは一瞬。されど強烈な印象を残していた。

 

「……あっ。着いたと!」

 

(図書館(ライブラリー)? ここに向かっていたのか)

 

「ジム戦に有利となる情報を調べに来たのか」

 

「うーん……ちょっと違うけん。これから先も毒タイプで戦うんやったら、今回みたいなことがまた起こると思うんよ」

 

「毒が効かない相手か……。何か考えはあるのか?」

 

「一応……。その相手は、鋼と毒自身やけん。やから共通の弱点を突ける攻撃わざがあれば対策にはなると思うんよ」

 

「つまり地面わざか……悪くない手だと思うが」

 

「けどこれも対症療法というか……。例えばエアームドみたいに鋼・飛行タイプのポケモンやったら通用しない訳やし」

 

「あくまで手の一つとして考えるのか。ならばどうする気だ?」

 

「もっと根本的な原因を治したか。そんな相手にも『どく』を侵食させる方法が……どこかに無いかなって」

 

「そんなことが出来るのか?」

 

「それを調べに来たんよ。クルトさんの話やと予防が優れているだけで、症状が見られることはあるって話やったし……可能性はゼロやないのかなって。低いかもしれんけど、何もせんで諦めたくなかったと!」

 

「……なるほど。よく分かった」

 

(ヒメノはこれまでも、こうして時間をかけてでも貪欲に学ぶことで勝ち進んできたのだろうか……。最速の攻略を目指していた俺には無かった発想だ)

 

 図書館の中へと入っていった二人は小声で話しながら蔵書を探っていく。

 そうして一時間ほど経った頃だった。当たりをつけた本を片っ端から目を通していたヒメノはある言葉を見つけ、ページを進める手を止めていた。

 

(……これは……! ……もしかして)

 

 その部分を読み進めていくうちにヒメノの脳裏にはクルトの言葉が思い出されていた。

 

「——鋼タイプの場合は内部が腐食することで発生する錆が——」

 

(鋼にとっての『どく』は錆……それだけでも伝わるけん。やのにわざわざ発生の原理まで教えてくれたのは……ヒントをくれてたんや。……!)

 

 ちょうどその時ポケフォンが振動し、タイミングの良さに思わずヒメノ自身も身体をビクッと振るわせる。

 

「ミユか?」

 

「うん。ポケモンセンターで待ち合わせやって。早速行こっか」

 

「もう良いのか?」

 

「ええよ。知りたいことは知れたけん。立ち止まってられなか!」

 

 それがミユからの連絡であることを確認すると、二人は図書館を後にしたのだった。

 

「……まさか。山登りをする羽目になるとはな」

 

「ご、ごめんね?」

 

「謝んなくていいでしょ。マシュが付いて来たいって言ってるんだし。勝手に歩かせとけば良いのよ」

 

 こうして再び合流した三人はマシカゴタウンの近くに(そび)えるサクラマウンテンを登っていた。

 

「ミユは何故付いてくるんだ」

 

「何? 付いてきちゃいけないの?」

 

「ま、まあまあ。ミユ、落ち着いて」

 

「ふぅー……。どうせ次のキワナオ行きのフェリーまで時間あるし、ならヒメノが何しに行くか気になるでしょ」

 

「ああ。便が一月(ひとつき)毎にしか出てないからな。海上のライド資格を持ってない限りは待つしかないな」

 

「ちょっと! 知ってたなら教えなさいよ! アンタ達と別れてからわざわざ調べに行ったのよ!」

 

(やけに診察に時間がかかっていると思ったら、そういうことか)

 

「そんなタイミング無かっただろう? お前から聞けば良かった話だ」

 

「なんですって〜!」

 

「ふ、二人とも落ち着いてっ」

 

(もー……どうしてすぐにいがみ合っちゃうんやろ。ポケモンやったら確実に相性が悪か……)

 

「あ! そや……頂上まではまだあるし、一旦食事休憩にせん?」

 

「構わないが……俺はキワナオから帰ってきたばかりで、まだ食糧の調達はしてないぞ」

 

「さっきベトくん用のモモンのみを買った時に、簡単なものなら一緒に買ったからそれやったら——」

 

「待って! 折角ならアタシが作ってあげる!」

 

「えっ?」

 

「お前料理出来るのか……!」

 

「失礼ね! まあ……確かに前までは出来なかったけど! 今は出来るの!」

 

「奇妙な話だな。ジムチャレンジの間に料理が上達する機会などあるものか?」

 

「……あっ! もしかして、フェロさんに……?」

 

「その通り! ストバで働いてたからね。ポケモンだけじゃなく、そっちも教えてもらったの!」

 

 山の中腹までやってきたところで休憩が挟まれた。ミユが旅の必需品とも言えるお手軽キャンプセットから取り出した鍋で煮込んでいく。

 

「わ〜! お団子や!」

 

「フェロさん仕込みの料理、たっぷり味わわせてあげる!」

 

「ふっ……まるでわざでも食らわせるようだな」

 

「今よギラギラ! 『あくのはどう』!」

 

「「……!?」」

 

 するとサナギラスが黒色のオーラを二人ではなく料理に向かって放った。指示こそあったものの、二人にとっては不意に放たれたそれに開いた口が塞がらない様子だった。

 

「ど、どうしたん?」

 

「正気か?」

 

「どっちかって言うと瘴気だったけど……」

 

「…………」

 

「……。……冗談も行動も笑えないな」

 

「い、今のも笑えるし! それに行動は大真面目なの! 味付けよ味付け! アタシだって初めてフェロさんに見せてもらった時はビックリしたの! 良いから食べてよ!」

 

「あ、味付け……なんや。ちょっと怖かね。でも、いただくと!」

 

「食うのか……?」

 

 茹で上がった団子が料理として提供される。その緑色の団子は球状と表現するにはところどころ凹凸があり、また『あくのはどう』によって凹んだ部分が埋まってちょっとした粒が出来ていた。ヒメノは作ってくれたものを無碍には出来ないと恐る恐る口にしてみる。

 

「え……美味か!」

 

「ふっふーん。でしょ? 『あくのはどう』を使うポケモン次第で微妙に風味は違うのよ」

 

「……本当だ。変わった風味だな」

 

「美味しいでしょ? 感謝しなさい!」

 

「ああ、美味いよ。ありがとう」

 

「へっ……あ、うん。どういたしまして……」

 

(ふふっ。良かったと。マシュ君はオブラートで包まず何でも真っ直ぐ言っちゃうんよね。あたしはツラレさんで慣れとったから気にならんかったけど……。……あ……)

 

 まさか素直に礼を言われるとは思わず、ミユが困惑して開いた口を埋めるように団子をいただく中、ヒメノは再度()ぎったツラレの顔がやけに腑に落ちていた。

 

(そっか……)

 

「ねえ、マシュ君」

 

「なんだ?」

 

「チャンピオンの息子って言っとったけど……」

 

(え!?)

 

「あれって現チャンピオンのドルガさんの……ってことだけやなくて。元チャンピオンのツラレさんの……って意味もあったんかなって」

 

「ふ……そうだ」

 

(育てるのが忙しかった……っていうのは、ポケモンやなくマシュ君のことやったんや……)

 

「母さんのことを知っていたのか?」

 

「マシュ君のお母さんってことは知らんかったけど、色々お世話になったんよ」

 

「そうか……。大変だっただろう?」

 

「ま、まあ。大変やったと。でもそれだけの甲斐はあったんよ」

 

「厳しさは変わらずか。俺は合わなくてな……。ただただその強さだけが眩しかった」

 

「ドルガさんと、ツラレさん。そんな二人の子供やったら……強くならなきゃって思いが先行しちゃうのも分かるんよ」

 

「まあ……幼い時からそうだったなら尚更ね」

 

「……我ながら情けない話だ。親の考えより、自分の考えを信じてきたというのに。今更母さんの言っていたことが身に染みてくる。強さは一人では築けない。強くなるために他人を"見る"のだと。教え方が親切だったとは思わないが……まさしく的を射ていたのだな」

 

「もう……そんなに悲しそうに笑わんで。今更、なんてことはないんよ。それこそチャンピオンだってゴールやなか。ジムチャレンジも半ばのあたし達には、まだまだ長い道のりが待っとるんよ!」

 

「これまで、ではなく。これから、か。……そうだな」

 

 マシュは一瞬浮かべた嘲笑を吹き飛ばすように穏やかに笑った。

 

(マシュのやつも色々あったんだ……)

 

 それぞれの思惑を抱きつつ、食事休憩は終わりを告げた。そして三人は頂上の火口近くへと辿り着く。

 

「あっつーい……。クラサラの頂上はあんな寒かったのに!」

 

「クラサラもふもとは暑いんだが……大抵ケーブルカーで省略されるからな。冬のクラサラ、夏のサクラと呼ばれるだけのことはある」

 

「探してるポケモンって本当にここにいるの?」

 

「うん! 調べたから間違いないんよ。……!」

 

 登るにつれて高くなる気温から生息しているポケモンも段々と少なくなっていった。そしてこの山で最も頂点に立っていたポケモンが今、彼女達の目の前に姿を現した。

 

「いた……! エンニュート!」

 

 そこでは二本足で立つ黒いトカゲの体型をしたポケモンが妖艶な笑みを湛えていた。すると指をヒメノ達に向け、その向きをゆっくりと上げていくと、長い舌で舐め上げる。ようやく見つけたポケモンにヒメノは気温によるものではない昂りを覚えながら、向かい合うのだった——。




マシカゴタウン

ポケモンセンターなど必須の施設以外にも診療所や図書館を始めとしたサービスの行き届いた施設が充実している。
これはジムフェスティバルも開催されていなかった頃、大都会であるクオカフに移住する人が多かったため、住み良いまちづくりを進めることで生活環境を向上させる試みが行われたことに起因している。
参加者に若者が多く含まれているジムチャレンジを通して魅力が伝えられたことで、最近ではそうした人々が移住してきており、活気を取り戻している。
またストリートバーの普及も躍進の一助となった。
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