盗人兎と白銀狼   作:名追いのお供

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初めての野外キャンプ

山を越え、川を渡り、時には船に乗って。

移動に移動を重ね、時には宿を取る。

最早旅と言える代物だった。

 

「もう一週間くらい移動してるのだけど、まだ着かないの?」

愚痴る元盗賊兎は首元のチョーカーを弄る。

交差している革製のもので、中心には赤い宝石が付いている。

 

「これでも行きより早いんだぜ。嬢ちゃん。」

白髪のフェリーン、ガランド貿易の主であるシルバーアッシュは基本従者と共に移動するのだが、龍門での黒服たちも途中で交代を重ね、今や5組目であった。

 

「行きは商品を運ばなきゃだったからな。今の十倍以上の人が動いたぜ。」

荷物を運ぶ車とそれを護衛する車みたいな感じで車列が出来ていたとかなんとか。

 

「まあ、後2日くらいかな?がんばれよ嬢ちゃん。こっから結構寒くなるからな。」気前の良いおっちゃんがコートを渡してくれる。

 

「ありがと。というかまだ寒くなるのこれ?」

龍門は港もあるので基本温暖な場所であり、その住人であるロープに寒さの耐性がある訳もなかった。モフモフで暖かい毛皮のコートを着る。

 

走行を続ける数台の車が荒野に止まり、野営の準備を始める。

手慣れた風に分厚い防寒着を着た人たちがテントやら焚き火を起こす。

 

「嬢ちゃん、悪いけど少し手伝ってくれ。」

携帯食糧の入った箱を渡され、配給を任せられる。

ちなみに手錠は龍門を出た少し後に外して貰えた。

逃げても荒野しかないから野垂れ死するので意味ないからかな?

クソが。

 

「あーい。」

テントごとに小分けされていたので、大して苦労せずに配り終える。

 

「この生活にも慣れたようだな。」

元凶たるシルバーアッシュが現れる。

 

「こんな寒いの慣れるわけないじゃん。」

不貞腐れながら彼のポケットをまさぐる。

「おっ!カイロか。気が効くねぇ。」

 

この行為も初日に盗み癖を伝えたところ許してもらった上でやっている。

なんでも、配下に迷惑をかけるなとか。お優しいね。

 

「しかし、相変わらずの技だな。動きの気配が薄い。」

動きの気配ってなんだよとツッコミたいよ。

 

「まあね。この道十数年の僕だからね。」

褒められたことでないが、褒められると少し誇らしい。

カイロを開封し振る。

 

「んで、結局なんで僕なんか誘拐してるの?」

「誘拐…か。ふむ、言い得て妙だな。」

「いや、女の子を攫ってるというのは事実だからね!」

「そうだな、そろそろ言っても良いだろう。」

 

咳払いをするシルバーアッシュ。

「その腕を見越して、盗み出して欲しいものがある。」

「お金持ちなのに、盗むの?」

「レユニオンを知っているか。」

「ああ、感染者の集まりだったかな?」

感染者であるロープだったため勧誘をされたことがある。

しかし、一人で生きていけるからと断った。

 

「近頃怪しい動きを見せていて、部下を数人送り込んだが……。」

「帰ってこなかったってことか。」

頷くシルバーアッシュ。

 

「危なくね!ちなみに断る権利は……?」

「その首が繋がらないと思え。」

「えっ!?ねえ、このチョーカーってそういうこと?」

「ああ、小型源石爆弾が仕込まれている。ウルサスから入手した。」

「はあ?ふっざけんな。手錠はそういうことかよ。」

否定をしないシルバーアッシュ。

 

「成功したあかつきには報酬と自由を約束しよう。」

「家名に誓って約束を反故にはしない。」

「……。」

無言で睨みつけるロープであった。

 

「分かったよ。やればいいんでしょ。」

溜息を吐く。理不尽には慣れていたロープであった。

 

携帯食糧といっても、スープに漬けると結構良い味を出していた。

三食とはいかないが、朝晩の二食は保障されていたので、浮浪者のロープにとっては、まあまあ良い生活といえなくもなかった。首に爆弾が無ければの話だが。

 

もぐもぐしていると疑問が頭に浮かぶ。

「そういえば、シルバーアッシュさんってガランド貿易のリーダーだよね?」

「ああ、そうだが。」

「こんな食事でいいの?」

数日共にしていたが、基本食事は配下と同じものを食べていた。

その上時々、菓子を配っていたりと不思議なお金持ちだとロープは思っていた。

 

「ふむ、昔ある奴に同じ質問をしたよ。」

珍しく少し微笑むシルバーアッシュ。

「奴は『使い捨てにするならせめて食事くらいは平等にしてやりたい』と答えてね」

「目標のために冷酷に仲間を使い潰す奴ではあったが…それ以外は仲間を大切にしていたんだ。」

「あいつには一度負けていてね。見習っているにすぎない。」

「それに、悪くない味のものを選んでいる。」

眩しい思い出を語るような顔をするシルバーアッシュ。

 

「ふーん。良い上司ってやつかな。」

「と思われていれば嬉しいものだ。」

いつも通りの淡白な返答。

 

そのあとは夜にも関わらず、仕事関連でシルバーアッシュは作業用テントに向かった。

 

ロープは手にカイロを包み女性用のテントで眠りについた。

 

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