その計画を生み出したのは1人の狂人。
男は狂人であった。同時に天才でもあった。どうしようもないほど優れた頭脳を持ち、天災と呼ぶにふさわしい異常者だった。
かつて男は凡人だった。その頃から優れた才能の片鱗はあった。しかし決定的だったのは、英雄との邂逅を経てからである。
とある戦場で、男は運命に出会ったのだ。出会った相手は、男を襲わんと飛び掛った敵を、たった一太刀で斬り伏せた。血濡れの女豹と称された相手は、剣聖と呼ばれる前の英雄の姿だった。
その日、男は
男は優れた科学者だったが、1人の英雄に魅入られてしまった。
たった一度の邂逅で、一人の男を狂わせた。
それは英雄が剣聖と呼ばれるようになり、やがて死を迎えた時も同じであった。
運命というものが何を与えるのか。
誰も知りえないその答え。
狂った男は、希望を求めて堕ちた。
狂った科学者は、軍部と取引をした。英雄を甦らせる。ただそれだけを求めて。
そうして世界は廻り始めた。
剣聖。
かつてそう謳われた英雄がいた。
多くの人々に慕われ、国の要として扱われ、英雄の栄光は永遠に続くものかと思われた。
しかしその栄光は、英雄の死によって終わりを告げることとなる。
英雄というかつての憧れは忘れ去られた。
だが、1人だけ――その憧れを忘れられなかった男がいた。
男は狂人であった。同時に天才でもあった。どうしようもないほど優れた頭脳を持ち、天災と呼ぶにふさわしい異常者だった。
そうして、男は軍部にある取引を行った。
かの英雄を蘇らせる。
或いはその再臨を目指して国を挙げて行われた実験計画。
かつてこの国で英雄として名を馳せた者の名を肖ったその計画は、
「
この男の主導により、国を上げての
かの英雄の生体情報を徹底的に解析・研究の果てに、英雄の記憶を人造生命体の複製体に持たせることが可能なレベルにまで発展。
この結果に軍部は大いに満足し、国の極秘の研究所で、最初の人造生命体であり英雄の複製体Aliceは次々と製造されるようになり、やがてAliceシリーズとまで呼ばれるようになる。
そうして製造された複製体達は、今も尚、人造生体兵器として戦場へと送られ続けている…。その正体が兵器と称される人造人間であることは秘匿されて。
並の科学者ならば、ここで満足していただろう。
だが、男は満足しなかった。それどころか、完璧な英雄を求めてより研究へとのめり込んだ…。
戦争が激化する中、軍部も藪をつつくような真似はせず、むしろ積極的に研究に協力し、今に至る。
ここまでがAliceシリーズのきっかけであり、人造生命体、ひいては複製体研究の歴史であり、ある男の話。
そしてここからは、Aliceシリーズである2000番目のAliceの話。