トラックに跳ねられ、気づいたら武器人間にされた件 作:兎の助
(ん…うん…?あれ?ここどこだ…?)
とある部屋の一角、そこで男が目を覚ました。
(えっと…確か俺、学校の帰り道で…そうだ、女の子が道路に飛び出してそこにトラックが突っ込んできたから助けようとしたんだっけ…ということは、俺は死んだのか?いや、こうして思考できるってことは生きてるよな?でもここって…)
彼は考えながら周りを見る。部屋は薄暗く見えづらかったが、やがて暗闇に目が慣れ始めたのか段々と見え始める。
部屋には錆びた排水管らしきパイプや通気口、窓は無く明かりは天井に付けられた蛍光灯のみ。目の前の手術台には薄汚れたシーツが敷かれ、その上には手術道具に加え何故か工具が載っている。
その横のテーブルには車のエンジンや岩盤採掘用のドリル、チェーンソーなど到底手術に使わないであろう機械類が山となっている。
(病院じゃ…ないよな、ここ。どちらかというと工場だな。でもなんでこんなところに…それに、俺拘束されてないか?)
今の彼は壁に張り付けにされているような状態である。
体を揺さぶってみると、ジャラジャラと鎖がぶつかる音が聞こえる。頭部も固定されているため、現状自分がどうなっているのか彼には分らない。
怪しい雰囲気に満ちた部屋に、拘束された自分。流石にヤバいと感じたのか、彼は焦り始める。
(クソッ!どうなってんだよ!?と、とにかくここから脱出を…!!)
そう考え始めたその時…
キィ…コッ コッ コッ コッ…
(ッ!?まずい!誰か来た!!)
彼は一先ず暴れるのをやめて、寝たふりをする。やがて部屋の扉が開き、そこから男が入ってきた。
その格好はロングコートに汚れたシャツ。形の歪んだハットにサングラスと、さながら不審者の代表格とでも言うような格好だった。
男は口に咥えた葉巻をふかしながら、徐々に彼に近づく。葉巻独特の甘い香りが鼻をくすぐる。
「さてと…こいつもそろそろ大詰めか…」
男はそういうと、近くの台に乗っていたガスマスクを手に取った。
だがそのガスマスクには、本来は排気孔がある場所にドリルが取り付けられていた。
(お…おい、な、何をする気だ!?)
流石に危険を察知した彼は、体を大きく揺さぶって抵抗する。
「おい!暴れるな!!このっ!?」
だが拘束されてまともに動けない彼の抵抗など、微々たるものでありすぐに男によって完全に固定され、その悪趣味な面具を顔に取り付けられてしまった。
「まったく…すでに覚醒してたとはな…よし、これで…完成だ!!」
男は体に巻かれた鎖をほどいて彼を自由にした。
彼は男から距離を取り、部屋の隅で警戒する。だがどうしてか先ほどから声が出せない。疑問と不安と恐怖から男を警戒する。
「おいおい、落ち着けよ。俺はお前の味方だ」
(味方だと!?ふざけるな!!こんなもの顔に付けやがって!!くそっ!外せない!?)
「外そうとしてんのか?ならご愁傷様。それは外せねぇぜ。外すなら外科手術が必要なレベルで取り付けたからな!」
(なんなんだよ!俺が何をしたっていうんだよ!?お前はいったい誰なんだ!?)
「うーん…自己学習して自立行動できるよう脳もイジッたのがまずかったか?まぁいいや、とりあえず実験は成功だな」
(畜生…声が出せないから会話もできねぇ…ひとまず隙を見てここから脱出…を…)
話しながら近づく謎の男から一定の距離を取りつつ、唯一の脱出口である扉にジリジリと近づく彼。だがその時、男の後ろに置かれたひび割れた姿見に移った自分の姿を見て、すべての思考が止まった。
「名前はどうするかな…?ゾルダート・
両手と両足には鉄くずで作られた長い槍、肩甲骨のあたりからは二本の腕が生えている。両肘から伸びたゴムチューブは背中のタンクにつながっており、何かの液体が流れているのを感じる。
「ゾルダート・
頭部には金属のヘルメット、全身はボロボロの黒い軍用コートで覆われており、その不気味さに拍車をかけている。
顔は先ほどのドリル付きガスマスクで完全に隠されており、自分の顔を見ることはできない。だが恐らく…いや確実に驚愕と恐怖によって歪んでいることだろう。
「いっその事ゾルダートは付けねぇってのはどうだ?あの失敗作と同じでよ!」
そしてそれと同時に、奇妙な既視感にも苛まれていた。というのも今の自分の姿と謎の男の姿に見覚えがあったからだ。
「ん?その姿…なんかに似てんな?なんだっけ?……あぁ!そうだ!てめぇにピッタリな名前を思いついたぞ!」
そして、その答えは奇しくも男と同じものだった。
「今日からてめぇの名前は、
B級スプラッターホラー映画『武器人間』に登場するクリーチャー、モスキート
そして男の正体は…
「よろしくな…モスキート、俺の名前はハイゼンベルクだ」
ゲーム バイオハザード ヴィレッジのボスキャラ、四貴族の一人『カール・ハイゼンベルク』その人であった。
(あぁ…くそったれ…)
皆が一度は思ったであろう事を殴り書きしました。
絶対あれ武器人間参考にしてるだろうと…