トラックに跳ねられ、気づいたら武器人間にされた件 作:兎の助
頑張って投稿していくので今後ともよろしくお願いします。
モスキートとしてヴィレッジの世界に転生(憑依?)してから数日、慣れない身体の操作に悪戦苦闘しながら彼はこの世界の情報を少しずつ集めていた。
(どうやら今の年代は2011年、俺の記憶が正しければダムネーションで出てきた東スラブ共和国で内戦が起きているはずだな…)
彼は生前…いや前世というべきか、その時から超が付く程のバイオハザードオタクであった。
それ故にバイオ世界の歴史や人物設定も全て調べており、そういう意味では彼にとってはこの世界はまさに夢の世界とも言えるだろう。彼がゾルダートであることを除けば、だが。
(そしてヴィレッジ本編が始まる丁度10年前でもあるな…これからどうするか…)
彼に与えられた部屋の中で悶々と考えていると、扉が開いた。現れたのはある意味では主人とも呼べる男、ハイゼンベルクであった。
「よぉモスキート、調子はどうだ?」
(あぁ、最高だよ…最高にくそったれな状況だ…)
憤慨の念を込めて彼を睨みつけながら、手に持った手帳に文字を書くモスキート。実はこの手帳もハイゼンベルクから貰ったものだ。
この手帳のお陰である程度のコミュニケーションができている。ちなみに言語に関してだが、それはこの体の本来の持ち主が英語圏の人間だった為、言語の記憶を引き継いでいた。
《最高…お前がいなくて外に出れれば…》
だがハイゼンベルクはそんな文を見るとケタケタと笑った。
「そう怒るな。今日はちょっとした提案を持ってきた」
《提案?》
「そうだ。てめぇ、目が覚めてからずっとこの地下空間にいただろ?外に出て太陽の光でも浴びながら運動すりゃ、ちったぁ気晴らしになるんじゃねぇかなと思ってよ」
《外に出れるのか!?》
「外と言っても上の工場の庭だがな。今から行くが、来るか?」
《行く!》
ハイゼンベルクのまさかの提案に二言返事で返答するモスキート。怪しげな笑みを浮かべる彼の表情に気づかないまま、その後ろを付いていった。
▼ ▼ ▼
ハイゼンベルクに連れられてエレベーターに乗り、中庭へと出たモスキートは久しぶりの太陽の光を浴びていた。いつもは分厚い雲に覆われているらしいが、今日に限っては奇跡的に快晴であった。
(あぁ…久しぶりの太陽だ…日の光がこんなに暖かいと感じたのは初めてだなぁ…)
そんな事を考えながら呑気に亀の甲羅干しならぬ、蚊のガスマスク干しをしているモスキート。
そんな時、工場からスピーカー越しに彼の声が響き渡る。
「よぉ、モスキート。久しぶりの太陽はどうだ?その様子じゃ、よほど気持ちいいようだな。よし、ここで一つゲームといこう。」
(ゲームだと?)
「ルールは簡単だ。制限時間いっぱいまで生き延びりゃいい。ただそれだけだ。」
(生き延びる?…まさか!?)
「さぁさぁ!
彼の声で集まったのか、森の中から5体のライカンが突如として現れた。ライカン達はモスキートに向かって威嚇し、咆哮を挙げている。
(くそったれ!!外に出て運動ってこの事かよ!?)
大量のテレビモニターが置かれた部屋の中、そこでハイゼンベルクは椅子に座ってモニターを見ていた。ライカンに囲まれたモスキートの様子を、画面越しに観察する。
「さてと、お手並み拝見といこうか。モスキート…」
(畜生!!やってやる!やってやろうじゃねぇか!!)
ジリジリと近づくライカン達に向かって、彼はドリルを高速回転させて負けじと威嚇した。
それが合図となったのか、ライカン達が一斉に襲い掛かる。
(こんな所で死んで堪るか!かかってこい!!)
▼ ▼ ▼
戦いの初手を決めたのは、モスキートであった。
彼は左腕の槍を飛び掛かってきたライカンに向けて突き刺した。大きく開いた口にねじ込まれた槍は、体を勢いよく突き破る。
(残り4体!!)
左腕に突き刺さったライカンを別のライカンに向けて投げ飛ばす。ぶつけられたライカンは死体で身動きが取れなくなった。
だがライカン達も負けじと攻める。一体が背中に飛び乗り、手にした獲物を勢いよく振るう。が、副腕がそれを受け止め、そのまま地面に叩きつけた。
(てめぇらの攻撃はゲームで既に学んでんだよ!!)
叩きつけたライカンの頭を鋼鉄のブーツで踏み潰すと、その勢いのまま残りの三体に向かって走り出す。
一体目のライカンの胴体に両腕を突き刺す。ジタバタともがいて逃げようとするがしっかりと刺さった槍はそう簡単に抜け出せるようなものではなく、そのまま頭上に掲げて左右に引き裂いた。
返り血を浴びて赤黒く染まった彼の姿に恐怖を感じたのか、背を向けて逃げ出そうとする。だが戦闘によってアドレナリンが脳内に分泌し、興奮状態にある彼が逃がそうとするはずがなかった。
両足と両腕に力を込め、跳躍すると逃げるライカンの背中に飛び乗った。
(死ネ…)
先ほどと同じように頭部を踏み潰すと、残る最後のライカンにとどめを刺すために歩き出す。ライカンは未だに肉の布団から抜け出せずにいた。
彼は副腕でライカンの頭を掴み上げると、高く持ち上げた。そしてドリルを回転させ、勢いよく頭部に突き刺した。
頭蓋骨を突き破り、脳漿をかき混ぜる。血肉が辺りに飛び散り、ライカンが悲鳴を上げるがそれもすぐに止んだ。
そして、中庭には静寂が広がる。
その様子をずっと監視していたハイゼンベルクは、冷や汗を流していた。
(こいつはやべぇもんを生み出しちまったかもしれねぇな…)
▼ ▼ ▼
死体があちらこちらに広がる中庭の真ん中で、モスキートは茫然と立ち尽くしていた。だが先ほどの戦闘でまだ興奮状態は解けていない。
そんな時、工場の扉が重々しい音を立てながら開いた。
その扉の先には鉄槌を肩に乗せ、葉巻を吹かすハイゼンベルクの姿があった。
その姿を見るや否や、モスキートはドリルを回転させ彼に向かって走り出す。
(殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス!!)
だがその回転機構が彼の頭部を貫くことはなかった。
ハイゼンベルクは体内に電力を発生させる器官をもっている。その力を活用して磁力を生み出し、金属を思いのままに動かすことができる。
それ故に金属でできたドリルや手足を持つモスキートを止めることは造作でもなかった。
「おいおい、落ち着けよ」
(落ち着け?落ち着けだと!?てめぇのせいでこっちは死に掛けたんだぞ!!)
「てめぇの言いたいことはわかる。そこで一つ取引だ」
(取引だと?)
「さっきの戦闘を見て、俺はてめぇが気に入った。あの力をミランダにぶつけることが出来れば、俺もてめぇも自由になれる!だからてめぇを助手にする。嫌なら永遠に地下生活だ」
(助手…?)
「助手になれば、地上に出てもいい。それに村の連中や他の貴族共にも紹介してやる。そうすれば昔みたいにとはいかねぇが、ある程度自由な生活を送ることもできる。要望があれば何でも作ってやる。どうだ、乗るか?」
ハイゼンベルクの思わぬ要望に驚いたせいか先ほどまでの興奮は冷め、ドリルの回転もいつの間にか止まっていた。
そこでモスキートはのちに起こる本編でのことを思い出していた。このままいけばどの道イーサン・ウィンターズによってミランダをはじめ、四貴族は全員死ぬ。
だがそうなれば自分もイーサンの手によって倒される可能性が高い。
(そんなのまっぴら御免だ)
それに、ヴィレッジをクリアしたときに抱いた一つの妄想を実現できるチャンスかもしれない。そう思った。
それはイーサンが無事にローズと共に村を脱出するというもう一つのエンディングだ。もしそうなればイーサンを手助けしたとしてクリス達に助けてもらえるかもしれない。
それを考えたモスキートは、彼の取引に乗ることにした。
血にまみれた手帳に、彼はスラスラと文字を書いた。
《分かった、その取引に乗ろう。よろしくな、ハイゼンベルク》
「あぁ、こちらこそ。よろしくな、モスキート」
モスキートとしての彼の人生が、今スタートを切った。
ゾルダート強化発展計画
「モスキート」
ゾルダートの面部にドリル、両腕に槍を装着。
ヘルメットと防具で防御能力も上げたことで、近接戦闘の強化に成功。
ライカンとの戦闘試験実施。
5体のライカンを数分で殺害。戦闘能力の高さは現在ゾルダートの中でトップクラス。
更に思考能力も高く、自我も残っているのが確認された。
現在は助手としてある程度の行動を許可している。
結論:最高傑作。