その決闘者達、異常者につき   作:星詠みステラ

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プロローグ

───デュエルアカデミア。それは、プロデュエリストを養成する施設である。

伝説のデュエリストである海馬瀬人によって創設されたこの学校は南の海に浮かぶ孤島に存在しており、ほぼ全ての時間を懸けてデュエルを学ぶことができ、毎年多くの受験者が募っており、その本気度は他の学校の追随を許さず、倍率は言うまでもなく高い。

 

「───受験番号13番、牙崎偲愛(きざきしのあ)さん。準備はいいですか?」

 

「はいは〜い。いつでもいいですよ〜♪」

 

まぁまぁガッシリとした体格の女性試験官の言葉に飄々とした態度で言葉を返す少女───牙崎偲愛。

 

「ふむ…、君は緊張していないようだね。大半の受験生は緊張しているものが多いんだが…」

 

「緊張?そんなの、今更しても意味ないじゃないですかぁ♪此方はむしろ、筆記試験のほうで緊張しましたよ〜?」

 

「ふむ…そうか。なら、始めようか。」

 

「は〜い、それじゃ、頑張りますかね〜♪」

 

カラカラと笑う少女に試験管は少し違和感のようなものを抱いたが、気の所為だと思いデュエルディスクを展開する。

 

「「デュエル!」」

 

SIKENKAN

4000

SIKENKAN

4000

VS

SINOA

4000

SINOA

4000

 

「これは試験、故に先攻は受験者である君からだ。」

 

「は〜い。それじゃ、ドロー!」

 

試験官の言葉に、笑顔でドローする偲愛。

 

「手札の《ティアラメンツ・シェイレーン》の効果を使いまーす!このカードを特殊召喚してー、手札のモンスターを墓地に送りまーす。そのあとでー、デッキトップのカードを3枚墓地に送りまーす!」

 

《ティアラメンツ・シェイレーン》

☆4/ATK1800

 

「何だあいつ、自分からデッキを破壊するカードを使ってるぞ?」

 

「召喚権使ってないしまあまあ攻撃力高いけど、デメリットがなー。」

 

「ふむ…。」

 

観客は少しざわついているが、試験官は少し難しい顔をしていた。

 

「手札から捨てられた《ティアラメンツ・レイノハート》と、デッキから墓地に送られた《影霊の翼 ウェンディ》の効果を使いまーす!まずはウェンディの効果で、デッキから《シャドール・ビースト》を裏側守備表示でセットしまーす。そしてレイノハートの効果っ!自身を墓地から特殊召喚して、手札のティアラメンツカードを墓地に送りまーす!」

 

《ティアラメンツ・レイノハート》

☆4/DEF2100

 

「え…え?最初に使ったモンスター、デメリット効果だったよね?」

 

「いやはや、流石は上位成績者というだけあるな…。」

 

「ほう…、召喚権を使わず、墓地のカードも使って3体のモンスターを並べるか…。しかも、そのうちの一体は高レベルのモンスター…」

 

「それじゃ、カードを3枚伏せてターンエンドしまーす!」

 

手札を全て使い切り、ターンを終了する偲愛。

 

「試験とはいえ、なかなか楽しめそうだな。私のターン、ドロー!…ふむ。」

 

ドローしたカードをひと目見て、試験官は少し考えるような素振りを見せた後、ドローしたそのカードを発動する。

 

「魔法カード、《増援》を発動!デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体、《切り込み隊長》を手札に加え、召喚!」

 

《切り込み隊長》

☆4/ATK1200

 

「切り込み隊長の効果を発動!それにチェーンして手札の《ウォークライ・ガトス》の効果を発動する!これにより、ガトスを特殊召喚する!」

 

《ウォークライ・ガトス》

☆4/ATK1900

 

「ん〜、切り込みロックですか〜?」

 

「ふっ、私が先攻ならまだ有り得なくもないが…、切り込みロックでは君の盤面を突破するのに攻撃力が足りない。故にこうする。切り込み隊長の効果で特殊召喚するのは、《ウォークライ・ウェント》!」

 

《ウォークライ・ウェント》

☆4/ATK1800

 

「あの試験官も、負けないくらい攻撃力の高いモンスターを並べてきたぞ!?」

 

「これ、試験だよな…?どう見ても手加減無用じゃねえか?」

 

「行くぞ、バトルだ!」

 

「待った~!メインフェイズ終了前にリバースカードオープン、《月の書》!ウォークライ・ウェントを裏側守備表示にしまーす!」

 

「ほう…。なら、ガトスでシェイレーンに攻撃だ!」

 

「その攻撃にチェーンして、《ブービーゲーム》発動!その戦闘でのダメージを0にしま~す!」

 

「甘いな!速攻魔法、《ライバル・アライバル》!」

 

「うえっ!?」

 

凌ぎきったと思った偲愛だったが、試験官の追撃があるとは想像できなかったのか、流石に驚きを隠せなかった。

 

「私は3体のモンスターをリリースし、アドバンス召喚!刮目せよ!《ギルフォード・ザ・ライトニング》!」

 

《ギルフォード・ザ・ライトニング》

☆8/ATK2800

 

「あれは!伝説のデュエリスト、城之内 克也さんがバトルシティで使用したモンスター!?」

 

「凄え!此処でそんな貴重なカードが見れるなんて!」

 

「マンマミーヤ!?ミス・沙保里!やりすぎナノーネ!」

 

デュエルフィールドの外側から、野次馬観戦者とは違った、変わった語尾の慌てた声が聞こえるが、沙保里と呼ばれた試験官はデュエルに集中していて気にも留めていない。

 

「ギルフォード・ザ・ライトニングの召喚時効果発揮!3体のモンスターをリリースしたため、君のモンスターを全て破壊する!ライトニング・サンダー!」

 

「きゃあ!?」

 

ギルフォード・ザ・ライトニングか大剣を振るうと、大剣に蓄積された膨大な雷が放たれ、偲愛のフィールドを焼け野原にする。

 

「くぅ…!破壊された《シャドール・ビースト》の効果で1枚ドローします!あと、自身の効果で特殊召喚したレイノハートは除外されます…!」

 

「追撃だ!ギルフォード・ザ・ライトニングでダイレクトアタック!」

 

「ぎゃん!?」

 

牙崎偲愛

LP4000→1200

 

ギルフォード・ザ・ライトニングの大剣の薙ぎ払いが偲愛の脇腹にクリーンヒットし、ゴロゴロとデュエルフィールドの端まで転がっていった。

 

「カードを一枚伏せ、私のターンは終了だ。」

 

「ぐう…、エンドフェイズ終了前にリバースカード、《サイクロン》を使って伏せカードを破壊…します〜。」

 

「むう。なら、改めてターンを終了する。」

 

(ミラフォを破壊されたか。仕方ない。さて、本来は使うつもりのなかったモンスターまで使わせたんだ。此処からどう巻き返してくる?)

 

試験官のターンが終了し、偲愛にターンが回ってくる。

 

「…このターンで何とかしなきゃ負けですね〜。私のターン、ドロー!…むふっ♪」

 

「…どうやら、良いカードが引けたようだな?」

 

「はい、この盤面を突破するのに考え得る限り、最高のカードが来ましたぁ♪《召喚師アレイスター》を召喚しま〜す!」

 

《召喚師アレイスター》

☆4/ATK1000

 

「攻撃力1000?その攻撃力で、どうやってギルフォード・ザ・ライトニングを突破するんだ?」

 

「ふふっ♪すぐ超えますよ♪召喚師アレイスターの効果を使います!デッキから《召喚魔術》を手札に加え、発動しま〜す!」

 

「《召喚魔術》…?」

 

「知らない人向けに説明しますと〜、このカードはぶっちゃけ言うと《融合》カードで〜す。独自の効果も持っていますけど。」

 

「ほう…、だが、フィールドにアレイスターしかいない状況で、どんな融合モンスターを出すんだ?」

 

「え?出すだけじゃないですよ〜?だって〜、このターンで仕留めちゃうんですから(・・・・・・・・・・・・・・・・・)♪」

 

「…言ったな?ならやってみせるがいい。」

 

「は〜い!じゃあ、《召喚魔術》の効果を発揮しま〜す!このカードは〜、普通の融合モンスターを融合召喚する場合、手札のモンスターを使って融合するんですが、召喚獣っていう融合モンスターを融合召喚する場合、私のフィールドのモンスター及び、お互いの墓地のモンスターを除外して融合素材にしちゃえるんです!」

 

「何っ!?私の墓地のモンスターまでも、融合素材にするだと!?」

 

「はい!というわけで、私のフィールドの《召喚師アレイスター》と、試験官さんの墓地の地属性モンスター、《切り込み隊長》を除外して、融合しま~す!」

 

その言葉に反応するかのように、偲愛の背後に召喚陣が展開し、召喚師アレイスターと試験官の墓地の《切り込み隊長》が吸い込まれていく。

 

「古の禁術に呼び出されし大地の精霊よ、幻の大陸に魂宿して動き出せ!融合召喚!《召喚獣メガラニカ》!」

 

《召喚獣メガラニカ》

☆8/ATK3000

 

召喚陣から現れたのは、デュエルフィールドの天井まで届きうる高さの、巨大な岩石の1つ目モンスター、その背には、大陸のようなものも見える。

 

「青眼の白龍と同じ、攻撃力3000だと!?」

 

「デカァァァァァいッ!説明不要ッ!!」

 

「くっ…!だが、ギルフォード・ザ・ライトニングの攻撃力の差は200!このターンで仕留めるには攻撃力が足りないな!」

 

「安心してください♪墓地の《召喚魔術》の効果を発動!」

 

「墓地で効果を発動するだと!?」

 

「このカードをデッキに戻し、除外されている《召喚師アレイスター》を手札に戻します!そして、装備魔法《ニトロユニット》を《ギルフォード・ザ・ライトニング》に装備!」

 

ギルフォード・ザ・ライトニングの胸に爆弾のような装置が強制的に装備される。

 

「なっ!?このカードは確か、装備モンスターが破壊されたとき、攻撃力のダメージを相手に与えるカード!」

 

「それではバトルフェイズです!メガラニカでギルフォード・ザ・ライトニングに攻撃で〜す!そしてこのとき、手札の《召喚師アレイスター》の効果を、メガラニカを対象として発動しま~す!」

 

「まだあるだと!?」

 

「ええ、このカードは、手札から捨てることで、対象とした融合モンスターの攻撃力を1000ポイント上げることができま〜す!」

 

「何っ!?不味いっ!」 

 

《召喚獣メガラニカ》 ATK3000→4000

 

「やっちゃえ、メガラニカ!ファントムガイアクラッシュ!」

 

ギルフォード・ザ・ライトニングは大剣で受け止めようとするが、メガラニカの巨大な腕に耐えきれず、少しの拮抗の後、押し潰されるようにして破壊された。

 

試験官 LP4000→2800

 

「ギルフォード・ザ・ライトニングが破壊されたので、ニトロユニットの効果が発動しま〜す!」

 

「…お見事。私の負けだな。」

 

試験官の言葉と同時にギルフォード・ザ・ライトニングの胸に装着されていた爆弾装置が起動し、試験官を飲み込むようにして爆発した。

 

試験官 LP2800→0


「いやぁ…、まさか、あの状況でジャストキルされるとは。」

 

「いやいや〜、ギルフォード・ザ・ライトニングが出てきたときは流石に焦りました〜。」

 

「ふっ、これで実技試験は終了だ。結果は追って郵送される。」

 

「は〜い!ありがとうございました〜!失礼しま〜す!」

 

偲愛はそう返事すると、足早にデュエルフィールドから去っていった。観戦者の熱を感じながら、試験官もその場から離れていった。

 

「ミス・沙保里!ちょっと待つノーネ!」

 

試験官が試験会場に併設された待機室に戻る途中、後ろから先程声を荒げていた男───クロノス・デ・メディチが走ってきて声を掛けてくる。

 

「ああ、クロノス教諭。どうしました?」

 

「どうしたもこうしたもないノーネッ!確か君の試験デュエルは、大型モンスターを召喚する予定はなかったはずナノーネ!?」

 

「ああ、それですか。それは私から見て、彼女が積極的に大型モンスターを出すに足りうる実力者だと判断したまでのこと。実際、私はこの試験デッキで本気を見せた上で、負けてしまいましたので、彼女の実力に問題はないかと。」

 

「むう…、そうハッキリ言われたら反論できないノーネ…。」

 

(しかし、あのデュエル、疑問点がある。)

 

クロノスが試験官───勝鬨沙保里の言葉に苦虫を噛み潰したような顔をしてその場を離れていったが、沙保里はデュエルの内容について考えていた。

 

(なぜ彼女は、墓地に《ネクロ・ガードナー》があるのにギルフォード・ザ・ライトニングの攻撃を受けたんだ?彼女のデッキは墓地をある程度肥やして戦うデッキだと判断できる。なのになぜ、自分で投入し、墓地にあると分かっていたはずのカードを使わなかったんだろうか…?それに、此処からは私の勘でしかないが、デュエル前に感じたあの違和感…。始める前は気にも留めていなかったが…、何だろう、何がありそうな予感がするな…。)

 

そう考えながら、沙保里は自分の待機室に戻っていった。


「13番の子、あれ多分演技してるやろ…。てかあの子、試験終わってすぐ直帰しとるし…。」

 

デュエルフィールドで、他の受験者を眺めながら少女は独りごちていた。

 

「いやーそれにしても、おもろい子やったなー。ティアラメンツの墓地に送られた時に使える効果、全く使ってへんもん。ギリギリ目立つか目立たんかってゆーとこ狙ってたなー。まあ最後のインパクトでグレーゾーン超えとったけど。」

 

そう言いながら、彼女は自身のデッキ確認をしながらデュエルフィールドにも目を向ける。その目には、《スキルドレイン》下で出ていた《神獣王バルバロス》を《忍法 超变化の術》で除去しつつ《白竜の忍者》を出し、一気に勝負を決めた受験者が見えた。

 

「お疲れ様でした。これで実技試験は終了です。結果は追って郵送されます。」

 

「ひゃ、ひゃいっ!ありがとうございまみぎっ!」

 

その受験者はとても緊張していたのか、舌を力強く噛んでしまい、涙目で口元を押さえ、礼をしてその場を足早に去っていった。

 

「…あれは素やな。てか、あーゆーの実際にあるんやなー。」

 

デッキの最終確認を終えた少女は、そうポツリと言いながら立ち上がる。

 

「ま、ウチはウチやし、なんとかなるやろ。折角の遊戯王の世界にTS転生したんや。楽しまんとな。行くで相棒!」

 

『───了承した。』

 

そう言いながら少女───相川久玲奈は虚空に話しかけながら試験会場のデュエルフィールドに向かっていった。

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