もう一つのSAO ─ただの生まれ変わりだと思ったら、実はSAOの世界でした─   作:雷訓

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十話 ベータテスト

 多少の残暑と天高く中秋が深まり、世間ではそろそろ行楽地が賑わうだろう時期に、私は自室のエアコンで適温にして外界との環境を完全にシャットアウトしていた。

 そして今は、目の前のヘルメットでもこんなに物々しい雰囲気を纏わないだろうという無機質極まりないものの前に正座している。

 

「ついにこの時が来たわね」

 

 心臓が早鐘のように鳴り響く。私の目の前に置かれているヘッドギア型VRゲーム機、『ナーヴギア』。私が在宅ワークで頑張る一つの目標が去年末に手に入り、そして先日『SAO』のベータテストの応募に見事に当選したのだ。

 嬉しさのあまり、思わずキリトに電話をしてしまったのはちょっと恥ずかしかったけど、コミュニケーションとしては普通のことよね。

 桐ヶ谷家とはあれからも良い関係を築けていて、長期連休の度に直葉と遊びに行ったりしている。驚いたのは、今年の春休み中に遊びに行った時にはまだそこまで実ってはいなかったけど、。身長は同じくらいになっていたわ。

 って事は、胸は『SAO』で囚われている最中に大きくなったのかしら?

 閑話休題。

 

「これでよしっと……」

 

 トイレも済ませて、冷えないようにタオルケットも体にかけておく。

 初期設定も全て終わらせておいたから、準備万端ね。

 

「よし、リンクスタート!」

 

 期待に胸を膨らませてナーヴギアを起動させると、首筋から脳に信号が送られまるで寝落ちするように意識が飛ぶ感覚に襲われる。けれどそれも一瞬のことで、目の前にはベータテストの初期設定画面が現れる。まぁこの辺りは予めパソコンで済ませてあるので、外部スロットに差したメモリーカードからロードして適用させた。こんな所で時間を食うわけにはいかないしね。

 

 

「これでオッケーね」

 

『全ての設定を終了します。ではベータテストではございますが、新たなVRMMORPGをお楽しみください』

 

 無機質な音声が空間に響くと、真っ白な光が私を包み周囲を溶かした。

 そして次に目を開けると……。

 

「…………」

 

 絶景すぎてただただ見渡すだけだった。

 

 今私の目の前には、テレビやマンガ、そしてゲームを通したモニター越しにしか見えれなかった光景が眼前に広がっている。

 緑の大地に、肌に感じる爽やかな風、そして広大な円形の広場……それは前世から見る『SAO』の映像そのままだったからだ。

 

「これがSAO……」

 

 呟いた声に違和感を覚える。

 そうだった、正式サービスまでは設定された声でしか喋れないのよね。こればかりは我慢するしかないわね。私がベータテストに来た本来の目的を忘れちゃいけないわ。

 

「久しぶり、元気にしてた?」

 

「あ、あぁ、久しぶり。まさか紗奈がこのゲームに興味持っていたなんてな」

 

「私だってゲームくらいするわよ。ただ、やっぱり本格的なフルダイブ型って気になるでしょ?」

 

「確かにな!」

 

 一つ目はキリトに会うこと。

 これは単純に、まだキリトが『SAO』や茅場晶彦に興味を持ってくれているのかと言う確認のためなだけ。一応夏や冬に定期的に会いに行ったり、連絡は取り合ってるから様子は伺えるけどね。

 引っ越しの別れ際の一件以来、ちょっとよそよそしい感じにはなっちゃったけどね。あれは、思い出すだけで今もかなり恥ずかしいけど……。

 

 

 

 

「よっと、だいぶ慣れたわね……」

 

 目の前には私に倒された猪型のモンスターが、青い粒子を纏って消滅していく。なんて事はない、第一層のフィールドにいる雑魚モンスターだ。キリト曰く、スライム相当のモンスターだとか。

 いや、ぶっちゃけ国民的ゲームのスライムの方がまだ見た目が愛らしいわよ。こんな突進してくるようなモンスターと一括りは酷いと思うわ。

 そんなことを考えながら、私はフィールドにて一人でモンスターを相手にしている。ちなみにキリトとは挨拶と少しの雑談で別れてしまった。って言うか、たまに見る当選した人たちもほとんどの人が一人でどこかへ消えて行く。パーティーとか組む気ないのかしら?

 

「じゃあこのまま私も奥へ……」

 

 で、二つ目の目的は、敵に慣れておくことね。

 そう言う意味では、初めに猪型のモンスターはまだ現実にいる姿だから慣れやすいわね。茅場晶彦はそういう所にも配慮していたのかしら?

 猪型や狼型のモンスターが複数現れ、何とか一対一に持ち込み勝利する。体は思った以上に動く。設定上、リアルとほぼ同じ背格好で設定してあるから正式サービスの時でも問題はなさそう。

 

 そして三つ目のの目的は、武器やスキルに慣れること。

 ぶっちゃけ私はゲームのセンスは皆無だと思っているわ。それこそ、小学生時代にキリト達とやったゲームでは、殆ど勝てた試しがないくらいよ。

 けれど、逆に体を動かすことに関しては勝っている。だからこのベータテスト中に本当の自分体の様に動かせて、更に武器やスキルの扱いを徹底的に慣れる必要がある。それでやっと隣に立てるくらいだと思っているわ。

 さぁ、狩まくるわよ!




 やっとベータテストまで辿り着きました。
 いつの間にか、たくさんのお気にりやしおりなどを挟んでいただきまして嬉しく思います。また、初めての感想もいただきまして大変励みになります。
 今後も不定期での投稿となりますが、感想や評価など頂けましたら今後の励みとなりますので、よろしくお願いします。

主人公紗奈の武器

  • 執筆者の思い描いたように書く
  • 思い切って変更もありかと
  • 別にどうでもいい
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