もう一つのSAO ─ただの生まれ変わりだと思ったら、実はSAOの世界でした─   作:雷訓

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お待たせしている人がいるのかわかりませんが、次話投稿します。


十一話 十一月六日、午後十二時五十分

 十一月六日、午後十二時五十分。

 私はベータテストの時と同じように部屋の環境を整えてベッドに横たわる。今日は言わずもがな、『SAO』の正式サービスの日ね。

 この日の為に私はお金を貯めたり、キリトや直葉と仲良くなったりと色々と頑張ってきたわ。もちろん当初は打算もあったけど、今では本心で仲良くなってよかったと思える七年間でもあるわ。

 ナーヴギアを被ってその時を今かと待つ私の頬に、一筋の涙がこぼれてきた。おかしいわね、泣くつもりなんてなかったのに。

 さっきも言った様に死ぬつもりなんてこれっぽっちも無いわ。その為にベータテストの仮想空間の中で、感覚を磨いてきたんだから。

 ならこの涙は……あぁそうか……。

 

「お父さん、お母さん、ごめんなさい……必ず帰ってきます」

 

 これは私の本能ね。せっかく産んでもらえたのに、自分からお金を貯めてまで死地へ向かう中学生がどこにいるのかしら? こんな酷い親不孝なんてきっと私くらいのものね。

 無事に帰ったらちゃんと話そう、今までの事とこれからの事も。

 そう誓って涙を拭かずに私は呟いた。

 

「リンクスタート」

 

 

 

 

 

 目を開けると、ベータテストの時と同じく見慣れた広場に立っていた。私の他にも続々とログインしてきた人たちがその光景に感動を口にしている。

 もちろん私もその一人。けれど、ベータテストの時なんかより高揚感が半端ないわね。

 でも、いつまでも感動している場合じゃないわ。

 

「一応確認…………やっぱりないわね」

 

 私は右手を縦に振ってメニューからログアウトを探したけど、案の定見つからなかった。これには落胆はないわ。だって予定されてた事なんだから。

 さて、それよりやる事があるわ。私は広場から出て、露店を見ていたクラインがキリトを追うのを見届けてからフィールドに出た。

 フィールドに出ると、ログインした人たちが思い思いに体を動かしたり、ソードスキルを試したりしていた。

 呑気なものね……なんて思っても、こればかりはしょうがないわね。逆に『デスゲームが始まります』なんて言おうものなら、私が変人扱いされかねないわ。

 私はフィールドに出る前に買っておいたダガーとフードマントを装備すると、そのまま街道を走り出す。目の前にポップされた猪型のモンスター、フレンジーボアは私を見ても知らんぷりだ。

 まぁ第一層の始まりの街の周辺のモンスターだし、パッシブなのは当たり前か。ならばと、走ったままの勢いでダガーを抜いて丸腰の背中を振り抜いて切り裂く。

 

「よし、いい感じ」

 

 青い粒子となって消えたモンスターを見送って、自分の手応えに満足する。

 目指すのは最初の村……ではなく、その奥の森だ。そこに私の欲しい武器があるのよね。そのクエスト自体はそこまで難しかったわけじゃないのはベータテストの時にわかってるんだけど、怖いのは正式サービスとなった今はどう変わったのかなのよね。

 ボスの挙動が変わっているのはディアベルの犠牲をもって知らされるわけなんだけど、フィールドの細部まではわからない。なら、まだ混乱やリソースの奪い合いが始まる前に、武器や防具などは良いものを揃えておきたいってわけ。

 幸い、今はまだこの森の中までは他のプレイヤーは来ていない。ベータテスターの人たちが来ても良さそうだと思ったけど、運良く被らなかったみたいね。

 いえ、訂正。来てたみたいね……。

 最初の村に入ってクエストを受けようと思ったら、村の一番奥にある建物からプレイヤーらしき人が出て来た。私は思わず近くの民家の陰に隠れて観察する。右手には片手用直剣、左手にはバックラー。完全に初期装備ね。私がダガーを買う一手間を取ってたのに対して、あの人はそのまま街を出たってことね。って事はベータテスターかしら?

 なんて事を考えていると、そのプレイヤーはそのまま村を出て森へ入って行ってしまった。まぁあの人もスタートダッシュに成功したい人なのかしらね。

 それを見送って、私はさっきの人とは別の建物へ入る。この建物は表は武器屋なんだけど、表から入ると女の人が対応して、裏の勝手口から入ると鍛冶屋の主人が直接話しかけてくれる。

 

「おう、こんな辺鄙な村に何のようだ? そうだ、あんたさえ良ければちょっとお使いを頼まれちゃくんねぇか?」

 

「えぇ良いですよ」

 

「おぉ頼まれてくれるか。実はな──」

 

 これでクエストを開始。内容は、村の奥の中に住んでいる。依頼主の父親の様子を見てきて欲しいって言う内容。まぁなんて事はない典型的なお使い系ね。

 で、結局入って十分くらいもしない所で家の脇の沢で釣りに夢中になっているんだけど……。

 

 

 

 

「そうか、相変わらずだな親父は。ありがとうよ、お礼に店のカウンターに並んでいる武器をひとつ譲ってやるよ」

 

「そう? ありがとうございます」

 

 そう言って私はお店の面に回って奥さんから武器を譲ってもらう。

 で、このクエストを繰り返すこと二十数回目……。

 

「ん、これが欲しかったのよね。かなり早いうちに」

 

 このクエスト、お礼に貰える武器が何種類かあるんだけど、その殆どが初期装備の武器ばかりなのよね。その代わり、繰り返し受けれるクエストだから、恐らくデスゲームが始まればこれだけで日銭が稼げるんじゃないかしら?

 けれど私がやりたいのは日銭の方じゃなくて、とある武器の方。

 

「これで、結構なアドバンテージが取れるかな。よろしくね、アニールダガー」

 

 私が狙っていたのはこの武器。第一層の後半あたりで手に入る筈のアニール系の武器で、性能はそこそこいいんだけど、手に入るクエストがちょっとだけ面倒なのよね。

 そんな中、実は安全に手に入る唯一のクエストがこれだったりする。このクエスト、繰り返し受けれて報酬も完全ランダムなんだけど、十回目以降の報酬にアニール系の武器も報酬のラインナップに入ってくる。けれど、その確率が何とコンマ数パーセント。しかもアニールダガーがその報酬テーブルに出てくるのはアニール系から更にランダムで一つだけだから中々に辛い作業よね。

 けれど、この状況で早々と入手できたのは何とも嬉しいわ。

 

「うん、良い感じ」

 

 さっそく装備してから手に持って何度か振り回す。

 仮想空間なのに手に持った感触と重みは、改めて私を『SAO』へ戻らせたと実感させるに足りる感触だった。

 村の食堂へ入って少し小休止がてらに時計を確認すると、時刻は既に十五時を回っていた。この頃になると、この村にもちらほらプレイヤーが入って来ている。色々村人に話しかけたりうろうろしている所を見ると、後発組のようね。

 そう言えば、この時間のキリトはまだクラインにコツを教えている最中ね。なら私はもう一踏ん張りしてレベリングしようかしらね。

 良い武器も手に入ったし、安全圏内で残り二時間強もあればそこそこのレベルくらいにはなるかしら? それでベータテストとの差異がわかれば十分よね。

 じゃあ一丁張り切ってやってみますか!

主人公紗奈の武器

  • 執筆者の思い描いたように書く
  • 思い切って変更もありかと
  • 別にどうでもいい
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