もう一つのSAO ─ただの生まれ変わりだと思ったら、実はSAOの世界でした─ 作:雷訓
「あ、そっちの街道は行かない方がいいですよ」
調査から戻ってきた私は、街の入り口でたむろしている五人組のパーティに話しかけた。
どうも一人の少女が外に出る勇気がなくて、残りの四人が説得しているようね。まぁ無理もないわね、これが普通のゲームだったなら幾らでも死に戻りしてやり直せるのに、そうもいかないものね。
「あの、それはどう言う意味ですか?」
「こっちの街道は少し奥に行くと、リトルネペントって言う少し強めの敵が出るんです。そいつを相手にするには、その初期装備では危ないですよ」
棍を持った男の人が歩み寄って聞いてきたので、私は自分の来た道の危険性を教えてあげた。
「あ、あぶなぁ! このまま調子に乗って進んで行ったら死ぬところだったじゃん! ヒュー、始まったばかりで死にたくないしね!」
「本当だぜ、リーダーもう少し街で情報集めた方がいいんじゃないか?」
「そ、そうよ、もっと情報を集めてから外に出ようよ!」
どうやら取り敢えずフィールドに出てみようって感じのノリだけで、行こうとしていたようね。
デスゲームになった実感がないのか、他のメンバーはまだ多少軽いノリだけど、私の忠告を素直に聞いてくれそうね。
「その方がいいわ、ちなみに最初の広場の隅っこにいる男のNPCに話しかけると、この街や周辺の事を教えてくれますよ」
「なるほど、何から何までありがとうございます。よし皆、まずは広場へ戻って情報を集めるぞ!」
リーダーと呼ばれた人が私にお礼を言うと、メンバーを引き連れて広場の方へ戻るように歩いて行った。
こうやって、目に留まる人だけでも助けれたのはちょっと嬉しいわね。
「あ、あの……」
さて、私も自分の用を済まさないと、と思って歩き始めたら背中からさっきの少女の声がかかった。何か忘れ物かしら?
「どうしました、何か聞き忘れですか?」
「いえ、本当にありがとうございました。皆が勢いだけで出てみようなんて言うから、私不安だったんです。そんな時に貴女からのアドバイスのおかげで皆も思いとどまる事ができました」
まぁ会話を聞いてると、ノリと勢いって感じは丸わかりだったしね。
それも相まって、この少女はメンバーの中でも引っ込み思案な上に、皆の意見に押されてしまったのね。
「そう、でも貴女もちゃんと意見を言えれば、メンバーも聞いてくれるんじゃないかしら?」
「そ、そうでしょうか?」
「えぇ、だって他人の私の意見でもリーダーは耳を傾けてくれたんだから、大丈夫ですよ」
「そ、そうですよね」
「えぇ、リーダーもしっかりしてそうだし、メンバーもちゃんと着いて来てくれるんだから、いい仲間じゃないですか」
「は、はい。そうですよね、次からもう少しちゃんと言ってみるようにします」
私を見てはっきりと返事をする少女の目は、さっきより幾分か力を増したように見えた。私も人に意見を言えるような立場ではないけど、それで元気になれるなら言った甲斐があるってものよね。
「あ、私行きますね。申し遅れました、私の名前はサチって言います。次に会えた時はお礼をさせてくださいね、では!」
仲間に呼ばれた少女は、自分の言いたい事だけど言って走って行ってしまった。
そうか、どこかで見た事があると思えば、あれがサチなのね。と言う事は、このまま外に出たとしても無事に戻って来れたのかしら? いや、私と言う存在のせいでどこかに違いを生んだとすれば、無視しないで良かったのかもしれないわ。
「ベータテストで散々ソロで駆けずり回っていたとは思えない様な殊勝な行動ジャナイカ?」
「⁉︎」
サチたちの背中を見送った私に傍から聞き覚えのある声が私にかかる。この声の主こそ私の捜していた人の声だ。
ちょっとびっくりしたけど、向こうから来てくれるなんて探す手間は省けたわね。
「イヨッ! 俺っちを捜していたカ?」
「えぇベストタイミングですけど、驚かせないでください。アルゴさん」
「スマン、スマン。驚かすつもりはなかったんだけどナ。何やら俺っちを捜している気配がしたもんでナ。元気にしてたカ、リサッチ」
情報屋のアルゴ。本編では、必要なら自分の情報ですら売る人。第一層の時点ではまだ鼠の髭もないし、情報屋としての知名度はないから通り名はないわ。
でも、ベータテスト経験者であり、その知識を活かして情報屋として発信していく事になるわ。
「えぇもちろんです、ベータテスト以来ですね」
「あぁ、そうだナ。で、俺っちに会いたがっていたって事でオッケー?」
そう言いながら、アルゴは屈託のない笑顔で返してきた。で、その指で作った丸は、お金の意味じゃないわよね?
主人公紗奈の武器
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執筆者の思い描いたように書く
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思い切って変更もありかと
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別にどうでもいい