もう一つのSAO ─ただの生まれ変わりだと思ったら、実はSAOの世界でした─ 作:雷訓
急げ急げ急げ急げ急げ……。
アルゴさんと再会してからおよそ一ヶ月後、私はフィールドを全力疾走していた。
街道脇から出てくるモンスターを無視し、目の前でポップし立ち塞がる奴に対してはソードスキルで一刀両断で斬り伏せた。
(見えた!)
目的地である街に到着するも私は速度を緩めず、その一番奥にある広場に向かって突き進むと、ようやく足を止める事ができた。どうやら間に合った様ね。
そう、今日は待ちに待った第一層のボス攻略会議の日。とあるプレイヤーが迷宮区の奥でボス部屋を見つけたと言うから街で会議をして、ついでに参加者を募ると言う流れね。
で、そんな大事な日に私は遅刻をしてしまった。別に好き好んで遅刻をしたわけじゃないわ。と言うのも、ちょうどこの日にアルゴさんとの定期的なデータのやり取りをする日が重なっちゃったのよ。
そこで無駄話に興じながらデータ交換をしている最中に、『そう言えば、今日遂にボス攻略会議だナ! リサっちは参加しないのカ?』の一言で全力疾走する羽目になったのよ。
要するに自業自得ね。
っと、モノローグが過ぎたわね。
見ると会議場の真ん中でディアベルが喋っている、会話の内容からするとそろそろ終わりそうな感じね。
最前列に付近にはエギルもいるし、その近くにはドリアの頭のような、何て名前だけ……そうキバオウもいるわ。
その様子を見る限り、無事に難所は抜けたようね。それを確認した私は胸をなでおろしながら、こっそり一番上の方の席に座って待つ事にする。
その数段下にはキリトの背中があり、そこから少し離れた所にフードを被った少女が座っていた。もう一人の方は、顔は見えないけどアスナよね。よしよし、二人とも無事で何よりだわ。
しかし、ベータテスト以来私と絡んでいないせいか、全くもってキリトは私に気づかない。まぁベータテストの時はアバターの顔を少し変えていたし、しょうがないのかな?
一応アルゴさんにはキリトに、『幼馴染は探さなくていいのカ?』とわざと話題を振ってもらうようにお願いしていたんだけど、今のところはそんな素振りは全く見られないわね。
私と会わないうちに愛想が悪くなったのかしら? いえ、あれは元からね。なら自分から接触するしか無いようね。
おあつらえ向きにディアベルの話も終わって班作りに入る様だし、ちょっと驚かせてあげようじゃないの。
そう思ってキリトの背後にそっと近づく。当のキリトは、ディアベルの指示を聞いて他のパーティー入れないかとあたふたしている。
よし、ここだ! と思った瞬間……
「わっ!」
「ひぃっ⁉︎⁉︎」
完璧だと思っていた作戦がばれていたと思わず、私の方が情けない悲鳴をあげてしまった。
「……え、え? バレてた?」
「まぁな、これだけの大事な会議に遅れてくるなんて奴は早々いるもんじゃないよ。そんなのがハイディングスキルも使わずに背後に回るんだからそりゃ怪しいだろ」
そ、そんなところからバレてたんだ。それはキリトもバッチリよね。むしろ私が踊らされてたってことね。
「むぅ、それならそれって声かけてくれてもよかったじゃない。で、パーティーは組んでくれるのかしら?」
「まぁ、それはお互い様ってことで。パーティーはもちろんオッケーだ」
確かに先に仕掛けようとした私も私だから、お互い様ってところで落とし所を持っていくとするわ。さて、ベータテスト以来の再開にお互い握手をする私はもう一つやる事があるわ。
「そこの貴女、私たちのパーティーに入りませんか? ボス攻略は基本的にレイド戦だからソロは無理ですよ?」
「…………そう言う事なら」
フードを被った少女、アスナに声をかける。確かゲーム初心者だからレイド戦やパーティー戦も初めてって話だから、一から教えなきゃいけないのよね。
まぁその辺りは、キリトに丸投げしておきましょう。
「ま、あぶれ組は気楽にやりましょ」
「……あぶれてない。周りが皆んな、お仲間同士だったから遠慮しただけ……」
「そうなのですか?」
「そうよ」
硬意地張らず気楽にと言った感じに握手を求めたらスルーされてしまったわ。ま、まぁ本人がそう言うなら、突っ込むのはやめておくわ。
それでもボス戦でソロってベータテストの時は好き勝手してた気がするけど、デスゲームの今となっては自殺行為ね。
「キリト」
「どうした紗奈……ってごめん、プレイヤーネームわかんねぇや」
「そう言えば名乗ってなかったわね、『リサ』よ。後でフレンド送っておくわ」
「わかった」
そう言いながらコンソールを出して、フレンドリストを確認する。ベータテストの時フレンドは全てリセットされたから、また一からやり直しなのよね。
と言っても、ベータのフレンドは片手で余ってたから今回はどうなることやら。ちなみに今のところは、アルゴさんだけよ。
「で、結局パーティーは三人だけ?」
「あぁ、パーティーとしては最小に近い数字だな」
「そうね、この分じゃ取り巻きしか相手にさせて貰えなさそうね」
「だな……もう一人いれば、スイッチやPOTローテがやりやすくなるんだけどな。無いものねだりは出来ないから、三人でできる事を……」
「ちょっと待って」
私とキリトがあれこれと話している最中、アスナが会話に入ってきた。っと言うより中断させてきた。
何か思う事があったのかと考えを巡らせた瞬間、予想通りの言葉が返ってきた。
「スイッチとかPOTローテって何? 二人だけで話してないで、私にも教えて」
やっぱりだわ、アスナはこの一ヶ月一人で黙々と狩り続けてレベルを上げてきたのね。その集中力には賞賛するものがあるけど、ちょっと知識が偏りすぎじゃ無いかしら?
「もちろん教えます。って言うか、この一か月間そういった情報を仕入れないでここに来たのが凄いです。まぁ、それらがわからないとボス戦に影響が出ますので、明日は迷宮区に入るまでに経験を積んでおきます」
そう言って私はアスナの方に向き直る。キリトもマジかって顔をしている。いや、私やキリトだってそんなに経験ないでしょ。ベータテストの時だって、ボス戦以外はほとんどソロだったじゃない。
「経験ないとダメなの?」
「ダメって事はないですが、相手の武器を跳ね上げた瞬間に待機組とスイッチ、要するに交代して追撃するのです。こればかりは体験してもらわないと、いざ実戦の時に役に立たないじゃ済まされませんので」
「…………」
アスナが何も知らずにここまでやって来たのは知ってるけど、多少なりとも仕入れようとは思わなかったのかしら?
この頃はちょっとやさぐれているとは言え、向こう見ずが過ぎるわね。
「ま、まぁまぁ明日ボスのいるところまでに雑魚が出るから、その時に練習しようか。今日のところは親睦を深めて何か美味しいものを……」
私の厳しい視線にキリトが耐えかねたのか、アスナと私の間に入ってきて仲裁してきた。とは言え私が一方的に話しているだけなんだけど。
当のアスナ自身もそのあたりは自覚があるのか、言い返さずに私を見ているだけだった。
「そうね、私も別に厳しいことを言いたいわけじゃないわ。だからキリトの誘いに乗ってあげる。もちろん女の子二人を誘ったんだから奢りよね?」
「え……?」
「私は別に……」
「良いのよ、明日のボス戦の前に親睦を深めておくのは悪くないでしょ?」
「キリトもそのくらいの甲斐性は見せておかないとねぇ」
「マジか……」
私のいたずらっぽい笑みに、キリトは苦笑いをする。それでも嫌とは言わないその性格は、昔からよね。
「この街の食堂って、結構おいしいシチューがあるのよ。そこにしましょう」
「いや、それって結構高いやつだよな?」
私は二人を連れて先頭を歩く。
アルゴさんが出している攻略本も一定の成果を出しているようで、第一層での死者数も緩やかながらも減少傾向にある。
これでコツなんかを掴んでくれたら、この先の有望株なんかが育ったら嬉しいわね。
そんな感じに先のことに胸を膨らまし、タダ飯に舌鼓を打ってこの日の夜は更けていった。
感想や評価などいただけたら、うれしく思います。
主人公紗奈の武器
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執筆者の思い描いたように書く
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思い切って変更もありかと
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別にどうでもいい