もう一つのSAO ─ただの生まれ変わりだと思ったら、実はSAOの世界でした─   作:雷訓

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十九話 密談

「ようリサっち、元気にしてたカ?」

 

「アルゴさんも元気で何よりです」

 

「そう畏るなヨ、俺っちとリサっちの仲じゃないカ」

 

 場所は、とある主街区の食堂の片隅。その入り口から一番遠く、かつ見えにくい場所となっていて隠れて落ち合うにはもってこいの場所。

 そんな場所にも関わらず陽気な声音で入ってきたのは、ベータテストの時からお世話になっているアルゴだ。

 店内に入ってきた彼女は見渡すことなく真っ直ぐこの場所まで来ると、フードを被っている私の顔を確認することなく名前を呼んだ。

 

「じゃあこれからは呼び捨てでもいいのですか?」

 

「全然構わないゾ? って言うカ、喋り方も普通でいいゾ」

 

 そうは言われても、アルゴの大人びた雰囲気でついつい敬語で話しちゃうのよね。アルゴのそう言うムーブに私が流されているのか。それとも、私の中に妹属性でも眠っていて、それが刺激されているのか。

 とりあえず、本人がそれでいいって言うなら思い切って話しかけてみようかな。

 

「じゃ、じゃあアル……ゴ? これ、第五層のフィールドマップと周辺の村のクエストを纏めたデータ。毎度で申し訳ないけど、ベータテストの時との差異の部分は、もう一度精査してみてくれ……る?」

 

「ニシシ、オッケーオッケー! いつもなガラ仕事が早いナ! んじゃ、何か頼みながラ少し待っててくれよナ!」

 

 私の言い慣れない言葉遣いに、はにかみながらアルゴはデータを受け取ってくれた。私の気恥ずかしさを知りつつも、アルゴはデータを確認していつもの流れで精査を始める。

 これはアルゴならではの気の使い方よね。無駄に揶揄うことなく自然に受け止めてくれて、あたかも以前からそれが当たり前のように振る舞ってくれる。

 だからこれからも気兼ねなく付き合っていける自信が湧くわ。

 

「いやいや十分だヨ、現時点で俺っちたちガ持ち寄れる最善の情報だと思うゾ」

 

「なら良かった」

 

 アルゴの太鼓判に、私は一安心と胸を撫で下ろす。

 ここ数日、フィールドを駆け巡ってマップを埋めながらクエストもこなしてたんだけど、やりきれない部分はベータテストの時の記憶を引っ張り出してるのもあったから、少し心配してたのよね。

 そう言う意味では、ダブルチェックの意味も込めてアルゴに見てもらえて良かったわ。

 満足げなアルゴの顔を見ながら肩の力を抜き、目の前に用意されたサンドイッチと紅茶を楽しんでいると、アルゴの目が細く光った。

 

「さて、本題に入ろうカ……」

 

 そう言ったアルゴの声音は低く、そして私にしか聞こえない位の声量だ。

 私はその雰囲気に呑まれかけながらも、何とか頷くいた。

 

「リサっちの勘は当たりダ……ここ二、三週間、リサっちの周囲を嗅ぎ回っているやつがいるナ。その嗅ぎ回っている奴自体ハ、リサっちと面識はない」

 

「って事は……」

 

「依頼者がいるってことダ」

 

「……」

 

 実は第二層以降、私は最前線で狩りをしつつ情報を集めてはアルゴと一緒に攻略本を作っていたけど、ボス攻略には参加していないのよね。

 本当はそれに参加すればキリトと会えるのはわかっていたんだけど、第一層での事が頭から離れずにモヤモヤしていたのもあって、顔を出しにくいのよ。

 まぁキリトの事は気になるけど、恐らく死なないだろうから保留とするわ。それに第三層でたまたま出会ったエギルにキリトの事を聞いたら、「黒ずくめ(ブラッキー)は相変わらずだ」と言ってたから大丈夫よね。

 けど、問題はここから。

 基本私はソロで活動していて、周りからは変わり者だと奇異の目で見られることも多い中、そう言う視線とは明らかに違うものが混じっている時があるのよね。

 初めは変質者か? とも思ったけど、それとは違う。なんだろう、値踏みでもない、殺意でもない、すごく不気味な感覚がしたわ。

 それもあってか、私の違和感を感じ取ったアルゴが気にかけてくれて、調査に踏み切ってくれたわ。

 

「ま、最前線で動くビジネスパートナーが、いなくなるのは困るからナ!」

 

「そうよね……って、もう少しマシな言い方ないの?」

 

「そう言うなヨ。ビジネスパートナーって言うのも本音だけド、気安い仲が死んでほくないってのもあるんだゼ?」

 

 ベータテスト以来の仲間をそんな風に見てたのかと少し憤慨して見せると、アルゴは少しおちゃらけた感じに返してくる。

 何だか凄く微妙な言い回しだけど、アルゴなりに私に気を遣って少しふざけてくれてくれるのかしら?

 

「まぁそう言うことにしておくわ。それで、その依頼主はわかる?」

 

「スマナイがそれはまだだナ。けれど、ある程度の情報を精査した上での結論なラ出せるゾ?」

 

「なら、それを聞かせてもらっていい?」

 

 私がそう言うと、アルゴが机越しに顔を寄せてくる。他のプレイヤーに聞かせたくないのだろう、まだ始まったばかりの浅い階層で聞き耳スキルがそう高い人いないと思うけど、まぁ用心に越した事はないわね。

 アルゴの愛嬌のある顔が眼前に迫るのをドギマギしながら次に出てくるのを待つと、ある程度予想出来る答えが返ってきた。

 

「恐らく依頼主はディアベル。アイツはあれ以来ボス攻略には出てないんだヨ。情報によるト、第二層でのボス攻略の時は、部屋にこもっていたガ。心配して時々様子を見にきていたプレイヤーがいてナ、ある時忽然といなくなったそうダ。それから暫く見なかったらしいんだけどナ、つい三日前ニ目撃情報があったそうダ」

 

 そんな事になっていたのね、まぁラストアタックボーナスをキリトに取られた腹いせなのか、追いやる事をした人の当然の報いってやつよ。

 それでもし本当に依頼主がディアベルだとしたら、とんだ逆恨みよね。

 

「前線に復帰、って訳じゃなさそうね」

 

「そうだったラどれだけ良かったって話になるんだけどナ!」

 

 ですよねー。だって今、アルゴと話しているここは第五層の主街区カルルインで、この階層が解放されたのってつい三日前なのよね。

 その三日前に目撃情報があったとして、真面目に前線復帰するとしたら前線組に何かしら変化があってもおかしくないけ。

 でも、後を追いかけるように登ってきた私の耳には何も入ってこなかったわ。

 

「んー……実害が出てからじゃ遅いけど、今のところ何もないから気をつける位しか出来ないのがもどかしいわね」

 

「そうだナ、俺っちも色々探ってみるかラ、フィールドでは気をつけロ?」

 

 私は、残った紅茶を片付けるとアルゴと別れて店を出た。

 アルゴのことは信用はしているけど、必要なら自身の情報すらも売る人だからね。まさかとは思うけど……そう思って顔を動かさずに視線だけで周囲を観察するけど、今はそれらしき人は見当たらないわね。

 それにあの人だって、犯罪を犯そうとするかもしれない人に情報は売らないでしょ。

 

「信用してるわよ、アルゴ……」

 

 そう独りごちながら私は、もう一度情報集めの為に主街区を後にした。

主人公紗奈の武器

  • 執筆者の思い描いたように書く
  • 思い切って変更もありかと
  • 別にどうでもいい
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