もう一つのSAO ─ただの生まれ変わりだと思ったら、実はSAOの世界でした─   作:雷訓

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六話

 五年生、上級生の仲間入りを果たし、僅かながらでも責任と言うものが発生し始める学年だ。

 委員会では副委員長、部活では副部長など補佐を任せられる立場につく人もちらほら出始める学年でもある。

 そんな中、私はこの学年で初めて一つの責任者という立場につくことになってしまった。

 

「学級委員長は、金森さんがいいと思います!」

 

 新学期の初日、毎年恒例の学級委員選抜にて私を推薦したのは、三・四年と唯一一緒に進級してきたクラスメイトの子だった。彼女の言い分は私の面倒見がいいことと、周りをまとめるのが上手だからと言う事だ。

 私自身そう言った意識でやって来た自覚はないんだけど、転生前と合わせての年齢的に周りの子達の行動が危なっかしく見えて色々動いているから、結果的にそう見られていたのね。

 で、この学級委員と言う役職は立候補がいないのがお約束で、先生に「なら金森さんにお願いしていいかしら」などと断れもしないお願いをされて任されることとなったわ。

 そこからはこれからのお約束の委員長に丸投げ状態で進行が開始され、副委員長や書記、それから各委員会を決めることとなった。

 

「はい、次は各委員会を決めます。書記はこの委員会全て黒板に書いてください。……では、まずは順に立候補を一通り挙げます」

 

 こうして私の新学期初日は慌ただしく過ぎていった。

 

「それは災難と言うか何と言うか」

 

「災難って言うか、これは人災じゃないかな?」

 

「でも紗奈ちゃんなら大丈夫でしょ」

 

「他人事だと思って……」

 

 帰り道、今年度もキリトとはクラスが離れてしまったけど仲良く一緒に下校している。今日はキリトたちのお母さんにケーキをご馳走すると呼ばれているため寄り道をする事になっていた。

 実は去年の一件依頼、翠さんから全面的に信頼され、家にお邪魔するとほぼ顔パスのように上がらせてもらえる様になっていた。

 

「おじゃまします!」

 

「紗奈ちゃんいらっしゃい。二人とも、手を洗ってらっしゃい」

 

「あ、私お手伝いします」

 

「じゃあ僕は二階に行ってるから、呼んでくれる?」

 

「ん、わかった。呼ぶからちゃんと来てね」

 

 家に着いて翠さんの手伝いをする為、一階に残る私とは対照的にキリトはそのまま二階へ上がってしまった。

 キリトと別のクラスになって丸っと二年以上経ったけど、もはや立派な陰キャね。そんなキリトに対して一つ大きな悩みが桐ヶ谷家にはあった。

 それは、キリトが剣道を辞める前後くらいから、家族によそよそしくなってしまったからであった。それは両親だけでなく、直葉に対してもだ。

 翠さんはその原因をキリト本人から聞いているが私には言わなかった。まぁ家族の問題なんだから私には言わないんだろうけど、それでもケーキを切り分けている翠さんの姿は私に何か言いたそうな顔をしているのがわかった。

 なら私から言える様に仕向けてみようかしら。

 

「おばさん、ひょっとして何か悩み事があるんですか?」

 

「⁉︎」

 

 私の一言にハッとした表情を浮かべると、必死に取り繕っていた表情を崩して私に向き直ってくれた。

 

「紗奈ちゃんには本当に驚かされてばかりね。初めて会った時といい、去年の直葉の時といい。何だか同年代の人と話している感覚になるわ。あ、ごめんね、こんなおばさんと一緒なんて言われたら困るわよね」

 

「いえ、おばさんは素敵な人だから光栄です。でも最近元気がない様ですので、何かあったのかと……もし私の様な小学生でも打ち明けてくださるのなら何かの助けになるかと……」

 

「本当にこの子は……そうね、紗奈ちゃんになら話してもいいかしら……」

 

 そう言うと、翠さんはぽつりぽつりとキリトのことを話し始めた。キリトが自身でネットで本当の家族でないことを知ってしまったこと、それでキリトに自分の生い立ちを話したこと。そしてそれ以来キリトがどこかよそよそしくなってしまった事などを話してくれた。

 

「ここ暫くの和人君のよそよそしさはそれが原因なんですね。……ですが、少し安心しました」

 

「安心……? って何かな? おばさんに教えてくれる?」

 

「和人君は確かにショックを受けたと思います。恐らくですが、それで今まで産みの親だと思っていた人や本当の兄妹だと思っていた人との距離感や家族の在り方などに混乱しているんだと思います」

 

「そ、そうなのかしら……」

 

 私の言葉はあくまで小説やアニメで見た限りの考察だ。それでも目の前で悩む翠さんの力になりたいと思い言葉を続けた。

 

「こればかりは、そう言う立ち位置に置かれた人でないと本当の心理は計りかねます。でも、私はある意味それでも和人君らしいなと思いました」

 

「和人らしい?」

 

「だってそうじゃないですか、その真実を知っても荒れる事もなくよそよそしくなっても家族であろうと頑張ってくれるんですもん。グレないで、頑張って学校行ってくれるだけ凄いと私は思いますよ?」

 

 そう、キリトは凄いわ。確かに知ったのは偶然だったのかもしれないけど、その現実を直視してもなお自分と家族をなるべく傷をつけない方法を選んだんだから。

 

「そう……よね。でもいつまでもそのままって言うのも……」

 

「それは恐らく、時間が何とかしてくれます。変化を急がず、おばさん達はいつも通り和人君に厳しく優しく接してあげてください。そして信じてあげてください。そうすれば、おのずと距離は縮まって来るはずです」

 

 気づけば私は翠さんの手を優しく包んでいた。この一年この不安をずっと抱えていたんだと思う、事がデリケートなだけに夫婦で色々相談しても結論が出なかったんだと思うわ。それを初めて他人に打ち明けて、私の考えを聞いて何かが吹っ切れたんだろう。

 何でって、それは私の目の前の翠さんが膝立ちで、顔を涙で濡らしているのに嬉しそうなんだもん。

 

「うぅ、……ぐすっ……そ、そうよね、母親が信じなきゃいけないわね……」

 

「そうです、和人君は優しい子です。だからきっと大丈夫です」

 

「ありがとう、ありがとうね紗奈ちゃん……」

 

「いえいえ、私なんかで良ければいつでもお聞きしますので」

 

 翠さんが感謝しながら大粒の涙を流す。これが母親の悩みなのね。私なんかじゃまだまだ上辺だけの言葉しか並べれないけど、それでも誰かの助けになるのなら、頑張るのも悪くないかもしれないわね。

 

 

 その後、気持ちを新たにケーキを切り分け、キリトと直葉を呼んで席に着かせる。

 改めて見るキリトは一年生の入学当時のようなキラキラとした輝きはなく、微妙に顔に影を落としており、物理的にも翠さんや直葉と微妙に席が離れていた。

 まぁこればかりはしょうがないわね。なら私が一肌脱ぐ事にしますか。

 

「和人君の席はそっちね」

 

「え、わ、わかった」

 

 私は長テーブルに着いたキリトと直葉の間に入る様にして、三人仲良く並ぶ事にした。こうする事で微妙な距離感を私と言う緩衝材を通してキリトには家族との違和感を和らげてもらえたらいいと思うな。

 そんな風に考えながらケーキを食べていると、私の正面に座る翠さんが柔らかい笑顔で笑ってくれた。

 

「うふふ、紗奈ちゃん。ありがとう」

 

「「?」」

 

 その言葉に無言だけど、笑顔で返す私。その意味がわからず、首を傾げてクエスチョンマークを浮かべるキリトと直葉。同じ仕草をする姿は紛れもなく兄妹ね。

 その後、食べ終わったキリトは一人で二階に戻ってしまったけど、残った三人でプチ女子会を楽しんで家を後にする事にした。

 

「紗奈お姉ちゃんまたね!」

 

「また来週な」

 

「うん、またね!」

 

 でも流石に私が帰る時には見送りに降りてきてくれた。ってかキリトと遊びに来た認識だったはずなのに、すっかり翠さんとも友達感覚になってしまったけどこれって? と思ったら、とんでも無いところから爆弾が降ってきた。

 

「今日はありがとう。紗奈ちゃんがいてくれてとても助かるわ。だからこのまま和人のお嫁さんになってくれないかしら?」

 

「……え?」

 

 あああああああああ⁉︎ 私まだ五年生なんですけど⁉︎ 前世では藻女ってなわけでもないけど、結婚とは程遠い生活を送っていたのに、いつの間にか母親公認みたいな事になってしまった。

 

「あ、あの、いえ、嫌ってわけじゃないですけど。その、心の準備とかその、色々と言いますか、何と言いますか……」

 

「うふふふ、そんな風に慌てる姿を見るのは初めてかしら」

 

「あ、むぅ……」

 

 あ、あれひょっとして、揶揄われた? それにすぐ気づいて頬を膨らませて私は拗ねるけど、それを見て楽しそうな翠さんを見ると安心した。けど、このお返しはいつかしたいわね。

 

主人公紗奈の武器

  • 執筆者の思い描いたように書く
  • 思い切って変更もありかと
  • 別にどうでもいい
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