ウマ娘はトレーナーと恋愛してるらしいのでチートオリ主の出番はない   作:ちゃ

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一瞬日間に載ってましたありありありがとうございます


アルファ:2

 

 

 カフェを出てから、少し。

 プラネタリウムのチケットを提供してくれた、アドマイヤベガは、意外と今までやっていなかった連絡先の交換をした後、先に寮へと戻っていった。

 あとは俺も帰るだけ──なのだが、サクラチヨノオーは、どうやらもう少し、放課後の散歩を、続けたそうな様子だ。

 厳しい門限がある寮生と、いつでも外を行き来できる俺とでは、放課後の大切さの感覚が、大きく異なるのだろう。

 ここは付き合ってあげたほうが良さそうだ、と考え、はちみーなる謎のドリンクを買いつつ、俺たちは適当に街を回っていた。

 

「サクラ」

「んー?」

「明日の大相撲、楽しみだね」

「ッ!」

 

 サクラチヨノオーは、確か相撲が好きだった気がする。

 ということで、話題の提供という意味で口にしたのだが、予想以上にがっつり反応してくれた。

 どうやらチョイスは間違っていなかったようだ。

 

「う、うん! 私は、広間でみんなと観るんだけど……」

「夕方だから、一緒には観られないね」

「……アルファちゃんも、寮生だったらよかったのに」

 

 気持ちは嬉しいが、さすがに事情を知らない少女たちと、一つ屋根の下というのは、いささか厳しいものがある。

 体の隅々まで、ウマ娘として改造されているならともかく、俺の性別は変わらず男子なのだ。

 特に風呂とかヤバい。大浴場とか絶対入れん。

 

「寮に来るのがダメなら……お、お泊り、とか、できないかなぁ……」

「えっ?」

 

 サクラが手元ではちみーをクルクル回しながら、そんなことを呟いた。

 

「あっ! いや、えと……」

「サクラがウチに来る、ってことかな」

「ちょ、ちょっと待って! そのっ、本気にしないで。ほんと、言ってみただけだから──」

「いいよ」

「ヴぇっ!?」

 

 まぁ、女装のクオリティは日に日に上がってるし、同じ部屋で夜を明かす程度なら、バレないよう工夫して過ごすのも、そこまで大変というわけではない。

 それに秋川さんは、仕事であっちこっち飛び回る都合上、家に帰ってこない日も多いのだ。

 誰かと一緒に夕飯を囲めるなら、こちらとしても結構嬉しい。

 

「いつにする?」

「待っ、えぅ……い、いいの?」

「こっちは問題ないよ。サクラは、外泊許可とか貰わないといけないだろうけど」

「そうだね、うん、外泊許可。うん、もらう……帰ったら、すぐ申請出す……許可……」

 

 少しだけ俯いて、尻尾を回しながらブツブツ呟き始めた、サクラチヨノオー。

 そのまま、前方の電柱に気づかず、ゴツンと頭をぶつけて『いだっ』と反応したところで、ようやく彼女は頭の中で整理がついたようで、にへらとだらしない笑顔を、こちらへ向けてくれた。

 この態度はなんなんだろう。

 外泊許可を貰うのって、そんなに大変なのだろうか。

 

「……サクラ、顔赤いけど、大丈夫?」

「んうぇ……っ!?」

 

 バタバタと手鏡で、自分を確認しだす少女。何だか忙しない。

 女友達とのお泊りって、女子からすると、そんなに緊張するものなのか。

 むしろ緊張したいのは、全然普通にこっちの方なのだが。

 友達と寝泊まりなど、男子としかやってこなかった、バキバキ童貞のバキ童からすれば、女子が自宅へ訪れるなんて、この上ないビッグイベントだ。緊張しないほうがおかしい。

 今の立場はともかく、中身は普通に男子高校生なのだ。

 お泊りを許諾した身ではあるが、あんまりそっちばっか狼狽するのもやめてほしい。こっちのほうが何倍もドキドキしてるので。

 

「あのっ、あの、日程あとで連絡するね。今日はもう帰るから……」

「分かった。じゃあ、また明日」

「うん、またね!」

 

 終始慌てふためいていたサクラが、ようやくその場を去っていった。

 ウマ娘たちとは、一定以上距離を取って接すると決めていたわけだが、こういう自宅へ招くといった行為は、果たしてセーフなのだろうか。

 これは、そこら辺の塩梅を学ぶための、実験の意味も兼ねている。

 もちろん合理的に考えれば、リスクの高い行動をするべきではないのだが、日々の楽しみが少なすぎるが故に、少々の刺激を求めてしまった。ヤバいかもしれない。

 もし彼女との夜で、あまりにも正体バレがギリギリになってしまうようであれば、誰かと一緒に夜を明かすのは、今後は控えることにしよう。

 

 

 ……

 

 …………

 

 

 二人のウマ娘と別れ、さぁいよいよ帰るぞ、といった帰路の道中。

 俺の視界に、目を引く光景が、映り込んできた。

 

「ボクの風船……うぅ~……」

「だ、大丈夫だよっ。ライスが取ってあげるから、ね?」

 

 とある公園。

 そこには幼い少年と、見覚えのあるウマ娘──ライスシャワーがいた。

 かなり高い位置にある街灯に、風船が引っかかってしまっているようだ。

 制服姿なのと、傍らにある買い物袋を見るに、恐らくライスシャワーは、買い出し中に通りかかっただけなのだろうが、風船を手放してしまったあの子供を、放っておけなかったのだろう。

 

「ぬわあああぁぁぁ……」

 

 変わった泣き方する子供だな。

 

「んしょっ、んしょっ!」

 

 ぴょんぴょこ跳びながら、街灯に手を伸ばすライスシャワーだが、彼女の身長では届きそうにない。

 ウマ娘ほどの身体能力があれば、不可能ではない距離だが、彼女たちは上に跳ぼうとする運動をあまりしないため、通常の跳躍力に関して言えば普通の人間とあまり変わらない。

 

「……へへ。お姉ちゃん、がんばれー」

 

 おいおい、あのガキ、下からライスシャワーのスカートの中、覗こうとしてねぇか。

 彼女も彼女で、風船を取るのに必死過ぎて、気がついてないし。

 

 ──しょうがない。ここは俺の出番のようだ。

 風船を囮にして、女子高生のパンツを観察しようとする、あのマセガキの強かさには、少々舌を巻いたものの、あれ以上いくとウマ娘のコンプライアンス的にアウトだ。

 残念ながら、ライスシャワーの絶対領域のその先に、行かせるわけにはいかない。

 悪いな、クソガキ。お前にゃまだ、このステージは早すぎるよ。

 

「こんにちは、ライスシャワー」

「ふぇっ? ……あ、こ、こんにちは……」

 

 初めまして、と言ったほうが正しかったかもしれない。

 俺が一方的にライスシャワーを知っているだけで、彼女と俺は初対面なのだ。

 

「あとは、ちょっと私に任せてほしい」

「え。で、でも……」

「大丈夫。すぐに済むから」

 

 そう言って、まず俺はエロガキのほうへ向かった。

 

「少年」

「な、なんだよぅ」

「少し、目をつぶっててくれるかな。お姉さんがあの風船、魔法で取ってあげるから」

「えぇー?」

 

 魔法なんてあるわけないでしょ、と言いつつ、素直に目を閉じる少年。かわいいやつだ。

 その隙に、俺は某配管工ばりのスーパー跳躍をして、街灯に引っかかっている風船をゲットした。

 学園生活では、これっぽっちも使い道のないチート身体能力だが、こういう時に限っては役に立つのだ。

 一応、ビルの四階くらいまでなら、軽い跳躍でも届くので、手放しちゃった風船取りは俺に任せてほしい。

 

「はい、もういいよ」

「うん。……わっ、えっ。……ど、どうやって取ったの?」

「魔法だよ。……それとね、少年」

 

 こっそり、ライスシャワーに聞こえないよう、マセガキの耳元で警告しておく。

 

「──女の子のスカートの中、覗こうとしちゃダメだぞ」

 

 ASMRもかくやというほどの、静かな声でそう囁くと、少年は『ひゃわっ』という声をあげ、顔を赤くしてその場を去っていった。

 俺の使っている変声機は、結構かわいい声を出せるので、今の囁きでアイツの性癖も破壊できたことだろう。ふふ、マセガキ退治完了。めでたしめでたし。

 

「……す、凄い、ジャンプ力……」

「あっ」

 

 しまった。

 うっかりしていた。

 ライスシャワーにも、目を閉じておくよう、先に伝えておくのを忘れていた。

 超人的な跳躍を見せてしまったわけだが、ウマ娘の身体能力があれば可能ということで、何とか誤魔化せないだろうか。

 

「めっちゃ縄跳びしてるから。めっちゃ」

「そ、そうなの……?」

 

 苦しい。頼むから納得してほしい。

 

「その脚力……羨ましい、な」

 

 困ったことを言う。

 これは人体実験で得た不正な(チート)能力なのだ。ただのズルなんで、何も凄くないんだな、コレが。

 というか、こんな脚力なくても、ライスシャワーは十二分に強いウマ娘のはずだ。

 実力的に言えば、上から数えたほうが早いくらいだろうに。今はまだ開花してないのだろうか。

 

「ど、どうやったら、そんな脚の力を得られるの……?」

「……な、縄跳び」

「なわとび」

「そう、縄跳び。信じられないなら、今度一緒にやろう」

「ッ! う、うん……っ!」

 

 ──といった、よく分からない約束の取り付けなんかもありつつ、異様にイベントが多かった放課後を終えて。

 数十分後、ようやく俺は、帰るべき自宅の玄関をくぐることが、できたのであった。

 ちなみに、保冷剤と一緒に入れてたアイスは溶けた。かなしい。

 

 

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