◆◇◆
ロズワール邸の一室で真夜中に、二人の男女が会話していた。
「…魔女教?」
「ええ」
「んーなんだ、この世界で一番ポピュラーな宗教って感じか?」
「全然全くこれっぽっちもご存じないのですね」
「あ、違うのね。まあ、聞いたことも見たこともないからな」
「——そうですか。それはそれは。まぁしかし、——有名という意味ではその通りですわね」
魔女教。その悪名は留まるところを知らず。その信徒を見つけたのならすぐさま殺せと言われるほど危険視されている。
「オカルトチックな犯罪集団ってこと?」
「概ねその認識でお間違いございませんわ。魔女教と思しき輩と出くわしたなら即刻避難するのがよろしいかと。貧弱で、情弱で、脆弱で、軟弱で薄弱で惰弱で懦弱で柔弱で羸弱で虚弱で病弱で脆弱で…」
「——言いすぎだろ!?いくら俺がお前より圧倒的に弱いからってそんなにあげつらうこたぁねぇだろ!というか語彙力すげぇな!途中意味わからんのあったぞ」
「んっん、失礼しましたわ。とにかく、馬鹿で阿呆でドジで間抜けなあなた様には縁のない者たちということですわ」
「なにこれぐらいにしておきましょうかね、みたいにまとめてんの!さっきより意味がわかる分言ってること酷いからね!?もはやただの罵倒だよ!俺にそんなマゾ性癖ないからね!?そこんとこわかってます!?ベネットさん!??」
「ふふっ、本当に面白い人ですわね」
「しれっと流そうとしてるけど俺は騙されないからな!…そんなあざとく微笑まれたら許すしかねぇだろうが、くっ単純すぎるのは男の性か…」
「それはあなた様が初心な童貞というだけですわ」
「まだ続ける気!?女の子がそんな言葉使っちゃいけません!お嬢様口調で汚い言葉使うとか誰得だよ」
「あなた様と話していると家族を思い出して、つい」
ごめんなさいですわ、とやはりあざとく口元を隠し笑うベネット。
それは本当に楽しくて笑っているのだと見ていてわかるもので、会話している身からすればとても嬉しい反応だ。
——くっ、歯に衣着せぬあざとお嬢様とか超あざとい、悔しいけど可愛い。
心のいちばんがエミリアたんで埋まってなきゃ惚れちまうところだったぜ、男、ナツキスバルは心の中でそう一人ごちる。
今はおよそ夜中の零時。そんな時間にベッドのある寝室で談笑する二人の男女、何も起こらないはずはなく…いや何も起こるはずないだろう。なにせベネットと呼ばれた少女の方が強いのだから、それも圧倒的に。
戦うところを見る機会などあったのか、あったのだ。それも劇的な展開で。
二人が出会ったのは偶然だった。
———否、ある意味ではそれは必然、——運命だった。
二人は赤い糸で繋がっている。
———血に塗れた、呪われた絆で。
◆◇◆
まァ、ウン。
※え、待って?誰、レベッカさん。違います。ベネットです。修正。