超昂大戦 二次創作SS 邂逅! ちいさな戦士たち 〜時を超えて、約束の場所で 作:環 藍河
原作:超昂大戦
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作者(環藍河)の能力の限りで原作に敬意を払っておりますが、気分を害する可能性のある方は、閲覧をお控えください。
梅雨明け間近、この街の子どもたちの専らの話題は、オフィスビル街に間もなく開園するアトラクションパーク。
ビルの中を突っ切るジェットコースター、街を一望できる観覧車、パークの来客ならどこにいても見通せる、センターコートのイベントステージ。都会まで出なくても、この街の子どもなら毎週末だって行けてしまう、夢のフィールド。
街の子どもたちはプラチナチケットを親にせがみ、「いい子にしてたらね」というパパやママの常套句にうなずき、熱い夏を夢見て宿題や家事手伝い、嫌いな野菜に挑み、いい子を演じた報奨を得たものだった。
…
……
夏休みも終わりに近づく、8月の日曜日。
(あの子…どうしたのかな?)
少女の父親は、遅くなった小学校の入学祝いにとオープン間もないこのパークのチケットを奮発していた。
父の都合がようやく折り合い、やっと念願叶ったこの日。あいにく、出産間もない母親は一緒には来られず、家族サービスに奮起する父親。
お目当てのジェットコースターは最後尾から120分待ち。炎天下で並び続け、搭乗まであと30分のところまで漕ぎつけたところだった。
「パパ、おねがい! このボクをたすけたら、すぐもどるから!」
間もなく姉になる娘の逞しさを、父はいつも信じ、今日も見守る。
行列を離れ、ぽつんと一人歩く男の子に駆け寄る、ツインテールの女の子。
「ねえボク、まいごなのかな?」
「あ…あう…」
「だいじょうぶだよ、おねえちゃん、せいぎのみかたなんだから。しんじて!」
怖気づく男の子は、年下に見える。落ち着かせようと、女の子は腰を落とし、目線を合わせてゆっくり話しかける。
「おとうさんは? おかあさんは? どこからきたの?」
「…いない。ぱぱも、ままも…!」
表情をこわばらせる少年。自分の問いの無神経さを悔やむ少女。
「ご…ゴメン…! あっ、でも、それじゃ…ボクはどこにかえるの?」
「…わからない…わからないんだ…」
(そんなあ〜? …あ、でも…!)
少女の決意と決断は…
「ボク、いっしょに、あそぼっ!」
「…えっ…?」
「だって、ここはアトラクションパークだよ、あそんで、わらって、おもいでをつくらなきゃ!」
(この子…ひとりっきりなんて、そんなのダメだ! わたしが、いっしょにあそんで、この子にさびしくないよって、いっしょだよって、いわなきゃ!)
…
……
二人分のチケットも、その不足を埋めるお金も持たない少女が、考え、手を引いて連れてきたのは、センターコートのヒーローショー。声援をみんなで一緒に送れば、この子の思い出になるかもしれない。
すでに人だかりがステージを覆い、振り上げる拳と歓声に、目当てのヒーローは全く見えない。
「ボク! わたしのかたに、のって!」
少女の提案は、迷子の少年を肩車すること。
「う…うん…あ、あれっ?」
少女の肩に跨がるも、女の子の脚力では、しゃがんだ足が伸ばせない。
「…うう〜ん、くう〜っ、ガッツ、ぜんかい〜っ!!」
それでも、少年の視界は一向に上がらない。
ダメか…!
突然軽くなる、少年。
少女の後ろから、少年を持ち上げる力が、新たに一つ。
「ふっ…! ヒーロー…、さんじょう!」
…
「ありがとう、ヤルトラマン・エトス! ありがとう、エトスに力をくれた、地球の勇敢な子どもたち!」
ナレーションのお姉さんの声が、ヒーローショーのフィナーレを告げる。
「あ…ありがとう!」
「あんた、ムチャするわねえ。でもあんたは、ヒーローをしんじるしょうねんをひとり、そだてたのよ! だから、おうえんしたの!」
お団子頭でつり眼の小さな少女は、見たところ自分よりも年下なのに、全く物怖じせず、ずけずけと直截な物言いに、半分たじたじになる。
でも、男の子の助けになれたかも、という清々しさが、それを上回った。
…
……
パークを見渡せる観覧車は、どのゴンドラも親子で賑わう。
それだけに、日本髪の幼子が一人きりで乗るゴンドラは、周囲からはひどく目立つ。
彼女は今日、生まれて以来ずっと出ることのなかった里を、たった一人で後にし、この街、このアトラクションパークへたどり着いた。
「わたしは…わるいこだ…。とうさまにも、かあさまにも、にいさまにも…、だれにも、なにもいわずに、こんなところまで、ひとりで…!」
ただ、自分の知らない世界を見たかった。
その衝動に身を委ね、今の自分に見ることができる、一番大きなものを見ようと決めて買った、観覧車のチケット。
少女の望んだ大きな世界は、小さな自分を浮かび上がらせ、わずかな達成感と、押しつぶされそうな孤独を心に残した。
「…あのこたちは…?」
うつむき気味の少年を挟む、二人の少女。
喧噪のパークには珍しく、なぜか大人が一人もそばに居ない、子ども三人だけの集団。
だからなのか、ゴンドラを下りた少女は、なぜか三人の元へ駆けだしていた。
…
……
(…郊外型のテーマパークと、アーバン型のアミューズメントスペースの融合を…)
(…今後の人口減、オフィスビルの空洞化を見据えた、ニュースタンダード…)
子どもの夢と希望のパークには不釣り合いな、背広にネクタイの日本人集団が、西欧からの視察団を低姿勢で案内する。どうやら、いくばくかの出資を請い願う商談のようだ。
通訳を介し、日本語・英語・フランス語の飛び交うその集団の中心は、意外にも小さな一人のレディ。
周囲に忖度し、わあ、とってもすてきなパークですねえ、と背広組が喜びそうな作り笑いを崩さない、ロングヘアの少女。その実、すでにマルチリンガル、経営・法律・歴史・文化もどんどん吸収する才女。
(…やっぱり、パパもママも、まにあわなかったなぁ…)
そんなスーパーガールも、甘え盛り。顔で笑って心で泣くことも、もう慣れてしまった。
…
(おまえたちは、こどもたちだけで、なにをやっている!)
(なによー! あんただって、こどもひとりじゃないのー!)
(あっ…あのね、このおとこのこが、ひとりでこまってたから、わたしがいっしょに…)
(…? …へぇ…)
小さな淑女の思いついた悪戯。
視察団と背広組、一人一人の眼をちらっと覗き込み、自分の存在を植え付ける。
そこに私がずっと居ると、みんなが思い込む暗示をかけて廻り、セレブ・リトルレディは集団視察を離れた。
「おじょうさんたちー、あっそびーましょー!」
(なっ…、なんだこの子は?)
(ぐえーっ、またヘンなのがきたー!)
(あう…っ!?)
「いーいーよー」(《【!?】》)
「あれー? あなた、しらない人にはかかわらない、って、がっこうでならわなかった? ニッポンだと、『いかのおすし』だったっけ?」
「うん、そうだけど、あなたはしんじてだいじょうぶかな、って」
「えっ…?」
「ぎゃくにきくけど、あなたはどんなわるいことをたくらんで、わたしたちにちかづいてきたの?」
「えっ? …あ、あれっ…?!」
奇麗なカウンターパンチで返され、豆鉄砲を食らった鳩というのは、きっとこんなふうにうろたえるのだろうというくらい、レディは狼狽する。
「ぶっ…!」「くくっ…!」
「あははっ、やっぱり、わるいこじゃなかった!」
3人の爆笑につられ、笑い顔が一つ増える。
「あははっ、あなた、もっとしょたいめんのひとをうたがわないと、じんせいこのさき、タイヘンよー! …でも、ありがとー! わたし、すっごくうれしいな!」
…ニッポンが、平和ボケの安全な国だから、かもしれない。
でも今は、こんなにもシンプルに、自分の心をすべて開いて話せるこの子との出会いが、とても嬉しかった。
そして、先ほどまでおどおどし、自らの寄る瀬なく怯えていた少年は、4つの笑顔に囲まれ、少しずつ心の平穏を取り戻しつつあった。
…
……
お嬢様の持っていた、関係者用時短チケットは最強だった。5人は行列をスルーしてメリーゴーランドにフライングカーペット、ゴーカートにバーチャルシアターと、時を忘れ夢の世界を旅した。
「お…おい、いいのか? 子どもがなぜ、こんなおだいじんのような、かねづかいを…!?」
「あら、だってわたし、おだいじんだもの。」
「うげーっ、リアルスネちゃまだったー!」
「ふふっ、でも、あなたたちがいなかったら、このチケットはかみひこうきになってたな。」
「ありがとう。この子のキラキラのおもいで、あなたのおかげでつくれたよ!」
そして最後の取っておき、ジェットコースターを目指し突撃。
だが。
途中のホーンテッドマンションが、不意に闇を放ち、5人を呑みこむ。
「なっ!」「きゃあっ!」「うわっ!」
…
大盛況のパークは今や闇の中、大勢の人はどこかへ消えてしまった。5人は本能で恐怖し、男の子をかばうように肩を寄せ合う。
《ヨコセ…ソノ…コヲ…》
「!」
「リュウノ…チカラ…」
【セツゲンノ…チカラ…】
『ワレラヲ…ヤガテ…ホロボス…チカラ…!』
「【『《ヨコセェエエエエ!!!!》』】」
人外の姿をした生命体が、何種類も5人にずるり、ずるりとにじり寄り、狙いが男の子であることを隠さない。
「かこまれた…!」
「…ちょーっと、ニブーいオトコはキライかな」
四方いずれかだけでも突破口があれば、里で修練を重ねた日本髪の少女は、少年を抱えて突破、残る三少女から敵の狙いを外しながら、追手をまき逃走を成し遂げる自信があったのだが。
レディは先に大人を魅了した左眼を、試しに敵に露出。だが、効いた手応えは無かった。
「ガ…ガチのピンチって…テレビとちがうのね…いまさらだけど…!」
ヒーロー志願のつり眼少女は、武者震いを噛み殺し、精一杯強がる。
「たああああっ!!」
絶望に呑まれかけた4人を奮い立たせるように、ツインテールの少女が駆け出す。少しだけ教わった陸上競技の走り幅跳びの要領で、敵の一体に飛びかかり、ドロップキック。
しかし弾かれてしまう。
元の位置に戻され、体勢を立て直すと、少女は直立し、両手を横に広げ、少年を護る。
もう、4人の誰も、対抗する術を持たなかった。
それでも少女は、身を挺して人外の手を払い除ける。
「この子は…きょう、さっきはじめてわらってくれた…!
そのさいごが、こんなかなしいおわりかたなんて…、ぜったい、ダメだっ!」
小さな決意に応えるかのように。
しゃっ。
「【『《オゴガグワアアアッッ!!!!》』】」
閃光が、敵をなぎ払い、闇を引き裂く。
その空に、少女たちが見た、羽衣。
「…めがみ、さま…?」
(勇敢な、この世界のお嬢さんたち…この子を笑顔にしてくれて…そして、護ってくれて、ありがとう。ホントは、本人から…この子からお礼を言わなくちゃ、だけど…ごめんなさいね。この子は、自分の力をコントロールできない、甘えん坊さんなの。)
逆光に眼が慣れない4人は、僅かなシルエットと耳だけを頼りに、少年との別れの時を悟る。
(楽しそうなあなたたちの仲間になりたくて、心惹かれて、幼心だけ10年余計に飛び過ぎちゃったみたい。あなたたちとは、早すぎる出会いになっちゃった。)
そう言い残し、女神は。
(出会いの未来を変えないよう、今日のことは忘れてもらわないといけないの。でも、次に会ったとき…今日の勇気を、もう一度私たちに貸してくれたら、嬉しいわね。)
数時間だけの冒険を共にした少年を胸に抱き、まばゆい光に溶けた。
…
……
意識が戻った少女たちは、在るべき人のそばに戻っていた。
「ヒーローショーが終わったら、フードコートで待ってなさいって言ったでしょ!」
「お嬢様、少し遠出が過ぎませんか? この私が見失うほどとは…」
「…探したぞ。帰って、一緒に謝ろう。父さまにも、頭領さまにも。」
三人が、自分の帰るべき場所へ、帰っていく。
残された少女は、ゲート前へ。
父が出かける前に口酸っぱく言った、迷ったらここで待ってるよ、必ず来るんだよ、と指定した場所へ。
条例で小学生以下はナイトタイム退園。
もう閉園時間を過ぎてしまった、パークの入退場ゲート。
「…長かったけど、どうだい? ちゃんとあの男の子、助けられたかい?」
「…うん、パパのおかげだね。…いつも、わたしのこと、しんじてくれて…ありがとう。」
「わかった。じゃあ、帰ろう。」
疲れ果てた少女をおんぶして帰る父親。
踏んだり蹴ったりの日曜日だったはずだが、優しく娘を見守れたことを、少しだけ今日の成果として胸にしまった。
父の背中でまどろむ少女。
(…みんなのなまえ、きくんだったな…。)
…
……
(…ありがとう、おねえちゃん…。)
「…! ボク! どこ?!」
(…ごめんね、もう、つたえられない…)
圏外ギリギリの携帯電話のように、途切れ途切れにしか届かない声。
疲労と消耗で鉛と化した意識を振り払いながら、少女は意識の向こうの坊やを思う。
(でも…かならずまた…あのばしょで…)
「…うん! ぜったい! こんどはジェットコースター、いっしょにのろうね!」
(おねえちゃん…ありがとう…)
…
程なく、声も途絶え、少女は再びまどろんだ。
…
月曜日の朝。
「そう言えばアカリ、結局あの男の子は、どうなったんだい?」
「…おとこの子? …あれ? わたし…」
一日限りの大冒険は、四人の少女の記憶の深層、最深部へと沈み、誰一人として引き揚げることができなかった。
…
……
そのまま、時は流れ。
「トキサダ、チェックプリーズ!」
ダイビート設立にあたり、本拠地候補となる物件資料を持参した君枝。
「プランAはレールウェイ傍。遊休地だから新施設は建て放題。その代わりイニシャルコストも青天井さ。プランBはクローズドのカレッジ跡地。ローコストで使えるが、市民生活と離れた場所なのがウィークネスだヨ! プランCは…」
「…ここだ。」
「オー! トキサダ、ボクもそこがベストプレイスと思っていたんダ! でも、いいのかい? 検討に値するプランは他にも…」
「俺にもわからない。だが…」
プランF。
10年ほど前にオフィス街に開園し、当初は話題となるも、都会の大規模施設との競合に敗れ、最近は話題にも事欠き喘いでいた、アトラクションパーク。
開園当初から支援のあった欧州コングロマリットが、君枝に破格の条件を持ち掛けていた。
「このパークに、呼ばれた気がしたんだ。」
資料の表紙、パーク全景の航空写真には、パークのシンボル・ジェットコースターが大きくそびえていた。
…
……
「私、超昂戦士になります! エスカレイヤーさんみたいに、みんなを護る力が欲しいんです!」
「若頭領、不肖、この加古野ヒビキ、不惜身命、全身全霊を捧げ、任に当たります!」
「理想のヒーローに、私はなるっ! ダイビートのエース戦士、あたしが参上っ!」
「乙女の秘密は超昂戦士。うふふっ、長官くん、たっぷり蕩かしてあげちゃうねっ。」
あの日、記憶の海へと消えた船は、再び大海原へ帆を上げる。
5人の鮮やかな冒険譚は、10年の時を越え、約束の場所で新たなページを刻み始める。
毎度お立ち寄りの方も、お初の方も、お読みいただきありがとうございます。作者の環 藍河より御礼申し上げます。
環の新作投稿スタイルは、午前0時前後の投稿が多いのですが、今日はなんと午後5時台。
…常連の方が新作投稿に気づいてくれなかったら、どうしましょう…?!
(↑ハーメルンのシステムを理解していない)
そんなわけで新作は「勝手にエスカチームEpisode ZERO」をお届けしました。
…『あの花』って、こんなお話?(違います!)
着想は、超昂大戦二次創作SSシリーズ「虜囚の花嫁」を書いている最中、「昔からアカリちゃんは変わらないよ!」という商店街のおじさんのセリフを書いたとき、
「…ヒビキもうららもエリーも、絶対変わらないよなぁ…?」
→「じゃあじゃあじゃあ、みんなの幼少時代を書いたろやないかいっ!」
…という短絡思考でございます。
ところで。
タイトルに選んで差し込んだ文言「時を超えて」。
間もなくリリースのアルバム収録・超昂大戦第1部テーマソング「Brave your Heart」の出だし一節から借りてます。
何を隠そう、環さんってばもう、この曲、大好きで大好きで。
歌詞がルビーの決意とアクションを短いワードで描ききって、それをメロディが後押しして、静から動へ。
現時点でいちばん好きなのは、サビの一節
「共に護らせて 遙かな未来」
…たった15音で、アカリしか、ルビーしか言えない言葉をバキッと生み出せるなんて…プロすげえ。(←小学生並みの感想)
自分がこんなにSSで何千ワードも連発して、エスカチームの魅力を鈍いナイフで彫刻しようと泥沼でもがいてるっつーのに…!
ダメですね、嫉妬しちゃいます。(←プロと自分を並べるな)
先週のアップデートで過去のエピソードが一部開放され、新たなキャラの魅力が肉付けされました(環は今年5月に新人トキサダになりました。現在ログイン98日目)。これで環のインスピレーションも切り口が増えました。(←新作SSに生きるとは言ってない)
※このストーリー閲覧でも石やつぼみが貰えるので、次の新人トキサダさん、出てこいやっ! 今なら消費スタミナ半額、ストーリー全話なぞるだけでも、ほぼ無課金でイケるチャンスですよー!!
次は不定期連載のエスカチーム×ニューメンバーものか、もう一つ、連載3話くらいのエピソードを1本構想中です。
また週明けくらいに出せることを目標に、どちらかを進めております。
またお会いできますれば幸いです。環でした!