オラリオ。ここは迷宮都市と呼ばれており、中央にはバベルの塔と呼ばれる摩天楼がそびえ立っている。武器、防具、人、そして神。多くのものが集まる都市だ。迷宮都市の名の通り地下にはダンジョンがあり、そして、その入口近くにはギルドがあった。
「すいません、ファミリアに所属していないというのは本当なんですか? それなのにダンジョンに? 自殺でもしに行ったんですか!? というかどうやって入ったんですか!?」
「貴公、それは違う。私は死を求めていたわけではない。ただ、ダンジョンに入ってしまっただけなのだ。ここには来たばかりだ。勝手を知らなかったということで許してほしい。」
「・・・ファミリアも探さずいきなりダンジョンですか?」
「そうだ。先程の会話で上層の上の方ならばファミリアに所属していなくても戦えると聞いたのでな。」
「いや、それでも恩恵を得てないと、「エイナさぁぁぁぁん!」・・・ってベルくん!?」
「新たな客人が来たようだな。私は邪魔だろう。それでは失礼する。」
「・・・え? ちょっと待って! もう、私の方で入れそうなファミリアを探しておくので絶対にまた来てくださいね!」
その言葉を聞いてルナ、彼女はその場をあとにした。
「・・・あっ、そうだ! ベルくんのファミリアって受け入れしてる? よかったら、さっきいた桃色の髪をした女の人いたでしょ。あの人、ちょうどここに来たばっかでファミリアにも入れてなかったからどうかなって。」
「え! そうなんですか。今度会ったときに誘ってみますね。エイナさんありがとうございます。」
こんな一幕もギルドの中ではあったかも知れない。
神、神、神。あまりに多くの神の匂いがここには染み付いている。歩いていれば分かったがこの世界の神というものは随分と人にとって身近に存在しているものらしい。しかし、なぜ彼らがここまでこの地に集まるのか。・・・ダンジョン、か。
ここで有名なものを聞いて歩けば、皆が口を揃えてそう呟いた。だが、そんなものはどうでもいい。問題なのはこの地の神はどのような存在かということだ。サンプルは多いに越したことはない。
この地の神の観察。それが、今の私の目的だ。狭間の地ではない場所ではある。当然部外者ではあろう。しかし、もしもこの地の神々が彼らに似ていたのならば、殺す必要がある。まだ、見極めの段階だ。
そう、考えながら街を散策していると
「あっ! 見つけた! そこのピンク色の髪の人、ちょっとまってくださーい!」
そんな言葉とともに赤い目、白い髪、まるでうさぎのような少年に呼び止められた。
「すいません、はじめまして。僕の名前はベル・クラネルっていうんですけど、エイナさんって分かります? あの、ギルドのハーフエルフの受付の方なんですけどその人に、え〜っと、ルナさんだ! ルナさんがファミリアに入ってないって教えてもらって、よかったらうちのファミリアに見学だけでもと思って・・・」
「貴公、はじめましてではないだろう。つい先程あったばかりだ。まぁ、あの場面では全身血濡れではあったが。して、ファミリアを紹介してくれるということでいいのだろうか。それならば、ありがたく同行させてもらおう。」
「いいんですか! やった、もしかしたら僕以外の眷属ができちゃうのかな!」
赤い目をキラキラさせて喜ぶ姿はまさに小動物。うさぎ。それ以外に言いようのないほどだった。そういえば、この赤い目なにかに似ていると思ったが腐れ湖の水だな。あれに似ている。それに、このうさぎのような彼。英雄の器ではある。今は覚醒していないと見えるが。神は英雄と密接に繋がっている。いい意味でも悪い意味でも。悪くはないかもしれない。
二人は数分歩き、廃墟としか言いようのない教会に到着する。ここが、ヘスティア・ファミリアの実質的なホームと言う場所なんだろう。上は全く使い物にならない。地下でもあるのだろう。その予想通り、ベルは、地下室にルナを案内する。
「ベルく〜〜〜ん!! おかえり! もうダンジョンから帰って・・き、た・・・えーーー!! 誰だい君の隣にいる女の子は! 引っ掛けてきたのかい!? 引っ掛けてきたんだね! ひどいよ、ベルくんは僕一筋のはずなのに、僕だけじゃ飽き足らず他の子ともイチャイチャしようという算段かい? 許さないぞ! それはだめだ。早くどうにかしないと、二人のラブラブじゃが丸屋さんを作る夢が・・・あーーー!!」
「えっ! 神様、落ち着いてください! 入団希望者の方なんですから。それに、引っ掛けるってなんですか? どういう意味なんだろう?」
「貴公、引っ掛けるというのはだな。異性のことを「ストップストップ! 君はそれについて説明しなくても大丈夫だ。僕がこのあとしっかり教えてあげるからね。ベルくんには純粋なままでいてほしいんだ。」・・・そうか。では、ベル、君の神にもし知りたければ聞くといい。」
「って、そんなことよりも本当に、本当に君、入団希望者なのかい?」
「彼が、ファミリアを紹介してくれるというのでな。好意に甘えさせてもらった。」
「じゃ、僕のファミリアに入る気はあるのかい?」
「逆に聞こう。受け入れる気はあるのか? この私を。」
「・・・ちょっと待っててくれないか。ベルくん、話がある。ちょっと、着いてきてくれ。」
神には見えるだろう。抑えているため本の一欠片程度だろうが。それを見ても貴公らは私を仲間にしたいと思うのか?
「ベルくん、彼女についてなにか聞いていないかい? どこから来たかとか、身分だとか。」
「全く聞いてないですね。僕が彼女に声をかけたのもあのエイナさんによかったらと声をかけられたからですし。もしかして、なにかまずいことでもあったんですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね。ちょっと気になるなと思ったくらいだから。彼女、喋り方は堅いけど誠実そうだし、君がいいならファミリアに入ってもらうのもいいんじゃないかな?」
「いいんですか! やった。早速ルナさんに言ってきますね。」
「ああ、言っておいで。」
ルナくんと言うんだね。なぁ、ルナくん。君は一体何者なんだい? というよりも、一体何だ? あれは、人、なのか? 神、ではないはずだ。確証はないけれど。でも、人。人であるのか。僕も神として、君を見極めさせてもらわなくちゃいけない。それでも、今日は歓迎するよ。もちろんこれからも。家族になってくれてありがとう、ルナくん。
「ということで、ルナくんもファミリアに入ってくれるということでいいんだよね。」
「そうだ、貴公らにはこれから世話になると思うがよろしく頼む。」
「ということで、ルナくんに神の恩恵を入れようと思うからベルくん、向こうの部屋を使わせてもらうね。」
「はい。待ってますね。」
「ルナくんが美人さんだからって除いちゃだめだぜ!」
「し、し、しませんよそんなこと!」
「それじゃ、行こうか、ルナくん。」
部屋に入る。中は、木製のベッドが一つとその近くにほんの少しの装飾品がある程度だ。ベルの気配が部屋から遠ざかったことを確認し、ヘスティアは彼女の向けて話しかけた。
「答えられないなら、答えなくていい。それでも、もし話せることがあるなら聞きたいんだ。君は一体何者なんだい? どうして、ファミリアに入ろうと思ったんだい?」
「その、質問に答えるのはとても難しい。特に前者に関してはな。だが、言えることもある。私は神ではない。だが、人かと問われると難しい。後者に関しては、この世界について知りたいからだ。これで十分だろうか。そして、一つ伝えておこう。残念ながら、私に神の恩恵は意味をなさない。試したいならすればいいが結果は今伝えたとおりになるだろう。これは普通のことではないだろうからな。彼の前では伝えなかったがそれで良かったか?」
「うん、分かった。でも、神の恩恵が入らない。ってことは君は神なんじゃ。」
「ヘスティア。神ではない。いま貴公は私のことを神のように見えているのかも知れないが私は断じて神などではない。・・・それでは行こうか。彼も待っているだろう。」
「・・・そうだね、ルナくん。」