ケロイド   作:石花漱一

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八、幸助と別れる日(後編)

 家のドアの前まで来ると、田上はタキオンを先に入らせてそれから自分も入った。タキオンは手を放したがらないようだったが、田上の顔を見るとその抵抗もやめてしまった。田上としては、特に何の感情も抱いていない顔のつもりだったが、タキオンには田上が少し怒っているように見えた。こちらもなぜなのかは分からない。田上が、なぜ怒っている顔をしているのかは田上自身も気が付いていないことなので、聞かれても説明はできないだろう。それを察したので、タキオンは何も聞かなかったのか?と問われれば、それは別だが、とりあえず田上の顔は家の中に入っていくにつれ和らいでいった。家の中の、寒さを防ぐ暖かさがそうさせたのかもしれない。

 タキオンは、少し緊張しているようだった。少し紙袋を持つ手に力が入っている。田上は、それを見とめると言った。

「もう、渡してしまった方がいいんじゃないか。…な?事は早い方が」

 タキオンは、少しどもりながら「ああ」と答えた。

 賢助は、炬燵の部屋で寛いでいた。そして、タキオンたちが入ってくると「おかえりー」と声をかけてきた。タキオンは、それに答えることができずに、自分も炬燵に入ると正座になり早速言った。

「トレーナー君のお父さん」

 急に畏まって言われたので、賢助は驚いた顔をして背筋を少し伸ばした。そして、答えた。

「はい、なんでしょうか」

「……先日の件で、大きな迷惑をかけたのにかかわらず、まだ謝罪もお礼の言葉も言えていなかったのが、私の引っ掛かりとなっておりました」

 タキオンは、ここで少し目を泳がせたのだが、賢助の隣で幸助がニヤニヤしているのを見て、ちょっと苛ついた。賢助は、タキオンの言葉に「…はい」とまだ驚きの混じった声で答えていた。

「…ですので、今それができればいいなと思い、お詫びの品を買って参りました」

 タキオンが、ここまで丁寧な言葉を使うと田上も少し可笑しくなって、顔がにやけそうになったが、それはいけないと思い必死に堪えた。

 タキオンは、その様子を勘付いてはいたが、何も言わずに自分の紙袋から田上と自分が買ってきたものを差し出した。

「これで許していただければ幸いです」

 田上も少し口を挟んだ。

「こっちがタキオンが買ってきたもので、こっちが俺の買ってきたもの。俺もあの騒動の原因だったので、買ってきた。…迷惑をかけてすいませんでした」

 田上がそう言うと、タキオンも後に続いて「すみませんでした」と言った。

 賢助は、戸惑いながらも「いや…大丈夫だけど」と言って、その菓子を受け取った。そして、少し笑った。

「…いや、こちらこそ感謝の言葉を告げるべきなんだよ、アグネスさん。あの件のこともそうだし、俺の息子と仲良くしてくれていることもそうだ。アグネスさんには、感謝してもしきれない恩がある。ありがとう」

 そうやって、賢助が頭を下げると今度はタキオンが戸惑う番だった。だから、困ったような顔をして、田上の方を見た。それを見てしまうと田上はもう堪え切れなくなった。口角を上げて、鼻をひくひくさせると、我慢できずに笑い声を漏らした。

 顔を上げた賢助もニコニコと二人の様子を見守っていた。タキオンは、双方の顔を見て、困ったように笑い、そして言った。

「私は、あんまりこういう場は苦手です」

 そこで田上が口を開いた。

「分かった分かった。じゃあ、父さんがそれを一口食えば、これはもうお終いだ。ほら、父さんが食わないとタキオンが安心できないって」

 田上は、そう父に向って言うと、賢助も急いでタキオンが買ってきた方を開け、タキオンに向かって「いただきます」と言った。

 タキオンは、少し緊張気味にそれを見ていたが、賢助が「これ、おいしいなぁ」と顔を綻ばせば、タキオンも少し安心したようだった。だが、それは賢助の前では出したくなかったのだろう。

「トレーナー君、ちょっとこっちに来たまえ」と言うと、隣の部屋に抜けていった。

 

 田上が隣の部屋に行くと、タキオンが薄暗い部屋の畳の上にだらしなく足を広げて、一息ついていた。田上が来ると、「襖を閉めてくれ」と言い、それから襖が閉まったのを確認すると大きくため息をついた。このため息は、襖を通って父の方にも簡単に聞こえるのだが、賢助はあえてそれに耳を澄ませるということはせず、耳に入ってくる言葉言葉に時折微笑みながら、息子の良き友人が買ってくれたお餅を食べていた。

 タキオンは、大層疲れていたようだった。無理もないだろう。慣れない正座に緊張が重なったのだ。精神的疲労がタキオンに溜まっていた。

 田上は、そのタキオンの横に胡坐をかいて座った。そして、言った。

「成功したな」

「ああ」とタキオンは、力なく答えた。まだ、疲れが取れず、答える気はないようだ。そうすると、タキオンは、体を支えるためについていた手を外し、ゆっくりと後ろの方に寝転がった。それから、大きなため息を再び吐いて、息を漏らしながらこう言った。

「あんまり疲れるのも嫌だな。…今、これまでにないくらい疲れたよ」

「なんで?」

「なんで?……そりゃあ、君の父さんとこれまでにないくらい丁寧に話したからさ。他になにがあるって言うんだい?」

 タキオンは、胡坐をかいている田上に目をやった。

「…俺は、そんなに畏まらなくても、普通に父さんと話せば良かったんじゃないかと思ったけど。…まぁ、それも無理な話だろうな」

「そうだよ、無理な話だよ。君のお父さんは君じゃないんだ。君だったら、君が君の父さんに話すように、――すいませんでした、と軽く言えばいいんだろうけど。…」

 ここでタキオンは、少し声を落とした。

「君のお父さんだよ。私の父さんじゃないんだ。そう簡単にはいかないよ」

 田上は、少し笑った。

「あんまり父さんもそんなことを気にしているとは思えないけどね」

 タキオンは、不機嫌そうに田上をじっと見た。それから、少し間を空けてこう言った。

「なんだか少しトレセンの方に帰りたくなってきたよ」

 すると、田上が少し不安そうな顔をした。だが、言葉は何も見つからずに、背中を丸めうつむいた。その様子を可哀想に思ったのか、タキオンがこう続けた。

「…別に君の家族が悪いってわけじゃないんだけど、もうそろそろ私の研究室にも戻って、なんやかや進めたいし」

 田上は、目を上げた。田上には、もう少しで訪れる未来が見えていた。この家を去っていく未来だ。父を一人置いて、またしばらくの孤独を味わわせる未来。あんまりいい未来じゃなかった。また、田上自身もこの家から離れたくないのもあっただろう。しかし、彼は帰りの電車は必ず迎えにやってくることを知っていた。少なくとも、タキオンをそれに乗せないといけないことも。

 田上の目を上げた先にはタキオンがいたが、それを見ていない。タキオンは、自分に目が合わされてると思い、不思議そうに田上の方を見つめ返した。しかし、何も起こらないとなると言った。

「帰ったらトレーニングをまた再開しないと。私、この休暇でだいぶ太ったろうなぁ。今から、お菓子もたくさん食う予定だし、そもそも炬燵の上にあるお菓子もたくさん食ったし。…トレーナー君、帰ったらまず、体力を戻さないと」

 タキオンのその言葉で、田上は無理矢理今へと戻ってきた。そして、言った。

「戻りたくないなぁ」

 そう言って、後ろに寝転がり、また言った。

「もうあっちに帰りたくない」

 すると、タキオンが不思議そうな顔をして言った。

「なんでなんだい?…あんまり不満ある生活には見えなかったけどね」

「そう思っているのなら、勘違い甚だしいね。俺は、あっちにいる時点で少し不満だ」

「へぇ、そうなのかい?」

「そうだろ。タキオンがどうなのかは知らないけど、親の膝元で休めるのと、自力で休むのとじゃ大きな違いだ」

「……私は、ここも十分好きだし、自分の家も十分好きだけど、トレセンの方も十分好きだよ。特に、もうあそこでしか満足に研究ができないから、あそこに帰らないと私は非常にまずいんだ」

 タキオンがそう言うと、田上は寝転がっていたタキオンの方に少し身を寄せ、軽く手に触れた。タキオンは、それを拒絶するように手を少し引いた。

 田上は、今少し不安だった。その不安を誰かでごまかせたらと思い、タキオンの手に自分の手を忍ばせたのだが、タキオンはそれをよくは思わなかったようだ。その手を引いた。そうすると、田上の不安は行き場をなくして、心臓の鼓動へと変わった。ドクンドクンと脈打ち、不安の来訪を告げる。どうしようもなくなって、息が詰まりそうになったが、ここでタキオンがこう言った。

「どうにもダメだね。何と言うか、君も私も人に頼りすぎて訳が分からなくなってる。ここで、一回リセットしないと」

 タキオンは、そう言って立ち上がると、襖を開けて隣の部屋に行った。それから、炬燵に座るとこう言った。

「君もおいでよ。さっき買ってきたお菓子を食べよう」

 だが、田上は、そちらに行く気はなかった。薄暗い部屋の向こうから、タキオンたちのいる明るい部屋を眺めた。まだ、脈打つ心臓の音が聞こえる。何度こうしたことがあるだろうか?遠い世界にタキオンがいるような気がする。田上が見ているのは、まるでうつらうつらした微睡みのようだった。

 その様子をタキオンが見とめると、仕方なさそうにため息をついて、それから言った。

「君が動かなきゃ何も始まらないよ。君自身もそのことは理解しているはずだ」

 そう言うと、もう田上のことは放っておいて、自分のお菓子に舌鼓を打ち始めた。田上は、また一つタキオンとの世界が遠くなったような気がしたが、ここで踏み止まった。なぜだか分からないが、元気が湧いて出た。

 田上は、すぐに立つと何事もなかったかのようにタキオンの隣についた。そして、言った。

「俺のお菓子はどこだ?」

 タキオンは、一瞬田上のことを心配そうに眺めたが、それは本当に一瞬ですぐに表情は元に戻り、こう言った。

「君が持ってきたところから動かしてないよ。もっとも、その包みの中にも私のものが入っているから、私に渡してもらわないと困るがね」

 そして、ニヤリと笑い手に持っている菓子を口に入れて、それから「おいしい」と顔に喜びを満たした。

 

 昼食時とお菓子を食べたその境目はなかった。特にタキオンはそうで、田上は自分の分は一個しか買ってきていなかったから、すぐに食べ終わって、ゆったりスマホでもなんでもしていたが、タキオンは、少しずつ少しずつ味わいながら食べていって、遂には食べ切らないまま昼の時間になってしまった。だからと言って、田上に明確な昼の時間があったのか?と言えば、そうではなかった。机の上には終始、お正月の残りが置いてあって、それをだらだらと食べていた。だから、昼になっても明確にお腹が減っている感覚はなく、またガツガツとした食欲も湧いてこなかった。

 そうして、田上がだらけきっている頃、父の賢助が慌てたように言った。ちょうど、タキオンが「さすがに肉も食べたいね」と言って箸を伸ばそうとしているときだった。

「ああ、どうしよう!写真を撮っておかないといけないんだった」

「また、写真撮るのか?」

 父の誰に言ったのかも知らない言葉に田上は返した。すると、賢助は田上の方を見て言った。

「いや、二日に皆で撮ったのもあるけど、最初は、俺たち三人で撮ってこれに入れておこうと考えていたんだ」

 そう言って、賢助は小さい棚の上に置いてある空の写真立てを指差した。

「ただ、あの写真も中々良かったから、どうしようか悩んでいるんだ。……ほら、統一感がないだろ?あの全体写真だと」

 確かに、家族写真が三枚、ほとんど同じ構図とくると、昨日の祖父母やタキオンも入れた写真は統一感がなくなるのは否めなかった。そこで、幸助が口を挟んだ。

「早くしてくれないと、どっちにしろ、俺、昼を食べ終わったらもう帰るからね?」

「う~ん、そうだよなぁ…」

 賢助は、腕を組んで悩んでいた。そして、タキオンが肉をパクパク食べながら、事の成り行きを見守っていると、チラと見てきた賢助と目が合った。なにかタキオンのことでも悩んでいるようだった。まだ、う~んと言って悩んでいる。

「とりあえず、撮ってしまえば?損はないし」と田上が言った。

「そうだよなぁ…。だけどねぇ…」と悩む賢助。

「何を悩んでいるんだよ。さっさと決めろよ」と幸助が急かした。

 賢助は、息子二人に急かされながらもまだ決めきれない様子だった。だから、不図思いついたタキオンはある提案をした。

「私が、この場にいたら邪魔でしょうか?邪魔でしたら隣の部屋までどきますが」

 すると、賢助がさらに頭を抱えた。

「邪魔じゃないんですよ。邪魔じゃないんですけど、……ただ、アグネスさんを家族写真に加えてもいいものかと…」

 途端に、場は騒然としたのかしていないのか分からない心地になった。というのも、皆口では黙っているのだが、頭の中では様々な事を言っていたからだ。

 幸助は、「なんだよ。そんなことかよ…」と呆れていたし、田上は、「家族!?いや、ダメだな。倫理的に」と否定していた。そして、賢助はこのことでタキオンの機嫌を損ねたくはない一心で、タキオンの方を見つめていた。タキオンも賢助が言いたがらなかった理由が分かったようだ。家に招き入れた息子の客人を家族扱いするなど、勘違いも甚だしいということだろう。しかし、賢助にはどうしてもその願いを叶えて欲しかったようだ。息子が連れてきた女の子を娘と思いたかったようだ。

 タキオンは、その場ではもうどうしようもなくなったから、こう言った。

「私を家族写真に加えてしまって、後でどう思うおつもりなのでしょうか?」

「良き思い出です」

 賢助は、澄んだ瞳でそう返した。

 タキオンもそれを見ると、何も言うことはなく、自身のトレーナーである田上の方を見た。田上は、少し焦っていた。父が自分の思いを汲み取って、少しばかりのご褒美を与えようとしているのではないかと思えたからだ。タキオンと家族になれるなんて、夢のまた夢だから、一生叶うことはないと思っていたものだ。それが、今ここで実現されていようとしている。少し怖かった。だから、何も考える事も叶わず、焦るように田上はこう言った。

「タキオンがいいんだったら、俺はいいけどね」

 だが、幸助は反対だったようだ。

「家族で写真を撮るのはいいけど、タキオンさんを入れて後で後悔しないか?本当に?だって、たまたま来ただけの人だろ?そいつを写真立てに飾ろうって言うんだから、それなりの覚悟がないといけない」

 幸助がそう言うと、賢助が怒った。

「こら、幸助。お前は少し口を慎まないと」

「いや、こればかりは俺は納得がいかないね。なんでタキオンさんが入るのか?その理由を明確にしないといけない。なあ、圭一?」

 幸助は、少し意地悪そうに田上に言ったから、動揺した田上がこう口走った。

「父さん、幸助の言うとおりだ。タキオンはあんたの娘じゃないぞ」

 そう言われると、賢助も困ってしまったようだ。

「そうか……。そうだよな。すまない、アグネスさん」

 そう言って、遂には謝った。タキオンとしては、もう変な論争にはうんざりだったから、自分が写真に入るにしろ入らないにしろ、早く済ませてほしかったのだが、幸助がまたこれを蒸し返した。

「父さんは、本当にそれでいいのか?良き思い出じゃないのか?」

 すると、父は迷惑そうな顔をして言った。

「いや、これではアグネスさんに迷惑をかけるだけだと思った。もうこれ以上の話はいい。…アグネスさん、ご無礼を働いてしまい申し訳ない」

 再びタキオンの方に頭を下げた。その後は、少しいたたまれない空気になった。田上も少しがっかりしているようだった。タキオンは、写真のことなどどうでも良かったのだが、こうもいたたまれない空気になるとさすがに面倒だった。だから、田上の方に囁いた。

「君、いますぐ何かしろ。何か、この空気をどうにかしろ」

「ええ…?俺が?」

「そうだ。君だ。何か代替案を考えろ」

 タキオンにそう言われて、田上が「う~ん」と考えると、いい案が思いついた。だから、一時この話は終わりかと思われていた写真の話を蒸し返して言った。

「じゃあ、父さん。もう写真立てに飾るのはあの全体写真でいいから、お正月を一緒に過ごした記念としてタキオンと写真を撮ろうよ。それがいいよ」

 その田上の提案に賢助も顔を輝かせた。

「おお、それがいいな。幸助もそれだったら問題ないだろ?」

 幸助は、微妙な顔をして「うん」と頷いた。

「ほーんと、最初からこうすりゃよかったのに、どこで食い違ったんだか」

 田上は、そう言って、タキオンの方を見た。タキオンもそれで場が明るくなるのだったら満足だったようだ。しかし、その後でどうやって写真を撮るかで少し揉めた。だが、こちらの対応も全て田上の方に任せて、タキオンは一人で黙々とご飯を食べていた。

 それから、写真を撮る段になって、タキオンは箸を止めて賢助の周りについた。そして、賢助と幸助を前、田上とタキオンを後ろにして膝立ちさせると、真正面の方にカメラを置いて、写真を撮った。それは、とてもいい一枚になって、賢助が自分のスマホのロック画面にしたばかりか、田上もその写真を欲しがって、遂には幸助もその写真を欲しがった。

 タキオンは、記念として貰っておいたが、その出来栄えには少し感慨を抱かざるを得なかった。まるで、自分が田上家の一員の様な気がしたからだ。しかし、その思いはあまりタキオンの好ましからざるもののように思えたので、振り払った。自分は、まだアグネス家の中にいた。少なくとも、誰かと結婚するまではそうでなくてはならないのだ。

 その思いは、少しの間タキオンの心の中でくすぶったが、やがて昼食を食べて腹を満たしていくにつれ、その思いは鎮火していった。

 

 十二時半になると、幸助は「俺はもう行く」と言って、あらかじめ準備してあったバッグを肩にかけると家から出ようとした。写真騒動で満足に食べていられなかったように思えた。だから、父の賢助はせめてご飯をラップの中で丸めたものだけでも持たせようとしたのだが、幸助は「いらない」の一言で済ませた。

 そして、見送る人々に握手をして回った。これは、母が生きていた時からの定例だった。出て行く人を握手で見送る。学校に行くときなどは、毎日母がこうしていた。しかし、母と最期にしたのは、入院する前の時だっただろうか?田上には、よくも思い出せない遥か昔のことだった。

 まず、幸助は田上に握手した。少し物言いたげな顔をしてから、その言いたいことの半分だけを田上に吐き出した。

「お前の気持ちもわかるよ」

 田上には全く見当もつかなかったが、とりあえず、握手をするとその後にその意味を考えた。結局、何のことだかは分からなかった。

 次に幸助は、賢助と握手をした。

「父さん、また次の母さんの日にね」

 そう言うと、殊にきつく握手をした。

 そして、最後にタキオンの方を向いて握手をしようとしたのだが、手を伸ばそうとしたところで思いとどまった。しかし、タキオンの方は握手する気があったようだ。手を伸ばしてきたので幸助も慌てて手を差し出した。

「お前……」

 何も言うことを考えていなかった。

「…お前…は、あんまり圭一を困らすようなことはするな。それに、次のレースも勝てよ」

「ああ」とタキオン不敵に微笑んだ後言った。

「君のなっちゃんによろしくね」

 幸助は、最後の最後に痛いしっぺ返しを食らったようだ。物凄く嫌そうな顔をすると、こう言った。

「お前にだけはなっちゃんに会わせないから」

 タキオンは、ハハハと笑った。それから、幸助はこの場にいた全員に「バイバイ」と言うと玄関のドアを開けて出て行った。

 田上はそれで良かったのだが、父の賢助がまだ別れを惜しむようで、急いで靴を履くとドアを開けて自分も外に出て行った。

 

 幸助が出発した後、田上とタキオンは誰もいない部屋に戻った。なんだか、人が一人いなくなっただけだと言うのに、それ以上のものが消えたような気がした。すると、田上のその様子を感じとったタキオンが言った。

「君、弟のことは嫌いとか言っていなかったかい?」

 それを言われると、最初は何を言っているのか理解できなかったが、暫く後に理解できるとこう言った。

「...まぁ、あいつはいけ好かないやつだよ。ただ、...家族だからな。いなくなると寂しくなるもんだよ」

「そんなものかい?」

 タキオンがニヤニヤしながらからかうように聞いたが、そんな様子には全く気付かずに「そんなもんだよ」と返した。

 二人は炬燵に入った。タキオンは、もう田上にくっつこうという気はなかった。田上はそれを少し寂しく思って、チラとタキオンの方を見たが、当の本人は何も気が付かないようで不思議そうに見つめ返すだけだった。それをされると田上にはもうどうしようもないから、残念そうな顔をして昼飯をだらだら食べながら面白くもない正月特番を見た。

 タキオンは、昼飯をある程度食べると、今度はお菓子を食べながら読書タイムに移行するようだった。ただ、本が手元になかったから、一度隣の部屋に置いてある本を取りに立った。それから、戻ってくるとタキオンは田上の隣に座ったのだが、田上にはその距離が先程よりも近しいもののように思えた。さっきは、肩と肩なんて触れ合わなかったのに、今は、それが触れ合っていて、優しく擦りつけてくるようでもあった。

 こうなると、田上もタキオンの態度が、今一体どうなっているのか分からなくて、少し緊張した。手に汗が滲んだ。そして、遂には耐え切れなくなると、そっと少しだけタキオンのいない右の方に動いた。すると、田上の思惑とは外れて、タキオンも少し右に寄ってきた。本ごと移動して、少し右にずれたのだ。田上は、それを見て嬉しく思ったが、同時にやっぱりどうしたらいいか分からなくて、とりあえず、離れてみようとまた右に少しずれた。すると、タキオンも右に来る。もう一度、それを繰り返すと、タキオンが本から顔を上げてこちらを見て言った。

「君、なんでそんなに移動を繰り返すんだい?本に集中できないじゃないか」

 タキオンの声は、平静そのものではあったが、ほんの少しだけ怒りの成分も混じっていた。田上は、そのことは気にも留めないで言った。

「タキオンがあんまり近いから、俺も少し嫌になっちゃって」

「嫌?」

 タキオンが、不安そうにそう聞き返したから、田上は慌ててこう返した。

「別に嫌ってわけじゃないんだけど、ちょっとくっつくのが…」

 最後は曖昧にした。すると、タキオンはまた少し怒りの成分をにじませてこう言った。

「くっつくのくらいこの帰省の間、ずっとしてきただろ?何を今更躊躇っているんだい?」「だって…」

 そう言いかけたところで、引き戸が開いて父の賢助が入ってきた。どうやら、駅まで幸助を追いかけることはしなかったようだ。早い帰りだった。

 賢助は、家に入ると、二人が少し言い争う声を聞いた。だから、何事だろうかと思い、この部屋の中に足を踏み入れた。

 賢助の第一声はこうだった。

「何だ?喧嘩か?」

 途端に二人が、驚いた顔をしたので、賢助は少し場違いな所に迷い込んでしまったような気がした。しかし、用もないのに台所にいるわけにもいかず、賢助は田上たちとは対辺の炬燵に潜り込んだ。そして言った。

「喧嘩ならどうぞご自由にやってくれて構わないが、声は荒げないようにしてくれよ」

 実際、田上たちは声なんて荒げてはいなかったが、一触即発の雰囲気はあったので赤らめた顔に反省の心を抱いてこう囁き合った。

「トレーナー君、とりあえず、落ち着いてくれよ。肩を寄せるくらいどうってことないだろう?」

「…いや、俺はいつもどうにかあったんだけどね。お前が、大変そうだから仕方なく付き合ってあげたんだよ」

「それなら、今も付き合えばいいじゃないか」

「それは、お前、今は大変そうじゃないもん。学校に早く帰りたいって言ってたじゃん」

「そんなものは気持ち一つ次第でどうにかなる。今は、少し君に…」

 ここでタキオンの理性が働いた。今、自分が恥ずかしいことを言おうとしているのではないかと思ったからだ。しかし、ここで話を止めてしまっては、得られるものも得られないので、恥を忍んでこう言った。

「君にくっついてほしいんだよ。ここに来てからのいつも通りの私だよ。君に、ほんの少しだけ甘えたいんだ」

 こう言われると、田上も少し嬉しくなって、顔がニヨニヨしてきそうになったが、手でせめて口元だけでも隠すと、たどたどしくこう言った。

「俺、もう炬燵で寝るから好きにすれば?」

 そう言って、机の上に腕を組むとその間に顔を伏せて、自分のニヤけた顔を見せないようにした。だが、寝ると言ったのは、口から咄嗟に出た嘘だったのですぐに起きると落ち着かなくタキオンのことを気にした。

 タキオンは、それはもう心地よい読書時間を過ごせたようだった。甘いお菓子を食べながら、隣にトレーナーを置いて、自分の興味のある事柄について書いてある本を読む。これ以上にいいことはないかに思われた。だが、それでも途切れ途切れのことであったようだ。それは、落ち着かなかった田上が頻繁に立ち上がっては座ることを繰り返していたからだ。

 タキオンは、このことについて迷惑などは感じたが、特に不安な感情は感じなかった。それがいい兆候なのかどうかは分からない。ただ、少しだけもう少しだけ自身のトレーナーと一緒にいたいという感情は、芽生えつつあった。

 

 それから時が経って、賢助が幸助のいなくなった部屋を寂しく思っているうちに夕飯の時間が来た。今日の夕飯は一人分少なく作った。最初は、いつもどおり作ろうと手を動かしていたのだが、途中で気が付き、切ってしまった野菜の分は冷蔵庫に保管した。

 正月の残り物はもうなくなった。昼に田上が、だらだらと食っている時点で、もう残り少なかったのだ。だから、もう少し田上がだらだら食うと、最後に残っていた野菜の切れ端も綺麗さっぱりなくなって、少し汚れた皿が食卓の上に残った。

 賢助は、それをすぐに洗って片付け夕食に備えさせた。だが、夕食にその皿は使わなかったようだ。一枚残ったその皿は、また再び来る次の機会へと棚の中に預けられた。

 タキオンは、夕食になると、自分の読んでいた本を片付けて、食卓に夕食が並べられるのを待った。その間、田上と一緒にテレビを見ていたのだが、その内容は夕方のつまらない子供アニメだった。こんな時は、幸助がいるときであれば、ゲームに飽きた幸助と田上の会話に耳を澄ませたりもしていたのだが、生憎、幸助は自分の場所へと戻ってしまった。そして、今のところ田上は会話をする気はないようだった。死んだ目をしながら、つまらなさそうに頬杖を突いて、熱心に子供アニメを見ていた。

 試しにタキオンは、田上の前でテレビを遮るように手を振ってみた。だが、反応はなかった。そうすると、タキオンは、田上が子供アニメなんて見ていないことに気が付いた。目は、熱心にテレビに注がれていたが、実は見てはいなかったのだ。なので、次にタキオンは、田上の無防備に開かれた脇腹を突いた。すると、目だけが動いて、迷惑そうにじろりと睨まれた。田上の注意を引くことができれば、タキオンの意中だったので、嬉しそうにクククと笑って言った。

「君の脇腹があんまりにも無防備だったからくすぐってみたくなったよ」

 だが、迷惑そうな目は相変わらず迷惑そうにタキオンに注がれていた。すると、タキオンも困ってしまって、苦笑しながらこう言った。

「…なんだい?もしかして、君の逆鱗にでも触れてしまったのかな?」

 ほんの冗談のように言ったが、その顔は変わらなかったので、少し面倒臭くなったタキオンはその鬱憤を晴らすために「ここが君の逆鱗だったのかな?」と言いながら、その脇腹をもう一度なぞった。その途端に、田上は、くすぐったそうに「ああっ!」と声をあげて、脇腹にあるタキオンの手を払った。

 そして、少し顔をにやけさせてこう言った。

「お前、暇なんだろ?なら、黙ってテレビでも見て待っとけ」

 タキオンは、顔をしかめた。

「あのアニメ面白くないだろ?実際、君もつまらなさそうに見ていたじゃないか」

「俺は…、少し考え事をしていただけだ」

「考え事ってなんだい?」

「考え事だよ。帰ってからとか、そういうもの」

「なら、君はもう戻る気でいるんだね?」

 タキオンがそう言うと、今度は田上が顔をしかめた。

「俺は別に戻らないなんて言ってない。戻りたくないだけだ」

 タキオンは、田上の言葉を聞くと、面白そうに、そして試すように田上をじっと眺めた。それから、賢助がタキオンの席の前に置いた皿を「ああ、ありがとうございます」と言って受け取ると田上に言った。

「私が戻りたくないなんて言ったら、君はどうするつもりなんだい?」

「…お前が?……どうしてもダメだって言うんなら、頑張る」

「どういう風に?」

「それは、懇切丁寧にタキオンに接して、悩み事なんかを聞くしかないだろ?」

「それで分からなかったら?」

「それはその時だよ。あんまり先のことで悩んだって仕方がないし、…それにお前は帰るつもりなんだろ?」

 田上がそう言うと、タキオンは少し目を逸らして、再び戻すと言った。

「…勿論、そのつもりさ。ただ、…やっぱりここにきて君に甘えたくなったりしたから、帰るのに少し不安になったり…もしてね。それで、君は私をどういう風に扱うのか聞いてみたわけだよ」

「ふぅん…」と田上は、頷いた。それから、賢助が運んできた皿を自分の方に寄せてくれるようにタキオンに頼んでから言った。それを言うことに少し照れが残っていて、ぶっきらぼうになってしまったのはタキオンも気付いていた。だが、言ったことと言えば、田上らしい優しい言葉だった。

「別に不安…とかにならなくとも、俺は…その…あんまりタキオンのことをないがしろに扱うことはないから安心してほしい」

 明るい電灯がチラチラと瞬いた。

「…だから、……タキオンはきっと帰れるよ。トレセンにだって、自分の居場所がないと言っていた家にだって」

 田上がそう言うと、タキオンは鼻をフンと鳴らしてテレビの方を見た。ちょうど、子供アニメが終わり、別の番組が始まろうとしていた。すると、それを見た田上が、「次の番組、嫌いだから変えていい?」と聞くと、タキオンがハハハと笑って言った。

「なんだか雰囲気ぶち壊しだよ?その言葉」

「いや、だって、この番組に出てるタレントが、なんか変で嫌いなんだよ」

 田上はそう主張した。それに、タキオンがまだ少し笑いを堪えながら、「いいさ、変えても」と言ったので、田上は少し納得のいかない顔をしつつも番組を変えて、ただのニュースにした。

 それから、一定の間隔を空けて賢助が皿を運んで行き、行っては戻り、夕食は炬燵の上に並べられていった。タキオンは、まだ皆が食べ始めるまで時間がありそうだったから、そばに置いていた本をまた手に取ると、鼻歌を軽く歌いながら読み始めた。それは、タキオンが田上を布団に無理矢理おいた時にかかっていた曲だった。その事に田上は気が付いた。だから、聞いた。

「それ、『大きな蛇』の曲だろ。好きになったのか?」

 タキオンは苦笑した。

「いや、頭に少しのぼっただけの曲だよ。…そんなに食いつかなくてもいいだろ?」

「いやいや、タキオンもあのバンドを好きになったって言うんだったら、おすすめの曲とかも教えてあげるつもりだったんだけど」

「そしたら、そんなのは願い下げだね。教えてもらえるのはありがたいが、好きになったのなら自分で調べるさ。特に、君の好きなバンドは歌詞が深いんだろう?」

 田上は、その言葉に少し嬉しくなった。あんまりタキオンとこういう話をすることはなかったからだ。

「分かってもらえてありがたい。そう、歌詞が深いんだ。深海ほどに深いよ」

 タキオンは鼻で笑った。

「私は、歌詞が深いからと言っても、音楽を聴くのはあまり趣味じゃないがね。君が垂れ流しているというのなら、聞いてやってもいいよ」

 そう言うと、田上が「じゃあ…」とスマホを持ち出してかけようとしたので、それを冷静に手で制した。そして言った。

「今じゃない。するべき時を弁えたまえ」

 タキオンに冷静に諭されて、田上は自分のスマホをしまった。その頃には、賢助も来ていたので、ニコニコしながら二人のやり取りを見ていた。そして、一人「いただきます」と言うと、ご飯を食べ始めた。

 田上たちもそれに倣った。それから、夕食の時間が始まった。一番賑やかな人が一人消えたので、幾分静かになったが、それでも楽しい夕食だった。時折会話する息子とその客人の姿を視界の端に捉えながら、賢助は密かにほほ笑んだ。

 

 夕食が終わると、段々に時間は過ぎていって、寝るまでは特に何も起こらなかった。しかし、布団を敷くという段になって田上はあることに気が付いた。

 田上は、もうすでに二枚敷いた布団の片方に立って、隣の部屋にいるタキオンに呼びかけた。

「…おい、タキオン」

「どうかしたのかい?」と向こうの部屋から聞こえてきた。

「…布団が二枚あるぞ」

 田上は、わざとその意味を説明しないで曖昧にし、タキオンに考えさせようとした。タキオンは、最初のうちは何も分からなかったようだ。「それがどうしたんだ?」と疑問に思いながら田上の方に行こうとしたが、その途中でやっと気が付いた。そして、何も言えずにただしかめっ面をして隣の部屋を覗いた。

 その顔を見ると田上はダメそうだと思ったが、とりあえずこう言った。

「幸助が消えたから俺たちも布団を一人で一枚使えるってことだけど…」

 タキオンは、相変わらずいい顔はしていなかった。ただ、タキオンは何も言わないので言葉を続けた。

「お前も布団の匂いは、慣れてきただろうし、そもそも俺たちの匂いが馴染んできた物だと思う。だから、俺も一人で布団で寝てもいいよな?」

 この質問は少し意地悪だったかもしれない。なぜなら、今のタキオンの顔はどう見ても答えは一択のような気がしたからだ。だけれども、タキオンはそれには答えず、答えを沈黙にして代わりに田上に答えさせようとした。ただ、田上としてもいつまでも女子高生と一緒に布団に寝るわけにもいかないので体裁としてはこの姿勢を貫かないわけにはいかなかった。タキオンが何か言わない限り。

 なので、布団を敷いて、もう寝る準備を始めた。自分は幸助が寝ていた布団に入り、タキオンは二人で寝ていた布団に入らせようとした。だが、「もう電気を消すよ」というタイミングで、それまで黙っていたタキオンが、布団の上に座りながら拗ねた声でこう言った。

「…意地悪だ」

 もうそろそろ言う頃合いだと思っていたので、田上は冷静に「なにが?」と返した。すると、もっと拗ねた声をしてタキオンは言った。

「君だよ。…なんで、私に優しくしないんだ?君だって、分かっているだろう?私が、一枚の布団に一人で寝るのは嫌だってことが…。それなのに君は見て見ぬふりをした。重罪だぞ。死刑判決だぞ」

 タキオンは、少し眠そうな目で田上を睨んだ。田上はそれを可笑しく思ったが、やっぱり冷静にこう返した。

「俺だって、いつまでも女子高生と一緒に寝るわけにはいかないよ」

「こんな時だけ『女子高生』だ。嫌になるね」

「そんなに怒らなくても…。少なくとも、お前は女子高生なんだ。こんな時だけじゃなくて、いつも」

「それじゃあ、女子高生だから寝るときは一人でお休みなさいって?結局、君は私を大人にしたいんじゃないか。道を示しているだけと言いながら、いつもこうだ」

 タキオンらしくない捻くれた物言いだった。それに、田上は少し頭を抱えて言った。

「別に……こう、……俺だって恥ずかしいんだよ。お前は、俺と寝れていいかもしれないけど、俺の恥ずかしさも分かってくれよ。…だって、お前は…華の『女子高生』だろ?」

 そう言うと、タキオンもカチンと来て、こう言い返した。

「華の女子高生なんてくだらないこと考えてないで、私の布団に来い!どうせ君はそのくらいしか役に立たないんだ!」

 これは、田上の癇に障った。タキオンもそのことに気が付いたのだろう。すぐに「ごめん」と繰り返したが、田上は、乱暴に自分の布団を剥いでタキオンの布団に行くと、何も言わないで目を瞑った。

 タキオンは、それを不安に思って、田上の頬や手にそっと触れて注意を引こうとしたが、遂に寝てしまうまでそれは叶わなかった。田上の心の中には、タキオンの言葉を聞いた時からずっと靄がかかっていて、それを気にするあまり、いい眠りにはつけなかった。それに、眠りにつくのにも大分時間がかかった。タキオンが、悲しそうに「トレーナー君」と囁く声が聞こえるし、さらにどこそこに触れてくる。これを無視して、安眠になどつけるはずもなかった。

 夢の中でもタキオンの声が聞こえてくるような気がした。

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