ケロイド   作:石花漱一

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三十七、夢③

 ただ、二人の会話は雨と傘のカーテンによって、度々遮られるようになっていた。タキオンはそれが多少もどかしくもあったのだが、先を行く田上が度々気を遣って振り向いては、タキオンの事を見つめてくれたので、それで大分マシになった。

 タキオンは度々立ち止まったので、田上もそれに付き合って、立ち止まることがあった。タキオンの視線は、大抵人の家に向かっていて、色彩豊かな花々が目に映ったときはそれをじっと見つめた。

 ——花の苗を買って、圭一君の家のベランダで育てるのも良いな、とタキオンは、家の柵の隙間からのぞく紫色のアヤメを見つめながら思った。その花びらには水が滴り落ちては、ぽたりと地面に落ちてゆく。土のいい香りもして、タキオンは本格的に園芸に興味を持ち始めた。その時になって、田上が少しタキオンと自分の傘をぶつけながら、隣に顔を覗かせた。

 田上は、その花をじっと見つめながら「アヤメ?」と呟いた。タキオンは、その花の種類までは分からなかったので、何も答えずに、花びらに当たっては落ちていく水滴をじっと見つめていた。

 やがて、田上も口を閉じた。二人共、じっと黙したままそのアヤメの紫色に光る花びらを見つめていたが、その家のなかの方から一際高い子供の声がキャハハハと楽しそうに聞こえてくると、二人共ぎくりと身じろぎをした。それから、良い切りでもついたようにタキオンが立ち上がると、「行こうか」と田上に声をかけた。二人は、それからも黙したまま、雨が降りしきる中を歩いて行った。

 

 田上とタキオンは、店の前にあった傘立てに傘をそれぞれ隣同士に並べて置くと、店の中へと入って行った。店の中の方は、体育館と同じように屋根に当たる雨がやけに響いていたが、特にうるさすぎるという事もないので、二人は、そのままカートを引いて歩いて行った。

 ただ、今日の晩御飯の事を何も考えていなかったので、二人共立ち止まって考える必要があった。タキオンもなんでも良さそうだったし、田上もなんでも良さそうだったから、暫く考えていたが、唐突に、田上は魚のフライが頭の中に思い起こされたので、晩御飯はそれにする事にした。特に好きと言うわけでもないが、嫌いという程の物でもなかった。

 二人は、カートをゆっくりと引きながら、必要な材料を探して、籠の中に入れていった。途中で、冷凍食品のところを通った時に、田上が「やっぱりグラタンが良いかな?」と言ったのだが、もう粗方食材をカートに入れ終えた後だったので、やめることにした。

 ただ、明日の晩御飯の予定もあったので、田上は「明日はこれにしよう」と言いながら、その冷凍グラタンを手に取った。タキオンは、その時に、グラタンを美味しそうに食べる自分と田上の姿を妄想した。すると、唐突に――明日も泊まりたい、と思った。だが、これはもう念押しされてしまったのだからしょうがない。

 タキオンは、自分たちの愛を無闇に引き裂かれるのに少々不満だったのだが、今回ばかりは、明日も泊まることを諦めなければいけなかった。タキオンはそれでも不満だった。

 

 パンコーナーに着くと、田上はタキオンに「明日の朝ご飯は何にする?」と聞いたのだが、タキオンは、パンばかりじゃなくて、みそ汁などを食べたかった。それを伝えると、田上も「それもいいな」と賛同してくれたので、みそ汁の具材も買いに行く事になった。

 パンは、あれば良いと思っていた田上だったので、そのときに何個か籠に入れてから、少なくとも今週の分の朝ご飯は足りる様にした。

 そして、タキオンがお菓子を食べたがっていたので、レースの事も考慮に入れて一つだけ許可を与えることにした。すると、タキオンは、「君と一緒に食べるんだ」と言いながら、袋に入ったお菓子を持ってきた。田上はその量のお菓子は想定していなかったのだが、タキオンの仕草が愛おしかったので、ついつい何も言わずに許してしまった。

 

 帰りは荷物ができてしまったので、行きよりも少々大変だったが、二人共文句一つ言わずに黙々と歩き続けた。行きの時に立ち止まっていたアヤメの花も、流石に悠長にしている暇がなかったので、ただちらりと横目に見ただけで通り過ぎて行った。家からは、先程のような子供の声は聞こえなかった。

 家に着くと、田上がいつものようにドアを開けてくれたが、今回は手が塞がっていたので、足で何とか鉄のドアを支えて、タキオンが入るのを待った。タキオンは、こんなにしてまで気遣ってくれる田上を面白そうに見つめながら、部屋の中に入って行った。そして、自分の分の荷物を置くと、ドアの前で立っている田上の荷物もついでに受け取って、自分は中へ入って行った。田上もその後に入ってきた。

 田上とタキオンは、しばらくく冷蔵庫の前で荷物を整理していたが、時間も時間なので、タキオンだけ先に調理を始めることにした。無論田上の補助もあったのだが、魚のフライは簡単に覚えることができたので、そこまで、田上の補助を必要としなかった。それに加えて副菜を少々こしらえると、時計は七時二十分を指していた。二人は少々疲れ気味の様子ではあったが、自分たちが頑張ってこしらえた料理を食べると「美味しいねぇ」としみじみ言った。

 風呂を沸かしている時に、タキオンが田上の懐のなかで一緒に座って休まりながら、ぼんやりとこう言った。

「私、…思ったんだがね…?」

「うん」

「……一緒に風呂に入る時は、……水着であればセーフじゃないかって…」

 タキオンは十中八九駄目だろうと思ってそう言った。言わば、屁理屈や冗談のたぐいの話であった。けれども、二人の間にわだかまる問題であることに間違いは無いので、田上は少し答えにくそうな声を出しながら答えた。

「……まぁ、……そうだろうけど、……ねぇ…」

「……まぁ、特に入るつもりはないんだがね。……昨日は悪かった」

「…気にしてないよ」

「……はぁ…」

 そうタキオンは、力無くため息を吐いた。今日のダンスレッスンでくたびれたのもあったが、今目の前に現れた蟠りがふたりの心を締め付けようとしてきたからだ。そして、二人共、その蟠りに抵抗する術はなく、言い出した方がその話を収めるしかなかった。

 その為に、多少の苦労を催した。今、多少気分のいい田上だって、この話に正面から向き合おうとすれば太刀打ちできる術がなかったのだから、その話は鞘に収めるしかない。この気苦労が、堪らなくもどかしかった。二人幸せに生きれるはずの人間が、つまらない外聞なんかに惑わされて、先に進めずにただため息を吐くばかりだ。

 なぜ、自分は幸せになれないんだ、とタキオンは思った。他のカップルならば、こんな気苦労はせずに自由に風呂に入っていい。なぜ、自分たちだけなのか。なぜ、自分たちだけ、要らぬ苦労に苛まれなければいけないのだ。

 タキオンは、どこにぶつけようもない怒りに心を燻らせていた。

 

 二人は、何の諍いも起こさずに風呂に入り終えることができた。昨日の様に、風呂場と脱衣所で会話を交わす事もなかった。タキオンが、何も言わなかったからだ。タキオンは、昨日の夜の出来事を苦い思い出と捉えていたから、もう当分の間はそれに触れずに暮らしたかった。彼氏は穏やかな人なので、よっぽどの諍いを起こさない限り、嫌な思い出に触れてくることもない。タキオンは、静かに、後ろで結んでいた髪を解いて、風呂場へ入っていった。

 両方の風呂が終わると、二人は布団のなかへ潜り込んだ。まだ眠るつもりはなかったのだが、タキオンが、「優しく抱かれたい」と言っていたのを田上は覚えていたので、昨日の償いとしても、その体をぎゅっと抱き締めてあげた。

 タキオンは、幸せそうな吐息を漏らしながら、田上に包まれていた。暫くの間、そうしたまま動かなかったのだが、やはり、どんな人間でもいつかは身動きをしたくなるもので、遂に、ほとんど二人同時に動き出した。田上は、自分の腕のなかでじっと動かないタキオンの様子を確認するために。そして、タキオンは、自分を抱きしめたままじっと動かなかった田上の様子を確認するために。それから、二人は、同じように問うような目付きで見つめ合った後、これもまた、ほとんど同時に微笑み合って、抱き締め合うのをやめた。一つには、少々暑かったというのもあった。

 その後に、田上は自分の腕の中からタキオンを解放した。タキオンも同時に離れたので、特に、片方に不満が残ることもなく、穏便に抱き締め合うことをやめることができた。田上は、昨日の夜に買えずにいた机を今買うことにした。恐らく、明日には届くだろう。タキオンは、その机を買う決心を田上がしている間、少しの茶々を入れてきたが、田上が「うるさい」と言うと、思い切って値段の安いほうを注文した。これで明日には恐らく届く。明日届かなくても、明後日には届くだろう。

 まだほかに欲しいものもあったから、タキオンと一緒にウマゾンで欲しい物を探した。まず、電子レンジだ。それを一覧から探している時に、タキオンが「あ」と言って画面を指差した。

「これ、うちの会社の製品だよ」

 田上は、びっくりしてその商品を眺めた。その名前は、田上も良く知っている名前だった。

「朝日家電!!? お前…!!! …そんな家系なの!!?」

「そうとも。…言った事無かったかな?」

「言ってない言ってない」

「しかし、私の姓は朝日川だと言うのは知っていたと思うのだけれど」

「ああ、……知ってたけど…さぁ…」

 田上はあまりの衝撃に呆然として、その電子レンジの画像を見つめた。朝日家電と言ったら、日本の一大企業の一つであることには間違いない。朝日グループの中の一つの会社だ。韋駄天堂とのコラボ家電だって、偶に見る。家電売り場に行けば、その会社の製品は必ずある。――なんてこった、と田上は思った。自分はとんでもない人と付き合ってしまった。

 タキオンは、田上の驚愕に少し不満そうだった。また、田上が自分と距離を置こうとするのではないかと思った。別に、隠していたつもりはなかったのだが、彼が知らないとも思っていなかったから、タキオンは不満そうな顔のまま「君、本当に知らなかったの?」と言った。

「……いや、……お前の苗字は知ってたし、朝日グループの社長が朝日川だったって事も知ってたけどさぁ…。…お前、一回も言わなかったじゃん」

「そりゃあ、……そこまで材料が揃えば、私がその孫だってことくらい想像できるだろう?私が、良いとこの出だってことくらいは君も知っているんだから」

「…いやぁ、…それでも、まさかその孫娘が自分の所に来ているとは…。てっきり、偶々同じ苗字なだけで、…もう少し…小さめの会社でもやってるものかと…」

「……そんなに驚いてもらうと困るんだがね…」

「ああ……、いや、…ごめん。…マジで、冷や汗がヤバい」

「……こんなことなら、言わない方が良かったのかな」

「いや、結婚直前にそれを言われても困る。むしろ、今言ってくれた方が助かるんだけど、……お前、こんな人間と付き合ってて大丈夫なの?」

「大丈夫だとも。君以上に良い人は居ないし、むしろ、君以外の人を選んでいたら、おじいちゃんは――見る目がないって言うと思うね」

「いや、……いや、……そんな、……俺はそんな育ちの良くない、ただの一般人だよ?」

「トレーナーになった時点で、ただの一般人と思うのはよしたほうが良いと思うんだがね」

「……俺は、…むしろ不安になってきた。……俺、お前の家に馴染める気がしないよ」

「…安心したまえ。何にも君は気にする事がない。お金持ちを化け物だと思うな」

「化け物だよ…」と田上は力無く言った。「特に、グループ企業の社長なんて人は、化け物中の化け物だよ。俺の人生の中で、そんなに、日本国民のトップ中のトップの人と触れ合う機会があるなんて思いもしてなかった…」

「肩書は日本国民のトップかもしれないが、一度家に戻ってきてみれば、酒飲んで笑ってるただのおじいちゃんさ」

「そりゃあ、お前は子供の頃から接してきてるだろうから問題ないけどさ。……お前、朝日グループと関係のある人間だと公表はしてなかったよな?」

「公表はしてなかったけど、……確か、知られてはいた。だから、月桂杯の時は、『朝日グループの孫娘が!』みたいな感じで炎上していたと思うんだけどな…。君は本当に知らなかったのかい?」

「んー……、お前について書かれている記事は、その時はもう読みたくなかったから、大半は素通りしてたからなぁ…」

「んー……、ニアミスかなぁ…」

「んー……、いや、苗字が同じだから、もしかしたら、っていうのはあったんだけど、…ニアミスで気が付かなかったのかもね」

「ふむ…」とタキオンが頷くと、彼氏の顔を不満そうに見つめた。「それで、……先程君が抱き締めていた朝日グループの孫娘について、なにか覚悟は御変りかな?」

「………怒られない?」

「君は、社会人になってまで怒られることを気にしているのかい?」

「日本国民のトップに怒られるのは気にしておりますとも」

「じゃあなんだい? 一緒に行ってみるかい? 私が小学生の時に住んでいた、祖父母の家の方に」

「祖父母の家に? ……まぁ、…正直、たった一か月付き合っただけでお義父さんたちの家に行くのも、尚早過ぎたと思っているんだけどね」

「今、…私たちが付き合って二か月か。…そんなに経ってないんだね」

「ああ、…色んな事があったような気がするし、その前からずっと一緒に居たからなのか、もっと長く付き合っているような気がしてたんだけどね。…まだ、二か月しか経ってない」

「まぁ、…おじいちゃんたちとは、これまで、…皐月賞の時に、一回会わなかったかな?」

「ああ、…ただ、控室にも長くいなかったからね…」

「普通のお爺ちゃんだっただろう? 君が朝日グループの社長だと気が付かないくらい」

「んん……。あの時名乗ってくれても良くなかったか?」

「いやぁ、おじいちゃんは無闇矢鱈に肩書を自称しない人だよ」

「……まぁ、いいや。…挨拶は、まだ行かなくてもいいよ。もうすぐ結婚するってなった時に、ちょっと行ってみるよ」

「……結婚ねぇ」とタキオンが、田上の目を覗き込むように見つめながら言った。田上は、まだ自分にそんな覚悟が無いのを見破られたくなくて、ふいと目を逸らした。

 話題が電子レンジに戻れば、また朝日家電の話も出てくるが、まぁ、偶然出会ったよしみとして、その電子レンジもついでに注文しておいた。そして、組み立て式の三段ボックスも注文しようかとも思ったが、これはまた後で買えばいいや、と思った。洗濯機は、ネットで買うか、店で買うか大いに悩んだ。特にこれと言った理由はなかったが、田上は実物を見てその場で買ってみたい気持ちもあったし、ネットで手軽にぽちっと買ってみたい気持ちもあった。どちらにも大した理由はなかったのだが、どちらとも妙に田上の心を揺らしたので、今回は結局、タキオンと二人で洗濯機の良い所や悪い所や昨日の種類なんかを調べて、自分たちが使うにはどんなものが良いか、なんとなく調べてみるだけにした。

 その時の二人には、チラチラと脳裏に土曜の出来事が思い浮かんできていたのだが、そうして不安になってお互いの事を見つめてみると、今の二人は、その出来事を乗り越えてきた二人だった。

 

 その夜はしっかりと二人で布団の中に入って眠った。眠る前には、タキオンからキスをせがまれたので、少ししてから電気を消した。このキスをしている時に、田上の脳裏に――タキオンは朝日グループの孫娘、という肩書が追加されていたが、――あんまりそれにこだわるのもよそう、と自分に言い聞かせると、タキオンだけにキスをした。タキオンは、キスのあと嬉しそうに田上の頬を撫でた。

 真っ暗になると、外の雨の音がうるさく感じられた。田上は、まだ少しうつらうつらしたまま起きていたのだが、いつの間にか隣のタキオンからすーすーと寝息が聞こえてきた。だから、田上は少しだけ身を起こして、暗闇に眠るタキオンの顔を見た。最早、自分の人生の深いところにまで食い込んできた愛らしい女性の顔だ。あまりに深く食い込んできたために、そこには痛みも感じたが、同時に、暖かさも感じられた。

 田上は、その頬に触ってみようとして少し手を止めた。自分の手が、汚い性格をしたバカで意地の悪い大人の手のように思えたからだ。田上は未だに、タキオンの華やかだったはずの人生を思うと忍びない。自分が、タキオンを深い所へ誘い込んでいるようなものだ。

 ただ、そう思った後に、田上は――彼女を幸せにしろ、と自分に言い聞かせた。――細かい事は気にするな。彼女が幸せになるように努力をしろ。

 それから、田上はタキオンの頬に思い切って触れてみた。やっぱり、自分の事をバカだと思った。

 

 タキオンは、少々胸が締め付けられるような悲しげな雰囲気をまとった夢を見た。だが、それは起きた時には大部分を忘れてしまっていて、ただ、何か悲しい夢を見たという気分しか覚えていなかった。

 用意していた目覚ましよりも早く目覚めてしまっていたので、となりの田上はまだ眠っていた。タキオンはその彼氏の顔をしばらく見つめた後、喉が渇いていたので台所に水を飲みに行った。それからついでにトイレにも行くと、彼氏の横に寝転がった。

 まだ、目覚ましが鳴るまでには三十分ほどあるが、タキオンはあまり寝るつもりにはならなかった。確かに、田上の隣に布団に入って、その手を握りながら温もっていると、段々と微睡みの中に入って行きそうだったのだが、いつもぎりぎりの所でハッと目覚めた。そして、心の中に、先程起きた時と同じような悲しみが広がっていた。その悲しみを感じると、堪らなく田上に甘えたくなったのだが、生憎、彼氏は眠っている最中である。

 それで、タキオンは暫く悶々としていたのだが、もう目覚ましが起動するのも近くなった頃、もうこの時間なら彼氏を起こしても問題ないだろうと思って、その体の上にそっと自分の体を重ねた。無論、起こすのも悪いからできるだけ起こさないように気は配った。タキオンがやがて、全身の体重をゆっくりと田上の上に落とすと、田上は少し唸ったが起きる気配はなかった。

 タキオンは、そこから頭の位置を少しずらして、田上の心音を聞いてみることにした。ドクッドクッと田上の心臓が全身へと血液を送り出している音が聞こえる。その音に少し耳を澄ませて、心地の良い気分に浸っていたのだが、やがて、飽きるとタキオンはまた田上の胸の上に自分の胸を重ねて、落ち着いた。しかし、それも少しの間だけで、またタキオンは田上の上で身動きをすると、田上の周りに手足を置き、上から田上の顔を覗き込んだ。あんまり安らかに眠っているとも言えなさそうな顔だったが、少なくとも、依然見た事のある険しい顔よりかは安らかそうではあった。

 タキオンはその顔をじっと見ながら、自分のなかに欲望が湧いたのを感じ取った。この人を自分の物にしたいと思った。その感情が、朝起きた時の悲しみから鎌首をもたげた。きっと許してくれるだろう。何て言ったって、自分は圭一君の最愛の人で、自分の最愛の人も圭一君なのだから、少しくらい首にキスマークをこしらえたとしても、怒りはしないはずだ。多少は迷惑に思うかもしれないが、何て言ったって彼は優しいのだ。いつだって、私の事を許してくれたから、私はここでこうして同じ布団で寝ることができる。今回も、たかが首に赤い痕が付いたくらい、簡単に許してくれるはずだ。

 タキオンは自分にそう言い聞かせると、そっと身をかがめて行って、田上の首に自分の口を寄せた。それから、できるだけ濃い痕が付く様に、音を立てずに吸った。田上は起きるかもしれないと思ったが、案外すぐには起きなかった。ただ、邪魔なものを追い払うように右手を少々動かしたが、それより後は暫く音沙汰がなかった。

 タキオンが尚も吸い続けていると、田上が「んー…」と唸りながら首を動かした。そして、明らかに起きたと分かる様な声色で、「んん?」と言った。まだ状況ができていないようだったので、タキオンはできるだけあとで田上が困ってしまうように痕を濃くつける努力をした。田上は、段々と状況が飲み込めてきたようで、ある時「こら」と悪戯している子供を軽くしかるような声を出しながら、タキオンの頭を軽く叩いた。タキオンは、素直にやめたので収まりは良かった。

 タキオンは、田上の首元から顔を上げると、悲しそうな、後悔していそうな表情で田上を見返してきた。田上は元より怒るつもりもなかったので、タキオンの頬を撫でながら「後悔するくらいならやめなさいよ…」と仕方がなさそうに微笑を浮かべて言った。

 タキオンは、「…ごめん…」と呟くと、田上の隣に寝転がった。その様子を見ていた田上と目を合わせると、タキオンは悲しそうに眉を寄せたまま、田上の首に手を伸ばして「ここ」と言い、自分の吸った場所を触った。田上も触ってみたのだが、少し濡れていただけで果たしてそこにキスマークがあるのか分からなかった。そして、鏡で確認してみようと、半身を起こしかけたところで、タキオンと目が合ったので、田上は微笑みながらそちらの方に手を伸ばした。タキオンにちょっとした仕返しをするためである。

 田上は、タキオンの柔らかい頬を人差し指でつつきながら「反省しろ」と軽く咎めるように言った。タキオンもその言葉が本気じゃない事は分かっていたので、田上に頬を人差し指で突かれながら、悲しそうにしていた顔に笑みを戻らせた。そして、田上はタキオンの表情に明るさが戻ったとみると、立ち上がって、タキオンを跨ぎながら洗面台へキスマークを確認しに行った。

 成程、確かに、喉の横辺りに赤い痕があるのが見てとれる。タキオンも田上の後についてきて、鏡の中に顔を覗かせた。

「どう?」とタキオンが平然としていながらも、少し申し訳なさそうな口調で聞いた。

 田上はキスマークを少しの間触って確かめながら、次にタキオンの方を見て「これ、蚊って事で誤魔化せるかな?」と聞いた。タキオンは、少し唸った後に「気にするのは、チームメンバーくらいじゃないかな?」と言った。

「………まぁ、蚊だし、チームの人も訳を話せば分かってくれるか」

 田上は自分に言い聞かせるようにそう言葉を発すると、その後に顔をじゃぶじゃぶと洗って、朝の支度を始めだした。どうやら、何か覆うことなどはしないで、そのままで行くつもりのようだった。蚊では恐らく説明された方も納得はしないだろうが、原因不明の痒い何か、と言い訳をすれば、納得はしてくれるのじゃないかと思う。タキオンはそれを後で田上に伝えようと思いながら、自分の顔を洗う順番を待った。

 

 朝食の白米とみそ汁は田上が作ってくれた。流石にまだ田上の方が手際が良かったので、朝の少々急がねばならない時間帯は田上がちゃちゃっと済ませることにした。

 タキオンは食卓でぼんやりとしながら、「君のみそ汁を毎日飲みたいなぁ」と言った。田上は、その言葉を戯言だと分かっていたし、返すべき言葉も見つからなかったので、耳に入れたのみで何も答えなかった。タキオンの方も気にしなかったらしく、またしばらくぼんやりとしたあとに、こう言った。

「………よくよく考えたんだがね?」

「……ああ」と田上は鍋の火を消しながら答えた。

「私の彼氏って優秀過ぎやしないかい?」

「そうかな?」と田上は唐突な褒め言葉に少しニヤリと口の端を歪めた。

「そうだろう? 家事はできるし、仕事もできる。しかも、完璧にだ」

「…家事はともかく、仕事は完璧じゃないよ」

「私にGⅠを三つも取らせておいて何言ってんだい。それに、少なくとも、人を思うという点においては、君はトレーナーとしては優秀以上だ」

「……人を思うだけじゃ、トレーナーは務まらないよ」

 田上は、鍋で炊いていた白米の具合をフタを開けて確かめながら言った。タキオンは、その元気のない後ろ姿を見つめながら、何か励ましの言葉でもかけてやろうかと思ったが、無闇に碌でもない言葉をかけてもしょうがないだろうと思った。だから、田上の後ろ姿にはただ「もうできそうかい?」と問いかけた。

 田上は「うん」と落ち込み気味に頷いた。タキオンは、田上の皿に盛るのでも手伝ってやろうと思って、立ち上がって彼氏の後ろから調理されている鍋を覗き込んだ。田上は振り返って、心持ち嬉しそうにタキオンの顔を見やると、「なにか用?」と聞いた。

「手伝おうと思って」とタキオンが田上の肩に親しげに手を置いた。それで、田上がタキオンの事をすこし見つめていると、タキオンも料理に注いでいた目を上げた。一瞬二人は見つめ合ったが、田上は戸惑いながら目を逸して、「…じゃあ、食器を…」と言った。

 田上は、タキオンの事を間近で見たときに美人だと思った。そして、美人だと思った自分に戸惑ったような気がしたし、思ったよりも美人であったタキオンに戸惑ったような気もした。それから、自分の隣に立って、白米を茶碗に持ってくれている女性が妙に背も高いような気がした。少し……自分に相応しいと言うと語弊があるかもしれないが、自分とまるで夫婦であるかのように隣に立っているタキオンが、怖くもあった。怖くもあったが、嬉しくもあったので戸惑った。

 そして、またタキオンの事をチラリと見ると、自分の指に付いたご飯粒をパクリと食べている彼女と目が合った。タキオンは悪戯っぽくニヤリと笑った。田上は、目を逸らして、自分の事をバカだと思った。

 

 タキオンは、朝食を食べている最中に、黙々と食べている田上に向かってこう言った。

「しかし、私が君と本格的に同棲し始めたとしても、君が優秀過ぎるから、私の役目が無くなるんじゃないかな?」

「役目?」と田上は聞き返した。

「そう。……料理だってできるし、掃除洗濯はお手の物。おまけに、このままの勢いだと私の身の回りの世話までしてくれるから、……果たして、私の役目はあるのだろうかと思ってね」

「……俺はそんなに万能じゃないよ」と田上は、先程の落ち込み気分を引きずっていそうな口調で言った。タキオンは、その田上の目を数秒程じっと見つめたが、田上が目を逸らしてご飯を食べると、自分もそのご飯を食べた。

 それから、またある程度ご飯の量も減った時にこう言った。

「………私の事ってどう思う?」

 田上は、質問の具体的な意図が分からずに、タキオンの顔を見つめたが、タキオンは自分のご飯に視線を向けていた。

「……好き?」と田上は、分からなさそうに首を傾げながら答えた。

「………ううん。……昨日の事。…無論、私や君が朝日グループの会社を継ぐわけではないが、私が、その孫娘だと初めて知って、どう思う?……嫌いになった?」

 タキオンが田上の目の奥にあるものを見るように、自分の目を見つめ込んでくるので、田上は目を左右に泳がした後に、机の一点を見つめながら答えた。

「……いや、……嫌いじゃないよ。…うん。嫌いじゃない…」

 タキオンは、この会話から何も生まれなかったことに気が付いて、この質問をした事を少し後悔した。この質問には多少自分の欲望が交ぜられていたからだ。自分の好きな恋人のことを考えるのであれば、さっさと朝食を食べ終わってその隣に寄り添いに行けばよかったのに、いつの間にか、胸のなかにある自分の不安を落ち込んでいる彼氏にぶつけてしまっていた。

 タキオンは、それから、自分のご飯を黙々と食べ続けると、食器をシンクに置いて田上の傍に来た。そこで寄り添おうと思ったのだが、丁度田上は朝食を食べ終わったところだったし、シンクに食器を置いても、もう学校に行く準備をしなければならなかった。タキオンは、朝の時間の短さにがっかりしながら荷造りを済ませた。

 そして、皿を洗い終わった彼氏を見た。彼氏は、もうほとんど準備はできていたから、あとは二、三やる事をやるだけで、もう家を出ることになる。

 タキオンは、今日もこの家に泊まりたいと思ってしまった。

 

 タキオンが家に出る時に落ち込んでいるのは見てとれたが、何ともかける言葉を田上は持ち合わせていなかったので、せめて、仕草だけでもタキオンを愛しているという事を伝えられるように、いつも以上に丁寧に彼女に触れた。タキオンもその事は大いに分かっていたのだが、自分のなかに潜む欲望は鎌首をもたげたまま下げなかった。

 タキオンは、それと必死に戦っていたのだが、どうにも欲望はこちらを疲弊させて来るばかりで、一向に勝てそうな気配はなかった。タキオンは、実の所、欲望と仲良くしてみたかった。それでいて、二人の間にはできない訳があった。

 優しい彼氏がいたのはタキオンにとって救いだった。しかも、その彼氏は、優しいだけではなくて賢さもある。優しいだけならば、今頃、タキオンの扱いに困って途方に暮れていたのだろうが、田上は、その優しさを豊かに使う術を持っていたから、多少タキオンの心を和ませつつ、学校へ戻ることができた。

 

 学校へ戻り、寮へ帰った途端に、タキオンはまた自分が住んでいる場所がここであることを思い知らされた。そうした後に、タキオンは――夢にくらい浸ってもいいじゃないか、と自分に言い訳をした。――折角、触れられるくらいに夢が近づいてきたのだから、それに浸らせてくれなきゃ、いつ浸れるんだ。 タキオンは、現実というものに多少怒ってもいた。

 それでも、タキオンは、自分のやるべきことをするために、乱暴に衣服を脱ぎきしながら、制服へと着替えを済ませた。

 外に行くと、田上が立って待っていた。ベンチを見てみると、少々湿っていそうな色をしていたので、昨日の雨がまだ乾ききっていないのだろう。

 今日の天気も曇りだが、多少の晴れ間は覗くらしかった。そして、雨も昨日ほどは降らない予定だ。その後に、タキオンは、自分が傘を田上の家に忘れてきてしまったという喜ばしい事に気が付いた。思いがけず、彼氏の家へ立ち寄れる理由ができた。ただ、すぐには言わなかった。田上は、タキオンにとって都合の良すぎる彼氏というわけでもないので、傘を忘れたと言っても、「俺が明日持ってくるよ」などと余計な事を言うだろう。それだけはどうしても避けたくて、その場で言うのは避けたが、そもそも行けたとしても、今日だけは田上の家に泊まる術はないのだ。――強引にしたら許してくれるかもしれない。タキオンの頭には、そればかりがどうしてもチラついていたが、今回ばかりは、最愛の恋人の信頼を裏切りたくはなかった。

 

 トレーナー室に着くと、やはり、マテリアルから田上の首の痕を指摘された。マテリアルは訝しがりながらこう言った。

「田上トレーナー、首の…それ、…赤い痕…、なんですか?」

「ああ」と田上はできるだけ平静を保つように努力しながら、タキオンの隣で言った。「朝起きたら痒かったんですよね。…目立ちますか?」

 むしろ、平静すぎる方が怪しいのかな、と疑心暗鬼になりながらも田上はそう言い切った。マテリアルは、無論、その痕の事をキスマークだと思っていた。しかし、あの生真面目な田上トレーナーに限って、まだ引退もしてないタキオンさんに手を出す事もないだろう、と思った。しかし、――タキオンさんに流されたのならば手も出すか? とも疑いもした。

 ――だが、とその後思った。

 ――だが、田上トレーナーは生真面目なりに、感情もあるから、もし間違いを起こしてしまったのだとすると、もう少し落ち込んでいそうだ。

 マテリアルの考えはそこら辺に落ち着いたが、タキオンの事は怪しいと睨んでいた。週末だけと言っていたのにもかかわらず、昨日も田上の家に泊まっていたようだし、そこで、タキオンさんが田上トレーナーが寝ている間に、首にキスマークをつけていてもおかしくはない。

 マテリアルの予想は半分当たっていた。

 

 その日は、特に何事もなく放課後まで事は運んだ。タキオンも多少の落ち込みが抜けきってはいなかったが、今日も泊まりたいとは一言も言わなかった。

 ただ、タキオンも放課後になると機嫌を悪くした。てっきり、田上がエスとリリックの模擬レースを見に行くから、自分はその横について、模擬レースを見物するのだとばかり思っていたが、どうやら、マテリアルが田上の代わりに指導をするらしかった。タキオンは、強く抗議した。田上もたかが模擬レースをやってる裏で、タキオンがトレーニングをするだけの時間だから、と甘く見ていたから、タキオンがここまで激しく嫌がるとは思わなかった。その内に、マテリアルの事を「あの女」呼ばわりし始めたので、田上も仕方なくタキオンの今日のトレーニングは休みとする事にした。ここから先、宝塚記念に向けて、集中力を高めていきたいと思っていた所だったのだが、この様子ではどうも、タキオンの集中は宝塚記念というよりも田上自身に向けられているらしかった。

 田上は少々辟易したし、タキオンもその態度を見て、自分のことを相当いやな奴だと思った。無論、田上はタキオンを勇気づけるために、すぐにその態度を直したのだが、どちらにしろ空気は湿気の多いジメジメとした嫌な空気になっていた。

 マテリアルは、「あの女」呼ばわりされて、傷付いていない事はなかったが、タキオンが面倒臭い女だという事も念入りに分かっていたので、言う程深くは傷ついていなかった。ただ、タキオンの事を心の中で「しょうもない女だ」とバカにして、嫌な気分を晴らそうとした。

 マテリアルが不思議だったのは、田上の忍耐強さだ。あんなの付き合っていたら到底手に負えない。自分だったらすぐ別れてしまっていただろう、と思った。そして、田上のその優しさと忍耐強さに感心したりもしたが、それよりも、タキオンへの苛つきが溜まって、――自分だったらとうの昔に別れてる、と蔑んだ。

 

 空気は苦かった。タキオンがごねた姿はリリックも見ていたし、いつもムードメーカーであるマテリアルの気分まで悪かったのだから、エスは自分の順番が来るまで居心地が悪そうに本を読んでいた。そして、丁度、自分が読んでいる本のページも恋人たちが別れそうな雰囲気を醸し出してきたので、少々気分が悪くなって、エスは本を閉じた。

 リリックが先にレースをする。十三人立ての模擬レースだ。今、リリックはウォームアップをしているのだが、少々不安そうにチラチラとこちらの方を見ている。リリックを見ていると、エスは弟や妹を思い出す。なんだか、世話をしてあげたくなるという感じだ。自分が元々世話焼きだからなのかもしれないが、自分より年下の相手をするのは嫌いじゃない。

 エスは長女であり、兄もいないので、兄弟の中では自分が一番年上だった。兄弟は、三歳下の弟、六歳下の妹、九歳下の弟がいる。綺麗に交互になっている。

 三歳下の弟とは、喧嘩ばかりを繰り返していたが、中学に入ってからは、もうしなくなった。エスが寮に住み始めたというのが一番大きな要素であるように思うが、歳もそれなりに関係しているのではないかと思う。弟の言動も、小学生の頃に比べれば、今はそんなに気にしていない。弟ももう中学なので、多少マシな言動はするようになっている。まだまだ苛つくようなことはするが、今は大分マシだ。下の妹と弟は可愛いものである。小学四年生と小学一年生なのだが、寮から帰れば、お姉ちゃんお姉ちゃんと寄ってくる。それに比べて、中学の弟は可愛げが無い。折角姉が休暇で顔を覗かせても、ゲームばかりして返事は「おー」の一つだ。無論、好かれたいとも思っていないので、別にそれで構わない。

 それに比べて、リリックはあまり自信が無さそうなので、ついつい相手をしてあげたくなることがある。それに、弟よりも人懐っこいので、相手のし甲斐もある。勿論、流石に小学四年生の妹と比べると、言動も整ってきているし、あくまでも他人であるので、距離も近くないのだが、それなりに友達として良い付き合いはできていると思っている。

 エスは、こちらを見てきたリリックに大きく手を振った。横の陰気臭い三人の相手などする気にもなれないので、今のエスの相手はリリックしかいない。リリックもエスに手を振られたのに気が付くと、嬉しそうに手を振り返してきた。エスの隣のマテリアルも、その様子を見ると、にわかに活気づいて、その隣に居るタキオンと田上なんてそっちのけで手を振った。

 田上とタキオンは、二人で身を寄せ合っていた。いや、タキオンが一方的に身を寄せているのではあるが、田上は特にそれに文句は言わなかった。できるだけ優しい顔になるようにはしているのだが、これからの事を考えていると、どうしても難しい顔が出てくることがあった。タキオンを勇気づけるために、田上は、特に些細な事など気にしないという態度をとることにした。まだ、そう決めてから一日二日しか経っていないが、早速いざこざは起きた。これに、田上が反発していたら事はもっと複雑になっただろうから、反発しなかった分、上手く収める事はできた。と言っても、状況は何一つ変わっていない。まだ、時間の経過をみる事は必要だ。田上も、なにも全てが一朝一夕で変わると思ってない。何より、自分の心の底のほうが変わっていないのだから仕方がないが、今はとにかくタキオンを幸せに笑わせるために自分の心血を注がねばならなかった。

 覚悟は多少あるが、状況がそれに追いつかない。田上も、先程、タキオンがマテリアルの事を悪く言ったのはあまり快く思っていなかった。しかし、それを表に出しすぎると、かえってタキオンはその事を気にし過ぎてしまうだろうから、田上はできるだけ優しくあらねばならなかった。

 目標というのは、タキオンがこれから先もずっと幸せな笑顔を作り続けて行く事だ。その中には、タキオンが他の女性のことを気にし過ぎないというのも含まれている。田上は、――なんでタキオンはマテリアルさんをあんなに嫌うことになったんだろう、とずっと考えていたが、それは堂々巡りになったので、割愛する事にする。

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