陽はようやっと落ちてきた。その頃には、カフェテリアも開くので、田上とタキオンは口数少なく、二人で歩いて行った。田上の怒りは冷めたというものの、食欲はあるとは言えず、タキオンに「ちゃんと食べたほうが体にいいよ」と言われても自分の料理は食べなかった。そして、テーブルについてタキオンの食事をぼんやりと見ている時に田上は後悔した。口の中は、涎が溢れてきて止まらなかった。しかし、田上にも一度言った事は曲げたくないというプライドがあるので、その事はおくびにも出さなかった。だけども、腹が鳴る事だけは押さえられなかったようだ。田上の腹が、テーブルの下でぐぅぐぅぐぅぐぅと鳴っていた。――どうかタキオンに聞こえていませんように。そう願って、田上は素知らぬ顔でタキオンが食べる姿を見ていた。すると、タキオンはニヤニヤしながら田上に言った。
「君、お腹鳴ってるだろ?やっぱり、食べたほうがいいんじゃないか?」
そう言われると、田上は顔を背けて「食べない」と言ったから、タキオンは少し後悔した顔をして、「この言い方は不味かったか…」と呟いた。
田上は、タキオンの食べる姿を見ながら、延々と口の中に涎を溢れさせ続けたが、タキオンの誘いを受けても一向に自分の料理を食べようとはしなかった。しかし、タキオンが「ほら、あ~ん」と言って寄越したものは、一度だけ食べた。食べ物の匂いの誘惑に抗えなかったし、タキオンに「一口だけでも食べてくれ」と頼まれたからだ。すると、田上の口に食べ物を詰めたタキオンはにやっと笑って言った。
「これ、恋人みたいじゃないか?」
途端に田上は、嫌~な顔をした。口の中で食べ物をもぐもぐしていたので、何か言う事はしなかったが、それより後には絶対にタキオンから食べ物を食べさせてもらおうとしなかった。それなら、とタキオンは自分のスプーンを渡して田上に自分で食べさせようとしたが、それはそれでやる気が起きずに断った。タキオンも少々ごねたが、田上が「もうここから出て行くぞ」と脅せば、不満そうな顔をしながらも、食べる事を催促するのは止めた。
そして、タキオンは食べ終わった。食べ終わる頃には日が暮れていて、暗い夜道を二人は歩いて帰った。と言っても、道脇にしっかりと明かりは灯されているので、真っ暗ではなかった。その道を二人は途中まで歩いて行き、寮の前で田上とタキオンは別れた。その時に田上は言った。
「いよいよだな」
「ああ、いよいよだね」
「明後日に、阪神の方に移動だ。だから、明日にはもう準備をしておかないといけないんだぞ」
「分かってる。今日の夜にはあらかた準備をしておくさ。…それで、明日のトレーニングは結局マテリアル君は来るんだっけ?」
「来ないように連絡するつもりではあるけど…、やっぱりマテリアルさんが可哀想じゃない?」
「私も…少しそう考え始めたところだ」
「じゃあ、どうする?連絡はしなくてもいい?」
「連絡?う~ん、…ちょっと待ってくれよ。………う~ん、…まぁ、…まぁ、あの人くらいなら居ても問題ないか。トレーニングと言っても遊び程度で私はしたいんだ」
「じゃあ、遊び程度のトレーニングと伝えて、その上で来るか来ないか聞く?」
「そりゃあ、聞く聞かないは君の勝手でいいが、トレーニングと言っても本当に遊ぶよ?午前中だから、あそこ誰もいないだろうし、バク宙でも側宙でも何でも楽しむつもりだよ?」
「じゃあ、俺も来なくていいんじゃないか?」
「いや、それはダメだ。君は来なけりゃならない。君分かるかい?側宙って何か」
「知らないけど…」
「いや~ダメだね。君は全くなっちゃいない」
そう言ったタキオンは得意気だった。
「側宙ってのは、側方宙返りの事さ。つまり、側転を手を使わないですることだね。私、幼い頃は、体操もしてたんだ」
「へ~、…でもタキオンがそんなのをしたところ見たことないけど、今でもできるのか?」
「最後にやったのが小四の時だから、その後は全然やってないけど、まぁ、今も運動はそれこそ第一線で続けてるし、できるだろ」
タキオンは、軽めに言ったが、それには田上も動揺して慌てて言った。
「お前、週末に大阪杯を控えてるんだから、それだけはマジで止めてくれ。できるだろ、でできなかったらどうするんだよ」
それでもタキオンは「できると思うんだけどなぁ」と引こうとする気配を見せなかったから、田上はもっと語気を強めて言った。
「本当にダメだから!せめて、大阪杯が終わった…後もダメだ。お前に怪我をしてもらっちゃ困る」
すると、タキオンが「何で困るんだい?私で金を稼がないといけないからかい?」とニヤニヤしながら聞いてきた。これは、どっちに転んでもタキオンの嬉しそうな顔は避けられそうになかった。もし、「お前で金を稼がないといけないからだよ」と答えれば、タキオンの予想通りの田上の言動で嬉しそうにニヤニヤ笑うだろうし、もし、「お前が大切だからだよ」とでも答えれば、それはそれで純粋に嬉しそうな笑顔でニコニコ笑いそうだった。田上には、その二つともがなんだか癪だったから、眉を寄せて返そうとしたが、その不機嫌そうな顔を見てもタキオンはニヤニヤしながら「え?どうなんだい?」と聞いてきたから仕方なく田上は答えた。
「怪我をしたら痛いだろ?」
「それは私の身を案じてくれているという事でいいのかな?」
田上は、最低限の捻くれた言い方をしたが、それもあっさりタキオンに見破られて嬉しそうな顔をさせてしまった。だから、もうどうでもいいやという気持ちになり、田上は「そうだよ」と返した。すると、タキオンの顔はもっと嬉しそうになった。
「君はいい子だね」
嬉しそうな顔のままタキオンは唐突に言った。その言い方が自分をバカにしているように感じたから、田上は眉を寄せて「なんで?」と聞いた。すると、タキオンはこう言った。
「君って素直で嘘の吐かないいい子じゃないか。今も素直に私が大切だと言ってくれた」
「言ってないし、お前、俺の事を平気で嘘を吐く人間だと貶してなかったか?」
「おや!そう言えばそんな事を言ったね。あれは、数少ない君の欠点の一つであり、また、個性でもあるのさ。さっきは、ちょっとイライラして言ってしまったから、強く聞こえたかもしれない。すまない。許してくれ」
タキオンが少し笑みを落としてそう言うと、田上は不機嫌そうな顔を限りなく無表情に近い不思議そうな顔にして言った。
「…いいよ…」
「そう言ってくれるとありがたい。これからも頑張ろうね」
タキオンはそれから田上の肩をぽんぽんと叩くと「じゃあね」と言って、自分の寮の方に行ってしまった。そして、田上は少しタキオンの行動の速さについて行けないながらも、小さく手を振って「じゃあね」と返した。
思い返してみれば、この一連の会話は田上にとって全く妙であった。いくらタキオンでも、いくら大切にされているのが嬉しいからと言っても、四十と例えられるような老け顔の二十代にあんな顔をするだろうか?勿論、田上はタキオンの親ではない。父親代わりにされそうなときもあったが、今のタキオンはその時よりも大分落ち着いているように見えた。だから、益々おかしい。なぜ、あんなにも嬉しそうにできたのだろうか?田上には全く持って不思議であった。
その事を帰りながら、寮に着きながら、シャワーを浴びながら、考えていると出てきた答えは、――タキオンが自分の事を好いてくれているのでは?という物だったが、あまりに気持ちの悪い考えだった。――大の大人が、十七に恋してどうする。そう頭の中で唱えて、自分を戒めた。思えば、田上も今年で二十六になってしまう。まだまだ、結婚への焦りという物は出てきそうになかったが、それでも三十、四十になった自分の姿を考えれば、一人ぼっちでいかにも惨めそうな未来しか見えなかった。
――十七に恋しているからそうなんだろう。もっと落ち着いた考えを持って、同じトレーナー職の中から良さそうな人を探すんだ。…例えば、マテリアルさんなんてどうだ?俺に気はなさそうだけど、もし、本当に恋人がいないのなら、交際くらいはしてくれるかもしれないぞ。
そうすると、また別の田上が頭の中で反論した。
――いや、あの人は美人過ぎて駄目だ。隣に立ってる俺が惨めすぎる。それに、交際したってお前の心の汚さが露呈するだけだ。お前が、自分の事で唯一知っていることと言えば、顔の出来が悪い事と心の狭さだろ?
その次に、三人目の田上が現れた。
――タキオンがいいよ。ずっと一緒に居てくれそうじゃん。君を助けるから待っててくれ、って言ったのを聞いただろ?俺は、待ってるだけでいいんだよ。
それに一人目が反論した。
――俺は待つのは嫌いだ。別の案にしろ。
二人目が出てきた。
――いっそのこと自殺しちゃえば?首なんてこの部屋でも簡単に括れるぞ?そうだ!週末にロープを買いに行こうよ!それがいい。その方がいい。…先の分からない道なんて進む必要はないんだ。リタイアしちゃえばいいんだよ。僕は人生に疲れました。ごめんなさいって。
――でも、それだとタキオンや父さんや幸助が悲しむ。…タキオンなんて、特にひどいだろうなぁ。俺の葬式があったら、喉が潰れるほど泣くかも。
一人目のタキオンが言った。そして、その次に二人目が言った。
――そうだろうなぁ。そこが俺のピークとして華々しく飾るんだ。お前の写真の周りには、白百合がたくさん飾られるだろうなぁ。そして、そこでタキオンが泣くんだ。なんで死んだんだよぉって。傑作だろ?これ以上にいい物語はないじゃないか?あと五十年真面な面して生きれるのかなんて分からないだろ?今のうちに終わらせておくんだよ。
まだ、二人目は話を続けたそうだったが、ここで三人目が口を挟んできた。
――タキオンに悲しい顔をさせちゃダメだろ?お前は、タキオンの事が好きじゃないのか?
――俺は、…タキオンの事は好きにはなりたくなかったんだ。あの時から全てが狂った。あの時までは、平常だったのにあの時から歯車が一つ取れて動かなくなったんだ。
一人目が、三人目に返した。そして、二人目が言った。
――そうだ。タキオンなんて奴の事は考えなくていい。いっそのこと殺して刑務所に入るってのもいいな。どんなふうにして殺す?勿論、タキオンだ。殺す相手なんてそれ以外にいないだろ。
そう言うと、一人目が言った。
――もう嫌だ!俺は、人なんて殺したくないし、タキオンなら以ての外だ!そんなこと言うんならお前の話はもう聞かん!
一人目の田上がそう言って、二人目を意識の外に追いやろうとした。二人目は、抵抗しつつも意識の底に落ちていき言った。
――いつか後悔することになるだろう。俺の言う事に従わなかったことを。せめて、お前が死ねば良かったんだ。お前が死ねば、誰も傷つかずにタキオンもより良い男と一生を共にするぞ。
しかし、この声はもう田上には届いていなかった。田上は、もうその事について何か考えるのを止め、眠りについた。それからすぐに眠りにつけたというわけではなかったのだが、長い時間はかからなかった。
田上は、夢で何を見ているのか、唸りながら何度も苦しそうに寝返りを打っていた。その頃タキオンは、田上から『おやすみ』のメッセージが来ないかと、スマホをチラチラ見つめながら、本を読んでいた。そして、勿論の事メッセージは来ず、また、タキオンの送ったメッセージも読まれた兆しがないので、タキオンは仕方なく田上に『おやすみ。先に寝るね。君も早く寝るんだよ』とメッセージを送って眠りについた。
翌朝起きても田上は、タキオンから来ていたメッセージに気が付かなかった。スマホを見た瞬間は何度かあったのだが、偶然にもLEANを確認する機会がなかった。それだから、タキオンからメッセージが来ていたのに気が付いたのは、トレーナー室にタキオンが来てそれを指摘されてからだった。
タキオンは、トレーナー室に入ってくると、まず朝の挨拶をして、それから話し出した。
「おはよう、トレーナー君。君、スマホはどうしたのかな?故障でもしてしまったのかい?」
「故障?…いや、してないけど…」
「あれ?そうかい、てっきり故障しているものだから、私にLEANでメッセージを送って来ないものだと思っていたけど…」
タキオンは、自分の予想が外れて少し呆然とした様子だったが、次の田上の言葉を聞くと、眉を上げて怒っているような可笑しいような、という顔をした。
「メッセージ?何か連絡することってあったっけ?」
「何ぃ?君、まさか私との約束を忘れていたわけじゃあるまいね?」
「約束?…あっ、マテリアルさんに連絡するのを忘れてた!今日来ちゃうかもな」
「それもそうだが、それは違う!なんで忘れたんだ!…私に――おやすみってLEANでメッセージを送るって言っていただろ!その為に私は夜遅くまで起きていたんだけどな!」
タキオンはそう言ったが、田上はあんまりピンときていない様子だった。
「…。ちょっとスマホを確認してみていい?」
「ああ、いいとも!」
そう言って、タキオンは拗ねた様子でぶつくさ言いながら、紅茶を淹れる準備をし始めた。そして、田上は自分の椅子に座りながらスマホを確認すると、今朝見落としていたメッセージが確かにあった。それで、それを読んでみると田上もあっと思い出して、同時に、申し訳なく思った。だから、田上は懇切申し訳なさそうにしながら、タキオンに言った。
「あの~、今思い出した。ごめん」
「あ~あ、君のせいで睡眠不足になっちゃたよ。何か、お詫びをしてほしいなぁ」
「お詫び?」
田上がオウム返しにそう聞くと、タキオンが拗ねているふりをしながら言った。
「肩を揉むとか、何かするとか、何かするとかあるだろ?そのくらい自分で考えたまえ」
すると、そこでマテリアルから田上のスマホに連絡が来た。『今日は大丈夫そうです。午前のトレーニングに参加します』と書いてあった。それをチラッと見て確認すると、今度はやっぱり拗ねた様にタキオンが言った。
「私のは今の今まで確認してなかったのに、どこかの誰かさんの連絡はすぐに確認するんだなぁ。…誰から来たんだい?」
「マテリアルさんからだよ。来るって」
「なら、今すぐそれに返したまえ。――今日はトレーニングではなく遊ぶ事になりました。来ない方がいいと思いますよ。来ない方が。来ない方がいい、とね?」
「なんで、そんなに来させたくないことを推すんだよ」
「そりゃあ、君と二人で居たいからさ」
タキオンがそう言うと、途端に田上は昨日の夜の時の考え事を思い出して、胸糞悪くなった。だから、思わずしかめっ面をしてしまって、タキオンを少し動揺させてしまった。
「そんなに嫌がることはないだろう」
タキオンは、顔に湛えていた笑みを落としてそう言った。それには田上は「ごめん」と謝って、それから、話し出した。
「…まぁ、お前の事も優先させたい節はあるけど、こっちにも都合ってもんがあるんだ。それに、昨日別れるときは居てもいいって言ってたじゃないか」
「ああ、そんな事を言ってたな。忘れてた。…あれは、気が変わったんだ。今はやっぱりダメだ」
「お前ももうすぐ十八になるんだから、そんな我儘言ってないで落ち着け。俺は、いつまでもお前のモルモット君じゃないんだぞ」
そう言われると、意外なことにタキオンは素直に引き下がって、「分かったよ」と言った。これは、タキオンが成長した証拠なのだろうか?田上はそう思って、不思議そうにタキオンを眺めた。タキオンは、紅茶の支度を着々とこなしていて、そして、紅茶がようやっとできた時に田上と目が合うと「何か用でも?」というように首を傾げて見せた。そして、手にカップを持つと、紅茶を一口飲んだ。
「美味しいねぇ」
飲んだ後にはそう言ってニコニコと笑った。それでも、田上は黙ってタキオンの事を見ていたので、タキオンはついに口に出して聞いた。
「何か用かい?」
「……いや、それ、俺のためのカップじゃなかったか?」
「ああ、火曜に割れてしまっただろ?だから、予備のカップはマテリアル君が使ってしまっているし、君ので済ませておこうと思って。…別にいいだろ?洗ってるし、君も大して使っていないんだから」
「…まぁ、いいけど」
田上は、そう言うと、デスクの上にあるパソコンを触りだした。大阪杯の予想人気を調べた。相変わらず、タキオンは一番人気でハテナキソラが二番人気だった。田上には、正直、このレースの底が知れなかった。確かに、中山記念で二着だったハテナキソラは凄かった。一着と二着の人気を覆せるくらいに最後の走りは凄かった。位置取りさえよければ、一着を狙えただろう。だからと言って、皆が皆口を揃えて「一着より二着の方が凄かった」何て言うのだろうか?田上には分からなかった。それでいて、中山記念で一着だったウマ娘は、去年大阪杯で勝利したストーリーテラーよりも人気は下と来ていた。これにはいよいよ分からない。一着の子はあまりにも走りが下手だと大衆には感じられたのだろうか?田上には、そうは感じられない。すると、別の理由があるのだろうか?
やっぱり田上には考えても考えても、人気についての推量はできず、マテリアルがトレーナー室へと入ってきて、やっと考え事は断念された。
マテリアルは、意気揚々と入ってきて、今の物思いに沈んでいる部屋には不釣り合いな声の大きさで「おはようございます」と田上とタキオンに呼び掛けた。田上は、考え事を潰されぼそぼそと「おはようございます」と返し、タキオンは紅茶の最後の一口を飲んで軽く「おはよう」と返した。
そうすると、タキオンは立ち上がって田上に言った。
「今日は何時からトレーニングをするんだい?」
「…ん?何時でもいいけど…」
「では今からは?」
「…いいよ」
その田上の言葉を聞くと、今度はマテリアルの方に向かってタキオンが言った。
「だそうだと。…君も大丈夫だろ?…ちなみに今日は大したトレーニングはしないで、遊ぶ予定なんだけど」
「遊ぶ?何をするんです?」
マテリアルが不思議そうな顔をして聞いた。
「特に何をすることもないが、私はトレーナー君と話しながら、何かするつもりだよ?」
「じゃあ、私は?」
マテリアルがそう聞くと、タキオンが少し申し訳なさそうに返した。
「あんまり今日は何もないよ。ただ、遊ぶだけなんだ」
すると、マテリアルは少し考えた後、顔を輝かせて言った。
「そうだ!ちょっと私と鬼ごっこしませんか?勿論私が追いかける方で!」
「…でも、君なんかじゃ私には到底追いつけないよ?」
そう言った後に、タキオンはチラと田上に目をやって、その目を田上と合わせた。そして、また目を逸らし、マテリアルの方を見た。
マテリアルは言った。
「追いつけないだろうって事は分かるんですけど、それでも挑戦してみたいんです!…ダメですか?」
そうやってマテリアルは首を傾げて、タキオンに懇願した。すると、タキオンもマテリアルの美しさやあざとさに目が眩みそうになって、慌てて言った。
「いいよ。いい。…頼むからそんな顔はしないでくれ。ドキドキする!」
あははとマテリアルは笑った。
そして、三人は今から行こうという話になって、トレーナー室を出て行った。