15時、WEEKEND GARAGEで。   作:青乃ナオト

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第1話

シブヤ、ビビットストリートにて。

 

「話題のパンケーキを出すお店が、この先にあるらしくてね。」

「急に“付き合ってくれ”って、そういう事だったんだね。」

 

ほんのつい最近、絵名はSNSでパンケーキを出すお店の情報を掴んでいた。ビジュアルは派手では無いものの、写真で見てわかる美味しさや、実際にうまい等といったコメントが多く寄せられており、これは行くしかないと思い、瑞希を誘った。

 

「しかし、すごい行列ね。」

 

絵名の言う通り、店の前には若い女性が大勢列を作っていた。それ程良いお店なのだろう。

 

瑞希とたわいもない会話をしていると、行列の先頭にまで来れたようだ。店の名前は…『WEEKEND GARAGE』絵名と瑞希が店のドアを開けた瞬間、その店の空気が変わった。

 

「いらっしゃいま…」

 

応対してくれた優男風のウエイター。そのウエイターの正体は、絵名のよく知ってる人物だった。

 

「あ、彰人!!?」

「絵名!!?」

 

まさかここで、弟の彰人とバッタリ出会うと思わなかった絵名。

 

「え、弟くん!?」

「暁山まで…一体どうなってんだ…」

 

弟の彰人とは、何かと衝突が絶えない。周りからは仲良いと思われることもあるようだが、少なくとも絵名は心を許していない。好きなスイーツの話題だと話が合うのは嬉しいが…。

 

「で、なんであんたがここで店員やってる訳?」

「ただのヘルプみてえなモンだよ…」

 

混乱真っ最中状態の彰人だが、二人を冷静に席に案内して、お冷を出す。

 

「でも弟くんのバイト先ってココじゃなかったよね?」

「それには色々訳があってだな…また日を改めて説明するからな。」

「オッケー!とりあえず、パンケーキ2つ欲しいな。」

 

瑞希がそう注文すると、彰人はテキパキと伝票にメモし、厨房に伝達する。あれほどの行列だ。苦労しているだろう。

 

「ねえねえ絵名、弟くんのウエイター姿イカしてない?」

「そう?」

「そうだよ!似合ってるし!」

 

確かに似合ってるかも…と一瞬思う絵名。しかし、それを認めるのがなんか癪だと思った。

 

「全っ然似合ってない」

 

そうこうしている内にパンケーキがふたつ運ばれてきた。

 

「ほい、お待ちどおさま。」

「なかなか美味しそうね。」

「味はオレが保証してやるよ。」

 

彰人はそう言うとさっさと厨房に戻っていってしまった。

 

絵名と瑞希はパンケーキをスマホで撮る。瑞希は食べた記録を残す為に撮るのだが、絵名は映えの為に角度や構図のために妥協を許さない。

 

「美味し〜〜っ♡絵名もはやく食べようよ!」

「もうちょっと待ってて!」

 

一足先にパンケーキを口に運ぶ瑞希。撮影に満足した絵名も続けて食べる。

 

「あっ、本当だ!すごく美味しい…」

 

クチコミに偽りなしのかなりの高クオリティのパンケーキだ。並ぶ価値はこれだけで十分だった。

 

「それにしても…」

 

パンケーキを食べる絵名。接客したり配膳する彰人を様子を伺う。彰人は多忙ながらもテキパキと動けており、莫大な量の客の注文を裁き、会計も済ませている。周りの客も満足気だ。

猫被りモードの彰人を見るのは良い気分にならないが、あそこまで丁寧に動ける彰人の事は素直に認めたかった。

 

(やるじゃん、彰人…。)

 

彰人や絵名に悟られぬように心の中で呟く絵名。犬猿の仲の彰人に遭遇したはずだったが、とてもいい気分だった。

 

「ごちそうさま、彰人。」

「おう。」

「すっごく美味しかったよー!弟くん!」

「ありがとな。調理担当のやつに伝えとくよ。」

 

そんな感じのやり取りをして会話をして、店を出る絵名と瑞希。

 

「さて、早速だけどSNSにアップしようかな?今日の撮影には自信あるのよ!」

「早速だね!どうやって投稿するの?」

「どうやってって…“話題のパンケーキ美味しかった”って投稿するつもりだけど…」

「“ウエイターの男の子かっこよかった”って投稿した方がきっとバズると思うよ〜?」

 

ニヤニヤした表情の瑞希。

 

「は!?絶対に嫌!!」

「えー…絶対にバズると思うのに…」

「仮にバズるとしても私は嫌!」

「ふーん、じゃあボクが投稿しちゃおっかなー!」

「それは別に、好きにしたらいいんじゃない。」

 

その日の夜、瑞希はSNSに美味しそうなパンケーキとイケメンウエイターの情報を投稿した。

 

その結果、その投稿がバズりにバズり、翌日は更に大勢のお客がWEEKEND GARAGEに流れ込むことになり、彰人を始めスタッフ全員がてんやわんやになるのだが…それはまた、別のお話である。

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