閑散とした森の中、男は息を止め目を見開き全力で弓を引く
鍛え上げられた体と男の周りにふわふわと漂う青白い蟲によって、男の弓の威力は、最強、理論値を叩き出すだろう
ギチギチと弦は張り詰ている、まるで矢を飛ばそうと息巻いているように
狙いを定め、呼吸を合わせ、男はついに矢を放った
男の放った矢はまっすぐと飛んでいき、
「……ふぅ」
物音一つなかった森に、急に音が戻る
男は一狩りを終えた余韻とともに、倒れたモンスターを剥ぎ取る
一仕事終えた男の大事な、大事な大事な剥ぎ取りタイムである。
男は、ハンターであった
「ナルガクルガの狩猟、お疲れ様でした! カケル!」
「おぅ、ありがと、ヒノエさん」
「いえ! 次はどのモンスターを狩りに行くのですか? 今度は私も連れてってくださいね!」
「あぁいや、うん、そうだね……」
「……?」
疲れた、疲れた疲れた疲れたァ!!!!
なんだよ最近はいったい! なんだって俺はこんなに狩りを頑張っているんだ!!
そもそも俺はハンターになんかなりたかねぇってのに!!
くそ、下手に
そのせいで教官にも里長にもギルドマスターにも目をつけられてしまったぞ!
そう、お察しの通り男、カケルは転生者であった……まぁ、とびっきりのヘタレではあるのだが
幼少期のころ、調子に乗ってみんなの前でモンスターの知識をひけらかし、前世からの憧れである武器達をノリノリで扱った、扱えてしまったせいで、男はこのカムラの里で一番期待されるハンターとしてもてはやされてしまったのだ
それから数十年、もうハンターの道しか残されていなかったカケルは皆の期待に答えて(答えたくはなかったが)ハンターになった
それからはもうずっとひたすらモンスターを狩るだけの生活である
ちなみに武器種は弓を好んで使っている
何故か、それは……
死にたくねぇからだよォ!!
とのことだ
まぁ弓を使ってようが死ぬときは死ぬが
「お! 戻ったね愛弟子!! 心なしか顔つきもハンサムになってきたね!!」
「ぅいっす、あっす」
「そんな君に、特別なクエストを用意しておいたよ! あとで確認しておくといい!!! では!!!!」
「は? え、ちょっと……!」
……行っちまった、ふざけんなよまじで
あのクソ教官が……
これでもう、何連勤だと思ってんだ
まぁ用意されたもんは仕方ねぇか、どれどれ一体どんなクエが……
……ジンオウガ2頭の狩猟!?
殺す気かあの狂人!?
「あ、カケル!! ウツシ教官のクエスト、受けるんですか? では準備しますね!」
「え? 見てただけ、って待って!! ちょっと待って!!!」
…………そんなこんなで、結局受けることになってしまった
馬鹿かぁぁぁああああ!!!
……はあ、もうしょうがない、行くか
それにしてもジンオウガ2頭ねぇ、ここ最近で一気にモンスターの数も増えてきた
……そろそろ百竜夜行が始まる時期なのかねぇ、あんまり行きたくないな、もう今日逃げちゃうか……
だめだな、思考がネガティブな方ばかりによってきた、こんなときは琵琶法師を思い出して元気をだそう
切った張ったの亡者共
ここで、カケルの狩猟方法を紹介しよう
業火の王が出で来たり
彼は、人一倍恐怖心が高く、ビビリだ、わざわざモンスターから離れられるように弓をつかい、その弓ですらゴリゴリに改造している
裁きを為すべく出で来たり
その改造とは、その弓をまともな人間では引けぬほど剛弓にし、その矢を極太に改造、そして毒をたっぷり塗りたくり、アツアツに熱し、ぐるぐると矢の全体にある刃を回転させ射抜いたところズタズタに壊す設計
彼の龍 怒れる断罪者
つまり、モンスターを一撃で殺すためだけの、最低な装備である
判決ぅぅぅぅぅぅぅ!!! 地獄行きぃぃぃいいいいいい!!!!
……よし、一頭目はおわり、もう一頭は……あっちか
さて、弓を引いてぇ……
判決ぅぅぅぅぅぅぅ!!! 地獄行きぃぃぃいいいいいい!!!!
よぅし! クエストクリア!!! さっさと帰って寝よ! もういいだろ! もういいだろ!!
もう俺は十分働いたぞ!!
一週間で一体いくつのクエをこなしたと思っている!!!
95だぞ95!!! 死んでしまう!
……ん? 何だあれ?
なんかとんで、火? 流れ星?
いやちげェ……
バッバッバッバッッッ!!??
バルファルク!?!?!?!?!?!?