オーバーロード 降臨、調停の翼HL(風味)   作:葛城

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ナザリック敵対系二次増えろ
おっぱいぷるんぷるん系の敵対増えろ
あたしゃそういう話が大好きなんだよ


(裏話)骸骨の狼狽

 

 

 

 ──とりあえず、しばらくココで待つ。ただ、我慢出来なくなったら向かうので、その時は覚悟しておくべきだ。

 

 

 

 

 そんな、死刑宣告にも等しい言葉を背中に投げかけられてから、早一時間。

 

 後はもう待つだけの段階(つまり、これ以上はマーレが居ても居なくても変わらない)になったので、悟はお伴たち全員を連れて、急いでナザリックへと帰還した。

 

 その際、カルネ村の人達に、育てた作物などが食べられないように見張っておいてくれと指示を出すのを忘れず。

 

 そうして、出迎えたNPCたちに軽く手を振りつつ、玉座の傍にて控えていた守護者たちに軽く挨拶をしつつ、ドカッと玉座に腰を下ろした悟は。

 

 

「──改めて報告を聞こう。いったい、何がどうなって、余所者をナザリックへ引き込む事になったのだ?」

 

 

 その言葉と共に、此度の問題における詳細な内容を語れと守護者たちに……特に、アルベドへと視線を向けた。

 

 どうして、計画を立案したパンドラではなく、アルベドに視線を向けたかと言えば、NPCたちを統括する立場だからだ。

 

 なにか起これば、まずはアルベドに話を通し、それから悟(アインズ)へと上げられる。

 

 つまりは、ナザリックに限らず組織運営の基本に沿った対応をしているだけで、それ以上の他意は全く無かった。

 

 アルベドに問い質したのも、要は集まっている者たちとの間に存在している、得ている情報量を均一にするためである。

 

 なので、悟はアルベドより諸々の説明が成された後で、改めてパンドラに……集まっている守護者たちの中に紛れている、己が作ったNPCへと問い質すつもりであった。

 

 

「──っ!?」

 

 

 だが、その前に……悟は、アルベドの異様な反応に軽く首を傾げた。

 

 具体的には、アルベドの肩が目に見えて震えたのだ。

 

 それはもう、電撃でも浴びせられてケイレンしたかのような、傍目にもはっきり分かるぐらいであった。

 

 

(……どうしたんだ?)

 

 

 一瞬ばかり、寒いのかと思って他の守護者たちにも目を向けるが……どうにも、そんな感じには見えない。

 

 というか、不思議に思ったのは、どうも悟だけではないようだ。

 

 その証拠に、他の守護者たちも、不思議そうに首を傾げたり、目を瞬かせたりして、アルベドの今の反応に視線を向けていた。

 

 

(あれ? もしかして、変に萎縮させちゃったりした? でも、考えたのはパンドラなのに、どうしてアルベドが?)

 

 

 普段のアルベドからは考えられないぐらいに狼狽えているその姿に、悟は内心にてちょっと混乱し……ああ、と納得した。

 

 相手が化け物であるとはいえ、上司(主)からの叱責によるストレスの辛さは、悟とて身に染みて理解している。

 

 

 もしかしたら、内心の不機嫌さが声や態度に出てしまったのだろうか。

 

 

 それなら、アルベドが委縮するのも致し方ない。というより、申しわけないという気持ちがちょっとだけ湧き起こった。

 

 

 ……なるほど、モモンガorアインズの時には、こういうのを見て絆されていたのかと、悟は思った。

 

 

 ナザリックにおいて、NPCたちが(アインズ)(正確には、ギルドメンバーたちも)へと向ける忠誠心は、もはや言葉で説明出来る代物ではない。

 

 NPCたちからすれば、悟からの叱責……あるいは、失望されるのが本当に嫌なのだろう。まあ、あれだけ神格化していれば当たり前かと、悟は内心にて納得する。

 

 思い返せば、特に深く考えているわけでもないというのに、何故か別の意味があると思われたことが何度か……止めよう、余計なことまで思い出しそうになった悟は、改めて背筋を正した。

 

 

「アルベド、詳細を話せ」

「……は、はい」

 

 

 とりあえず、何時までもコレでは埒が明かない。

 

 そう判断した悟が続きを促せば、それで観念したのだろう。アルベドは少しばかり頬を引き吊らせながらも、ポツリポツリと経緯を語り始めた。

 

 その内容は……まあ、詳しく語る必要はないだろう。だいたい、『伝言』にて語られた事と違いはなかった。

 

 

 ただ……気になるのは、その中身ではなく、外側。

 

 

 一通り話し終えた後で、『立案者のパンドラの暴走を事前に察知出来ず……』とアルベドが妙にしどろもどろに言い始めた……その辺りからだ。

 

 

 具体的には、困惑、だろうか。

 

 

 だいたい、そんな雰囲気。それまで邪魔をせず膝をついてその場に待機していた守護者たちの反応が、明らかに変わった。

 

 立案者のパンドラは……ハニワ顔なので表情に出ていないが、『えっ?』といった顔になっているのが、悟には分かった。

 

 パンドラですらそうなのだから、表情がちゃんと出る他の守護者(コキュートスは……分からない)たちの反応は、そりゃあもう一発である。

 

 頭上に? マークでも出ているのかと思ってしまうぐらいに、呆けた顔で首を傾げるシャルティア。アウラも、似たような顔で首を傾げている。

 

 

 ……これは、いったい? 

 

 

 状況が分からず、内心にて悟も首を傾げて、なにやら冷や汗まで流し始めているアルベドを見ている──と。

 

 

「──ゥアインズゥ様ァ! 少々、お時間を取らせていただいてもよろしいでしょうか!」

 

 

 唐突に……本当に唐突としか表現し様がない勢いで、パンドラがいきなり立ち上がった。妙にキザというか、大げさな動きであった。

 

 それはもう、他の守護者の肩が思わずビクッと動いたぐらいだ。その中にはコキュートスも含まれているあたり、如何に勢いが凄まじいかが窺い知れるだろう。

 

 

「え、あ、うん」

 

 

 あまりにアレなタイミングと勢いに、思わず悟は了承した。

 

 骸骨なので分かり難いが、悟もまた、守護者たちと同じく呆気に取られていたので、反応が遅れたわけである。

 

 

「Ende der Dankbarkeit(感謝の極み)」

 

(──ぐはぁ)

 

 

 そして飛び出す、ドイツ語とキザったらしいポーズ。服装もそうだが、妙に発音が良いというか、いちいち仰々しいというか。

 

 

 堪らず、悟は無意識に胸を押さえた。心臓など無いのに、キリっと軋んだような気がした。

 

 

 見やれば、他の守護者たち……アルベドは青ざめているが、他の守護者たちは一様に冷たい眼差しをパンドラに向けていた。

 

 それは、事情をほとんど理解出来ず、守護者たちからも少し離れた場所で待機しているユリたちも同様であり、唯一ツアレだけが首を傾げて……あ、止めて、お願い、そういうのが一番辛い。

 

 

(ぱ、パンドラめ……俺に恨みでもあるのか……!)

 

 

 思わずそんな事を思った悟だが、はっきり言って自業自得である。何故なら、パンドラは悟が作り出した唯一のNPC。

 

 それも、遅れてやってきた思春期のアレが真っ盛りの時に作ったNPCだ。

 

 具体的には、格好はドイツの親衛隊をイメージし、言動や仕草などは、当時の悟が『これこそが格好良い!』という浪漫の塊……それが、パンドラズ・アクター。

 

 おかげで、注いでいた情熱が深かった分だけダメージも大きくなる。その姿を見る度に、羞恥心が湧き出る程度には。

 

 ちなみに、反応が遅れた最大の理由がソレであり、つまりは、思い返すだけで身悶えてしまう黒歴史である。

 

 

「それでは……ちょっと、こちらへ」

「……うむ」

 

 

 とはいえ、その事を責めるのは酷というもの。

 

 パンドラの諸々を設定したのは悟自身なのだから、責めるとしたら自分自身である。

 

 

 なので、特に注意も出来ず、パンドラに促されるままに玉座を離れ……部屋の隅へ。

 

 

 さすがに、この状況でユリたちを引き連れて行くわけにもいかない。少しばかり迷ったが、その場に待機しておくように指示を出す。

 

 ついでに、守護者たちにその場に待機し、盗み聞きその他一切の盗聴を禁止し、そのうえで、戻るまで耳を塞げと指示を出しておくのは忘れない。

 

 

 そうして、だ。

 

 

 玉座の間は、かなり広いうえに天井も高い。入口から玉座まで、直線にして数百メートルはある。

 

 なので、部屋の隅まで行って声を潜めれば、それだけで秘密の会話となり、悟とパンドラは2人きりの状況となった。

 

 

「……それで、パンドラ。いったい、何用で私と二人きりに?」

「もちろん、此度の件……そして、アルベド殿のことであります」

「アルベドか……そういえば、先ほどから態度がおかしかったが、関係しているのか?」

「wie Sie sich vorstellen konnen(お察しの通り)」

 

 

 妙に様に成っている敬礼と共に告げたその言葉に、悟は首を傾げた。

 

 はたして、どんな内容が飛び出して来るのか……なんとも言い難い緊張感と共に、悟はパンドラの話を──。

 

 

 

「……つまり、私に褒められるつもりで進めていた計画だったが、怒られそうになったのでとっさにパンドラに責任を押し付けてしまった……というわけか?」

 

「Du hast Recht(正解でございます)」

 

 

 

 ──一通り聞いた悟は、盛大な肩すかしと共に呆れ果ててしまった。

 

 

 とはいえ、これでアルベドの異様な反応も説明出来るし、他の守護者たちが不思議そうに首を傾げていたのも納得が出来た。

 

 そりゃあ、困惑して当たり前である。

 

 直前まで主導していた人物が、いきなり主導していたのは別人だと話すのだ。他の者たちからすれば、『お前、いきなり何を……?』と思われて当然である。

 

 

(これは、どうしたものか……)

 

 

 さて、違和感の原因は判明した。

 

 しかし、そこで困るのが……アルベドの処遇である。

 

 アルベドがやったことは、単純に言えば責任を同僚に押し付けたのだ。そして、その行為は悟にとって……リアルにおける苦々しい記憶を想起させる行為である。

 

 なので、正直に言えば……統括の立場を外し、NPCの下っ端にしてやりたいぐらいだ。

 

 

 だが、悲しい事に……それをやれば、待っているのはナザリックという組織の崩壊である。

 

 

 何故なら、アルベドは単純に頭の回転が早いわけではない。

 

 『内務能力に長け、全階層のNPCたちを1人で管理する事が可能』という設定を与えられたNPCなのだ。

 

 書き込まれた設定が如何ほどに働くかは不明だが、けして無視して良い事ではない。

 

 実際、悟も詳しくは知らないが、次から次へと他のNPCたちに指示を出している姿を目にした事が、何度かあった。

 

 

 そんなアルベドが、その立場から居なくなる。当然ながら、悟に代わりなど勤まるわけがない。

 

 

 かといって、代わりを務められるNPCは……今のところ、思いつかない。悟の脳裏を過る守護者たちの、顔ぶれ……駄目だなと、内心にて首を横に振る。

 

 それに、必要なのは頭だけではない。立場上、頭は良くても低レベルなNPCを付ける事も出来ない。

 

 自分よりも弱いのに、(アインズ)の指令が下ったから上から命令される……反感とまではいかなくとも、思うところが一つ二つ出て来ても不思議ではない。

 

 それこそ、デミウルゴスを蘇生させて、ナザリック全体の指揮を取らせるぐらいのことをしなければ……いや、それだけは駄目だ。

 

 

(デミウルゴスを蘇生させるぐらいなら、このままパンドラに責任を……いや、俺としては、それはあまりに……しかし、何かしらの処罰を下さないと、今後にも響いて……)

 

 

 あーでもない、こーでもない。

 

 そんな感じで、悟が内心にて一生懸命落としどころを探していた……そんな時であった。

 

 

「アインズ様、お願いが一つあるのですが……よろしければ、このまま責を私に与え、アルベド殿の責任転嫁に気付いてはいるが、気付いていないフリをしてほしいのです」

 

 

 それまで黙って静観していたパンドラより、そのような提案が成されたのは。

 

 

「……どうして、庇うのだ?」

 

 

 当然ながら、悟は首を傾げた。

 

 悟からすれば、一方的に責任を擦り付けられようとしたパンドラが、その相手を庇おうとしているしか見えない。

 

 なので、率直に理由を尋ねれば、「可愛らしい愛ではございませんか」そんな返答が……んん? 

 

 

「好いた相手から嫌われたくない、失望されたくない、そう思うのはどんな生き物であろうと違いはありません」

「ふむ……?」

「最近のアルベド殿は、些か暴走気味でございました。ここいらで貸しの一つでも作ってやれば多少はおとなしくなりましょう」

「ああ、なるほど……そういうことか」

 

 

 意味が分からずに首を傾げた悟だが、そう捕捉説明をされて……ようやく、納得した。

 

 

『アインズは全て分かっていたが、パンドラの意を汲んで不問にした』

 

『統括の立場を悪用して、責任をパンドラに押し付け、それを通そうとした』

 

 

 この二つを持って、今後続くかもしれないアルベドの暴走を抑えよう……それが、パンドラの狙いなのだろう。

 

 確かに、この二つが通ってしまえば、アルベドは今後、今回のような上に話を通さない作戦や立案を行わなくなるだろう。

 

 

 なにせ、既にアルベドはアインズに『責任はパンドラにある』という趣旨の発言をしてしまったのだ。

 

 

 この後で撤回しようものなら、アルベドを庇おうとしたパンドラの顔に泥を塗り、その意を汲んだアインズの顔にも泥を塗ってしまう。

 

 このうえ、アインズに虚偽の報告をしたという失態を入れれば、3重のミス。いや、アインズの心情的な失望を入れれば、4重のミスとなる。

 

 いくら統括の立場とはいえ、そうなってしまえば謹慎なんて話では済まない。それこそ、全NPCの信頼を失うような大失態である。

 

 

「愛とは、恐ろしいものです。如何に聡明な賢者であろうと、こうも容易く道を踏み誤る。どうか、アインズ様……此度の失態は、私とアインズ様、この二つの胸の内に……」

「……そうだな。お前がそれで納得し、呑みこんでくれるのであれば私としても助かるが……本当に、それで良いのか?」

「Kein Problem(問題ありません)」

 

 

(……もしかしたら、パンドラが一番俺の意を汲んで動いているのかもしれないなあ)

 

 

 恭しくキザっぽく頭を下げるパンドラを見下ろしながら……内心にて溜息を吐きながら、ひとまずの落としどころを見付けられた事に、悟は安堵した。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………で、だ。

 

 

 そのようにして、今回の作戦の責をパンドラが負う形になったが……そもそもの問題は、そこで解決しなかった。

 

 

 何故かといえば、今回の作戦にて主導して動いていたパンドラの答えは二つ。

 

 

 一つは、既に止められない段階まで作戦が動き出しており、下手に中止すると、それはそれで不利益が生じるから。

 

 そして、もう一つは……遅かれ早かれ、今回のような状況は自然発生的に起こるから、らしい。

 

 

 確かに、言われてみたら、そうである。

 

 

 いくら土を被せて木々を生やし埋もれさせて隠ぺいしたところで、そもそも『ナザリック地下大墳墓』自体が巨大な建造物。夜ならともかく、近づけばバレてしまう程度には目立っている。

 

 実際、フライなどで空中から見下ろせばバレバレである。こればかりは、いくらマーレが頑張ってもどうにもならない。

 

 これまでは『トブの大森林』の傍という、あまり人が来ない場所だったからこそバレてはいなかったが……それも、時間の問題だろう。

 

 だから、あえて人間を引き込んでから追い返し、その後で、それを送り込んできた国へと直訴することで、ある程度の諸々の大義名分を手に入れよう……というのが、今回の作戦の大まかな狙いであった。

 

 

「……ふむ、分かった。そういう意図もあったわけだな」

「はい。帝国の協力者の話では、来るのは請負人(ワーカー)と呼ばれる者たちとのことです」

「請負人?」

「要は、様々な理由から冒険者組合を外れたドロップアウト組です。ハイリスク・ハイリターンな、何でも屋みたいなものでしょう」

「なるほど、そういう者たちもいるのか(リアルにも居たな、そういう人たち……)」

「もちろん、中には病気の家族や、己の正義に従った者、両親の借金を払う為にワーカーに成らざるを得なかった者もいますが……概ね、蔑まれている者たちです」

「……そ、そうか(やめろよ……そういうの、こっちが辛くなるじゃん)」

 

 

 玉座へと戻った悟は、改めてパンドラより(さすがに、アルベドは守護者たちの後ろで静かにしている)説明された一連の事を反芻しながら……どうしたものかと、軽く頭を掻いた。

 

 

 ……悟の脳裏を過るのは、三つ。

 

 

 一つは、仲間たちと作り上げた、この『ナザリック地下大墳墓』に、不用意に他人が踏み込んで来てほしくはないというワガママ。

 

 二つ目は、どんな者たちが来るかは不明だが、その者たちに対してNPCたちがどんな行動を取るか……想像するだけで、怖いということ。

 

 そして、三つ目は……カルネ村にて待っていてくれている、彼女(ゾーイ)に関してである。

 

 

(相手の実力にもよるけれども、最悪は手足の骨を折ってやれば帰ってくれるだろう。だが、問題なのは……ゾーイが来た場合だ)

 

 

 思い浮かべるのは、少し前にカルネ村で別れた、同郷の者の顔だ。

 

 カルネ村で再会した時の彼女ならまだしも、今の彼女は非常に危ういような気がしてならない。

 

 

(たった数日とはいえ、日に日に考え方が人間離れし始めているというか、ボーっと空を見上げている事が多くなっていたし)

 

 

 正直、彼女の行動はサッパリ予測出来ない。

 

 いちおう、悟が人間に戻るアイテムを探し終えるまでは、ナザリックに攻撃は仕掛けないとは思うけど……それも、はっきりと断言出来ないのが恐ろしい。

 

 

「……パンドラ、ちなみに、その請負人とやらが来るのは何時頃だ?」

「もう、まもなくでございます」

「はぁ?」

 

 

 とりあえず、猶予が後どれくらい残っているのかを確認した悟は、想定外の発言を受けて思わずパカッと顎を開いた。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「……え、まもなく?」

 

「はい、まもなくでございます」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……パンドラ、現在の時刻は?」

 

「現在、19時26分でございます」

 

 

(もう夜じゃん!! もっと早めに教えてよ!!)

 

 

 反射的にそう言い掛けた悟だが、口には出さなかった。

 

 時間に関して教えろとは言っていないし、説明をしろと命令を下したのは自分だ。

 

 パンドラたちからすれば、分かっていても説明を優先するべしと……NPCたちの内心を察した悟は、開きっぱなしの顎を手で戻した。

 

 

「では、最低限の出迎えをせねばなるまい。アルベド、関係各所に連絡しろ。とにかく、私の指示が下るまでは絶対に手を出すな、見つかっても逃げろ」

「──はっ! 了解致しました!」

 

 

 汚名返上と言わんばかりに『伝言』を使い、キビキビと動き始めたアルベドを見送りながら……悟は、ナザリックの管理システムを起動する。

 

 

 ぽん、ぽん、ぽん。

 

 

 一拍遅れて、悟の眼前にて表示される幾つもの空間モニター。それは、言うなればナザリック内をの監視モニターみたいなものだ。

 

 この管理システムは、悟以外には基本的に触る事が出来ず、ナザリックそのものへ影響を与える。

 

 その管理システムを操作し、これまで資金その他諸々の関係から休止状態にしていた防衛システムを一部起動させる。

 

 ユグドラシルでは、一部だけ起動させた程度の防衛システムなんぞ時間稼ぎにもならない。

 

 しかし、請負人が少数かつ、悟が把握出来ている冒険者たちと同程度の実力であるならば、追い払う事が可能──ん? 

 

 

 モニターの端に、ちらり、と。

 

 

 瞬間、何やら見過ごしてはならない色合いのナニカが通り過ぎたように見えた。

 

 そのモニターが映し出している場所は……地下大墳墓入口の辺りだ。

 

 いったい、何が……ぞわっ、と背筋に予感が走るのを感じながらも、悟はモニターを操作──あっ。

 

 

「──もう来ているじゃねえか!!!!」

 

 

 モニター越しに目が合った、『調停者ゾーイ』の姿を見て、思わず絶叫してしまった悟は……まあ、仕方がなかった。

 

 

 

 

 




普通に歩いて来る系のワールドエネミー

こんなんリアルゲームでやられたら飲んでいたコーラ吹くでほんまに

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