今のグラブルってジ・オーダー・グランデ強すぎィ!?とか言っていた頃に比べて、めっちゃマルチボスの難易度上がっているよな
そう考えれば、まだユウジョウ仕様だな(暴論)
──結局、うっかり変な事を口走った件はうやむやには出来たが……その後、色々あった。
彼女は途中から参加したし部外者なので話に入るようなことはしなかったが、それでも分かった事が幾つかある。
まず、今回の雇い主であるンフィーレアの目的は、幼馴染であるエンリ・エモットという名の少女が暮らす村へ、配達&様子見。
そして、村の近くにある森にのみ自生している薬草採取が目当て……だったのだが、どうも様子がおかしい。
詳しくは知らないが、何時の間にか村全体が丸太で壁が作られており、大そう堅牢な外壁なのだとか。もちろん、ンフィーレアは知らなかった。
で、その堅牢な村の中より姿を見せた……エンリ・エモット。
そうなるようになったキッカケは、どうやらこの村を賊が襲ったとかで、大勢の犠牲者が出て……その時助けてくれた、『アインズ』という旅の魔術師が授けてくれたマジックアイテムのおかげなのだとか。
……そうして、ひとまず弔いも終わり……今はそのマジックアイテムによって召喚されたゴブリン(ゾーイが倒したやつらとは違うらしい)のおかげで、平穏な日常が戻って来た……とのことだ。
それから、積もる話を一晩かけて行った後。
翌朝、とりあえずは薬草採取を行い……そこで、森の権能……剣王? 拳王? 健康?
とにかく、そんな感じの二つ名を持つ、サソリのような尻尾を持つ巨大ハムスター(彼女の目には、そうとしか映らなかった)が登場し……それを、モモンがテイムして。
それから、巨大ハムスターに乗ったモモンとナーベ、荷馬車にてゆっくり進むンフィーレアと、護衛する『漆黒の剣』……そして、調停者であるゾーイ(つまり、彼女だ)。
ここがユグドラシルであったならば、変なパーティだなと二度見されてしまうような大所帯となった一行は……『エ・ランテル』という名の、ンフィーレアたちが暮らしている街へとやってきた
入る時に門番たちから呼び止められたが、幸いにもそこまで騒ぎにはならなかった。
それは、『エ・ランテル』ではけっこう名が知られているンフィーレアが口添えしてくれたのもそうだが、彼女の話し方というか、雰囲気が……どうも、間者の類には見えなかったからだ。
なんと言えば良いのか……強いて言葉を当てはめるのであれば、世間知らず……といった感じだろうか。
なにせ、文字が読めない。このあたりでは見掛けない鎧を身に纏っているが、通貨すら所持していないときた。
話していた通り土地勘は全く無いし、見る物全てを興味深そうに見回している。その姿は、正しく田舎から出てきた娘っ子そのものであった。
おかげで、害は無いだろうと、無事に街の中へと入れた彼女は、だ。
とりあえずは依頼達成の報告と、テイムした証を貰う為にギルドへと向かうモモンに……ではなく、ンフィーレアへ付いて行くことになった。
最初は、ギルドで身分証明を貰う必要があると言われたのでモモンについて行こうと思ったが、ンフィーレアたちから行く必要はないと言われた。
理由は、依頼達成の報告はともかく、冒険者登録は夕暮れ辺りで業務を閉め切ってしまうから、らしい。
──なるほど、そう言われてしまえば、わざわざ付いて行く必要もない。
そう判断した彼女は、『今日のところは家に泊まってください、狭いですけど』というンフィーレアの厚意を素直に受け入れ……彼の自宅兼仕事場である、薬品店へと向かう運びとなった。
──そういえば、何故だろうか。モモンが私に対して非常に怯えている……ような気がしてならない。
とまあ、そんな感じで薬品店へと向かっている最中。
ふと、気になっていた事をンフィーレアたちに話してみれば……確かになあ、との返事を貰った。
「何故かは分からないけど、モモンさんってゾーイちゃんを怖がっているように見えるよな。当人は隠しているっぽいけど、常に微妙に距離を取っているし……」
「うむ、不思議なのである。あれ程の武人が、どうしてあそこまで怖がるのか……心当たりはないのであるか?」
「全く無い。そもそも、モモンとは初対面だ。私の故郷にも、あれほどの体格の男はいなかった」
ルクルットとダインからの問い掛けに、彼女は心底困った様子で首を横に振った。
実際……彼女には、心当たりになりそうな体格の知り合いはいない。
ゾーイが登場する『グランブルー・ファンタジー』には体格の良い種族が登場するが……だとしても、ゲーム中におけるゾーイとその種族との関係は0に等しい。
というか、あれだけ背が高くて体格の良い男、知り合いでなくとも覚えていておかしくないのに、それが無い辺り。
おそらく、向こうがナニカを勘違いしているのでは……と、彼女は考えていた。
まあ、だからといって、自分よりも頭一つ二つ三つは小さい異性に怯えるというのも、不思議な話ではあるが……と。
「ここです、お婆ちゃん、ただいまー!!」
どうやら、しばらく考え事をしているうちに到着したようだ。明かりを片手に、ンフィーレアが先導する。
ンフィーレアが自宅兼仕事場として借りているその家は、他の一般的な住宅に比べて一回り大きく、一目で『店』だと分かる外装をしていた。
……街並み自体が非常に興味深く、もっと眺めていたいが……そんなワガママを言える状況ではないので、促されるがまま中へ。
(これは……何とも表現し難い。甘ったるく、薬臭いというか、なんというか……なるほど、この世界の薬品店は、こういうモノなのか)
途端、室内より漂う臭いに彼女はクラリときて、軽く頭を振る。他の者たちを見る限り、誰も気にした様子もない。
「……もしかして、薬品店は初めてですか?」
「初めてというわけではないが……故郷では、薬を作るところと、売るところは分かれていたから……」
「ああ、なるほど。そういう作りにしている店もあるって聞いた覚えがあります。気分が悪くなるようでしたら、一度外に出てみてはどうでしょうか?」
「……いや、今日はここで寝泊まりするのだ。そのうち慣れるから、我慢しよう」
「ふふふ、頑張ってください」
よほど、嫌そうな顔をしていたのだろうか。
気付いたニニャより尋ねられたので素直に答えれば、ふふふと淡く微笑まれた。
とはいえ、小馬鹿にされている感じはしない。
実際に気分を悪くする人がいるようで、慣れない人は仲間に頼んでまとめて頼んでもらう人も居るのだとか。
さて、見やれば、店内の商品棚と思わしきガラスケースには、青色の液体で満たされた小さいガラス瓶が等間隔で置かれている。
(これは……何の薬なのだろうか?)
あいにく、彼女は文字が読めない。加えて、薬品に関する知識もない。見た目だけでは、全然わからない。
あちらの世界で使われた医療品とは形状も色合いも違うし……熱冷ましか、痛み止めだろうか?
……どちらにせよ、不味そうだ。
そう結論を出した彼女は、家の奥へと向かおうとするンフィーレアを追いかけ──直後。
「ンフィーレア、少し待て」
ドアの向こうへと行く前に、その服を掴んで無理やり引っ張った。無意識に手加減しているとはいえ、レベル200。
ぐえっ、と息を詰まらせて尻餅をついたンフィーレアが、「いたたた……いきなりなにするんですか!?」困惑しつつも、少しばかり怒りを露わにした。
当然ながら、突然の奇行に『漆黒の剣』たちも驚く。
しかし、強盗のように人質に取るわけでもなく、ンフィーレアを家の奥へと行かせないようにしたことに……彼らは、首を傾げた。
「あの、いきなり何を……?」
「そこのドアを入ってすぐの所に、誰かが隠れている」
──えっ?
誰もが例外なく、動きを止めた。
「誰かは知らないが、どうしてそこに立っているのか答えてくれ。私の勘違いならば謝るが、そこに居るあなたは誰だ?」
けれども彼女は、どういうことだと全員から向けられる視線の中で、顔色一つ変えることなく……明かり一つ付いていない、ドアの向こうへと語りかけた。
……。
……。
…………最初の返事は、ドアの開閉であった。
「あっちゃ~、バレちゃった? 君ってば、けっこう勘が鋭いんだね~」
そして、その奥より姿を見せたのは……黒いマントを身に纏った、金髪ショートボブの女であった。
歳は、20歳代だろうか。整った顔立ちをしており、何処となくネコ科を思わせる愛らしさがある。
ローブの隙間より見せる肌は白く、ホットパンツにビキニタイプのアーマーという、非常に身軽さを重視した装備をしていた。
「──なっ!?」
「待て、落ち着け。手を出さなくていい、たぶん、君たちでは勝てない」
片手に掴んだままのンフィーレアをそのまま後方へと放り投げつつ、もう片方の手で『漆黒の剣』を制止する。
もちろん、それで納得するかといえば、そんなわけもない。
しかし、何であろうが、彼女は彼らを己より前に出させるつもりはなかった。
そうしなければ、彼らは反射的に抜いた武器を構えていただろう。たとえ、敵わぬ相手だと分かっていても。
……そう、彼らとて冒険者だ。相手を見て、その実力を本能的に見抜いたのだろう。
でなければ、彼女の制止は間に合っておらず……だからこそ、彼女は彼らを止めたのだ。
眼前の女の目的は不明だが、下手に得物を抜いてしまえば、話が拗れてしまうと考えたからだ。
それに……見たところ、眼前の女は『漆黒の剣』に比べて桁違いの実力だと彼女は瞬時に見切っていた。
ゾーイに成る以前からの転生チート能力は、伊達ではない。
達人のように見ただけで実力を測るほどではないが、後ろの彼らとの違いを見抜く程度の観察眼は、持ち合わせていた。
「君は、誰だ? どうしてここに居る?」
「誰だっていいじゃな~い。用があるのは、そこの坊やだけだから」
「……坊やとは、ンフィーレアのことか?」
「それ以外いないでしょ」
そう言われて、彼女は振り返ってンフィーレアを見下ろす。「貴方の知り合いか?」と尋ねれば、それはもう凄い勢いで首を横に振られた。
「違うらしいが、何用だ?」
「それ、いちいち答える必要あるぅ~? 面倒臭いから、黙っていてくれるかしら?」
なので、そう答えれば……言葉通り、心底面倒臭そうに女はため息を零すと……スルリと、マントの中より取り出したのは……武器を取り出した。
それは、打ち合うには短く、隠し持つには少しばかり長く……スティレットと呼ばれる、短剣の一種であった。
おそらく、コーティングを施すことで強度を上げているのだろう。
鉄とは少しばかり色合いが異なっているのを見て、彼女はそう判断し……同時に、只の強盗ではないとも判断した。
……さて、どうしたものか。
チラリと、背後の5人を思った彼女は……不思議な程に落ち着いている己に軽く驚きながらも、判断を迫られていた。
──単純に、戦うのはいい。一度は死んだ身、そして、蘇った身だ。
ここで彼らを護って命を落とすのであれば、その為に己は蘇ったのだろうという納得する事が彼女には出来た。
しかし、女の目的が分からない以上は、ただ殺されてやるわけにはいかないし、只々殺されるつもりもない。
加えて、ここで己が居なくなった後で、ンフィーレアが今後も無事である保証はない。
というか、目撃者である『漆黒の剣』も殺されるだろう。
……彼らを、こんな場所で殺させるわけにはいかない。
彼らは、彼女が護りたかった世界に生きる者たち。
希望と夢を胸に明日へと向かう彼らの為に、彼女はこの手を血に染めることに、何の躊躇いもない。
それが、人間だった時の彼の意思か、あるいはゾーイとしての意思か……それを判別することは今の彼女には無理だが、どちらにせよ、後悔はしない確信があった。
……ただ、そんな彼女の覚悟とは別に。
気になるのは、家に居るはずの、ンフィーレアの祖母が姿を見せないことだ。
既に殺されてしまっているのであれば、気の毒ではあるが、その分だけ身軽に動ける。あるいは、当て身や眠り薬などで動けなくされているだけでも同じ。
しかし、当人が存命で、ンフィーレアを拘束するための人質として囚われている場合は……下手に返り討ちにしてしまえば、その所在が分からなくなってしまう可能性があった。
「……その得物を抜いたということは、私と戦うというわけだな?」
「あっれ~、命乞いのつもり~? 命乞いをするなら、もうちょっと頭使ってやってほしいと思うなあ~お姉さんとしては~」
己よりも小柄で、弱そうに見える彼女を見て、ナメきっているのだろう。
言い回しも声色も、明らかに彼女を下に見ている。その態度に『漆黒の剣』は怒りを露わにする……が、動けない。
彼らは、呑まれてしまっていた。人を殺す事に慣れきった者だけが放てる、固有の気配と迫力に。
彼らが場数を踏み、時には非道を見て見ぬフリをする強かさがあれば別だが……そうではない。
これから人を殺してしまうのかという無意識の忌避感も相まって、彼らは僅かばかり腰が引けてしまっていた。
「……そうか、戦いを挑むのか。ならば、受けて立とう」
だが、彼女は違った。
『調停者ゾーイ』のフィードバックがあるからなのか、不思議なぐらいに心は平穏のままに……スルリと、空間より出現した盾と、蒼き剣を構えた。
「名を、聞きたい。貴女の名前は?」
「どうせ死ぬんだし、答える必要ある~? むしろ、そっちが自己紹介した方がいいんじゃない? 私が忘れるまで、覚えていてあげるからさ~」
「……そうか、では私の名を告げよう」
一つ、溜め息を零した彼女は……いや、調停者ゾーイは、眼前の女の要望に応え、高らかに宣言した。
「──私は、世界の均衡が崩れる可能性が生まれた時、顕現する存在……調停者、ゾーイだ」
そして、ふわりと……部屋にある唯一の明かりに照らされてもなお……薄暗がりを柔らかく切り裂きながら……構えると。
「この私に単身で挑んできた者は数少ない。貴女は、その内の一人になった……さあ、来い!」
飛びかかって来た女を何時でも迎撃出来るよう、ギロリと目つきを鋭くさせながら睨みつけ──ん?
「…………」
「…………」
「…………」
「…………どうした?」
……。
……。
…………何故か、女はポカンと呆けて……大口を開けたまま、その場より動きを止めた。
最初はフェイントの類かと思ったが、その手からポロリとスティレットが落ちたのを見て、どうにも様子が違うぞと目を瞬かせ──。
「あ、あの、幾つか質問をさせていただいてもよろしいでしょうか!?」
──た、と同時に、これまた何故か敬語で話し掛けられた。
先ほどまでの、相手を格下扱いしているかのような間延びした言い回しではない。
むしろ、尊敬する恩師を相手にするかのような、何処となく緊張感を孕んだモノになっていた。
「……まあ、武器を納めてくれるのであれば」
「──っ! は、はい、分かりました!」
その言葉と共に、女は床に転がったスティレットを器用にも蹴飛ばして滑らせ……ハッと我に返ったぺテルが、それを受け取った。
これで、事実上、女は無力化された。その事に、ンフィーレアと『漆黒の剣』は、安堵のため息を零した。
まあ、他にも武器を隠し持っている──と思ったら、何処に隠し持っていたのか、モーニングスターも床に落とすと、それを身に纏っているマントで包んで……同じく、ポイッと床に転がした。
……そして、女は……その場にて、静かに正座をした。
「武器は、全て放棄しました」
「……あ、うん。それならば、私も剣を納めよう」
本当に武器を全て手の届かない場所にやってくれた以上、彼女が武器を構えるのは失礼というもの。
出現した時とは逆に、僅かな光と共に空間へ溶け込ませるように剣と盾を消した彼女は、女の質問に答えようと──する前に、思い出した。
「そういえば、貴女の名前を──」
「クレマンティーヌと言います。ゾーイ様……いえ、『ぷれいやー』様」
「──そうか、クレマン……待て、今、何と言った?」
食い気味に名乗られて一瞬ばかり押された彼女だが、その直後に続けられた言葉に目を瞬かせた。
何故なら、『ぷれいやー』……彼女の知る『プレイヤー』と、同じ言葉で同じ言い方だったからだ。
「『ぷれいやー』様、と呼びました」
「……私をそう呼ぶということは、もしや……この世界には、ユグドラシルのプレイヤーたちが……いや、そもそも貴女は何者なのだ?」
「私は……私は元、
──なんだろう、そう言われても全然分からないのだけれども……まあいい、そっちは後だ。
「それで、貴女は私に何を聞きたいのだ?」
率直に尋ねれば、女……クレマンティーヌと名乗ったその女は、顔中に汗を滲ませながら、大きく深呼吸をした後で……グイッと、顔を上げた。
「あ、あの、ゾーイ様。貴女様は、六大神……いえ、その『スルシャーナ』という名を聞いた覚えがありますか?」
「……スルシャーナ?」
「はい、あの、闇の神で、その、他には──」
首を傾げる彼女を尻目に、クレマンティーヌは続けて五つの名前を挙げた。
曰く、クレマンティーヌが生まれ育った国で神様として信仰されている、土・水・火・風・光の神の名前らしい。
つまり、そこに闇の神スルシャーナを入れて6人……ああ、だから六大神かと彼女は納得した。
「国で伝わっていた法典には、『我らがまだ“びぎなー”だった頃、興味半分で戦いを挑んで大変な事になった』とありまして……その中には、調停者ゾーイの名が……」
「私の?」
「はい、『我ら6神で挑み、何が何だか分からないままに敗北した』と……あの、スルシャーナ様は死を司るアンデッドの姿をした神と……」
「アンデッド……か」
──6神、つまりは6人のチームで、そのうち1人がアンデッド種族のプレイヤー……か。
出された情報を頼りに、これまで調停者ゾーイに挑んできた者たちを思い出せるだけ思い出してゆく。
基本的に対ゾーイ戦は大人数&大規模になりがちだし、いちいち覚えてはいない。
しかし、たった6人で挑んでくるとなれば、候補は絞りやすいし、印象にも残っているだろう。
しかも、そのうち1人がアンデッドという特徴がある。
ユグドラシルでは異形種の人気が一時期非常に悪かったこともあって、更に候補を絞り易く……あ、待てよ。
「スルシャーナ……ああ、アイツか。種族アンデッドを選択しているというのに変に礼儀正しく、何故か戦う前に『これから戦いますので準備してください』と前置きを入れた、あいつか」
「──あ、ああ、ああ!」
「何故かカルマ値を善に傾けていて、不思議な拘りを持っていたせいで種族特性を活かせないのに、根性でオーバーロードまで頑張ったアイツか……うん、印象深かったから覚えているぞ」
「ああ……神よ……神よ……」
「他のやつらならすぐに諦めてデスペナ受け入れて退場するのに、あいつらだけは根性と気合でとにかく粘ったからな……嬉しくて報酬としてアイテムを渡した覚えが……ん?」
「ああ、神よ……! 私の、アイツらの前ではなく、私の前に……!」
ふと、昔の思い出より我に返った彼女は……両目から大粒の涙を流し、額を床にこすり付けん勢いで土下座をしているクレマンティーヌを前にして。
──えぇ……マジ泣きだぞコイツ(ドン引き)。
奇しくも、何処ぞのオーバーロードがNPCたちを前に最初に感じた感想と、だいたい同じことを思ったのであった。
……。
……。
…………ちなみに、彼女の背後に居るンフィーレアも、『漆黒の剣』も、同様にちょっと引いていた。