今更だけど、オリ設定多々だからね注意要
……正直に言おう。
部屋の片隅……そこに、ナニカを抱えるようにして蹲り、背中越しにも嗚咽を漏らしているのが分かる、その姿を見た時。
──これは、俺の知っているアルベドなのか、と思った。
それは、単純に泣いているからではない。
悟がそう思った理由は他でもなく……その、実物よりも小さく見える頼りない背中だ。
そう、まるで、取り返しのつかない事を仕出かしてしまった子供のような背中。
悟は、知っている。アルベドもまた、ナザリックの中では2人といない、極悪極まりないNPCであることを。
かつて、初めてこの世界の人間と応対した時も、そうだった。
アルベドは、一切の躊躇なく人間を殺そうとした。
危険だからとか、逆らったからだとか、そんな理由ではない。
──
たったそれだけの理由で、アルベドは殺そうとした。アルベドにとって、人間などその程度の価値でしかなかったのだ。
とはいえ、それを今さら責める気持ちにはならない。
だって、その時の悟も、似たような感覚だったからだ。
違うのは、生意気だと苛立って殺意を抱いたか、傍の羽虫を手で払う程度の感覚だったか……その程度の違いでしかなかった。
たとえ相手が傷を負い、まともに受け応え出来ない状態だった
そんな怪我をしていたら、話そうと思っても話せないよな……と、客観的に考えられたから、そう動けただけの事。
あの時、アルベドと同じように苛立っていたら……おそらく、何の気負いもなく、その頭を握りつぶしていただろう。
人が、パッと目についた蠅を、無造作に叩きつぶす程度の感覚で。
アルベドに限らず、ナザリックのNPCたちにとってそれが当たり前なのだ。そして、それが出来る力を持っていて、それを行使する事に欠片のためらいもしない存在であった。
「アルベド、『玉座の間』を飛び出して、何かあったのか?」
そんなアルベドが、泣いている。
シャルティアの時と同じく、その背中に声を掛ける。
すると、ビクッと肩を震わせたアルベドは、さらに身体を丸めるようにして蹲ってしまった。
それは、まるでナニカを隠すかのように……悟の視線から少しでも逃れられるようにと言わんばかりの動き。
よくよく見やれば、アルベドの腹部の辺りから、ボロボロの……何かの布と思わしき物体が零れ出ている。
元は、鮮やかな色合いだったのだろう。
けれども、長らく放置されていたのか、それとも雑に扱われていたのか、遠目にも分かるぐらいに埃まみれで汚れている。
(……ああ、なるほど)
いったい、何を隠しているのか……少しばかり見え難かったが、ちょっと目を凝らせばすぐに分かった。
──それは、ギルドの旗だ。
NPCの誰もが敬意を表す、『アインズ・ウール・ゴウン』の紋章旗。それは正しく、ナザリックの象徴。
それが、どうしてそこまでボロボロになっているのか……考えるまでもない。
──アルベドは、『至高の御方』を嫌っているのだ。
もしかしたら、ナザリックそのものを嫌っているのかもしれないが……まあ、どちらでもいい。
とにかく、アルベドは嫌っている。至高の御方と呼ばれているみんなの事を、嫌悪している。
そんなアルベドにとって、ナザリックの至る所に設置されている紋章旗なんぞ、壁に貼り付いたゴキブリも同然なのだろう。
おそらく、視界に入るだけでも苛立っていたはずだ。それこそ、苛立ちのあまり破り捨てたくなるぐらいに。
(……まあ、守護者用に割り振られている部屋って、大きさの違いはあるけど、紋章旗とか飾られていそうだしな)
──シャルティアの部屋はどうだったっけ?
そんな感じで思い返しながら……他人事みたいな内心の言い回しだが、無理もない。
なにせ、作られる過程で色々見せてもらう機会はあったが、そんなのは何年も前のことだ。
正直、各守護者の部屋なんてどんな感じだったか全く覚えていない。せいぜい、自分の作ったNPCのことぐらいだろうか。
そして、悟のNPCは特定の部屋は持たず、それに当たる場所はナザリックの宝物殿……ある意味、共用スペースを私室としても利用して……っと、話を戻そう。
紋章旗の件だが、いくら守護者統括の立場にあるアルベドとはいえ、粗末に扱う姿を万が一誰かに露見してしまえば只ではすまない。
間違いなく、守護者統括の立場を追われる。
何故なら、ナザリックにおけるヒエラルキーは、『至高の御方』か、それ以外なのだ。
アルベドでも、絶対的最上位の象徴を粗末に扱えば、それは反逆の証。間違いなく、ナザリックNPC総出での粛清が行われるのは確定である。
だから、アルベドは……自室の中にある旗で、それを行ったのだろう。
破損させなかったのは、そこまでするつもりでもなかったのか、あるいは、そんな事に労力を注ぐことすら嫌だったのか。
どちらにせよ、粗末に扱っているのは同じ事で……しかし、だ。
「……アルベド、どうして泣いているのかを教えてくれ」
位置的に、ベッドしか座る場所がなかったのでそこに腰を下ろし……改めて、悟は尋ねた。
アルベドが、紋章旗を粗末に扱っている。
その程度は、悟にとってはどうでも良い事だ。
だって、嫌っているから。
嫌っている相手の象徴を、気が休まるはずの自室にまで設置されていたら……そりゃあ、粗末に扱っても不思議ではない。
「先に言っておくが、私はおまえがソレを粗末に扱ったこと事態を責めているわけではない。ただ、涙の理由を知りたいだけなのだ」
けれども、悟はその事を許した。
「怒るつもりもないし、その気もない。私はおまえの全てを許そう……だから、真実を……その涙の理由を教えてくれ」
だって、悟が言えた義理ではないから。
そりゃあ、悟とて毎日『ユグドラシル』にログインして、『ナザリック地下大墳墓』を維持する為にクエストを行っていた。
だが、それだけだ。
ログインするのが悟だけになった頃にはもう、ゲームとしては末期……実プレイヤー数の減少が顕著になっていた。
ソロプレイを前提にした構成をしていない『モモンガ』では、高難度クエストに単身で挑むのは自殺行為も同じ。
しかも、その高難度クエストすらも、過去に何度か行われたイベントの復刻版だ。
つまり、始まるストーリーも、出て来るモンスターも、熟知している。真新しさなんて、まったくない。
結果、ギルド維持の為に効率的なデイリークエストと、惰性的に割りの良いモンスターを狩るだけの日々。
楽しかったか?
そんなわけがないだろう。
本当に……本当に、退屈だった。
只々、無味無臭のガムを噛み続けるかのような繰り返しだった。
そもそも、だ。
悟は独りでゲームをやりたかったのではなく、仲間たちと一緒にやるゲームをやりたかったのだ。
ただ、『ユグドラシル』に。
ただ、『ナザリック』に。
ただ、『アインズ・ウール・ゴウン』に
費やしてきた年月、積もった数々の思い出、己の生きがいとなっていた……過去の未練が、悟の足を止めていた。
そんな悟が、今さらアルベドの所業を怒る?
自分の事を棚に上げて?
NPCが自我を持つだとか何だとかは関係ない。己もまた、その程度にしか覚えていなかったのだから。
「……アインズ様、違う、違うのです」
「何がだ?」
「私、私は……こんな事、したかったわけじゃないのです」
「……知っているさ、それぐらい」
だから……客観的には支離滅裂な言い訳に思える言葉でも、悟だけはそれを疑わず……ありのままに受け入れた。
「──嘘っ! そんな優しい言葉で慰めないでください!」
けれども、肝心のアルベドが、そんな悟の想いを信じられないようであった。
振り返ったアルベドの顔は涙と鼻水で汚れ、酷い有様だった。
「嘘なものか」
「嘘! 嘘です、そんなこと!」
「嘘じゃないさ、頭の中のモヤは、晴れただろう?」
「──っ!」
シャルティアがそうだったように……そう思って尋ねれば、アルベドはビクッと肩を震わせ、視線をさ迷わせた。
「……だとしても、私が尊き御方を憎み恨み蔑んでいた事実は変わりません」
しかし、それだけだった。
「変わらないのです。モヤが晴れたとしても、この憎悪は消えていない。私のコレは、最初からここにあったモノなのです」
「……そうか」
「だから、そのような慰めはお止め下さい……私のような愚か者なんぞ捨て置いて、どうか罰してください……どうか……」
そう言うと、アルベドは再び蹲り……嗚咽を零し始めた。
埃だらけの、ソレに顔を埋めて。真っ白な衣服や顔が汚れるのも構わず、アルベドは……只々、誰かに向かって謝罪を続けている。
(……タブラさんの作ったNPC、か)
その、頼りない背中を見つめながら……悟は、考える。
守護統括者・アルベド。
その製作者は、かつての仲間たちの一人である、『タブラ・スマラグディナ』。ナザリックのギミックなどを約2割も作った功労者である。
その性格は、真面目で凝り性のホラー好き。そして、大のギャップ萌えである。
『リアル』が荒廃する前から流行っていたTRPGもそうだが、数々の神話にも精通している知識人であり……その拘りは、悟よりも濃い。
なにせ、シャルティアという例外を除いて、残り文字数ギリギリ(しかも、ただ設定を羅列しているわけではない)までフレーバーテキストをNPCに書き込んでいるのは、彼ぐらいだ。
拘りが強過ぎて容量を圧迫し、クレームを生み出したぐらいだ。
この世界に来る直前、アルベドの設定を見た時など、よくもまあここまでキッチリ書き込んだと驚いたのは今もはっきり覚えている。
(『ちなみにビッチである。』……それを、俺は『モモンガを愛している。』という設定に変え……いや、待てよ)
そうして、ふと……悟は、あの時書き加えた一文について、考える。
あの時、悟はあまりにもキッチリ書き込まれていたせいで、内容は全く読んでいない。
サービス終了までもう間もなくだったし、それこそ読み込むだけで時間が来てしまうぐらいの文章量だったからだ。
だから、悟が辛うじて見られたのは、最後の一文……『ちなみにビッチである』のところだけ。
その時は、苦笑しただけだ。
見た目が清純に作られているアルベドが、実はビッチ。
なるほど、ギャップ萌えのタブラさん好みだなと思ったぐらいであり、設定を変えたのも、最後だからちょっとぐらい悪さしようぜ……みたいな程度の感覚だった。
──けれども、だ。
こうして、紋章旗を抱えて泣いているアルベドの背中と……己が『鈴木悟』に戻る前の、アルベドの事を思い返し……ふと、疑念が過る。
果たして……変化は、その程度だったのだろうか……と。
こうして、改めて客観的な感覚でアルベドの事を考えると、『アルベド』というキャラクターそのものが如何にギャップの塊であり、ホラーのお約束が詰まっているのかが見えてくる。
まず、見た目だ。思い返すのは、アルベドの姿。
ドレスの色である純白は、『清純・清楚・無垢』などのイメージが強く、何物にも染まっていない存在の象徴でもある。
しかし、その腰に生えた漆黒の天使の翼。
つまりは、黒い天使。それは『神曲』に登場する地獄の使者であり、神に反逆した悪しき天使の象徴である。
微笑を浮かべる顔は女神の如く美しい。誰が見ても、思わず振り返ってしまうほどに、その笑みは穏やかだ。
だが、腰の辺りまで艶やかな髪は黒で、獣を思わせる縦に割れた眼孔に、悪魔を象徴する山羊のような角が生えている。
また、悟自身は実際に拝見したことはないが、真の姿となったアルベドの外見は、平時の名残すらない怪物だと教えてもらったことがある。
つまりは、ギャップで、ホラーなのだ。
普段は誰もが二度見するほどの美女なのに、その中身は誰もが恐怖で震え上がってしまうほどの怪物……なるほど、ホラーの定番的なキャラクターである。
……そこら辺を踏まえたうえで、だ。
悟が書き替える前の、『ちなみにビッチである』。ビッチという言葉自体は、『男遊びが好きで性的にふしだらな女』というニュアンスである。
……しかし、それだけだろうかと、悟は考える。
ホラー好きではあるが、神話にも精通しているタブラさんが、だ。
とにかく凝り性で周りからクレームが出てもなお粘って拘りまくっていた、あのタブラさんが……フレーバーテキストの部分を、そんなありきたりなギャップで締めくくるだろうか?
……そもそも、だ。
どうして、アルベドはかつての仲間たちを憎んでいるのだろうか。
アルベドだけが、どうして例外的にそんな感情を抱くのだろうか。
だって、ナザリックの
口では至高の御方など……とは言いつつも、二言目には『偉大なるナザリック』だし、
なのに、アルベドにはそれが無い。
あくまでも、その愛情も敬愛も、向けるのは悟に対して……ん、自分だけ?
「……あ、そうか」
そこまで考えた辺りで……悟は、気付いてしまった。
アルベドが仲間たちを憎み嫌悪するようになった理由は、他でもない。
己が書き替えてしまった『モモンガを愛している』そこと絡み合ってしまった、『カルマ値』がもたらす悪影響。
それこそが──アルベドの今に至る原因だと……悟は気付いてしまった。
(アルベドの、『ちなみにビッチである』の一文だ。前にタブラさんがチラッと話してくれたけど、言葉って使い方によって意味合いが逆転するって……)
それは、まだナザリックの内装をどうするか、互いに話し合っていた頃……拘りのあまり発生したクレームへの対処に動いた時のことだ。
○○は容量食い過ぎるから減らせ、いやいや○○は消せないと言い合っているタブラに、悟は……何気なく、聞いた事がある。
──ギミックもそうだけど、もっと簡潔にまとめないと容量を削れないのでは、と。
すると、タブラから『分かっちゃいないね、君は』と前置きされた後で、こう言われた。
──いいかい、モモンガ君。言葉というのは不思議なモノで、必ずしも常に同じ働きをするわけではないのだ。
──と、言いますと?
──例えば、『全然』という言葉は本来、否定形として使われる。全然読めない、全然駄目、といったようにね。
──はあ……?
──しかし、全然大丈夫とか、全然OKですよ、とか、本来の使い方とは真逆なのに、ちゃんと意味が伝わるモノもあるわけだ。
──……?
──同様に、侮蔑的や否定的な言葉でも、組み合わせや文脈の流れにおいては真逆の意味合いになる場合があるわけだ。
──はあ、そうなんですか……?
──つまりね、私のギミックも同じなのだよ。一見、無駄なように見えるけど、ちゃ~んと色々考えているわけなんだ。
──……? よく分かりませんけど、必要だと言いたいんですね?
──うむ、そうなのだよ。
(当時は、こいつ誤魔化しているだけだなって思って気に留めていなかったけど、もしも……そう、あの時の話の通りだとしたら)
仮に……タブラが書いた『ビッチ』がふしだらで尻軽な女の意味ではなく、良い女という意味での『ビッチ』なのだとしたら。
清純な見た目に対して悪魔の中身を持ち、カルマ値が悪でありながら、その性質は善性……ああ、そうなのだとしたら。
(アルベドは本来、至高の御方だけじゃない。あらゆる存在を憎悪しつつも、それ以上の愛情を抱えているような矛盾した博愛精神……そういう設定だったのではないか?)
それなら……いや、それこそ、ギャップ萌えのタブラさんらしい文章になると悟は思った。
ならば……ああ、それならば。
最後の一文を『モモンガを愛している』に変えてしまったこと……それに加えて、『カルマ値』の影響が合わさった。
全てに向けられるはずだった愛情が、悟にだけ向けられ。
全てに向けられるはずだった憎悪が、悟以外に向けられ。
それこそ、至高の御方とて例外ではなく、かつての仲間たちに向けられるようになったということに……説明が付くのでは、と。
──もちろん、全ては憶測だ。
フレーバーテキストの書き換えは確かに影響しているだろうが、結局はただの一文。あれだけ書き込まれていたなら、そこまでの変化はないだろう
けれども、だ。
アルベドがあそこまで盲目的に
まあ、アルベドのフレーバーテキストを読み返さない限りは検証のしようがないけど……的外れではないだろう、そう悟は思った。
「──許そう、アルベド。私は、お前が罪だと思っている全てを受け入れ、許そう」
だからこそ、その言葉は間違いなく悟の本心で。
「何度も、そのような事を──」
だからこそ、カッと怒りを露わにしようとした、アルベドに対して。
「何故なら、お前は私たちを憎むのと同じぐらい、いや、それ以上に、愛しているのだろう?」
まっすぐに、悟は告げた。
「 」
瞬間、アルベドはポカンと呆けた。
今にも噛みつかんばかりに強張っていた顔からは力が抜け、何を言われたのか分からない……思わず、アルベドの涙は止まっていた。
「何も、己を責める必要も、恥じ入る必要はない。数多の矛盾を抱えたギャップの塊、それこそがアルベドの本質だ」
「え? え?」
「それとも、まったく私たちを愛していないのか? 本当に、私たちにだけ向ける感情は、憎悪だけなのか?」
「え、その、あの……あっ」
聡明なアルベドの思考回路が、完全にフリーズしてしまっている。只々、瞬きを繰り返すばかりで、何も……ああ、しかし。
「……良いのですか? 愛しても? 悪戯に、自らの為に、愛おしく思っていた者たちの命を摘み取って来た、私が?」
ぽろり、と。
これまでとは違う、涙。鈍い悟でも分かる変化……零れ始めたアルベドの心に、悟は力強く頷いた。
「アインズ様を……タブラ様を……至高の御方である皆様方を憎いと思っているのに、愛してもいる……そんな不敬が、許されるのですか?」
「許そう、なにもかも」
「許されるのですか? 相手が人間だとしても、言葉すら発せられない獣だとしても、至高の御方である皆様方と同じように、愛おしく思っても?」
「全てを許そう、他の誰よりも、私が許す」
「本当に、良いのですか? 今さら、そんな虫の良い話が……ああ、この手はもはや血に濡れて、償うことすら出来ないというのに?」
「良いのだ、アルベド」
「そんな、そんな事を……他の何よりも貴方様をお慕いしているのに、それなのに、他の者たちも愛しく思う気持ちを止められないのに……良いのですか?」
「……良いのだ、良いのだよ、アルベド」
ベッドから腰を上げ、アルベドの傍へ……そうして見下ろしたタブラの娘に、悟は……そっと、その頭を撫でた。
「それこそが、アルベドなのだ。それだから、良いのだ」
「……っ! アインズ、様……!」
「だが、私も、タブラさんも……そんなお前を愛おしく思っていたのだ。だから、そう……自分を苛めてやるな」
「──っ、も、申し訳ありません、アインズ様……」
「どんなお前であろうと、私たちは変わらず愛しく思っている……どうか、それを忘れないでほしい」
「うっ、うう、ううう~~……!!!」
それ以上、アルベドは何も言えなかった。
ただ、抱えていた紋章旗に再び顔を埋め……次から次へと零れ続ける涙を流す以外、何も出来なかった。
(どうして、こうなってしまったのか……みんな、本当にみんな……ただ、『ユグドラシル』を楽しんでいただけだったのに)
そして、その涙を拭う資格など無いと思っていた悟は……黙って、それを見つめる事しか出来なかった。