オーバーロード 降臨、調停の翼HL(風味)   作:葛城

53 / 57
ついに、最終決戦です
イメージBGMは「Armageddon」です


原作キャラ死亡有り、注意要


マルチバトル: 降臨、調停の翼HL

 

 

 

 ──『ユグドラシル』において、レイドボスという分類に属する相手と戦う場合、相手に応じた対策は必須である。

 

 

 たとえば、相手が主に火属性の攻撃を多用するのであれば、火耐性を整えておく。

 

 魔法系の攻撃に耐性があるならば、物理系の攻撃を揃えている者が全面に立ち、魔法系の者はひたすら支援に回る。

 

 他にも、種族によってプラスに働いたりマイナスに働いたりと、色々あるばかりか、カルマ値ですら影響する場合があるという。

 

 なので、ユグドラシルは単純に力押しで勝てるようなゲームではなく(もちろん、限度はある)、上位の敵を相手取るともなれば、その相手の特性は頭に叩き込んでおくのが基本である。

 

 

 ……で、だ。

 

 

 対ゾーイ戦において重要な事は正直両手の指でも足りないぐらいに多いのだが、その中でも特に気を付けなければならないのは……だ。

 

 

『──いいか、順番を間違えるな! 絶対にゾーイへのデバフを切らさず、指示を受けていない者以外は徹底的にデバフを掛け続けろ!! 』

 

 

 そう、対ゾーイ戦において重要なのは、強さだけではない。

 

 ゾーイのHPを削りきる手順……すなわち、倒す為には、様々な状況を想定した戦術もそうだが、そこに至るまでの順番とリカバリー力が大事なのだ。

 

 

 なにせ、ゾーイのレベルは200。

 

 

 超高難易度ではあるが倒せるようにちゃんと調整されているけれども、素のステータスが違い過ぎる。

 

 ゆえに、焦ってはいけない。一つのミスが、そのまま全滅に直結する相手なのだ。

 

 対ゾーイ戦は、パズルを組み立てるのと同じく、正しい手順を踏んでいく必要があるのだ。

 

 そして、対ゾーイ戦が始まってまず行うのは、様々なデバフを掛けまくり、ダメージなどを通り易くするのが鉄則である。

 

 

 とはいえ、だ。

 

 

 ゾーイにも、実はデバフに対する耐性があったりする。

 

 まあ、ゾーイと戦うようなプレイヤーからすれば、有って無いような程度の耐性だが……今回ばかりは、そうではない。

 

 なにせ、本来はレベルカンストのプレイヤーたちが束になって戦うのが前提の相手。

 

 それよりもレベルの低いNPC(つまり、ステータスが低い)では、必ずしもデバフが通るわけではない。

 

 なので、悟は質ではなく量で押し切る方向を選んだ。

 

 デバフ要員は、ユグドラシル資金による召喚モンスターと、ナザリックの至るところに設置されてある罠デバフである。

 

 

『ナザリックの金庫が空になってもかまわん!! ありとあらゆるデバフを掛け続け、ゾーイを弱体化させ続けろ!!』

 

 

 湯水のように目減りしていく資金を確認しつつ、悟は……ウィンドウに表示されたゾーイの様子を伺う。

 

 

(やはり、カンストレベルに達していないNPCや召喚モンスターでは全くダメージが通らんか……!!)

 

 

 そうして、悟は……思わず、歯を食いしばる。

 

 ゾーイの進行は……正直、欠片も止められていないのが現状だ。

 

 映像で追えている限りではあるが、デバフは通じている。質より量作戦は上手くいっているようで、動きも精彩を欠いているように見える。

 

 

 しかし、『非公式レイドボス』や『歩くラスボス(笑)』とプレイヤーたちから怖れられていたのは伊達ではない。

 

 

 魔法の影響が残っているのか、一つ一つの攻撃に移るまでにタイムラグが生じているが……それでも、攻撃に移れば最後、誰もその動きを見切れていない。

 

 その速さは、『モモンガ』としての恩恵を受けている今の悟の目でも追い切れない速さであり……まともにぶつかれば、敗北は必至だろう。

 

 

 加えて、ときおりゾーイが放つ『バイセクション』も凶悪だ。

 

 

 上手く攻撃方向を誘導出来れば良いが、失敗する度、一気にデバフ部隊が壊滅していくのは……もう、見ているのが辛くなるような光景であった。

 

 

 ……ところで、だ。

 

 

 ウィンドウから、視点を少しばかり広げよう。現在、悟が居る場所は、ナザリック最下層にある『玉座の間』。

 

 ワールドアイテムの一つである、巨大な水晶で作られた『諸王の玉座』にて、悟は……侵入してきたゾーイへの対応を、NPCたちに指示していた。

 

 

 傍には、誰一人としていない。

 

 

 普段ならば、あの手この手の言い訳を考えて傍に居ようとするNPCも、パンドラの姿さえ、今はない。

 

 理由は考えるまでもなく……対ゾーイに備えて、各自が動いているからだ。

 

 この戦いは、出し惜しみなどしてはいられない。御身がどうとか以前の問題で、そのような考えでは100%負ける。

 

 

 ゆえに、悟は今、1人である。

 

 

 そして、玉座に座った悟の前には、様々なウィンドウ(見た目は、ゲームウィンドウみたい)が表示されている。

 

 そこに映し出されているのは、ナザリックの全体図、罠の発動状況、ナザリックの資金、ゾーイの現在地……等々。

 

 最下層のここでしか出来ないし、ここでは転移門が使えないので、攻め込まれたら逃げ場を失うが……問題ない。

 

 何故なら、ここを逃げたところで……悟に勝ち目などないし、逃げる気はサラサラなかったからだ。

 

 

『直接攻撃はするな! アイテムによる割合ダメージを確実に狙え! 焦るな、少しずつでもゾーイの体力は削れていっている!!』

 

 

 だからこそ、ここで出しきる。

 

 その事に、悟は欠片の躊躇もしなかった。

 

 ゆえに、使用するのはこの時の為に用意しておいた、割合ダメージの攻撃アイテム(スクロールも含まれる)だ。

 

 

 ……正直、ユグドラシルでは、けっこう微妙な扱いをされているアイテムである。

 

 

 なにせ、割合ダメージに関する耐性なんて、ある一定のモンスターなら標準装備されているうえに、ダメージ上限が設けられている場合が多々ある。

 

 かといって、何かの素材として使えるのかと言えば、そういうわけでもなく……けっこうお高いアイテムなので、アイテムボックスの肥やしになっている場合が多い。

 

 そして……当然ながら、ゾーイも耐性を持っており、ダメージ上限がしっかりと設定されていた。

 

 

『──アインズ様! 攻撃アイテムが間もなく底を突きます!』

 

『在庫が尽き次第、ハンゾウ(NPC)による隠密攻撃を開始せよ! なんとしてでも、HPを75%以下に削るのだ!』

 

『──アインズ様! 予定より金貨の減りが速いです! このままでは最後に辿り着くまでに底を尽きます!』

 

『使用予定の無いアイテムは全て金貨に替えろ! 最低でもナザリックの防衛システムだけは維持し続けるのだ!!』

 

 

 アイテム管理を行うパンドラからの、矢継ぎ早に飛んでくる『伝言』。想像するまでもなく、現場は大混乱だろう。

 

 

『──報告! 対象は第3階層を突破し、第2階層の『屍蝋玄室』が有る方へと向かっております──なおも、速度緩む気配無し!!』

 

『そのまま継続してデバフと割合ダメージで削れ!! ゾーイがかつての私のように設定に縛られているのならば、道が有る限りショートカットはして来ないはずだ!!』

 

 

 だが、これしかないのだ。不安はあるが、そんなのは分かりきっていることだ。

 

 ユグドラシルプレイヤーたちが挑戦した『対ゾーイ戦』の……うろ覚えの映像記憶、ソレだけが、この戦いを切り抜けられる鍵。

 

 それを頼りに、悟は戦況の変化を、全神経を集中させて見続けている。

 

 

(頼む、削れてくれ! 今のこのタイミングで守護者たちをぶつけるのは、早過ぎる!)

 

 

 祈るように映像を見つめる。

 

 映し出されたディスプレイの向こうでは、『滅する……空星の狭間に去ね!』幾度目かとなる閃光がゾーイより迸る。

 

 

(恐怖公……!!)

 

 

 かつては様々なプレイヤーを恐怖させた彼が、光に呑み込まれて消滅する。放たれた熱気が、眷属たちを瞬時に炭化させてゆく。

 

 並びに、張り直した陣形が一瞬で崩壊されてゆく。出来うる限りの速度で陣形を張り直すが、力不足だ。

 

 

(ユリ・アルファ)

 

 その中には、見覚えのある者もいる。

 

 

(ナーベラル・ガンマ)

 

 それは、必ずしも良い思い出ではない。

 

 

(ソリュシャン・イプシロン)

 

 むしろ、悪い意味での記憶は多い。

 

 

(シズ・デルタ)

 

 けれども、どうしてだろうか。

 

 

(ルプスレギナ・ベータ)

 

 己の為に死ねと命令したも同然なのに。

 

 

(エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ)

 

 どいつもこいつも、笑顔だ。どいつもこいつも、笑っている。

 

 

 それでいて、寂し気に涙を浮かべながら、ゾーイの前に倒れ、その命を落として逝く。

 

 

(──ちくしょう! 涙なんて出ないはずなのに、目の前が霞んでしまいそうだ!!)

 

 

 その事が、悟は……不思議と、胸が裂けるほどに苦しく、悲しかった。

 

 

『オーレオール・オメガ! お前は撤退しろ、絶対に死ぬな! お前は、最後まで死なずにバフを掛け続けるのが役目だ!』

 

 

 だが、悲しんでいる暇は無い。涙を堪えて、悟の指示に従って撤退するオメガを顧みることも出来ない。

 

 今の悟に、そんな余裕など与えられていないのだ。

 

 

 『オーレオール・オメガ』は、ナザリック戦闘メイドチーム『七姉妹(プレイアデス)』のリーダー。

 

 

 オーレオール以外の姉妹は先ほど殺され、既にプレイアデスは壊滅しているが、オメガはまだ死なせるわけにはいかない。

 

 何故なら、オーレオールは指揮官としての能力を持ち、転移門の操作を始め、様々なバフを掛ける事に特化している。

 

 他にも多種多様にバフ要員を準備してはいるが、オメガが欠けるかどうかで、この後の戦闘がガラリと変わってくるのだ。

 

 ……そう、この後を考えると、ここでナザリックの主戦力である守護者を倒されるわけにはいかないのだ。

 

 

『──報告! ゾーイの動きに変化が──ナニカが来ます!』

 

 

 そして……出来うる限り用意出来た『ハンゾウ』も倒され、第三階層を突破され、第四階層『地底湖』へと降り立った時……ついに、その時が来た。

 

 

 

 ──来たれ! 調停の翼よ!! 

 

 

 

 ウィンドウの向こうで、ゾーイが蒼天の剣を掲げ、名を呼ぶ。途端、ぬるりと空間より姿を見せるのは、一体の竜。

 

 それは、『調停者ゾーイ』に対して一定以上のダメージを与えた時に必ず出現(つまり、呼び出す)する竜である。

 

 それは、あまり大きくはない。サイズだけを見れば、ドラゴンではなくワイバーンぐらいだろうか。

 

 

 

(──来た! ここだ、ここが第一の関門だ!!)

 

 

 

 それを見た瞬間、悟は……今はもう無いはずの心臓が、ギュッと締め付けられる感覚を覚え……同時に、安堵のため息を零した。

 

 

 ……これまでの戦闘で薄々察していた事が一つある。

 

 

 それは、やはり今のゾーイはユグドラシルの時の設定というか、定めていたルールに従って動いているという点だ。

 

 つまりは、対ギルドとなった場合、ちゃんと通路を通って最深部(要は、ギルド武器)を目指すようにしているわけだ。

 

 そうでなければ、『レイ・ストライク』の連発でナザリックを破壊し、一直線に悟の下へ直行するはず……それをしないという事は、そういう事なのだろう。

 

 そして、それが分かれば……悟が取る手段は、一つ。

 

 

『アルベド! コキュートス! セバス! 行け、全力を持って、『調停の翼』の体力を削りきれ!』

 

『デバフ部隊は再び継続してデバフし続けろ! ゾーイは形態変化を行う度、その身に受けたデバフを回復する能力がある! 気を緩めるな!』

 

 

 それは、調停の翼と合体する前の状態にある竜だけが放つ技の一つ。

 

 

『絶対に『サンダー』を食らうな! それが連発されるようになったら、何一つ出来ないままなぶり殺しにされるぞ!!』

 

 

 名を、『サンダー』。

 

 全体ダメージタイプか、単体光属性多段ダメージタイプか、それは発動する直前のエフェクトで判別出来るが、問題はそこではない。

 

 いや、それもまた驚異的な威力で無視出来ない話なのだが、それよりも厄介なのは……『サンダー』の副作用。

 

 それは、『調停の翼』より放たれる『サンダー』を受けると一定時間奥義が封印される……つまりは、魔法もスキルも使用不能状態に陥ってしまうという恐ろしいもので。

 

 物理で殴るタイプならばまだマシだが──見方を変えれば、魔法詠唱者(マジックキャスター)殺しも同然の攻撃であり。

 

 

(後衛に特化した魔法詠唱者にとっては天敵のような技……特に、俺のように特化したようなステータスにしている者は……!)

 

 

 別名……後衛殺しの雷。

 

 

 それを防ぐ手段はなく、対策は……『サンダー』を使わせない為に、次の形態変化を促す……つまりは、短期決戦しかないのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………ずずずん、と。

 

 

 ナザリックが、揺れている。偉大なる御方たちが築き上げた『ナザリック地下大墳墓』が、壊されてゆく。

 

 ゾーイが放つ『バイセクション』もそうだが、斬撃や殴打でも十分すぎる威力なのだろう。

 

 壁が、彫刻が、紋章旗が、並べられていた墓石が、砕かれ、焼かれ、瓦礫と灰に入れ替わってゆく。

 

 既に第3階層までは元の造形が何だったのかすら分からない有様で、第4階層『地底湖』へと通じる第2階層の通路に至っては、もはや廃墟の通路も同然の有様だ。

 

 

 本来、ここはそう簡単に壊れない。

 

 

 かつて、ここに攻め込んできた1500名の討伐隊ですら、細々とした小物は壊せても、ナザリックそのものはどうにも出来なかった。

 

 だが……どうやら、至高の御方たちですら一目置き、戦闘を避けろと仰っていたゾーイが相手では、違うようだ。

 

 

「──どうしましたの、セバス?」

 

 

 感慨に耽っていたセバスは、背後から掛けられた声にハッと我に返った。

 

 

「……少しばかり、考え事をしておりました」

 

 

 セバスのその言葉に、声を掛けたアルベドは……軽く笑った。

 

 その笑みは……笑ってはいるものの、とても寂しげなものであった。

 

 

「当ててあげましょうか?」

 

 

 そう、尋ねられたセバスは……ふふっと、アルベドと同じく寂しげに笑った

 

 

「考える必要が、ございますでしょうか?」

「あら、もしかしたらハズレているかもしれないじゃない」

 

 

 からかうようなアルベドのその言葉に、セバスはもう一度ふふっと笑みを零し……改めて、眼前に広がる地底湖を見つめる。

 

 地底湖があるフロアは……一年を通して薄暗く、静かだ。風も無く、波紋が立つこともほとんどない。

 

 けれども、そこには命が息づいている。至高の御方たちの手で生み出された命がそこにいる。

 

 ……客観的に見れば、外の世界にある湖の方がずっと美しいのだろう。

 

 けれども、セバスにとっては……いや、『ナザリック』にて生み出された僕たちにとって、ここの方が万倍も美しく思えた。

 

 

「……これで、良かったのかもしれませんね」

 

 

 そんな、静まり返った地底湖にて……ポツリと、セバスの呟きが零れる。

 

 現在、セバスの傍に居るのは、守護者のアルベドと、コキュートス。そして、意思疎通が可能な僕が少数と、まともに会話が成り立たない僕が大多数。

 

 なので、セバスの呟きに答えられるのは、必然的にアルベドとコキュートスぐらい……それでも、だ。

 

 

 ──何が、とは、誰も言わなかった。

 

 

 理由は、セバスの言葉が理解出来ず首を傾げた者がほとんどで。

 

 言葉は理解出来ても、意味が理解出来なかった者も首を傾げ。

 

 その中で、言葉も意味も理解して察した者が1人いるが、こちらから聞き返す事ではないとあえて口を噤んでいた。

 

 

「……私たちは、あまりに異質でございます」

 

 

 だからこそ……その言葉がセバスの唇から出て来るまでの、沈黙……セバスに、言葉を選ぶ事案を与えてくれた。

 

 

「偉大なる至高の御方……『たっち・みー』様を始め、ナザリックを去ってゆき……今では、アインズ様だけが残ってくださいました」

 

「だから、私たちはアインズ様が残ってくださった事を心から喜び、あの方に仕える事を至上の喜び……事実、それからの日々は幸福でございました」

 

「そして、アインズ様がお望みになったこの世界を、ゆくゆくはその手に……その為ならば、このセバス……手を汚す事も(いと)わないと思っておりました」

 

 

 ……そこで、セバスが言葉を止めた。そのまま、しばし間を置いた後で……ポツリと、告げた。

 

 

「ですが、今にして思うのです。果たして、本当にアインズ様は……この世界を望まれたのでしょうか?」

 

 

 瞬間──この場に居る大多数の僕たちはギョッと目を見開き……怒りを露わに、セバスを睨みつけた。

 

 

「──静まりなさい」

 

 

 だが、それ以上は何も出来なかった。

 

 何故なら、守護者統括のアルベドより静止されたからで……そのアルベドは、只々悲しそうに……寂しそうに、セバスを見つめた。

 

 

「どうして、セバスはそう思うの?」

「どうして? 私に聞かずとも、既にお分かりでしょう、アルベド」

 

 

 対して、セバスは……いや、セバスも悲しそうに俯いた。

 

 

「そもそも、私たちは一度として、アインズ様の口からこの世界を手に入れると……ちゃんと、尋ねた事がありますか?」

「…………」

「分かっているのでしょう、アルベド、貴女も」

「……なにがよ」

「アインズ様は、私たちが望んでいた通りに動いてくださっていただけ。私たちが思い描く、至高の御方を想像して……そのように演じてくださっていただけなのです」

「……分かっているわよ、それぐらい」

「ですが、あの時は分からなかった」

 

 

 はっきりと言い切れば、アルベドは……そっと、視線を逸らした。それが、アルベドの答えであった。

 

 

「あの時、玉座の間にてアインズ様から魔法が掛けられる、その時まで……誰一人、気付いてはいなかった」

「……ええ、そうね」

「たった一言でいい。たった一言、『御身はどのように暮らして行きたいのですか?』とさえ聞ければ、『私たちの事はかまわず、ご自由になさいませ』とさえ言えれば、良かったのです」

「それは……そうね」

「何と滑稽な話なのでしょうね。私たちは、御身の事を第一に考えているように振る舞っていただけで、その実……自分たちの事しか考えていなかった」

 

 

 そう、言い終えた直後……ひと際強い振動が、『地底湖』をビリビリと震わせた。

 

 

「……今だからこそ、分かります。本当のアインズ様は……そのような御方ではなかった」

「……そのような?」

「私たちはただ、あの方を苦しめる事しか出来なかった……そう、私たちはあの方の忠実なる僕には成れても、対等の友人にはけしてなれない存在でしかなかった」

「…………」

「あの方の望みは、世界ではありません。共に語り合い、共に肩を並べ、共に食事をし、共に冒険をする……そんな、対等の友人……それだけが、あの方の望みだったのです」

 

 

 ──再び、強い振動音。

 

 

「──そうですか、オーレオールを除いた姉妹が逝きましたか」

 

 

 今度は先ほどよりも激しく力強い。『伝言』にて伝えられた部下の死に、セバスは……グッと唇を噛み締めると、前を向いた。

 

 

「──語ライハ、済ンダカ?」

 

 

 合わせて、タイミングを見計らっていたかのようにコキュートスが、ヌルリとアイテムボックスより愛刀を取り出した。

 

 

「コキュートスは、何も思わないのですか?」

 

 

 その、あまりに普段通りの態度を不思議に思ったセバスが尋ねれば。

 

 

「モハヤ、語ライハ不要。タダ、命ヲ尽クス……ソレガ、アインズ様ニシテサシアゲラレル、唯一ノコトダ」

 

 

 それだけを語ると……コキュートスは、己が部下と共に、構えた。

 

 

「……なるほど、実に貴方らしい」

 

 

 それを見て、フッと肩の力を抜いたセバスは……コキュートスに合わせて、サラッと戦闘態勢を整えたアルベドを見やった。

 

 

「アルベドは──」

「私の事よりも、ツアレは本当に良いの? 人間たちはカルネ村に避難させたけど、王都が落ち着くまでは……誰も彼もが苦しい日常になるはずよ」

 

 

 遮るように言われたセバスは……静かに、頷いた。

 

 

「それも覚悟したうえで、あの子は子を産むことを決めました。ならば、私が言う事はありません」

「……あ、そう」

「大丈夫です、ツアレは強い。エンリたちも、良くしてくださるでしょう」

「たっち・みー様が知ったら、怒るのではなくて?」

「そうですね、きっと怒られるでしょうね……ですが、ここで自分だけ逃げだしたら、それ以上に怒られそうです」

「──ふ、ふふ、そうね、そうよね」

 

 

 あまりと言えば、あんまりな言い草に……堪らずと言わんばかりに、アルベドはヘルムの中で笑みを零し……次いで、視線を向けた。

 

 

「それじゃあ、私も……愛するみんなの為に、自らの役割を果たしましょうか」

 

 

 その、直後。

 

 

 

 

 

 ──来たれ! 調停の翼よ!! 

 

 

 

 

 

 はるか視線の先にて……竜を召喚した調停者の姿を、ナザリックの守護者たちは視認し……構えた。

 

 

 




序盤はまだ順調に進んでいます
ただ、グラブルやっていると分かりますけど、グラブルの高難易度マルチってHP減ってからが本番なんすよね、一手間違えると全滅間近とか普通に起こりますし
まだ、ゾーイは優しい方なんすよ(震え声)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。