リコリス・リコイルで一般人転生者が頑張るお話   作:Shohei Hayase

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一将万骨

「さて、と」

 

軽くストレッチ。ここ一ヶ月でストレッチが大事だと学んだ。テイレシアスを起動してると、運動命令が身体を全力でブン回すから困る。

 

一ヶ月のリハビリ期間中、筋を痛めること数知れず。最終的に10〜20分ぐらいストレッチをしないと手足が痛むことを理解した私は、兎に角運動には準備が大切なのだと学習したのであった。

 

とりわけ足の柔軟は念入りに。人間のくるぶしは繊細で、一度捻ったらしばらく安静にしないと癖になる。つまり捻挫が再発し易くなる。

 

そんな爆弾を抱えたままテイレシアスを起動するわけにもいかず、慎重に体の各所を解していく。

 

テイレシアスのトレーニングは、他に人が居なくなった頃合いを見計らってシューティングレンジでやっている。

 

キルハウスでの訓練は確かに最も実戦的だが、千束には任務がある。ミカも同様に、平時は他のリコリスの面倒を見ている。

 

……ちなみにミカは私が医務室へ担ぎ込まれたせいで管理不行き届きの責任を負わされ、数ヶ月間の減棒を食らったらしい。

 

平謝りした私を笑って許してくれたミカは、どこか疲れたような表情をしていたが、同時に晴れやかだった。

 

話を戻す。私の訓練相手が務まる……上からの言い方だが、私の動きに対応できる人間は少ない……人達がいなければ、キルハウスでの訓練はあまり意味がない。

 

(多少場所が狭くても銃を絡めた実戦演習。これ大事)

 

P30SKにタクティカルリロードで11発を装填し、シューティングレンジの台から10m程度離れた所に立って意識を集中させる。 

 

(超深部演算(テイレシアス)──)

 

意識の()()が一気に増す。

 

テイレシアスが脳の演算領域を切り取り、目に映るすべてを総体として理解する。

 

超深部演算(テイレシアス)はあくまでも臨界点。それを一挙に開放するのが、私が出した結論。

 

「──点火(イグニッション)

 

点火すると同時に構えて一発発砲。すぐに前に出てもう一発。今度は右斜め後ろに移動しながら射撃。

 

菱形のような足跡を描きながら5発を消費した私は、腰を軽く沈め、全身のバネを使って飛び上がる。

 

体のリミッターを外したことで、私の身体能力は大きく向上している。具体的には、助走なしで体操ゆかのE難度技を跳べる。 ……その後は考えないこととするが。

 

横っ飛びに身体を投げ出しながら銃弾を2発。バク転しながら1発。

 

ここで2秒が経過し、テイレシアスの起動が途切れる。

 

急激に変化する体感時間にクラクラする頭を宥めつつ、立姿勢で2発。

 

薬室に一発だけ残し、満タンのマガジンと最速で入れ替え、再度テイレシアスを起動。

 

ランダムにステップを入れ、その移動中に射撃する。

 

2秒で全弾を撃ち尽くし、テイレシアスの終了と同時にP30SKがホールドオープンする。

 

ドッと疲れが吹き出した身体、そしてビリビリと痺れたような感覚を訴える手足を軽く揉んで解しつつ、シューティングレンジのスコアを確認する。

 

「全弾ヘッショ、集弾率は66%、総合評価B-か……残念。またエラー吐かせてやりたかったのに」

 

頭の中心から2cmの範囲内に、全ての弾が着弾している。

 

流石に移動中では、正確さを担保できないか。

 

何発かはワンホールショットに成功したものの、それ以外は狙いが逸れてしまった。

 

(起動中の精密射撃は、やはり課題ありか。相手の銃を確実に破壊するためには、もうちょっと公差を詰める必要があるね)

 

銃弾を避ける技と、相手の銃を破壊する技は、やはり並立するものでなければならない。

 

イグニッションで負荷を軽減することには成功したが、それは飽くまでも連続起動による負担を無くすためのものであり、そう頻繁に切り替えられるような物ではないのだ。

 

(今の状態だと、MAXの性能を維持できるのは4回まで、それ以上は加速度的に負傷のリスクが上がる)

 

さてところで、初めてテイレシアスを起動したときは? ……多分20秒以上は使ってたかなぁ。

 

「そりゃ全身メチャメチャになるわけだ。限界の倍以上使ってやがる」

 

それに、最速でインターバルを終えて再起動するのは2回が限度。つまり連続でテイレシアスを起動できるのは、合計で4秒だけ。

 

(そこも課題だな……っつか肺活量が足りん。少しでも出力を稼ぐために、起動中は息止めっぱなしだし)

 

ヴァルサルヴァ法……滅茶苦茶俗っぽい言い方では「息む」とも言ったりするが、これは迷走神経を刺激することで筋緊張を引き起こし、筋力を発揮しやすくする、人間に備わる生理的機能である。

 

当然ながら、激しい運動中に息を止めるというのは循環系を酷使することに他ならない。最速のインターバル……すなわち1呼吸分の0.2秒を挟んでも、次の起動時には出力が微妙に低下してしまう。

 

「うーむ……難点が多い」

 

しかし、使いこなせれば強力であることは疑いようもなく、継続してトレーニングをすることが重要であると結論づけ、地面に落ちたマガジンを拾い上げる。

 

静止しての射撃はしない。決まりきった結果を見る理由もない。

 

一発一発、9mmパラベラム弾をマガジンに込めて、私は日が暮れるまで訓練を続けた。

 

 

 




アンケートの結果、僅差ではありますが『書かない』が上回ったことを受け、これからなるべく早く執筆に入りたいと思います。次回の投稿は3日ほど後になりますことを、予めお知らせいたします。
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