リコリス・リコイルで一般人転生者が頑張るお話   作:Shohei Hayase

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騙して悪いが

私と千束が一緒の任務に向かう事になったのは、彼女とそう約束してから一月ほど経っての事だった。

 

ただし、千束はゴリゴリのフォワードで、私はバックアップ。6歳でありながらもセカンドリコリスに就き、ファーストの座もそろそろ近いと目される千束は、リコリスたちの間では期待の新人であり、DAはかなりキツ目に育成する方針のようだ。

 

DA本来の任務である犯罪の未然抑止は、実行犯の射殺以外にも、その元を断つという意味で銃、薬物、爆発物の取引を失敗させることも含む。流石に小学生相当の年齢のリコリスは暗殺任務に駆り出されることはないが……千束は既に正規のリコリスと同様の扱いをされていて、数件暗殺もこなしているらしい。

 

この組織に所属してる奴ら全員頭おかしい。

 

息をするような感覚で人を殺してやがる。逆にこっちの正気を疑うのやめような。

 

ブリーフィングルームに入室すると、先に席に着いていた千束は自分の隣の席をバスバス叩く。

 

「おはよう咲紀、調子はどう?どこか悪いとこない?」

 

「おはよう千束。私は大丈夫。千束は?」

 

「元気元気、超リラックス!」

 

これから人を撃ち殺すのにリラックスするのもだいぶ困り物なのだが。

 

わずかに遅れて入室してきた楠木司令を、全員が起立して出迎える。

 

彼……あるいは彼女はDA東京支部の司令官を務め、DA全体で見てもその影響力は上位に位置づけられる。

 

その中性的な容貌と、男とも女ともつかぬ声は、ゆっくりとした口調で作戦内容を羅列していく。

 

『作戦目標は、明日江戸川区で行われる銃取引の阻止。リコリス5チームで行動に当たる。室内戦闘が予想される。各員注意して行動に当たれ』

 

リコリスは4人1チームで行動する。5チームとは20人であり、銃取引の規模も恐らく相当に大きいだろう。

 

『バックアップチームは後方で待機し、4チームは順次突入、制圧せよ。行動開始は06:00から、集合場所は追って指示する』

 

短いブリーフィングの後、楠木司令は足早に退出する。DAの仕事は多岐に渡り、それを一人で回している彼は酷く多忙で、同じ所に20分以上いるのを見たことがない。

 

それよりも……

 

(リコリス20人で当たる相手に千束をぶつける? ちょっと考えが見えないな)

 

仮にリコリス19人が適正戦力だとしたら、千束一人を加えるだけで戦力過剰になる。

 

仮にリコリス19人と千束がいてようやく適正戦力だとしたら、千束は帰ってこられても私達の命の保証は……

 

ん?まてよ。

 

彼女も、彼女も彼女も……そんなに評価が高くないリコリスだ。

 

彼女だけじゃない。ここにいるほぼ全員……千束の所属するチーム以外のリコリスは、誰もそんなに評価が高いわけではない。

 

(まじかよ体のいい厄介払い……っつか任務中の事故として処理されるやつじゃねえか! 映画かよクソが!)

 

あーはいはいそうでしょうねぇ、私が呼ばれた任務だから禄な物じゃないとは思ってたけど、こんなあからさまに「死んでこい」ってのは無かったと思うんだけどなぁ……

 

「浮かない顔してるね、咲紀」

 

「……ちょっとね」

 

酷い表情をしていたと思う。

 

……そうと決まった訳ではないが、最悪、任務中に背中を押されて機関銃掃射の前に叩き出されるくらいは覚悟しなければいけなくなったことに対して、ネガティブな気持ちが隠せない。

 

リコリス殺しのリコリスなんて噂は聞いたことが無いので、作戦中にうっかり、程度だとは思うが……

 

(本当にそんなのがいるんだったら、第一候補は彼女なんだよなぁ……)

 

ちらりと、千束を盗み見る。

 

(あぁ嫌だ嫌だ、友達を疑うもんじゃないね)

 

ガリガリと頭を掻き毟り、言葉を続けようとして、止まる。

 

「大丈夫だよ、咲紀。何かあったら私を呼んで。必ず駆けつけるから」

 

何よりも真摯な、彼女の言葉。

 

「ありがとう、千束」

 

私が微笑むと、彼女も唇を緩めた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

その日の夜、同室のリコリスが寝静まった傍ら、私は装備の点検を行う。

 

訓練生を卒業し、サードリコリスとなった私の愛銃は、相変わらずP30SK。元々小型だったP30を更に短縮、軽量化し、マガジン抜きの重量は驚異の0.7kg切りを果たしている。

 

……軽さだけで言えば他にも軽いのはあるが、ネイティブ10発の装弾数であり、かつシングルカラムであるという要件を満たせるのはこれしかなかった。

 

グロック26Gen4君は……うん。ご縁がなかったということで。君は良き武器ではあったがね。君がダブルカラムなのがいけないのだよ。あとちっちゃすぎて遠距離戦に向かない。

 

フィールドストリップして、軽く点検、再び組み直す。

 

ガンスミスではないが、商売道具の扱い方には慣れていなければ話にならない。

 

フル装填されたマガジンを二本、学生鞄の中に突っ込む。

 

防弾服のほつれなどがないかを確認して、ベッドに潜り込み、祈るように目を閉じる。

 

(殺したくない、死にたくない。私は私のままで、これからを生きたい)

 

けど……前世の記憶すら未だ明瞭に思い出せない、私として生きてきた実感も持てない私が言う『これから』とは、一体何なのだろうか。

 

答えは出ないまま、意識は闇に落ちていった。

 

 

 

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