リコリス・リコイルで一般人転生者が頑張るお話 作:Shohei Hayase
富士山の麓にあるDA関東本部から、高速を使って2時間程。
江戸川区北のビルの近くに、バスは静かに停車した。
「作戦を確認する。
最終確認を小耳に挟みながら、P30SKを鞄から引き抜き、サイレンサーを取り付ける。
「では、無線封止はレベル3を維持。必要があればチームリーダーの判断で無線装置の使用を許可する。コマンドポストに伝達、行動開始!」
6時きっかり。αチームのファーストリコリスがビルの扉を破壊し、通り道を作る。
「突入!」
号令と共にδチームが先行して突入し、εチーム、cチーム、βチーム、αチームの順番であとに続く。
「ドアワン」
「クリア」
「ドアツー」
「クリア」
ツーマンセルでクリアリングを行い、δとεは事前計画通りにクリアリングを済ませる。
「1階クリア、敵影なし」
「δは警戒、α以下は2階へ向かう」
cチームが先頭になって、階段をクリアリングしつつ進んでいく。
私はεチームとして、cチームの後ろで階段の先を伺う。
(……ん? この金属音は、銃?)
小さく擦れ合うような音がして、私の全身が大きく震える。
cチームの一人が階段を登りきり……
ダダダダッ、という重い音とともに体がフラフラと揺れ、ゆっくりと倒れる。
思わず抱きとめた私の手のひらには、生暖かい液体がべっとりと付いていた。
(クソッ、やっぱり待ち伏せされてたか……! 一階に人がいない時点で怪しいと思ってたんだよ!)
ざっと負傷の状態を確認。
……死に繋がるような傷は無いが……右肩と左腰の弾痕は即刻治療が必要だ。
中学生ぐらいだろうリコリスの体は重く、とてもでは無いが私一人で下に降りられるとは思えない。
「……cチームは負傷者をバスに移送。そののち戦線へ復帰。α、β、εは火力戦闘、可能な限り敵戦力を減らす」
「……了解」
cチームのリーダーに負傷したリコリスを預け、私が階段の曲がり角から向こうの通路を覗き込む。
チラリと顔を出した瞬間、即座に発砲音が聞こえて慌てて身を引っ込めると、壁に着弾した銃弾が煙を立てて私達の方にたなびいた。
(完全に出待ちされてやがる……被弾覚悟でクイックピークを掛けるか?)
しかし、敵銃手の反応速度があれ程となると、本当に一瞬しか見れない。何度か試すのも無理筋だ。
(壁も……そんなに耐久度はない。持ってあと30発か)
弾痕からして
せめて敵配置だけ!
「……っ!?」
アサルトライフル持ちが3人、機関銃持ちが一人。
クイックピークの成果はあったが、より絶望的な予測が鎌首を擡げる。
(どう考えても拳銃じゃ相手できねぇ!狙撃しようにも、窓が遠すぎて有効じゃない……不味いな詰みか?)
とりあえず手信号で敵の配置、通路の構造、銃種を伝え、リーダーが決定を下す。
「α、βが突貫してテリトリーを広げる。εは援護射撃」
その言葉に、各々が獲物をチェックし始める。
私もP30SKのスライドを引き、初弾を込めた。
リーダーが手を持ち上げ、素早く下ろす。
行動開始の合図とともに千束が飛び出し、小柄な体格を生かして左の脇通路に飛び込む。
それに続いてβの一人が右にダッシュし、脇通路へ。
私はP30SKの銃口だけを階段から突き出し、数発ブラインドで撃つ。4発撃ったが……結果は芳しくないようだ。
εチームが火力支援を行っている間に、今一度状況把握をするべくもう一度クイックピークを掛ける。
通路には人がおらず、手信号で「行け」と指示し、α、βの全員が左右の脇通路に移動した。
(よし……早撃ちで一人か二人を止めて、あとは他の人に任せよう)
アイソセレススタンスで向かい側の角を狙う。
特に遮蔽物はなし。アサルトライフルを持てる大きさの掩体もなし。
なら向こう側の通路に、必ず居るはずだ。
「──来る」
鈍い発砲音が、2発。
両角から突き出したアサルトライフルに狙いを定め、正確に機関部を破壊した。
これでアサルトライフル1、機関銃1……と肩の力を抜き、すぐにそれが間違いだったと思い知らされる。
通路の更に奥、2階から3階へと登る階段から次々と、アサルトライフルで武装した兵士が現れた。
(取引した銃の試し撃ちってか!?)
残りの弾丸4発の内3発を銃に向けて叩き込み、一発だけ兵士の肩を抉るように当てる。
私が物陰に身を隠した直後、掃射によってコンクリートの壁が嫌な音を立てた。
空になったマガジンを捨て、学生鞄からマガジンを引き抜いて装填、ホールドオープンしたP30SKのスライドを引く。
(殺さないように……なるべく足か肩だけを狙って……)
……出来るのか? 今の私の能力で?
冷たい汗が体を伝う。
自分の望みと現実との乖離を、今更ながらに感じていた。