プレゼント・マイクの号令と共に始まった第二種目の騎馬戦、それを受けて其々のチームが取ろうとした動きは様々だった。
出久が着けている1千万点余りの鉢巻を我先に狙うチーム、それをやらせまいと逃げを企てる出久達のチーム、2位狙いで他の鉢巻を狙うチーム、或いは他のチームと結託して狙いのチームを追い詰めんとするチーム…
「水の呼吸・玖の型 水流飛沫・乱!」
その中で焦凍のチーム、正確には騎手の焦凍が取った動きはそのどれとも言えるという点で他とは違っていた。
開始の号令と同時に
「させないよ!」
「おぉっと!」
「甘いわ!」
「やらせるか!」
「やってくれる!」
開始早々から仕掛けて来た焦凍の奇襲に対し、A組の騎手達は見慣れていたのもあってか難なく対処する事が出来たが、
「っ!?」
「は、鉢巻が!?」
「何時の間に!?」
「は、速い!?」
「捉えられない!?」
「水飛沫!?一体何処から!?」
轟チーム 455pt→1705pt
鉄哲チーム 305pt→0pt
物間チーム 245pt→0pt
拳藤チーム 210pt→0pt
鎌切チーム 175pt→0pt
鱗チーム 160pt→0pt
小大チーム 155pt→0pt
他の騎手達はその動きに反応出来ず、鉢巻を早々に取られてしまった。
だが焦凍の奇襲策はこれだけで終わりじゃない。
「これは序でだ。お前達はお呼びじゃねぇ、暫く大人しくしていろ」
A組以外の騎馬から鉢巻を全て奪い取った焦凍が自分の騎馬へと戻ろうとした際、右手に持っていた氷の刀を、鉢巻を奪われた騎馬達がいた地点の中心地に投げつける、すると地面に突き刺さった氷の刃を中心に地面が分厚い氷で覆われて行き、騎馬役である生徒達の足が掴まれて行った。
「同じ手に何度も梃子摺るかよ!」
とはいえこれは先程の障害物競走でもやられた事、騎馬戦である関係から回避は叶わなかったが対処は心得ていると言わんばかりに氷を砕いていく。
「へェ、アイツ初っ端から飛ばすなァ。よし峰田、あの氷漬けの連中にありったけのもぎもぎをお見舞いしてやれ。名付けて『もぎもぎ
「勝手に技名付けんじゃねぇよ!まあ良い名前だから使わせて貰うけど」
「何だかんだ言っても採用はするんだ」
ところが、それを見逃さない者がいた、響香達のチームだ。
開始早々の焦凍による奇襲を凌いだ直後、騎馬である勝己が個性を応用した両手両足からのロケット噴射で上空へと飛んだ所、その焦凍が6本もの鉢巻を奪い取った挙げ句、その足を氷漬けにして行動不能にする様を見つけ、初っ端から大々的に仕掛けて来た焦凍に感心しながら、だったらそれに便乗してやろうと勝己は企み、騎馬役の筈だが己の背に乗っかっている実に襲撃を指示する。
その指示に、というかその名前を勝手に付けた事にツッコミながらも実は頭のもぎもぎを文字通りちぎっては投げちぎっては投げ、とB組生徒達の騎馬へと乱射していく。
その結果、
「う、動けない!?」
「またこのボールか!」
「ちょ、離れろよ!くっついちまうだろうが!」
「痛っもう打ち止めみてぇだ、だけどこれでB組は負け確だな!」
1人の例外も無くもぎもぎ塗れとなり、その強大な粘着力によって互いが互いを拘束する様になってしまった事で、B組メンバーで構成された騎馬は競技続行不可、0ptなので事実上の脱落となった。
然し見境なくもぎもぎをぶん投げ続けた代償は少なくない、ブチっという嫌な音と共に実の頭皮から血が滲み出たのである、それで痛がる実だったがB組を敗退に追い込んだのを確信してにやりと笑った。
「よし、これで邪魔者はいなくなった。出久達も案の定、上に逃げて来た。響香!峰田!アイツの鉢巻を取りに行くぞ!」
「任せて、勝己!絶対に取って1位になって見せる!」
「おう!」
焦凍の奇襲に便乗した事で、開会式での公約を半分実現して見せた勝己達、後は自分達が1位を掴むだけ、その必須アイテムである1千万の鉢巻を着けた出久の騎馬が、自分達と同じ様なやり方で上空へと逃げて来たのを確認すると、それを奪い取るべく接近を試みる。
「出久。1位争いはウチらと出久達との一騎打ちって所だね。その鉢巻、取らせて貰うよ!」
「いや。3人共、どうやらそうでも無いみたいだよ?」
「は?それはどういう」
「響香!下から来るぞ!」
「分かってる!」
だがそれを追う騎馬、というより騎手は他にもいた。
「出久ちゃん、響香ちゃん、私も加わらせて貰うわ!これで三つ巴よ!」
「来たね、梅雨ちゃん!だけど!」
「おっと!」
『オワッ!?』
空に逃げた出久の騎馬を追って来たのは、個性によって強化されたジャンプ力に物言わせて
それを予め察知していた出久は襲い掛かる舌をいなして攻撃を防ぐも、梅雨はいなされた舌を巧みに操り、出久達の騎馬役を1人で担う踏陰、というよりその個性と同名のモンスターである黒影に引っ掛け、個性前の時代に漫画等の創作物を通じてその名を轟かせた蜘蛛モチーフのヒーローばりのアクロバティックな動きを見せて再び出久の鉢巻を狙う。
「梅雨ちゃんに取られでもしたら、横からかすめる暇も無く逃げられる!勝己、梅雨ちゃんと被らない様に回り込める!?」
「任せろ!ちょいと荒い飛行にはなるが勘弁してくれよ!」
「勿論!峰田、もぎもぎ使わせて貰うよ!」
「あいだっ!おい耳郎、打ち止めだっつってんだろ!?」
そんな梅雨の襲撃を黙って見ている響香達ではない、梅雨に取られる前に自分達が取って見せると行動を開始、射線に梅雨が割って入らない様に勝己が立ち回り、響香はもぎもぎをイヤリングみたく耳たぶにくっつけ、その際に打ち止め状態にも拘わらず無理矢理もぎもぎをもぎ取られ、それによって走る激痛の余り抗議の声を上げる実を無視して出久へと耳たぶを飛ばす。
こうして前後から梅雨と響香の挟み撃ちにあった出久達だが、騎馬役を黒影に一任している事での人数差の優位を活かし、騎手の出久に、騎馬役である筈のお茶子と踏陰も加わって攻撃をブロック、空中へ逃げる為に黒影が装着していたサポートアイテムの製作者である明がその操作をして切り抜けるものの、攻撃手段の乏しさからか防戦一方だった。
尤も出久達の場合、鉢巻さえ守れば決勝進出は確定なので態々攻めに転じる必要は無いという理由もあるが…
「さぁてスタート間もないが、早くも各所で鉢巻の奪い合いだ!上空では1位を巡って3チームの混戦混戦大混戦!だがトップを狙わず、2位狙いってのも悪くねぇ!そう言わんばかりに地上の2位争いも白熱しているぞ!B組の騎馬はこれに加われんのか!?いや無理そうか!?」
開始早々から目まぐるしく変わっていく戦況に、プレゼント・マイクの戦意を煽るかの様な実況にも熱が入る、その言葉通り、空中で繰り広げられる1位争いの下では、上に逃げた出久達を追えないので2位を確保せんと其々の騎馬が戦闘を繰り広げていた、その主な標的となったのは、B組の騎馬が着けていた鉢巻を総取りした事で暫定2位となった焦凍達の騎馬。
「初っ端の奇襲で1千万を取れなかったのは痛いが、せめて2位は確保するぞ。八百万、上鳴、行くぞ!」
「お任せください、轟さん!恋の呼吸・陸の型 猫足恋風!」
「八百万の、日輪刀だっけ?それに流せば良いんだよな!ウェェェェイ!」
焦凍達もそれは百も承知、最低でも2位は確保すると言わんばかりに立ち回る。
百は個性で創り出したフレキシブルソードを縦横無尽に舞わせて敵を近付けさせない、と此処までなら何時も通りの動きなのだが、1つ違ったのは刀身に走る電流だ。
その出処はフレキシブルソードに繋がれたワイヤー、その端を持っている電気が己の個性で流している物なのだ。
縦横無尽に舞う刃と、その周囲に撒き散らされる電流、その二重の防壁によって守られた焦凍だがそれを突破せんとする者は必ずいるだろう、それらを迎撃すべく氷の刀を構えて警戒する。
「霞の呼吸・漆の型 朧!」
「その防壁、突破して見せる!シィァアアアアアアアア!」
「それは、アタシの台詞だよ!シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
「せめて、ほんの少しでも意識を向けさせれば勝機は開ける…!」
「俺のテープは絶縁物質!防壁は封じさせて貰うぜ!」
案の定、防壁を突破せんとする者達が焦凍達へと襲い掛かって来た。
人使達は透、鋭児郎達は三奈と、騎馬役となっている者を分離独立させて突撃させるという荒業を仕掛け、騎手である梅雨が空中戦を繰り広げている騎馬に至ってはまだ崩れた扱いじゃ無いのを良い事に騎馬役の3人全員で襲撃を敢行、そして範太が肘のテープを射出して百と電気が展開する防壁を封じに掛かった。
だがそれを警戒していた焦凍達は落ち着いて対処する、百と電気の防壁に加えて焦凍が氷の刀を投げつけて其処から氷壁を形成して突進を妨害、或いは範太のテープを弾き飛ばし、それでも突っ込んで来る者には刀を振りかざして対処、その間に騎馬役の2人が移動して距離を取る。
こうして空中でも地上でも激戦が繰り広げられたが防衛側の優位性もあってか、最序盤でB組の鉢巻が全て焦凍に渡った以外は点の移動が発生する事は無く、
「はい、終了ぉぉぉぉ!」
制限時間が来た事を伝えるプレゼント・マイクの声が響き渡り、競技終了となった。