産屋敷殿の13人   作:不知火新夜

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先週はコロナワクチン接種に伴う副反応の為に投稿出来ず、すいませんでした。


16話_最終種目・参

「二回戦第五試合!第一種目は目立たなかったが第二種目では文字通り騎馬となってトップ通過に貢献した小さな巨人!あ、小さいのに巨人とはこれ如何になんてツッコミは野暮だぜ!A組、常闇踏陰!ヴァーサス!デカい体躯に優しい心を併せ持ったナイスガイ!だけどこの体育祭ではその性格が仇になったかイマイチ活躍の機会に恵まれない!此処で挽回してくれよ!A組、口田甲司!第五試合、レディ、スタート!」

 

踏陰と、岩石の様な形状の頭と力道や目蔵にも引けを取らない大柄な体躯が特徴的なA組の男子――口田甲司の対戦カードとなった第五試合。

甲司の個性は『生き物ボイス』、これは一言で言えば『人以外を対象にした『洗脳』』、声による指示を出す事で周囲の人以外の生物を指示通りに動かす事が出来るという物、流石に人を操る事は出来ない一方で、人使のそれみたく対象が呼び掛けに対する反応が必要、という様な操る為の条件が存在せずただ指示を出すだけで支配可能という強力な個性である。

…が、この闘技場、もっといえば会場全体に操れる生物など殆どいない、まあ隈なく索敵すれば闘技場が設置されているグラウンドの下に潜伏しているであろうミミズ等の小動物を見つけて支配下におけるかも知れないが、甲司は大の虫嫌いなことからその考えに至らず、その大柄な身体を駆使した格闘戦に臨むしかなかった。

 

「黒影、お前は左へ回り込め!」

「アイヨッ!」

「く…!」

 

そしてそんな状態の甲司に、個性である黒影とのツーマンセルも出来る踏陰では相性が悪過ぎた。

その優しさ故か、雄英入学前に格闘技を習った事のない甲司の立ち回りは未熟その物で、大振り気味に放たれた打撃は踏陰に簡単に対処され、その間に黒影によって羽交い絞めにされ闘技場の外側へと引きずられていき、

 

「口田君、場外!常闇君、三回戦進出!」

「瞬殺とはならなかったが一方的な展開で決着ぅ!2vs1に持ち込んだ常闇があっさりと場外へ運んで勝利を手にした!口田にとってこのフィールドでは流石に分が悪かったか!」

 

抵抗空しく場外へと投げ飛ばされてリングアウト、踏陰の勝利が決まった。

 

「二回戦第六試合!第一試合であのデッドヒートに与した黒、いや灰色の野獣!A組、切島鋭児郎!ヴァーサス!一回戦で鉄哲との激戦を制したブラウンの野獣!B組、宍田獣郎太!この野獣対決、制すのはどっちだ!?」

「切島殿、全力で行かせて貰いますぞ!」

「敵の野望をぶっ潰した俺の力、見せてやるぜ!」

 

そんな第五試合から程なく準備が進められる、鋭児郎と獣郎太の対戦カードとなった第六試合は、偶然にも(ビースト)の個性持ちである獣郎太と、獣の呼吸の使い手である鋭児郎、と偶然にも共に獣の力を使う者同士という事から観客の注目も高く、実況のプレゼント・マイクもそれを察知したかの様な煽り文句で会場のテンションを高めた。

 

「それじゃあ第六試合、レディ、スタート!」

「行きますぞ!」

「遅い!」

「ぬぅっ!?なんのぉ!」

「軽い!」

「あがぁっ!?まだまだぁ!」

「未熟!」

「ひでぶぅ!?」

「宍田君、KO!切島君、三回戦進出!」

「おいおいおい、まさかのワンサイドゲームかよ!?野獣対決となったこの試合、だがいざスタートしたら切島の一方的な立ち回り!格が違うとでも言わんばかりだぁ!」

 

その共通点と、一回戦で獣郎太が見せた圧勝劇もあってかこの試合も激戦になるだろうと期待された中でプレゼント・マイクが開始の声を上げる、だが蓋を開けてみれば、観客の思いに反してこの試合は一方的な展開となった。

一回戦と同じく獣と化しての突進を起点に攻めかかろうとする獣郎太、だがUSJでの敵連合との戦いで、敵側の最大戦力である脳無を相手に互角以上と言って良い戦い振りを見せた鋭児郎にとって獣郎太はスピードも打撃の威力も耐久力も立ち回りも未熟その物、脳無とは悪い意味で比べ物にならなかった。

開始早々の突進を余裕でいなしながらカウンターでの斬撃を加え、その後も繰り出される打撃の数々を余裕で捌きながら硬化した腕で切り付けてダメージを蓄積させ、フラフラになった所で正拳突きが腹部に炸裂、それが決め手となって獣郎太は昏倒、KOでの勝利となった。

 

「二回戦第七試合!第一種目でのデッドヒートに与したA組期待の精鋭の一角!サイケデリックな風貌にマッチした個性の威力が発揮されるか!?芦戸三奈!ヴァーサス!一回戦で小大に男女平等キックを叩き込んで勝利を収めたB組、鱗飛竜!一回戦に続いて女子との勝負だが、炎上など知るかな姿勢で勝利を狙ってくれよ!それじゃあ第七試合、レディ、スタート!」

「言われる迄もない、全力で立ち向かう!」

 

三奈と飛竜の対戦カードとなった第七試合、唯との一回戦を制した飛竜にとっては二戦連続で女子との対決となったものの、例え相手が女子だろうと手加減はするなよ?と釘を差しつつ開始を告げるプレゼント・マイク、とはいえ飛竜に対してそれは杞憂だった様だ、一回戦と同様に開始早々から鱗を弾丸として射出、それをマシンガンの如くバラまいて三奈の機動力を封じようとする。

 

「なっ鱗が!?」

「ふふん、アシッドマンってね。今のアタシは酸の鎧で覆われた状態、酸の対策をしていない攻撃は通らないよ。蟲の呼吸・蜂牙の舞 真靡き!

「ぐはぁっ!?」

 

が、それは強粘度の酸を甲冑の如く全身に纏った三奈には全く通じなかった、鱗の弾丸が彼女の身を傷つける前に吸い込まれ、溶かされてしまったからだ。

まさかの事態に驚愕を隠せない飛竜、そんな彼の隙を突かない三奈ではない、足裏にも纏った酸の強い粘度を活かした踏み込みで瞬時に接近、無防備な胸部に右ストレートパンチを叩き込んだ。

勿論このパンチを放った右の拳にも酸は纏われている、尤も酸による溶解作用は接触時間の短さから微々たる物だったが、強粘度という性質によってインパクトの時間を限りなく引き伸ばした事で、全集中の呼吸によって一気に強化されたパワーとスピードを余す事無く飛竜の身体に伝えられ、一気にすっ飛ばした。

 

「鱗君、場外!芦戸さん、三回戦進出!」

「おぉっと鱗、二回連続で男女平等キックはならなかった!てかすげぇ吹っ飛んだなぁ!まるで小大がノされた姿にブチギレ寸前なオーディエンスの憤怒が乗っかったみたいだ!」

「おい、お前はどっちの視点で語ってんだよ」

 

抵抗空しく飛竜はそのままリングアウト、三奈の勝利が宣言されたのだが、女子だろうと遠慮なく倒せと煽ったかと思えばその女子の、その子に取り巻く人々の怒りを代弁するかの様なコメントをする等のプレゼント・マイクに相澤が思わずツッコんだ。

 

「二回戦第八試合!A組の推薦入試組、その一番手の登場だぁ!第一種目ではあのデッドヒートに与し、第二種目でも二位の死守に大いに貢献する等、推薦で入ったその実力は伊達じゃない!このまま優勝まで駆け上がれるかぁ!?八百万百!ヴァーサス!一回戦で、個性を抜きに接近戦を仕掛ける凡戸を手玉に取って見せたその知略を此処でも活かせるかぁ!?B組、柳レイ子!第八試合、レディ、スタート!」

「馬鹿の一つ覚えと貴方は思うでしょうが、個性の面で相性が悪い私が取るべき戦法は、これです!」

 

それはさておき、百とレイ子の対戦カードとなった第八試合の開始が告げられる、それを聞きつつそう前置きした百が取った行動は、強烈な踏み込みでレイ子との距離を詰めながらの打撃、そう、固次郎と同じく接近戦を仕掛けようとしたのだ。

尤もその加速力は固次郎の比ではない、余りの速さに面食らったレイ子だったが自嘲する通りの馬鹿の一つ覚えかと切り替え、接近と共に放たれた左ストレートを回避すべく横へと身体をそらす。

が、

 

「あぐぅ!?な、何で」

「誰も凡戸さんと同じく格闘戦を仕掛けるとは言っておりませんわ。恋の呼吸・壱ノ型 初恋のわななきからの伍ノ型 揺らめく恋情・乱れ爪!

「きゃぁ!?」

 

次の瞬間、右わき腹から左胸部までを斬られたかの様な鋭い痛みが走った。

まさかの事態に混乱した事と、痛みがかなり強烈だった事もあって体勢を崩したレイ子に、百は容赦なく追い撃ちを加える。

一撃離脱の積りか後方へと宙返りをして距離を取りつつも右腕を振るう百、次の瞬間、何か線の様な物が四方八方から飛び交い、それはレイ子の身体を無慈悲に打ち付けた。

その攻撃が終わると共に、百の右手に飛び交っていた線が収まっていく、その正体は百の愛用武器であるフレキシブルソード、そう、百がとった戦法は、固次郎と同じ様な格闘戦と見せかけた不意打ちでの斬撃だったのである。

試合開始の合図と共に踏み込んで距離を詰めつつ左ストレートをレイ子へと放った百だが、それと同時に右手を左脇腹に当て、其処から創造したフレキシブルソードを居合の如く抜き放ち、攻撃を回避しようとしたレイ子の身を斬り付ける、だけでなく、後方宙返りをしながらその勢いを活かした斬撃を放ち、四方八方へと飛び交わせた、これがレイ子に強烈なダメージを与えた攻撃の真相である。

試合開始から時間にして十秒経ったか経たないかの間の攻防、だがそれでレイ子が負ったダメージは極めて大きく、もう必要ないと言わんばかりにフレキシブルソードを放って接近して来た百のお米様抱っこ(ファイヤーマンズ・キャリー)に大した抵抗も出来ず、

 

「柳さん、場外!八百万さん、三回戦進出!」

「一回戦の凡戸に続いて柳にとって相性の良いカードだと思われたこの試合、だが蓋を開けてみれば八百万が一瞬で勝負を決めて見せた!相性の悪さを物ともせず個性と身体能力を十全に生かした八百万のファイトにエブリバディクラップユアハンズ!」

 

そのまま闘技場の外へと放り投げられてリングアウト、百の勝利となった。

 

「二回戦第九試合!此処で優勝候補の登場だぁ!第一種目では惜しくも2位だったがあのデッドヒートに与し、第二種目でもそのリベンジだと言わんばかりに空中で激闘を繰り広げた!開会式の宣言通り優勝を手にするのか!A組、爆豪勝己!ヴァーサス!一回戦で泡瀬を瞬殺したその実力を此処でも発揮出来るか!相手は強敵だが臆せず立ち向かえ!B組、拳藤一佳!第九試合、レディ、スタート!」

「先手必勝でぶっ飛ばす!」

「ふっ!はっ!」

 

勝己と一佳の対戦カードとなった第九試合、一回戦の時と同じく速攻でケリを付けようと、一佳は攻撃の瞬間にだけ手を巨大化させての打撃で勝己に襲い掛かるも、全て読めていると言わんばかりにそれらを回避する、が、

 

「避け方がやけに大仰だな、何時もの勝己君らしくない。何かアクシデントがあったのか、それとも…」

 

その様を見ていた天哉が疑問を覚える位、その動きは何時もと違っていた。

普段の勝己なら半身になったり少し首を傾けたりといった必要最小限の動きで攻撃を避けつつ其処からカウンターを仕掛ける筈なのだが、この試合では大きく身体をのけ反らせたり、横へと移動する際に側転したり、後退する際にバック宙したり、挙句の果てには体操競技みたく捻り回転を加えたりと、無駄にアクロバティックな動きを取り入れた回避をするだけだったのだ。

『見せる』回避をするだけで一向に攻めてこない、そんな勝己の動きに対戦相手の一佳は勿論、この会場にいるすべての者、果てはテレビ越しにこの光景を見ていた視聴者も一体何のつもりだと疑問に思った時、

 

「なァ、拳藤だっけか?此処ちょっと暑くねェか?」

「は?一体何を」

 

勝己が唐突に、そんな事を一佳に聞いて来たのだ。

まさかの行動に思わず一体何を言っているんだと聞き返そうとした一佳だったが、最後まで口にする事は出来なかった。

 

「っ!?きゃぁぁぁぁ!?」

 

それを遮るかの様に視界が一瞬で真っ白な光に包まれ、その直後ドガァァァァン!という轟音と共に全身に強大な衝撃が襲い掛かったのだから。

一体何が起こったのか、それを把握する間も対処する間もなく一佳の身体はそのまま闘技場の外、どころか会場の壁まで吹っ飛ばされ、叩きつけられた所で漸く彼女は、全ては勝己の策だったのだと思い知った。

 

「拳藤さん、場外!爆豪君、三回戦進出!」

清き激情(クリア・パッション)ってな」

「おぉっと、避けるだけで一向に攻めてこないと思った爆豪、だが突如起こった、恐らくは起こしたであろう大爆発一発で勝負を決めたぁ!つーかどうやってあの派手な爆発をやってのけたぁ!?」

「恐らくは拳藤の攻撃を避ける際のあの一見すると派手さ重視の非合理的と思えるアクロバティックな挙動、あれで身体の体温を上げて汗をかきやすくしつつその汗をミスト状にばらまき、頃合いを見て引火させたといった所か。中々合理的な戦略だが、その名前は何とかならんのか?」

「だよな、イレイザー。何処のストーカー体質な生徒会長だよ」

 

こうして9試合が終わった最終種目二回戦、トーナメント表は以下の通りだ。

 

【挿絵表示】

 

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