産屋敷殿の13人   作:不知火新夜

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3話_戦闘訓練・壱

雄英高校の歴史に刻まれる程の事件が発生したり、入学式ほっぽり出して個性把握テストが実施されたりと想像を絶する出来事の連続だった入学初日から一夜明けて、もうお前達は雄英高校の生徒なんだぞ『日常』に移れと言わんばかりに授業カリキュラムがスタート、午前中は国語や数学、社会や理科、外国語といった必修科目の授業を受ける事となった。

 

「んじゃぁ、次の英文のうち間違っているのは?おらエヴィバディ、ハンズアップ!盛り上がれ!」

 

そのうち英語の授業には深夜ラジオの名物DJとしても知られるボイスヒーロー『プレゼント・マイク』こと山田(やまだ)ひざしが担当する等、現役バリバリで活躍中のプロヒーロー達が授業を受け持つのだが、授業中もテンションがバカ高いだけで内容はごく普通である等、特に変わった所は見られなかった。

雄英高校であろうとヒーロー科であろうと変わる事の無い四時間余りを過ごした後に訪れた昼休み、昼食時という事から普通の学生なら空きっ腹を満たすべくお弁当を出して屋上や広場等へ向かったり食堂へ向かったりといった行動に移るだろう、此処雄英高校も食堂は設けているのだが、その規模は段違いだった。

 

「うぅぅぅぅまぁぁぁぁいぃぃぃぃぞぉぉぉぉ!」

 

コック帽にコックコートという如何にもコックさんだと言わんばかりの服装に、排気ダクトか!とツッコミたくなるパイプ付きのマスクを着けた此処の主――クックヒーロー『ランチラッシュ』が作る、文字通り早い!安い!美味い!を体現した数多くの料理を出す大食堂『LUNCH RUSHのメシ処』、出久達も1人の例外無く此処へ来ており、その絶品な料理に舌鼓を打っていた。

 

「放せ爆豪!食事に時間を掛ける何て合理的じゃあ」

「どうしてもと言うんなら振りほどいて見せたらどうだ?その様子だと不可能みてェだがな。食事の時間を無駄だと捉え、それを限りなく削る為にゼリー飯しか摂らねェからそうなる。物を嚙んで喰わねェと顎の筋肉が衰えて咬合力が弱くなる、そして身体に力が入らなくなるってェ話は今時ガキでも知ってる常識だぞ?プロヒーローのアンタがアマチュアの俺如きにこうしてとっ捕まえられているのがその証拠だ。分かったなら固形物を喰え。アンタ、アレルギーはあるのか?無いんなら勝手に注文させて貰う」

 

尚、勝己は出久達とは別行動を取り、前日も見たゼリー飲料で食事を済ませようとする相澤を拘束、その抵抗を抑えつけながら大食堂へと連行していた。

この頃になると『イレイザーヘッド丸洗い事件』の噂は全校に知れ渡っており、今こうして相澤を引っ張り回す勝己の姿を見た食堂中の関係者から「あれが噂の新入生か」と言いたげな視線を向けられ、来る事等有り得ないとさえ思っていた相澤の姿を見たランチラッシュに至ってはトレードマークであるサムズアップを両手でしていた。

そんな様子の周りに「見世物じゃねェぞ!」と言わんばかりに睨み付けながらも律義に注文、相澤も此処まで来てしまって今更帰る訳にも行かず、料理を素直に受け取り勝己の監視の中で久方ぶりのちゃんとした食事をとった。

こうして初日程では無いにしても驚きの出来事があった昼休みは終わり、午後のカリキュラムが、ヒーロー科のメインイベントとも言える授業が始まった。

 

「わーたーしーがー!普通にドアから来た!」

 

その担当としてやって来たのは、前髪が2本の触覚みたく飛び上がったオールバックの金髪、アメコミかよ!とツッコミたくなる陰影が強調された風貌、身長2mを大幅に超える筋骨隆々な体躯、その巨躯を覆う赤をベースカラーとしたヒーロースーツと赤と青のリバーシブルなマント…

デビューから現在に至るまでの数十年間最前線で活躍し、長きに渡って国内No.1の座に君臨する『平和の象徴』にして、この年から雄英高校の教師に就く事が発表されていたヒーロー『オールマイト』がHAHAHA!という特徴的な高笑いと共に1年A組の教室に入って来たのだ。

…因みに、相澤が今尚付ける事を要望している1年A組の副担任でもあるのだが、No.1ヒーローであるが故の多忙さからか担当教科の授業以外では職場を空ける事も多い為に勘定に入れていなかった。

 

「オールマイトだ!すげえや、本当に先生やっているんだ!」

「あれ、シルバーエイジのコスチュームね!」

 

そんなNo.1ヒーローが自分達を文字通り教え導く存在として目前にいる事に興奮を隠せない1年A組生徒一同の一方、その中で出久と勝己、響香はその姿を何処か複雑な様子で見ていた。

 

(No.1であるが故に、長きに渡って活躍し続けて来たが故に、足を止めてはいられない、か…)

(No.1ヒーローも楽じゃねェんだな。然もその背には日本中の守りたい連中の命がある、辞めたいからと言って辞める事も出来ない。相応の覚悟を持たなきゃNo.1なんて目指せねェな)

(あんなボロボロになって尚、無茶を強いられて…ウチらもそれに気づけずに加担して…!)

 

まるで以前にオールマイトと出会い、その『秘密』を知っているかの様な心中、実際に3人はとある一件でオールマイトと鉢合わせし、その際に偶然『秘密』を知ったのだ。

だがそんな事等おくびにも出さず、平然とした様子で教壇に立つと『BATTLE』と書かれたカードを見せながら授業の説明を始めた。

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う科目だ!単位数も最も多いぞ!早速だが今日はコレ!戦闘訓練!」

『戦闘…訓練…!』

「そしてそいつに伴って、こちら!入学前に送って貰った『個性届』と要望に沿って誂えた戦闘服(コスチューム)!」

『おぉぉぉぉ!』

 

ヒーローの花形と言っても過言じゃない敵との戦い、その訓練をNo.1ヒーローの指導の下で学べるとあってか全員のやる気スイッチが入った様な呟きが聞こえ、それを目ざとく察知したオールマイトが人数分の戦闘服のパッケージを見せた事でテンションは最高潮に達した、先程迄オールマイトの身を案じていた出久達も今はそれを頭の片隅に置いて興奮していた。

 

「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」

『はい!』

 

其々の戦闘服を入れたパッケージを受け取った生徒達は、オールマイトの号令と共に更衣室へと向かい、おろしたての戦闘服に袖を通した…!

 

------------

 

「いずくんの戦闘服のデザイン、カッコ良いね!何か『僕らの太陽』って感じ!」

「ありがとう、チャコちゃん。チャコちゃんの戦闘服も似合っているよ。桜吹雪モチーフ?」

「うん!やっぱりこのデザインが一番気合入るなぁって思って」

 

都心のビル街を模して作られたグラウンドβ、少し前に行われた一般入試、その実技試験のフィールドにも使われたこの場所に各々の戦闘服を身に纏って集合した1年A組生徒達、黒地に朱と赤のファイヤーパターンを施した和服を纏う出久の姿をお茶子が絶賛、出久もまた白地に桜吹雪が舞う模様の和服を纏うお茶子の姿を絶賛している等、そのデザインは概ね良好であった。

 

「も、も、も、百君、何だねその戦闘服は!?破廉恥にも程がある!」

「え、そうでしょうか?個性もありますし、余り身体を覆いたくないのですが…」

「腰から下はまだしも、上はサラシ一丁じゃないか!少しは恥じらいを持ちたまえ!」

「幾ら個性を使う上での支障を失くす為とはいえ、これはちょっとな…」

 

ただ中には、色々と問題のある戦闘服もあった。

黒一色の和服の上に白の陣羽織を羽織った天哉、黒地に黄色の稲妻マークが刺繍された和服を纏い、口にはサポートアイテムであるマスクを装着した人使から思いっきりツッコまれていた百の戦闘服、それは腰から下こそ特に変わった所の無い桃色の無地の袴、だったのだが、上は胸部に軽くサラシを巻いただけという有様であり、

 

「それに露出度で言ったら透さんの方が凄まじいと思うのですが…」

「え、何か言った?」

 

透に至ってはクリアホワイトの足袋を履いているだけという状態、透明人間だからセンシティブな事態に発展していないだけであって、ぶっちゃけ全裸である。

 

「ヒーロー科最高」

 

そんな色々な意味でヤバい戦闘服を纏った*12人の姿を見て、紫一色のボディスーツにおむつを思わせる装甲を付けた実がそう呟いていたが余談である。

 

「良いじゃないか皆、カッコ良いぜ!さあ、戦闘訓練のお時間だ!」

 

真新しい戦闘服姿の生徒達を見たオールマイトが早速着こなしている皆を褒めつつ、戦闘訓練の開始を宣言する。

其処に、

 

「先生!此処は一般入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

天哉が挙手をしながら質問をぶつける、生真面目に手を上げていたり、上述の通りの和服を纏って日本刀を帯刀していたりといった所から「お前は何処の六番隊隊長だよ」とクラスメート達から心の中でツッコまれていた。

 

「いいや、もう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪敵出現率は高いんだ!監禁軟禁、裏商売、このヒーロー飽和社か、ゲフンゲフン、真に賢い敵は屋内(やみ)に潜む!君達にはこれから、敵組とヒーロー組に分かれて2対2の屋内戦を行って貰う!」

 

それはさておき、天哉の質問を受けてオールマイトは戦闘訓練の説明を始めるも、今度は梅雨が疑問を投げかけた。

 

「基礎訓練も無しに?」

「その基礎を知る為の実戦さ!但し今度は、ブッ壊せばOKなロボットじゃないのがミソだ」

 

説明を遮るかの様に口を挟んだ梅雨に気を悪くする事無く律義に返答するオールマイトだったが、それが切っ掛けとなったのか他の生徒達も続々と質問して来た。

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか…?」

「分かれるとはどの様な分かれ方をすれば宜しいですか!?」

「このマントやばくね?」

「ン~聖徳太子ィ!」

「走馬灯の様な物が見える…」

「それギャグマンガ日和ィ!」

 

だが何人も一斉に質問をしてきたものなので流石のオールマイトも困惑して思わず、同様の状況で的確に返答していた伝説で知られる聖徳太子の名を口にし、それを聞いた誰かが別の聖徳太子のネタでボケ、条件反射的にオールマイトがツッコむという何ともカオスな状況と化した。

そんな混沌とした状況を打開する伝家の宝刀!と言わんばかりに何処からかカンペを取り出し、それを読み進める形で説明を再開した。

 

「良いかい!?状況設定は敵がアジトの何処かに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている!勝利条件だけど、ヒーローは時間内に敵を捕まえるか、核兵器を回収する事。敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる事」

(いや設定アメリカン!)

 

今取り出したカンペは今回の訓練における条件設定を箇条書きにした物だろう、だがその余りにアメコミ的な設定に生徒達の誰もが心の中で再びツッコミを入れていた。

それを知ってか知らずかオールマイトはパーティーで使う様なくじ引きの箱を取り出し、

 

「コンビ及び対戦相手は、クジで決める!」

「適当なのですか!?」

「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップする事も多いからね。そういう事態を見据えて、だと思うよ」

「そうか…!

先を見据えた計らい、気がつかずに申し訳ありませんでした!」

 

メンバーの割り振り及び対戦カードを決めようとした。

それに対して余りにもアバウトじゃないか!?と疑問の声を投げかける天哉だったが、出久がオールマイトの意図を見抜いて説明を補足、それを聞いた天哉が己の浅慮を恥じて謝罪…と色々ありながらもチームメンバーの割り振りと対戦カードが決まった。

まずはチームメンバー。

 

Aチーム:麗日お茶子&緑谷出久

Bチーム:轟焦凍&八百万百

Cチーム:瀬呂範太&峰田実

Dチーム:飯田天哉&爆豪勝己

Eチーム:尾白猿夫&障子目蔵

Fチーム:口田甲司&砂糖力道

Gチーム:上鳴電気&常闇踏陰

Hチーム:蛙吹梅雨&耳郎響香

Iチーム:心操人使&葉隠透

Jチーム:芦戸三奈&切島鋭児郎

 

「お、いずくんと一緒だ!縁があるね!宜しくね!」

「うん、宜しくねチャコちゃん!」

「やったー!鋭児とのタッグだ!」

「よっしゃぁ!これで勝つる!」

 

この割り振りに対し、かねてから仲の良かった出久とお茶子、恋人同士である鋭児郎と三奈の様に仲良しな2人で組めた事に歓喜の声を上げるチームがあれば、

 

「いや、よりによってお前かよ天かす!」

「だから天かすではない!いい加減にしたまえ勝己君!」

 

それとは逆に、勝己と天哉の様に不仲感の漂う2人で組むことに対して早速口喧嘩が勃発するチームもあった。

次に対戦カードは、

 

HERO     VILLAIN

Aチーム VS Dチーム

Bチーム VS Iチーム

Hチーム VS Jチーム

Gチーム VS Cチーム

Eチーム VS Fチーム

 

となった。

*1
透の場合この表現は正しくないだろうが

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