産屋敷殿の13人   作:不知火新夜

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6話_委員長選

出久達が雄英高校に入学してから何日か経ち、雄英高校生としての生活にも慣れ始めたある日の事。

 

「何だ、あの人だかり?入れねェだろ、全く」

「音響機器やカメラを抱えている人もチラホラいる辺り、マスコミ関係者みたいだね」

「聞いた感じ、此処の教職に就いたオールマイトに関する取材みたいね。はぁ、ウチら生徒の事はお構いなしに…」

 

何時も通りの時間で登校して来た出久と勝己、響香は然し、何時もと違って校門前に記者や機材係といったマスコミ関係者が屯している所に直面する事に。

雄英高校の教職に日本が誇るNo.1ヒーローのオールマイトが就任した事に関する取材とあってかその数は十や百ではきかないレベル、その為か校門前の半径数十m位は文字通り『密』な状態、そんな状況下で出久達はどうしたかと言うと、

 

「あ、君、オールマイトについてっていない!?」

「オールマイトの授業はって消えた!?」

「日の呼吸・拾壱の型 幻日虹!チャコちゃん、こっち!」

「へ、え、いずくん!?」

 

まず出久は残像が出来る程の超高速ダッシュや回転、捻りを加えた移動でマスコミ関係者の大群を掻い潜り、その中で記者に足止めされていたであろうお茶子を抱えて、

 

「よし、上手く撒けたみたいだ。大丈夫、チャコちゃん?」

「ふぇ、え!?あ、あのえーと、だ、大丈夫だよ!ありがとうねいずくん!」

「ちゃ、チャコちゃん?流石にお姫様だっこはデリカシーが無かったかな?でもチャコちゃんを落とす訳にも行かなかったし…」

 

そのまま1回も捕まる事無く校門を通過、無事登校に成功した。

その際、お姫様抱っこの形で抱えていたお茶子が気恥ずかしくなったのか顔を赤らめ、降りて即座に走って教室に向かうという何ともてぇてぇな光景が繰り広げられたが余談である。

一方の勝己は、何処からともなくメガホンを取り出し、

 

「すいません、ちょっとお話を」

「雄英高校の周辺にお住まいの皆さん!此処に集いしマスコミ関係者は、皆さんの記憶にも新しい『偏向報道事件』の当事者、そう、所謂マスゴミと呼ばれる存在です!記者としてあるまじきコンプライアンス違反行為を仕出かし、雇い主の土下座姿を公共の電波に乗せ、世間のバッシングを浴びさせたにも拘わらず、その記憶冷めやらぬこの時、そんなの知るかと言わんばかりの素知らぬ顔でこうして雄英高校の校門前に屯しております!今年雄英高校の教職に就いたオールマイトに関する街頭インタビューという名目ではありましょうが、彼奴等の質問に一度でも答えたが最後、その発言内容を切り貼りされ、或いは言ってもいない事を付け足された末、向こうにとって都合良く捻じ曲げられた内容で発表されてしまうでしょう!そもそも街頭インタビューと謳いながら大人数で屯して街頭を封鎖する等と、マスコミ関係者というよりも人としてあるまじき行為に及んでいる所を見るに、今言った様な編集と言う名の偏向報道行為に再び及ぶ可能性は大いにあり得ます!皆さん、こういった極悪非道なマスゴミから何を聞かれようと答えてはいけません!口を閉ざし、路程の石を避けるかの様に逃げる事で、ご自身の身を守る事に繋がるのです!マスゴミを相手していては、皆さんの破滅に繋がってしまいます!」

「わ、わぁぁぁぁ!?急に何を言い出しているんだ君はぁぁぁぁ!?」

「あ、見ましたか皆さん!今この人俺の腕に怪我を負わせました!見て下さいこの出血!これが此処に集まったマスゴミ共の本性です!自分達は報道の自由を盾にする癖に、俺達一市民の言論の自由はこうやって暴力・傷害で侵害するという矛盾した行動を取っています!自分達は言いたい放題言って、他人が言いたい放題言うのは力づくで妨害する、敵と何ら変わらないクズ共です!皆さん、クズ共が屯する場を通るのは危険です、この場が治まるまで絶対に外へ出てはいけません!そして、この事態を周りの皆さんに知らせるべく、被害にあった俺の姿をネットへ拡散する様お願いします!そうする事で皆さんの親しい人たちがマスゴミによって被る甚大な被害を防ぐ事が出来るのです!」

「ちょっとぉぉぉぉ!止めてぇぇぇぇ!」

 

インタビューしようとした記者達の呼び掛けを遮るかの様にマスコミ批判と言う名の中傷発言を叫ぶ様な大声で行い、それを止めようと記者の誰かが腕を掴み取ろうとしたタイミングで咄嗟に血のり入り袋を仕込み、予想通りの位置を掴まれた事で袋が破裂、制服に滲んだ血のりを見せて暴力を振るわれたとアピール、その苛烈な対応に関係者達はタジタジとなり、蜘蛛の子を散らす様に校門を離れて行った。

そんな悪評を撒き散らされて周囲の警戒感がMAXになった状況で直ぐに戻れる剛の者はいない、勝己が追い払って以後、始業のチャイムが鳴るまでマスコミ関係者が再びやって来る事は無かった。

 

------------

 

「さっきは記者達の対応に追われて言いそびれたが爆豪、お前は何処の破天荒な警官だ?」

「マスゴミ滅ぶべし慈悲は無い、だ。そっちだって迷惑していた様だから別に良いだろ?」

「まあ、それはな。ああいう手の者に対しては合理的ではあるか」

 

始業のチャイムを受けて1年A組教室にて始まった朝のホームルーム、その場で相澤は登校の際、恐らくは日本で最も有名であろう警官が、何かと関わりのある悪徳セールスマンに対して行った様な脅迫紛いな方法で記者達を退散させた勝己にツッコミを入れながらも対応に苦慮していた為かそれ以上咎める事は無かった、勝己が此処まで苛烈なやり方をとってしまう理由を知っていたからというのもあるが。

 

「さてホームルームの本題だ。急で悪いが今日は君達に」

 

それはさておき今日のホームルームにおける本題に入ろうとする相澤、その何か急用を持ち掛ける様な口ぶりにまた臨時テストかと教室が少しばかり騒めくも、

 

「学級委員長を決めて貰う」

『学校っぽいのキター!』

 

その雰囲気に反し、内容は学校生活において至極真っ当なものだった。

入学から数日も経過して未だに空席だった学級委員長、普通だったらこの役職は担任の小間使い的な扱いをされる所であろうが此処はヒーロー科、集団を正しき方向へ導くというトップヒーローとして必要な力を鍛えるにはうってつけな役職なのだ、その重要性を皆が理解していた為か、

 

「委員長!やりたいです俺!」

「リーダー!やるやる!」

「ウチもやりたいっす」

「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!」

 

自薦するかの様に手を挙げる者が続々と現れ、是非とも自分にと言いたげにアピールする者もいた。

そんな沸き立つ教室の中で実はセクハラで訴訟されるのも確定だと言われそうなマニフェストを上げていたり、ただ1人勝己だけは「俺やりたくねェからパス」と言わんばかりにソッポを向いていたりした。

 

「静粛にしたまえ!」

 

そんな時、天哉が机をバンと鳴らしながら立ち上がり、室内の騒めきを遮った。

 

「多を牽引する責任重大な仕事だぞ、やりたい者がやれる物では無いだろう!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務、民主主義に則り真のリーダーを皆で決めると言うのなら、これは投票で決めるべき議案!」

 

突如として立ち上がった天哉の姿に皆が注目する中、リーダーと言える役職であるなら皆の総意で決めるべきと、投票での選出を提案した、のだが、

 

「聳え立ってんじゃねぇか!何故発案した!」

 

自分もやりたい、と言わんばかりに手をピンと挙げながらの提案というツッコミ所満載な状態で、実際に電気が皆の気持ちを代弁するかの様にツッコんでいた。

 

「同じクラスになって日も浅い子だって多いのに、信頼もクソも無いわ、天哉ちゃん」

「そんなん普通は自分に入れらぁ!」

「だからこそ、此処で複数票を獲得した者こそが、真に相応しい人間という事にならないか!?どうでしょうか先生!」

 

そんなツッコミ所はさておき、提案自体に対しても梅雨や鋭児郎が反論するも、だからこそ複数票を獲得出来た者に相応しいと天哉は説得、その上で相澤に尋ねると、

 

「時間内に決められりゃ良いよ」

 

と投げやりに見える態度でそれを了承した。

こうして委員長を選出する投票が行われ、採決の結果、

 

緑谷出久 10票*1

爆豪勝己 7票*2

飯田天哉 1票*3

八百万百 1票*4

峰田実 1票*5

 

「10票…!」

「は、はぁぁぁぁ!?俺に7票!?誰だよ入れた奴ら!?」

「な!?僕に票が入っているだと!?」

「私にも票が入っていますわ!?」

 

20人中10人、つまり丁度半数の信任を得た出久が委員長に選ばれる事となった、その結果を見て出久が皆を引っ張る決意を固める一方、驚きを露わにした者がいた。

出久に次ぐ7票、つまり3分の1オーバーの信任を得た勝己と、口ぶりからして他の人に票を入れたにも拘わらず自分に票が入っていた天哉と百だ。

この驚き様に、勝己がこういった役職をやりたがらない理由が分からない者達、特に彼へ票を入れた者達は何で?と言いたげに首を傾げたり、投票を提案しつつ自分もやりたがっていた天哉が、にも拘わらず他人に票を入れたと分かり結局何がしたかったんだと心中でツッコまれたりしたが、

 

「じゃあ委員長は緑谷、副委員長は爆豪な」

「はい。皆さん、一年間宜しくお願いします!」

「ま、一番上じゃねェだけマシか。改めて宜しくな、出久、皆」

 

今それを言った所で投票結果が変わる訳も無く、1年A組の委員長には出久が、副委員長には勝己が就く事が決まり、最初は嫌そうにしていた勝己も副なら良いかと納得した。

 

------------

 

その日の昼休み、場所は大食堂。

最早この時間の風物詩と化した『イレイザーヘッド食堂引き回し』と俗に言われる珍事によって相澤と食事を共にする事となった勝己以外の10人がテーブルを囲い、昼食をとっていた中で事件は起こった。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難して下さい』

 

突如として響き渡る警報音、それと共に流れる機械的なアナウンスが只ならぬ事態が発生した事を伝えて来た。

 

「セキュリティ3って何ですか?」

「校舎内に誰かが侵入して来たって事だよ!3年間でこんな事初めてだ!君達も早く避難しろ!」

 

セキュリティ3という聞き慣れない言葉に疑問を持った一同、それを解消すべく天哉が独特のポーズを取りながら近くの上級生に尋ねると、その3年生と思しき男子生徒は天哉のポーズを不審に思いながらも律義に答えつつ、避難の準備をしながら出久達にも促す。

校舎内に誰か、関係者でも許可を得た訳でも無い者が侵入して来た、それ即ち雄英高校自慢の侵入防止システム『雄英バリアー』が突破されたと言う事だ。

当然ながらそんな事態は滅多に起こる事では無い、その男子生徒もこの事態は初めてだった様だ、とはいえ天哉の質問に答えられる辺りこの男子はまだ落ち着いていた方だろう、だが他の生徒もまたそうだとは限らない。

 

「皆、この敷地内に一体何が入って来たのかは分からない。けど他の生徒達が入口に押し寄せているのを見ると今動くのは危険だ、一先ず反対側、窓際に動いて様子を見よう!」

 

突如として起こった緊急事態でパニックになり、入口へ続々と押し寄せる生徒達、その生徒達の中にいては将棋倒しになって大けが、下手したら死ぬ可能性もある、そう判断した出久の指示で一同は人の波を掻い潜って窓際へと一時退避した。

其処で見たのは、

 

「って、マスゴミかよ!?」

「アイツら、性懲りも無くまた来たっての!?」

 

雄英バリアーの要と言える分厚い鉄の扉が砕け散った校門、其処から大量のマスコミ関係者が敷地内に押し入り、教師陣がその対応に追われているという光景だった。

 

「このままじゃあマスゴミの所為でケガ人が出るぞ、出久の言う通り死人も出る危険がある。何とかして周りにこの事を知らせないと。侵入したのがマスゴミだと分かれば、皆落ち着きを取り戻す筈だ!」

「でも、どうやって?ちょっと大声を出した位じゃあ、これだけの人数は止められないわよ」

 

今朝、彼氏である勝己が力技で追い払った筈のマスコミが今になって再び殺到している事態に響香が歯噛みする中、この騒動をどう収めるか話し合われ、

 

「よし!まずは百ちゃん、拡声器を2つ創って1つは天哉君に、もう1つは人使君に渡して!」

「は、はい!了解しましたわ!」

「2人はそれを受け取り次第、天哉君は非常口方面へ向かってこの警報がマスコミの侵入による物だと皆に伝えて!人使君は校門前に向かい、個性でマスコミ関係者を追い払って!」

「了解した、出久君!」

「任せろ、出久!」

「その際、チャコちゃんは天哉君を浮かせて、目的地へ辿り着いたら解除!」

「分かりました!」

「後の皆は僕と一緒に避難誘導を!」

『了解!』

 

打開策を編み出した出久が周りの皆に続々と指示を飛ばす、それを受けて各自が出久の指示通りの行動を行った結果、騒動は程なく収まり、敷地内に侵入したマスコミ関係者も人使の個性によって操られ、敷地の外へと出された上で整然と並ばされ、駆け付けた警察によって一網打尽にされたそうだ。

然しこの騒動は、この後に起こる未曽有の大惨事の序章、それも冒頭部分に過ぎなかった事を、まだ誰も知る由は無かった。

 

*1
投票者:三奈、梅雨、天哉、お茶子、鋭児郎、響香、人使、透、勝己、百

*2
投票者:猿夫、電気、甲司、力道、目蔵、範太、踏陰

*3
投票者:出久

*4
投票者:焦凍

*5
投票者:自分

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