ガンナーズ!! -女子高生×銃撃戦×青春!?- 作:k9suger
「最後まで残ったのも陽向先輩で一番キルを取ったのも陽向先輩でしたね」
模擬戦が終了して散らばった銃弾と薬莢を拾い集めた後、例の狭い部屋に集まって模擬戦の流れを振り返る軽いミーティングを行っている。
模擬戦の結果は陽向先輩が種島さんと平坂さん、そして私の三人を倒して一位。それに次いで信濃川さんと倉敷さんを倒した私が二位だった。
「取り敢えず結果を踏まえて、先生からなんかありますか?」
「怪我なく終われたのは良かった。先生自身スポーツシューティングには明るくないから、何処が良いとか駄目だったとか詳しく言えず申し訳ない。あと、みんな楽しそうに試合をしてたから先生は嬉しかった。以上」
別宮先生はそう簡単に話を切り上げて司会を種島さんに戻す。
「えっと、そうですね自分が試合を振り返った感想だと陽向先輩が凄すぎるのと花咲さんと倉敷さんはまだ銃の扱いに慣れていないのかな? とは思いました」
花咲さんの方は知らないけど、倉敷さんは確かに銃を撃つ際に目を瞑っていた記憶がある。あの場面で普通に撃たれてたら私は負けてただろうから、倉敷さんからすれば勿体ない場面だった。
「すいません」
「いや別に謝る必要はないですよ。これから練習で治していきましょう」
「花咲はんは腰だめに拘りすぎやない? 折角軽い軽機関銃やのに構えないでつこうたら少し勿体ない気がするんやけど」
「いや〜もう少し当たる想定だったんだけどね......やっぱり立ち姿勢で軽機関銃乱射するなら腰だめじゃん? 覗き込むなら伏せて撃ちたいし」
花咲さんの軽機関銃に対する謎のこだわりはイマイチわからない。
「じゃあレーザーサイトとか着けたほうが良いかもしれませんね、腰だめでも狙いやすいと思いますし。試しにこれ着けてみますか?」
種島さんは、今日の模擬戦では使わなかったけど一応持ってきていた
「あー、それなんだけどアタシもレーザーサイト付けようと思ったんだけどスコープ乗っけると、着けれる場所がなくて......」
「あっあのネゲヴサイドマウント無いタイプですか」
花咲さんのネゲヴを見てさっき言っていた『やっぱり立ち姿勢で軽機関銃乱射するなら腰だめじゃん? 覗き込むなら伏せて撃ちたいし』の意味が理解できた。
軽機関銃の上に着いてるスコープは倍率が高そうで、至近距離では扱いにくい。さっきみたいな信濃川さんとの撃ち合いだと覗き込むより腰だめで挑んだほうが勝率は高そう。
「確かネゲヴにサイドマウント着けるとしたらハンドガードの部分を交換するしか方法はないハズですよね......そんなネゲヴのパーツなんて売ってましたっけ?」
「アタシも調べたんだけど売ってなくて......買うとしたら実銃用のハンドガードぐらいしかないんだよね」
頭を抱える二人に陽向先輩が提案する。
「それか無理やり拡張マウントベースをサイトが着いてる部分に着けて、スコープとレーザーサイトを両立させる方法もあると思うよ」
「ああそれ良いですね」
「どーゆーこと? アタシ、イマイチ理解できてないんだけど」
「えっとですね今スコープが着いているこのレールに拡張マウントベースを着けてスコープを着けつつレーザーサイトを着けてしまおうという事です」
そう説明しながら、インターネットに転がっている写真を花咲さんに見せる。花咲さんも写真付きの説明はわかりやすかったらしく頷きながら聞いていた。
「じゃあこの方法にしてみる......ってどこに売ってる?」
「この近くだと月寒のショップですかね。この後一緒に買いに行きますか?」
「そーだね、ユカちゃん居たほうが安心できるし一緒に行こう」
その二人の会話に倉敷さんも参加する。
「あの、私も欲しいものがあるので一緒に付いて行っても良いですか?」
「良いですよ。それで何が欲しいんですか?」
「マズルフラッシュ? を抑えるパーツなんだけど」
恐らく倉敷さんが言っているのはフラッシュハイダーの事だろう。フラッシュハイダーは銃口から出るマズルフラッシュを軽減する効果がある。
スポーツシューティング用の銃と言ってもガスの燃焼を利用しているのでマズルフラッシュが発生する。特にレートの高い倉敷さんの銃だとかなり大きく見えるため、射撃精度に問題が出る場合もあるし、光に驚いてさっきみたいに目を瞑ってしまうことだってある。
「フラッシュハイダーですね。多分同じ店に売ってると思うので花咲さんの買い物と一緒に倉敷さんの買物も済ませちゃいましょう」
「なんや、みんな行くならウチも行きたいわ別に欲しい物あらへんけど」
と何故か平坂さんも付いていくらしい。雰囲気的に私と信濃川さんは「私達はこれで帰ります」とは言えず結局全員でお店に行くことになった。
「じゃあ、みんなでお買い物だね」
「初めてじゃないですか、部員全員で買い物にいくなんて」
「買い物した後どっかでご飯食べに行こうよ」
「それええな最近美味しそうな......」
「ゴホンッ......盛り上がってること済まないが少し話が」
模擬戦終わりのミーティングから話が大幅に脱線したところで、別宮先生が喉を鳴らして話を遮る。さっきまで盛り上がっていた会話は途切れて化学準備室の中は静まり返った。
「その......すいません」
「ごめんなさい」
種島さんと、花咲さんが小さな声で呟くように謝る。
「え? あっ勘違いさせて悪いが、別に煩くなったから話を遮ったわけではなくてな......こっちの話をしたくて話を止めたんだ」
そう言って別宮先生は隣りにいる浅天さんの肩を少し叩く。
「えっと模擬戦の最中も、今のミーティングも楽しそーで、その入部してみたいなーって思って。入部届はまだ用意できてないんですけど、これからよろしくお願いします......あと別宮先生ごめんなさい」
新しい部員の参加に喜びかけた皆は、突然の謝罪に戸惑う。謝られた別宮先生も訳がわからないらしく、困った顔をしていた。
「えっと、どういうことだ?」
「だって別宮先生バスケ部の顧問じゃないですか......その入学した日に誘ってくれたのに裏切るみたいなカンジになって......」
「あぁ別に気にしてない。まぁ浅天がバスケ部に入ってくれたら強いし嬉しくは思っただろうが......浅天がなんの部活を選ぶにしろ応援する。それに私はスポーツシューティング部の顧問だ。新しい部員の参加を歓迎しないはず無いだろ?」
浅天さんと中学時代から付き合いがある花咲によると、浅天さんは中学校の頃かなりバスケが上手だったらしくその力で全道大会準優勝まで上り詰めた実力者らしい。
女バス顧問のでもある別宮先生は、入学当初からそんな浅天さんに目をつけていたらしく、バスケ部に入らないかと声を掛けていたそうだ。
「じゃあ今日のお買い物の後は浅天さんの歓迎会も含めて、どこか美味しいお店にでも行きましょうか」
「そーこなくっちゃ。で、どこのお店に行く?」
「ここなんかどーやろ?」
「いいね」
「じゃあそこにしますか」