ガンナーズ!! -女子高生×銃撃戦×青春!?- 作:k9suger
「あと、あとどのくらい?」
「えっと......わかんないけどもう少しだと思う」
火曜日の放課後、私たちは学校の周りを走っていた。私たち、特に運動神経のない私や倉敷さんにはかなりキツイ。
運動の出来る浅天さんや花咲さんはかなり先の方まで進んでいる。
「ふぇえ、もう無理だよ」
そう言って、私の少し前を走っていた倉敷さんが倒れこむ。かれこれ走り始めてから20分以上は走っていたので体力も限界に近づいてきている。
「大丈夫?」
「うん......大丈夫だけど、少し喉乾いたかも」
と倉敷さんは言うものの、生憎水筒なんて持っていない。
「少し休もう、流石に運動部の皆には追い付けないよ」
私と倉敷さんは、近くにあった小さな公園の中にあるベンチに腰を掛ける。皆には心配しないようにラインで連絡をしておいた。
「やっぱり日頃から運動してる人は体力凄いんだね。もともと美術部で絵を描いてただけだから、走り込みとか全然むりで......」
「倉敷さんってもともと美術部だったんだ」
「もしかして意外な感じだった?」
「うんうん、むしろ納得した......でもなんで倉敷さんはスポーツシューティング部に入ろうと思ったの? 文科系から運動系に変えるのってハードル高くない?」
私がそう尋ねると、倉敷さんは「それは稔ちゃんも一緒じゃないの?」と逆に問いかけるように呟いてから答えてくれる。
「たしかにハードルは高いかもだけど、楽しそうだったから。スポーツシューティングの公式試合をたまたまyoutubeで見て、なんか引き込まれてさ」
スポーツシューティングはその知名度を上げるために、youtubeなどの動画配信サービスで公式が試合の様子を撮影した動画を数多く出している。
そんな動画はただ試合風景を流しているわけではなく、試合の重要なシーンを切り抜いて見ている人を楽しませるような工夫をしていたりもするらしい。
そう話す倉敷さんの顔を見ると、疲れていた表情はさっきよりも随分と薄まっていて、どこか明るい顔に変わっていた。
ふと、腕時計を見ると既に休んでから五分ほど経過している。
「そろそろ戻る?」
「そうだね」
◇
「キロ八分以上のペースですか......ふたりはキツくなるとは思いますが、練習と並行して体力づくりから初めてみましょう」
模擬戦は移動距離も短いし試合時間も30分ぐらいで、体力の消耗はそこまでしなかった。しかしスポーツシューティングの試合時間は2時間でフィールドも大きくて移動が多いため、そこそこの体力が必要になってくる。
「はい」
「頑張ります」
親善試合まであと2週間ほどしかないので、ルールや基本的な動き方なども覚えなければならず、かなりやることが多い。
体力がないせいで皆の足を引っ張るのは嫌なので、どうにかしてもっと動けるようになりたいんだけど、いかんせん時間がない。
「まぁでも親善試合なので、そこまで気を張る必要はないですよ」
と種島さんは言ってくれるけど、親善試合だったとしても足を引っ張りたくないし.......あわよくば活躍したい。
「そう言えば種島さん、わたくしたちは何処で対戦するんでしょうか?」
信濃川さんは額の汗を拭きながら種島さんに尋ねた。元々信濃川さんは足も長く体力もある為か、4キロ走った後でも普段通りに振る舞っている。
私にもその体力分けて欲しい......
「そう言えば場所は名前しか載せてませんでしたね......後でラインの方で詳しく送りますが、場所は厚別区の野幌森林公園の近くですね」
と言われても、野幌森林公園の場所がわからない。
「JRの上野幌駅の近くやな」
と平坂さんもフォローしてくれるけど、普段からJR使わない......というか数える程度しか利用したことがないので駅名はおろか路線すら知らない。
「三人は何回か行ったこと有るんですか?」
丁度ペットボトルの中のスポーツドリンクを空にした浅天さんは、ここから少し離れていたけどこの会話が聞こえていたらしい。
「ウチと由加はんは何回かSHのイベントで言ったことあるで」
「私はクラブチーム同士の試合とかで利用させてもらったことが四、五回かな?」
「じゃあ試合の時は誰かに付いていこ。私道に迷いやすいから始めていく場所にちゃんとたどり着けるのか心配だったんだよね」
「あぁ凪沙はん、近いうちにフィールドの下見行くからそん時に道覚えれば」
「あっ下見行くの? それなら安心......って下見の時迷ったらどうしよう」
「その時は誰かと待ち合わせすれば良いんじゃないですか?」
「そうだね」
私もJRとか全然知らないから、下見に行くときは誰かと一緒に行きたい。信濃川さんってJRとか詳しいのかな? 道分かるんだったら連れて行って欲しい......
「そう言えば倉敷さんって厚別の方からJRで学校通ってるって前言ってましたよね? 駅によってはフィールドからかなり近い筈ですよが......って寝てる」
そう言えば倉敷さんJRって言ってたなぁとか思いながら倉敷さんの方を見ると、さっきまでベンチに座っていた倉敷さんはいつまにか小さく横になって寝ていた。
倉敷さんは私と同じくらいの背の高さで、女子としても少し小柄......丸まって寝てる姿は少し小動物みたいで可愛い。
「あれどうします?」
「そっとしておく?」
「でももうすぐ休憩時間終了だよ」
「うーん......そっとしておきましょう」
と、そんな事を話していると種島さんのポケットに入っていたスマホから休憩時間の終了を知らせるアラームが鳴った。
「じゃあ、行きますか二周目」