終末世界とゲーム画面 作:チタン合金
──知らない天井だ。
目覚めた私が心の中で呟いたのは、そんな一言。だって仕方ない。私はいつの間にか、瓦礫の上で仰向けで倒れていたのだから。おはようが青空なんて、何年振りだろうか。
そんな詰まらないことを考えながら、私はゆっくりと体を起こした。
「──っ、いつつ……」
少し体を動かすと痛む節々に私は手を当てる。まるで全力疾走をした翌日かのような痛みだった。私の美麗で華麗な黒髪は、アスファルトの粉塵で少し濁ってしまっていた。
体をどうにか動かして、髪の毛を払う。
「よいしょ……っと。これでいいかな」
そして、続いて私は服を見下ろした。いわゆるセーラー服、学ランとか、そう言われるものが視界に写る。それについた埃を一通り掃ったところで、一息。
私は学生だったのだろうか? こういう服は学生しか着ないものだと、脳内の知識が語りかけていくる。
というか、私の名前は? 年齢は? 誰で、なにをする人?
浮かび上がる疑問を検討。数秒間考えるが、答えは出ない。私は思い出せない記憶を諦めた。
そう結論つけた私は静かにあたりを見渡した。うん、うん……。
「……いやぁ、ポストアポカリプスだねぇ」
しみじみと、私はそう呟かざるを得なかった。辺り一面は、荒廃した都市が正式名称としか思えないレベルで痛みきっていた。これこそいわゆる『ポストアポカリプス』というやつだろう。遠方に見える崩れかけたビル、付近見えるのはツタが張った一軒家ばかりだ。
まあ、そんなことはいったん置いておこう。いや、置いておいてはいけないのだが、それよりも──
『クエスト:目の前の家を探索せよ』
「──目の前に浮かぶキミを、どうするかだよねぇ」
そうして、私は初めて目の前に浮かぶ文字列を認識したのだった。
クエスト。冒険、探検。直訳だ。
「いや、まぁ、多分あれだろうね……ゲームとかの、あれ」
クエストだけならそういう解釈もあったんだが、『目の前の家を探索する』と来た。イメージでパッと浮かぶのは、ゲームとか、そういう類いの何か。
クエストをクリアすると、報酬と共に何か新たなクエストやイベントが──。
「……そういう分かりやすいのは私の好みだけど、現実に来られると混乱するね、これ」
混乱する。本当に混乱する。分かりやすいのは好きだが、こうも直接的なのは警戒心を煽る。
いざ入ってみたら、それはトラップで死に直結していました、なんて笑えない。
「うーん、というかそれより気になるのは……このゲームは全年齢対象なのかい?」
誰とも知らぬ空へ話し掛ける。そう、気になるのはそのあたりだ。R15以上とかだと、血が出るんじゃなかったか?
だが、生憎私にはこういうものの知識がない。そんなことする時間は別のことに使っていた。
「まあ、まあ……信じるのも、一興なのかな?」
文字列へ話し掛ける。このままだと、なんの手がかりもないままこの世界を生き抜かなくてはならないし、なにより、
「お腹が減った」
ぐぅ、となりそうになるお腹を抑え、私は呟いた。忘れようとしていたが、限界だ。
目の前の家を観察する。人の影は一つもない。もちろん、生き物がいそうな形跡すら欠片も見つからなった。どうしようもない現実を直視し、そうして、私は諦めた。
今はこのふざけた文言に従ってやろう。
ゆっくりとした動作で私は目の前の、ぼうぼうと草に覆われた家へと侵入する決意を固めたのだった。