終末世界とゲーム画面 作:チタン合金
『目の前の家』と思わしきものを眺める。私はクエストをクリアするために、『目の前の家』へ入るための下準備を始めた。
最初に観察から始める。
「くすんだ赤色の屋根、小さ目な敷地、少し広い庭……まあ普通、と言うべきか」
上から特徴をあげる。扉は錆びて元の色は判別がつかない。そもそも取れかかっているのだろう、少し風が吹くと頼りげなくキイキイと音を鳴らし揺れていた。敷地は小さめだが、極端に小さくもない。その小さな敷地では家よりも庭のほうが大きく妙な存在感を放っていた。
庭には生い茂った木々や植物が我先にと群がり、ほぼ原型を保っていない。
侵入に際し必要になる可能性が高いのはやはり防具だろうか。こんなわけの分からない世界で傷が出来たら、そこからどんな病原菌に感染するかわかない。
だが、清潔かつ身に纏って問題ないものなんてあるわけがない。少なくとも、すぐ見つかる気はしなかった。
「……なら入る前に、武器くらいは欲しいね」
普通の一軒家といっても、それはこの荒廃した世界での話だ。普通に考えたら中に入ろうとは思わない。見たこともない生態系が出来ている可能性はあるし、『敵』がいることもありうる。
可能なら、護身用の装備くらいはほしいものだった。
「おや」
家を中心に目線を揺らしながら武器になりそうなものを探していると、地面に転がる鈍い茶色の棒が目に入る。家の庭、その敷地内にそれは転がっていた。いや、正確には蔦に絡まり植物と同化していた。見つけられたのは奇跡だろう。
「僥倖、だね」
私は制服の裾を無理やり伸ばすと、直接触れずにそれを持てるようにする。厚ぼったい学生服の感触が手に触れる。
慎重に近づき、そのまま錆びたそれを手に取った。ブチブチと蔦が切れる音。
そして感じるのは布越しに感じるのはゴツゴツとした触感。重たい金属を持ったことで、少しの安心感。
息を吐くと、ゆっくりと持ち上げる。酷く錆びているが、それは恐らく──
『錆びた鉄の棒』
──そう、鉄の棒…………。
「……なんだい、この表記は」
手元に目を落とす。
『錆びた鉄の棒』
目に入るのは、手元の錆びた塊の上に浮かぶ表記だった。白色の角張った文字で構成されたそれを私は見つめる。
「……つまり、なんだ? この表示は……つまり、この棒の名前だと?」
ゲーム。最初に浮かんだ考えを補足するかのようなその表記を数十秒は見つめていると、ピロンというポップな小さな音が鳴った。
私はもう驚きもせず、
『錆びた鉄の棒』
テキスト:元は手すりとして使われていた、水明重工製の鉄の棒。しかし、既に周りは錆びに覆われ、元の輝きは失われている。
市場価格:10疎