元素と小説は使いよう   作:チル姐

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続いたので、初投稿です。
 
 
 


小説家・芥川の散歩 二

 

小説家・芥川の散歩 二

 

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小説には、世界が宿っている。

 

なんて、詭弁だね。

 

 

 

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「…すぅ、むゅぅ、うえへへ…」

 

「全く、どんな夢を見ていることやら。だっらしない緩み切った顔で寝ているものだ」

 

「…だいはんじょぉ」

 

「…この上無く、だらしない夢を見ているようだな。この馬鹿は」

 

 

 

目の前で散乱した紙を下敷きに、だらしない顔でだらしない夢を見ているこの少女。

 

名は胡桃。

 

こんなのでも、立派な往生堂の堂主である。

 

想像できないかもしれないが、こんなのでも、御立派なのである。こんなのでも。

 

…なんか負けた気がする。

 

 

 

しかし、この惨状。やはりこうなっていたか。

 

この時期、まあ月末なのだが、往生堂は月末になるといっつもこうなる。

 

具体的には、経営に関する書類を作成しているのだ。

 

あの自称凡人の散財癖が、書類煩雑化の一因なのは間違い無いのだが、そもそもの話。

 

先ず持って、璃月の葬儀屋の経営の仕組みというのがそもそも複雑なのだ。

 

璃月は七国の中で最も旧い国である。当然、葬儀の儀式も最も複雑である。

 

まして、往生堂は老舗。他の葬儀屋では到底できないような儀式だって出来てしまう。

 

儀式をするには、道具が必要である。中には、申請しないと利用できないような物まで、存在する。さらに、儀式自体も下手すれば、実行申請が必要なものすらあるのだ。

 

…書類が有り体に言って、とんでもない分量になる。

 

この様子では、鍾離は大方、裏で書類仕事に追われている頃なのだろう。

 

仕方ない。彼を誘うのは明日にしよう。

 

万民堂には、明日もお世話になりそうであるが、問題なかろう。

 

 

 

「…しゃいにゃりゃぁ」

 

「…はぁ」

 

 

 

取り敢えず、散乱した書類を何とかしてやろうかね!それくらいの手伝いはするとも。

 

…私、毎月やってるよな、これ。

 

胡桃の口から垂れた液体を拭いてやりつつ、そう思った。

 

 

 

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床に散らばった書類を、丁度出てきた鍾離の秘書に預けて、次いでにこの寝不足阿呆を借りる旨を伝えて、往生堂を出る。

 

そもそも、今日は胡桃を朝食に誘う予定だったので、毎月のように、散歩に強制連行する。

 

具体的には、背負っていく。

 

無論、鍾離を明日の朝食に誘う旨も忘れない。秘書によれば、予定も問題ないとの事なので、丁度良い機会だったのだろう。

 

 

 

「…うひぇへへ」

 

「…群玉閣で、起こすか」

 

 

 

背中から漏れる弛んだ音を聞いて、またしても溜息を吐く。

 

幾ら堂主とはいえ、過労で寝落ちしてしまえば元も子もないだろうに。

 

毎月のように思うが、この馬鹿は学習しないのだろうか。

 

頭は結構冴えてるはずなのに、なんという様を晒しているのか。

 

 

 

「…おひりゅだねぇ」

 

「いいや、まだ昼じゃないよ」

 

 

 

すると。

 

 

 

「…あぁ、もうそんな時期か。原稿を提出しないとなあ」

 

「…おっと、もうそんな時期なのか。『淑女』に連絡しないとなあ」

 

「やい貴様等、人がこの限りなく間抜けなアホンダラをえっちらおっちら運んでいる様を月末の時報代わりにしてるんじゃないよ」

 

「えー、何の話かい?僕は毎月この時期になると見られる光景を見て、今書いている原稿の提出期限を思い起こしただけであって、君達二人を時報代わりだなんて、そんな、あるわけないじゃないかー」

 

「いや、何の話だい?俺は毎月この時期になると見られる璃月の風物詩を見て、上役への報告の日がもうすぐだったなぁと思い起こしただけであって、君たち二人を時報代わりだなんて、そんな、あるわけないじゃないかー」

 

「くっそ、むかつくなぁ!というか、タルタリヤ!私を璃月の風物詩扱いするんじゃない。行秋も、貴様まだ原稿提出してなかったのかよ」

 

「うっ、風物詩じゃなかったのか。それは失敬!毎月見ている光景だから、てっきり…」

 

「うっ、仕方がないじゃないか。手書きの署名が必要だったんだから、ちょっとね…」

 

「貴様等…、というか、行秋の字についてはどうにかならんのか」

 

「…みょんみょんみょんみょん」

 

「なんだその寝言は」

 

 

 

出会って早々に揶揄ってくれやがったこの男二人は、行秋とタルタリヤ。

 

 

 

行秋は、稲妻ベストセラー連作小説の作者であり、商会の御曹司でもある、片手剣使いの少年。

 

ただ、致命的なまでに字が汚い。岩書(注:楷書に当たる字体。)が、草書(注:所謂、崩字に当たる字体。)になる。彼の幼馴染の導師の少年が、彼の書いた何の変哲も無い日記を呪物として使うと効果抜群だったという話は、最早伝説である。

 

 

 

タルタリヤは、氷神の国、スネージナヤの特使にして、執行官とかいうかなりの上役であるらしい青年である。

 

何かにつけて、戦闘に結びつける癖があるが、それさえ除けば、兄弟思いの出来た兄かつ仕事のできる敏腕役人である。なんだかんだで璃月でも有数の資産家らしい。銀行を運営するだけある。

 

因みに、彼の妹のトーニャちゃんには、一度サインを送ったことがある。私の作品の、ファンになってくれているということだ。ありがたいことである。

 

 

 

「あぁ、思い出した。明日、良かったら朝食を一緒にしないか?往生堂の客卿も誘っていてな。万民堂で食べようと思うんだけれど…」

 

「「直ぐ予定を開ける」」

 

「そんな大袈裟な…」

 

「だってあの鍾離先生だよ?!あの人の博識は書籍の話の参考になるんだよ!!」

 

「だってあの鍾離先生だよ?!あの人の博識は俺の戦闘訓練に参考にできるんだ!!」

 

「そ、そうか。なんか息ぴったりだな、貴様等」

 

「こうしちゃいられない!直ぐに原稿を完成させてくる!明日、万民堂だね!絶対いくから!」

 

「こうしちゃいられないな、俺も仕事を終わらせてくるよ…!明日、万民堂集合だね。絶対に行くしかない!」

 

「…頑張れよ」

 

「「応ッッッ!!!」」

 

 

 

些か、欲に正直な節がある気がするなぁ、この二人。似たもの同士なのか?

 

まぁ、いいか。取り敢えず、約束は取り付けた。

 

次は…、薬でも見に行くか。

 

 

 

 

 

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池の上の幼女。

 

璃月の不思議のなかの1つである。

 

 

 

曰く、璃月では朝になると、たまに池の上に立つ藤色の髪の幼女が見られるのだそうだ。

 

 

 

別に、水の上に立つというのが不思議なわけではない。

 

氷元素の力を借りれば、簡単にできることなのだから。

 

モンドには、踏氷渡海真君なる異名をもつ騎士がいるらしいし、稲妻には、元素の力で海を超スピードで渡る少女もいるという。

 

水の上に立つ幼女くらい、なんということもないはずである。

 

 

 

しかし。

 

 

 

何故そこにいるのか。

 

何故わざわざ水の上に立っているのか。

 

口を半開きにして、何考えてんのか。

 

周りを飛んでいるその玉は何なのか。

 

ギャングスターに憧れていそうな、そのポーズは何か。

 

これが分からない。

 

…璃月の神秘である。

 

 

 

あ、目があった。

 

 

 

「…」

 

「…おはよう」

 

「…」

 

「…おーい」

 

「…」

 

 

 

近づいて来た。

 

 

 

「じー」

 

「どうしたのかい?」

 

「なんでもないんざみらー」

 

「は?」

 

「ねてないね」

 

「おや」

 

「せんせ、ちゃんと、ねて」

 

「おやまあ」

 

 

 

いつもの叱責であった。

 

面目ない。

 

 

 

「…くしゃはえたぁ」

 

「うるさい」

 

 

 

寝言にツッコんでしまった。

 

虚しい。

 

 

 

 

 

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背中が空いていないことを不満がりつつ、前からしがみ付いてきたこの少女が、先日甘雨女史に赤面せしめた伝説をもつ、七七くんだ。

 

所謂、キョンシーというやつで、見た目通りの年齢ではないそうなのだが、体同様、精神も成長しないので、いつまで経っても子供のままである。

 

 

 

「さんぽ?」

 

「そうだよ。今日も、玉京台まで登って、ピンさんと話してから帰ろうかなって、思っているんだ。」

 

「そう」

 

「…この後、万民堂で朝ごはんを食べに行くんだけど、一緒に…」

 

「いく」

 

「お、おや、そうか。それはうれしいな」

 

「よろこぶがよいんざみらー」

 

「流行ってるの?」

 

 

 

何やら妙な語尾をつけるのにハマっているらしい。

 

どこでそんな知識を身につけてくるのやら。

 

子供というのは、そういうところが未知数で、だからこそ面白い。

 

だから、私は、子供が嫌いではない。

 

私の所感は置いておいて、朝食に連れて行くと決まったのだから、保護者に一言挨拶を入れておこう。

 

 

 

「ほら、もうちょっと上に。そうそう。白朮師のところに、朝ごはんを食べに行くって言いに行くから、一旦そっちに寄るよ」

 

「うん」

 

「…毎回思うけれど。この階段、何でこんな長いんだろう」

 

「しゅみ」

 

「成程…、加虐趣味か。教育に悪いな」

 

「へびの」

 

「そっち?!」

 

 

 

…保護者の性癖では無くて、よかった。いやほんと。

 

 

 

 

 

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「おはようございます、子供の情操教育に悪い加虐趣味白蛇野郎と白朮師。七七くんと万民堂で朝ご飯を食べる事になったので、連れて行く許可を得にまいりました。あと、紙での切り傷に効く塗り薬を下さい」

 

「いってきます」

 

「フフッ、では少し待っていてくだ」

 

「まぁて待て待て待て待てぃ!!!こんな清々しい朝に出会ってそうそうなんて言い草やねん!何や子供に悪影響しか無いとかドS丸出しとか野郎とかおかしいやろがい!心当たりはないでもないけどそれにしたって出会い頭に言うことちゃうやろええ加減にせぇ!んで白朮、アンタ何普通にスルーしょうとしとんねん肩に乗ってるオレにはわかんねんで、アンタがちょっと笑い堪えてんの!そこまで反応するんやったらちったあツッコミの一つや二つしてやる位の懐の広さを見せたらな長野原の薬師の名折れやで?!ンェエッ?!稲妻出身やのうても関係あらへん!オレが石珀が黒やっちゅうたら黒やなくても黒なんねんわかるやろぉ!ほんで七七や、なぁにないことないこと入れ知恵してくれとんねや。アンタ無口キャラなくせして最近妙な個性出し過ぎとちゃうか!何や毎朝のポーズは。あれか。荒瀧飛呂彦の漫画に影響受けたんか。オレがこうてきた『斗斗の奇妙な冒険』読んだんやろ。あの久岐陽院(くきょういん)出てくるやつやろ。あのポーズアレやろ。斗斗立ちやろ。トルノ・トバーナのポーズやんな。アンバッキオとかガイアッチョとか出てくる5部の。…また今度こうてきたるわ。」

 

 

 

 

 

「…むにゅぁ」

 

「おや、貴方が背負っているのは往生堂の堂主少女ではないですか。…熟睡ですね。ここまで捲し立てられても、寝てるんですねぇ」

 

「毎月、この時期になると、いつもこうなのですよ。毎月毎月叱ってみても全然学習しないし、知っている仲とはいえ男に背負われて運ばれていても、緩い寝顔を晒し続けるのだから、阿呆面としか言いようがないでしょう」

 

「どういんざみらー」

 

「…まぁ、彼女は幼い身でありながら璃月中を駆け回り、依頼をこなすばかりか、宣伝活動までしているのです。醜態の一つや二つ、笑って見逃してやるのが、泰然たる者の心得ですよ。はい、注文の塗り薬です」

 

「…そう、ですね。彼女のことは、嫌いでは、無いですし、少しは優しくしてやりましょうかねぇ。それでは、七七くんを借りていきます。塗り薬、ありがとうございます」

 

「…えぇ、また。今度は、起きている彼女を連れて、いらして下さい」

 

「はは、出来れば、の話にはなりますが。やってみましょう」

 

「ンエェッ?!もう行くんかいな!折角、オレが斗斗をお勧めしたろうと思っとったんやけどなぁ。まあええわ!また来いや!そん時に色々話したる!」

 

「さよなら」

 

「いやそこはアリーヴェデルチじゃ無いんかイィっ!」

 

 

 

 

 

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…あの蛇、テンションがいつにも増して、高かったような気がするな。

 

そんな類の感慨をいだきつつ、前には斗斗好きの幼女、後ろにはとうとう私の肩に涎を垂らし始めたゆるゆる堂主、という姿で、玉京台の門前にたどり着く。

 

金色の屋根と特徴的な丸い門は、どことなく威厳を感じさせる佇まいである。

 

近くには、瑠璃百合も生えていて、今日も良い景色が見られそうだと、小さく心を高揚させる。

 

 

 

ふと考えついたのだが。

 

この玉京台、日夜休まず開門しているのだそうな。…七星は、いつ休んでいるのやら。

 

気づかなかったことにしておこう。

 

 




 
 
 
続いたので、失踪します。
 
 
 

斗斗の奇妙な冒険、好きなのは?

  • モナサン・トースター(1部)
  • リサリサ先生?!(ガチ)(2部)
  • 鹿野院…!!(3部)
  • クレ吉影(4部)
  • ガイアッチョ(5部)
  • 九条斗倫(6部)
  • コレィ・トースター(7部)
  • 広晴康穂(既視感)(8部)
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