元素と小説は使いよう   作:チル姐

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毎日投稿とは言ってないので初投稿です。


小説家・芥川の散歩 三

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小難しい言葉をこねくり回すのが趣味なだけ、

 

とは言いたく無いなぁ。

 

 

 

 

 

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璃月の港は、世界最大かつ世界最古の港町である。あらゆる文化が集まる場所にして、あらゆる時間の現れる場所。魔神や神々、仙人に凡人。栄枯盛衰、古今東西、千差万別、天動万象。摩耗すれども、人は滅びず。人の営みを、直視できる空間。それが、璃月港なんだ。

 

人と人との営みの体現たる、この璃月。神の入る間隙は、果たして、有るのだろうか…。

 

お前はどう思う?

 

なあ、

 

芥川よ。

 

 

 

…鍾離の言を思い出す。彼奴の言っている事は、間違いなく、この光景を見れば伝わってくる。

 

群玉閣前、玉京台の広場、璃月人にとっての憩いの場であり、またこの国を統治する七星からの託宣が降りる場所でもあり、かつ七国最古の神、岩王帝君が降臨する、迎仙儀式が執り行われる場所でもある。

 

また、歴史書にしか無い話だが、神や仙人が亡くなった時の葬式、送仙儀式もここで執り行われるらしい。

 

幸い、帝君が崩御なさるような予兆は私には全く感じ取られていない。

 

故に、生きている間に私がこの儀式を見ることはなさそうではあるが。

 

兎も角も、玉京台の広場は、璃月人にとって切って離すことなど有り得ない場所の一つなのだ。

 

 

 

かくいう私も多分に漏れず。

 

ここには、毎朝の憩いを求めて、あるいは生活の気分転換に、将又七星の姿を見物に行ったり。

 

ここにはかなりの頻度でやってくるので、成程、私にとっても蔑ろには出来ない大切な場所となっているらしい。

 

 

 

さて、やはりこの早い時間帯にはこの広場には人は殆どいない。

 

いたとしても、千岩軍の守衛の方々や、群玉閣勤めの役人達くらいのものだ。

 

毎朝私が使うベンチは、有り難くも、今日もまた空いているようである。

 

 

 

まだ昇ってからそんなに経っていない太陽が、街全体を淡い色に染め上げて、所々を煌めかせている。

 

いや、街だけではない。

 

森も、海も、空も、土も。消えかかった篝火も、建物の灯りも、朝の冷えた空気も。

 

全てが、祝福されている、そんな光景。

 

 

 

私が散歩をする一番の理由が、この景色を見るため、という事なのだ。

 

 

 

この光景を目の当たりにすると、自然と、筆を取る欲が湧いてくるのだ。

 

 

 

今日もまた、この絶景を拝ませてもらおう。

 

 

 

 

 

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左となりには七七くんが寄り掛かって座っている。

 

背負っていた胡桃は、わたしの右に寝かせて、枕代わりとして私の膝を貸してやる。

 

良い景色のお陰か、心穏やかな儘に胡桃の頭を撫でてやる。

 

最低限の身嗜みとして風呂には入っていた様で、柔らかな百合の香りが漂ってくる。

 

 

 

「このひとも、ねてないの?」

 

「そうだな、寝ていない。忙しいらしいんだよ」

 

「このひと、いつも七七を土にうめようとするから、きらい。でも、ねないのは、だめ。おきたら、ちゃんとしてって、言ってみる」

 

「ハハハ、七七くんは偉いんだな。でも、手強いぞ、こいつは。なにせ、毎月ちゃんとするように私も叱ってみているんだが、一向に直す気配もない。頑固、なのかもなぁ」

 

「ん。じゃあ、てつだって」

 

「ほぉう?二人で叱るというのか。それはそれは。胡桃の阿呆には、いつもより苦い薬を処方する事になるようだ。流石は薬屋のいそうろうだな」

 

「ほめることをきょかするっ」

 

「七七くん、きみ。さてはいますっごくテンション高いね?」

 

「このいきおいのまま、せんせに、ココナッツミルクを買うのをしがみついておねだりしてみる」

 

「別にそれは問題ないんだが…、ちょっと氷元素が漏れ出して凍えそうなのはなんとかして欲しかったりするねぇ」

 

「おっと」

 

 

 

なんだかんだで、七七くんとはこの場所に何回か来たことがある。無表情に見えて、結構喋るらしいこの子との会話は、偶に可笑しなマイブームに入る事があっても、子供らしい純粋さを感じさせられるものである。

 

物忘れが激しいこともあって、大抵のことは忘れてしまっている七七くんだが、幸にして、何度も会っている私のことは、わすれたくてもわすれられない存在になっているらしい。本人が言っていた。

 

現に、今日のように氷上斗斗立ちをしていなくとも、ばったり会ったら、駆け寄ってきてしがみついて来てくれる。歳の離れた妹が出来たような感覚を、毎回味わっている。

 

ただ、兄面をさせてもらっている勢いで言ってしまえば、七七くんの人見知り、というか、初対面の人に対して、脈絡のないことを話し出す癖はどうにかならないのか。

 

緊張のせいか、知ってる人の背中に隠れつつ、応対する様は、如何にも人見知りに見えるが、受け答え自体は出来るのだ。

 

言ってることが二転三転するだけで。

 

 

 

「…ふへへぇ」

 

「そろそろ、おこす?」

 

「いいや、もう少し待っててくれ。自分からやったことだが、ここまで苦労させてくれたんだ。緩んだ寝顔の一つや二つ、眺めさせて貰わないとな。割に合わないさ」

 

「なんか、ずるい」

 

「ハッハッハ!大人はズルいのさ!…まぁ、未だ大人と言えるほどの歳ではないんだけどね」

 

 

 

 

 

すると

 

 

 

 

 

「あらあら、芥川さん。両手に花じゃあないの。そうなのねぇ…、もうこの月も終わりに差し掛かったのね…」

 

「…貴女まで私共を時報扱いですか、ピンさん」

 

「ほっほっほ、毎月同じ事を繰り返しているんだから、住民の見物に遭うのは仕方のないことだよ。大人しく時報扱いに甘んじなさいな」

 

「…ほーら、七七くん。大人ってずるいだろう?」

 

「忘れっぽいから、いつも、たすかってます」

 

「おっと、この子も年上だったなぁ」

 

 

 

ピンさんが、上品に揶揄いを向けつつ、ゆったりとした足取りで歩いてきた。

 

 

 

 

 

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七七くんを私の方に少し詰めさせ、眠っている胡桃の太腿を折り畳んで、ピンさんの座る空間を用意する。

 

なんだか、結構空間が出来た気がする。

 

御歳の程が全くわからない、アグレッシブおばあさま。

 

尋常じゃない量の荷物を平気な顔をして持ち歩いているその様子も、年齢不詳の増長に大いに役立っている。

 

しかしながら、長机に出して売り出している物は、万民堂の近くのおもちゃ屋さんのおばあちゃんと何ら変わらないように見える。

 

不思議が体をとって現れたような存在、それがピンさんという女性である。

 

 

 

 

 

「それはそうと、今日は七七ちゃんも一緒なのかい。元気にしていたかしら?今、味覚を励起させる札を作っているところだからね。楽しみにしているんだよ?」

 

「ん。ありがとう、おばあちゃん」

 

「おや、七七くん。よかったじゃないか。それじゃぁ、それが完成したらもう一度一緒にご飯を食べに行こうかな」

 

「んぁ。連れて行くことを許可するー」

 

「あはは、私にはその口調なのだね。正直、私はその斗斗とやらを知らないから、あんまり乗ってあげることができないんだけれども」

 

「ほっほっほ、いやはや、仲が良いねぇ。まるで

年の離れた兄妹みたいじゃないかい」

 

「てれる」

 

しかし、七七くんが妹だったら…、すごく助かるな。

 

体調も気遣ってくれるし、喋り相手にもなってくれる。

 

薬の知識も詳しいし、くっついて来た時には心地よい温度と感触を伝えてくれる。

 

…真剣に考えてみようか、いやほんと。

 

 

 

 

 

暫くピンさんとは話をした。

 

矢張りいろいろな人の意見を取り入れることは重要だ。

 

ついさっきまで、私の頭には実地踏査などという言葉はなかったのだから。

 

モンドを知りたくばモンドに行け。

 

当たり前の事であるけど、コレがわたしから抜け落ちていた。

 

流石はピンさんである。物の見方というか、初心を忘れず古きを尊び新しきをも理解する、泰然としたその在り方には、畏敬を懐かざるを得ない。

 

なんと素晴らしい御縁がわたしにはあるのだろう、泣きたくなるような感動が私の胸を打つ。

 

 

 

「七七くん、私は今、世界に感謝しているよ…」

 

「ちょっと何言ってるかわかんない」

 

「七七くん辛辣だねぇ…、まあ良いけども。何だろうか、癪ではあるが、この寝坊助にも感謝してやってもいい。私が小旅行を決意するに至った機会を作ったのだからね」

 

「せんせい、旅行いくの?」

 

「あぁ、今度の小説の取材に行こうと思い立ったんだ。期間等も、また決めておくべきかねぇ…」

 

「…へぇ」

 

「ん、どうした七七くん。俯いたりして」

 

「…別に、なんでもない」

 

「そうか?なら、良いけれど」

 

 

 

 

 

 

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目を開けると、知り合いの小説家の顔が目の前に広がっていた。

 

おかしい。

 

いや、おかしい。

 

何がどうなったらこうなるのだ。

 

…遡って考えよう。

 

確か私は、昨日の、いや違うか、6日前の夜から滞っていた書類整理を一気に終わらせるべく、仕事をしていたはずだ。

 

書類仕事をしている途中であるとはいえ、やっぱり日々の仕事依頼や、ちょうど回ってきていた大規模な葬式の施行もあった。

 

それで、色々と仕事も入ったせいで、済し崩し的にずっと寝ないでいたはずなのだ。

 

……あぁ、なるほどな。

 

…また、やってしまったのか。

 

大体理解できた。

 

大方、私の体は五徹に耐えきれず、いつもと同じように寝落ちしてしまったんだろう。

 

それで、毎日の散歩で往生堂を覗いたセンセイに、また見つかってしまって、それで。

 

いつものように、ここまで連行されたんだ。

 

背負われて。

 

また、行秋とかに、見られたんだろうな。

 

辛炎にも、見られたかもなぁ。

 

恥ずかしいな。

 

でも、一番恥ずかしいのは。

 

毎月、私をこうやって背負ってくれて、ここまで連れてきてくれて、それで、わたしがまいかいしょるいをあとまわしにしてしまうのをおこってくれる、そんなやさしいせんせいとの、やくそく。

 

じぶんのからだをだいじにしなさいっていう、やさしいやくそく。

 

また、やぶってしまったなぁ。

 

かなしいなぁ。

 

あれ、なんだか、めのまえがぼやけてる。

 

ほっぺが、ぬれてる。

 

…こころがいたい。

 

 

 

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漸く起きたと思えば、ぼろぼろと大粒の涙を流し始めた。

 

なんでそうなる。

 

 

 

 

 

さて、状況を確認しよう。

 

 

 

ピンさんとの雑談を終え、そろそろ起こしてやろうか等と七七くんと会話していた。

 

私の膝上で爆睡していたふにゃふにゃ娘が瞼を開けた。

 

私の目と、次いでに七七くんの目と、ばっちり目が合う。

 

数刻、固まる。

 

突如大粒の涙を円い瞳から溢し始める。

 

嗚咽も漏れ出す。

 

七七くんが何時もの眠たげな眼を大きく広げて、驚きを顕にする。

 

ちょうど休憩にしたところなのか、群玉閣から降りて来たばかりの七星少女が何事かとこちらを見つめている。

 

 

 

…ほんと、なんだこれ。

 

 

 

 

 

 




 
 
 
毎日投稿出来ないので失踪します。

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