君の瞳の向こう側   作:熊童子

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空に見えるモノ

 ―――天気雨、というものを知っているだろうか。

 

 晴れているのに雨が降っている気象のひとつである。発生する理由は主に、雨を降らせていた雲が消滅した、遠くの雲から降った雨が強風で流れて晴れている場所に降り注ぐなどがある。どちらの場合でもそう長い時間降るような雨ではない。

 

 その理論に当てはめるならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という現象は異常である。しかし、余程のことが無い限り「異常気象だ!」と騒ぎ立てる人はいないだろう。精々インスタに上げる人がいる程度だ。

 

 そんな少し変わった天気の中、とある高校では入学式が行われようとしており、新入生は次々とこれから三年間出入りする校門をくぐっていた。天気雨は幸運の前触れとされており、これからの高校生活に胸を膨らませる者が殆どだろう。

 

 

 ―――そんな中、空を傘の下から見上げる新入生の少年がいた。

 

 少年の目には、()()()()()()()()()()()()()

 そのいきものは、例えるなら龍であった。トカゲと細長くしたような体で、蒼色に輝く鱗で全身が覆われていた。そんないきものが雲一つない空を悠々と飛んでいた。その龍らしきいきものは時折大きく口を開けて吠えるをような動作をとる。すると、上空のあちこちに大きな水球が出現して次々と破裂して地上に降り注いでいた。これがこの天気雨のからくりのようだ。

 少年は上空を悠々と飛ぶ龍らしきいきものを数秒眺めた後、

「いつまで続けるんだろう…」

と呟きながら傘を雨が当たらないように差しなおして昇降口へと向かって行った。

 

 

 ―――そんな中、空を傘の下から見上げる新入生の少女がいた。

 

 少女の目には、()()()()()()()()()()()()()

 そのいきものは、例えるならミミズだろうか。何の突起物もない細長い全身は光沢を帯びた深い深い蒼色であった。そんないきものと言ってよいのか怪しいものはのたうつように雲一つない空に浮かんでいた。そのミミズらしきいきものは時折先端の口と思われる器官を大きく広げる動作を繰り返していた。まるで叫び声をあげているようなその動作の後に、上空のあちこちに大きな水球が出現して次々と破裂して地上に降り注いでいた。これが天気雨のからくりのようだ。

 少女は上空でのたうつミミズのようないきものを数秒眺めた後、

「……」

無言のまま傘を雨があたらないように深く差しなおして昇降口へと向かっていった。

 

 

 少年/少女を含めた新入生が全員校舎の中へと入っていき、しばらくすると体育館からは校歌が聞こえてきた。入学式が始まったのだろう。上空ではまだ龍/ミミズらしきいきものが雨を降らせ続けていた。

 




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