ファミリー作りたいのに《夜の炎》しか見つからない件   作:リデルJr.

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呪術に気付いてから

 俺に負属性が現れてから数日。

 

 クーラーをガンガンに効かせた部屋の中で心頭滅却していた。

 

 火もまた涼しの精神で夏い暑に立ち向かっていくのだ。

 

 というのは置いといて、本当に悩んでいた。

 

 というのも、現時点の俺について、新たに解ったことがあるのだ。

 

 今の俺の状態は、常時死ぬ気の零地点突破状態なのだ。

 

 別に初代エディションとかじゃあ無いので死ぬ気の炎が凍ったりはしないが、常時身に纏える時点で気付くべきだった。

 

 炎の温度が無かったことに。

 

 炎の温度について気付いたのは偶然だった。

 

 負属性について思考を整理する時に作った紙をいつもの癖で嵐の炎を使って燃やしたのだが、匣兵器から出てきていたガガーリンがその炎の中を突っ切ったのだ。

 

 しかも全く熱がりもせずに。

 

 いやまあ人外だしそもそも匣兵器だから、という理由も分かるが、ガガーリンの羽は嵐の炎で燃えていたのだ。

 

 攻撃力マシマシの嵐の炎で燃え包まれているのに熱くないわけがない。

 

 そう考えて俺も燃えている紙に手を突っ込んだのだが、全く熱くなかった。

 

 これも自分の死ぬ気の炎で自分が怪我するわけないとか、そういうメタ的な理由も分かるのだが、違うのだ。

 

 産まれてから十七年、発現してから十七年、ずっと死ぬ気の炎に接し続け、果ては星の炎などというインチキな炎も灯せるようになった俺の直感が囁くのだ。

 

 俺はまだ死ぬ気の炎を扱いきれてない、と。

 

 おそらく原作で一番炎の扱いが上手かったチェッカーフェイスの炎圧を思い出してみると、死ぬ気の到達点に達したツナさえもあっさりと凌駕していた。

 

 要するに圧力がないのだ、俺の死ぬ気の炎には。

 

 炎の圧力を感じるということは、それだけの熱量を感じていたはずであり、だからこそ温度がない死ぬ気の炎はおかしいのだ。

 

 そしてそんな自分の思考にブレークスルーを齎したのは、負属性の謎の力。

 

 死ぬ気の炎ではないこの力が何を齎したのか。

 

 その答えは発想の転換である。

 

 この世界には俺の知らない力があり、死ぬ気の炎が全てではない。

 

 そして死ぬ気の炎が全てではないからこそ、解釈の余地が十全に存在する。

 

 俺があっさりと負の力を引き出せたように、今の俺は多分身体の波動エネルギーが負に偏っているのではないか。

 

 その状態でも死ぬ気の炎を灯せたのは、赤ちゃんの頃は死んだばかりで死ぬ気もクソもなかったからであり、ならばなぜ死んでダウンした状態から既に脱している筈の俺が赤ちゃんの頃と同じように死ぬ気の炎を灯せるのかは、多分それが出来てしまう癖がついたからではないのか。

 

 そうして自分の状態を机上の空論ながら解いていった先に見つけた答えが、死ぬ気の零地点突破である。

 

 多分俺は特異体質なんだろう。

 

 なにせ絶望状態から死ぬ気の炎を灯すことを得手としているのだから。

 

 だからこそ、俺の本当に得意としている属性は夜なのではないか。

 

 その他の属性は、何にでもなれる赤ん坊にのみ許された特権だったのではないか。

 

 朝の属性を持つことを許されたのは、新しい炎を生み出すことができるという原作にすらない展開に希望を見出してしまったが故に、夜の属性が転位したのではないか。

 

 別にこの理論が合ってるか間違っているかなどには興味ない。

 

 もしかしたら本当に転生特典だったのかもしれない。

 

 でも起きている出来事から推察すると、そうとも取れる。

 

 ならばそれでいいのだ。

 

 所詮死ぬ気の炎などファンタジーの産物、と切り捨てるのは最も恩恵に(あずか)ってる身からすると我慢ならないが、そう割り切ってしまう他ない。

 

 そしてそう割り切ってしまうならば、解釈はもっと自由で良いはずだと、そう思うことができた。

 

 まあ結局何が言いたいのかといえば、そろそろマイナス零地点なんて突破しようぜ! ということである。

 

 

 

 

 

 

 

 原作でツナが初めて死ぬ気になった理由はというと。

 

 死ぬぐらいなら笹川京子ちゃんに告白しようずwwwということである。

 

 それに倣って俺もそろそろ向き合おうと思う。

 

 実は買い物に行く時にチラチラと美人局彼女(仮)を見掛けるのである。

 

 勿論宣言通り無視は続けているが、向こうが「あっ……」という顔をしていたのでまだ俺のことは覚えてくれていると思いたい。

 

 なのでいい加減それも飽き飽きしているので、“死ぬ気”で話し合って来ます!! 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女とよく買い物に行った通りをブラブラと歩いていると、前方に見知った人影が大量の荷物を抱えて歩いていた。

 

 違う人だったら嫌なので、一度追い越してから顔をチラ見すると、彼女だった。

 

 いやそこで「げっ……」って顔されると凹むんですけども……。

 

 まあ嫌な気持ちは伝わったが、ここで引き返すわけにはいかない。

 

 なんせ今の俺は死ぬ気モードだ。

 

 死ぬ気で話し合うと決めたのだ。

 

 ならば話しかけるしかない! 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が「なあ」と言葉を掛けただけで荷物を押し付けてきた彼女は絶賛不機嫌な顔で俺の前に居る。

 

 お洒落なカフェなのに、ここの空気だけヘドロだ。

 

 重いし臭い、いやマジで。

 

 いやね、さっきまで死ぬ気モードだったんだよ、本当だよ? 

 

 でもね、切れちゃったんだ。

 

 効果時間というか、賢者タイムというか、たまに訪れる無敵時間が。

 

 だから「あによ?」って顔でこっち見ないでくださいお願いします。

 

 大体なんで俺が謙らなあかんねんクソボケ、という若干喧嘩腰の関西気質の自分と、いやいやずっとこんな感じだったでしょ、という弱腰の標準語の自分が居る。

 

 天使と悪魔とかに憧れてたのに、自分しか出て来ないというクソ茶番を脳内で繰り広げていると、俺の注文したブラックコーヒーと彼女のスイカパフェとタピオカミルクティーが届いた。

 

 コーヒーを飲んで一息。

 

 ……あー、煙草吸いてぇ〜。

 

 さっきからソワソワして落ち着かん。

 

 心臓なんてバックバクで、ナンパの時よりよほど緊張する。

 

「すー……」と言葉が出なかったので、コーヒーをもうひと煽り。

 

 あ〜、俺の心の中の無限列車で炭治郎が「逃げるな、卑怯者!」って叫んでるぅ。

 

 なんで鬼滅なんだよ、リボーンキャラだろ普通。

 

 なんかいつの間にか中身が無くなっていたカップにスティックシュガーとミルクを入れてた。

 

 自分で自分が怖い、何してんのよ、俺! 

 

 ミルク風味の砂糖油を飲み干して、口の中がじゃりじゃりしているけど、今しかない! 

 

 言え、言うんだ炭治郎! 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の心の中の綱吉くんがやってくれました。

 

『ボンゴレファミリーを、ぶっ潰す!』とガッツポーズしながら気合を入れてくれた。

 

「……あのさ、ちょっと前のこと、覚えてる?」とジャブを打ってみたら、顰めっ面の彼女はポツリと「覚えている」と答えた。

 

 いやまあ覚えてないわけないと思ってたけど良かった。

 

 ここからはノーガードのストレートだけで攻めていくぜ! 

 

 気持ちだけはね? 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだか思いの外あっさりと話し合いが進んでいたと思っていたのだが、気がつくと彼女のパフェは溶けていた。

 

 多分俺は本音だけで喋っていたのだろう、彼女は沈痛の面持ちを浮かべていた。

 

 まあでもこれは彼女が悪いから仕方ないよね、俺が気に病んでも仕方ないし。

 

 というわけで俺もスイカパフェを頼んでみた。

 

 店員さんが信じられないものを見るような目付きで俺を見ていたが、多分気の所為だろう。

 

 届いたスイカパフェは彼女のものと比べてなんだか刺々しかった。

 

 いや、果物をハリネズミみたいに突き刺さないで下さい。

 

 ガチガチに凍ったものじゃなくて、ちょっと溶けたアイスを載せてください。

 

 最後までチョコたっぷりなお菓子は突き刺さないで、添えるだけにしてください。

 

 色々言いたいことはあるけどここは我慢だ、俺。

 

 俺は長男だから耐えられるだろ、頑張れ俺! 

 

 彼女の溶けたパフェと俺の新品のパフェを交換する。

 

 彼女の周りに「?」が飛び交っていた。

 

 いや分かれよ。

 

「……俺、冷たすぎるパフェは苦手だから交換してくれ」という格好良すぎることを言ってみたが、そもそもよく考えると冷たすぎるパフェが好きな人って居なくね? 

 

 ワードチョイスミスってちょっと恥ずかしい。

 

 でもパフェ食べちゃう。

 

 いやウンマ! 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が新しいパフェを食べ終えたので、適当に会計を済まそうと思ったら、彼女がサンドイッチを頼んでいた。

 

 えっ? 

 

 

 

 

 

 

 

 一緒にサンドイッチ食べました。

 

 これが俗に言う「ごめんなサンド」ってやつなのか。

 

 時代を先取りしてるなぁ。

 

 あ、サンドイッチは滅茶苦茶美味しかったです。

 

 そんなこんなで会計を済ませ、再び彼女の荷物持ちをしながら駅に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 お互い無言で駅に向かっていると、彼女が駅の途中にあった公園を指差した。

 

 意味が分からなかったが、少年よ大志を抱けと言ったクラーク博士の銅像のモノマネですかと聞くわけにもいかないので、そそそっと彼女の後について行った。

 

 そして彼女がベンチに座ったのを横目にボーッと突っ立ってると、ベンチを叩きながら「んっ」と言ってきた。

 

 なんやねんコイツ、喋らんかい! 

 

 とは思っても口に出さないだけの常識は持っている。

 

 彼女の横のベンチに座った。

 

 

 

 

 

 

 

 一向に話が始まらない。

 

 えっ、ここは何か重要な話をする場面じゃないの? 

 

 もしかして会話イベントは自力で起こさないとダメなやつですか? 

 

 嗚呼そうですか。

 

 良いぜ、俺はいくらでも耐久してやる! 

 

 

 

 

 

 

 

 十分が経過したところで耐えられなくなりました。

 

 仕方ないよね、気になるもんね。

 

 彼女に、さっき食べたカフェの飯は美味しかったなどと話を振ったら、意外にも彼女は乗ってきてくれた。

 

 でもね、パフェのくだりをお前が笑うことだけは許さんぞぉー! 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく無難な会話をしていたのだが、急に彼女が押し黙った。

 

 普通ならここで「大丈夫?」などと言うのかもしれないが、生憎俺は普通ではないことに定評のある男だ。

 

 俺は何も聞き出そうとしないし、行動を起こさない。

 

 なに黙ってんねんと肩パンしないだけまだマシだと思ってくれ。

 

 むしろここまでお膳立てしたんだから、お前も頑張れよ! 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の、唐突に始まる自分語り。

 

 略してTHJが始まった。

 

 なにこれ、聞かなきゃダメですか? 

 

 ……ああ、今日は星が綺麗だ。

 

 あっ、流れ星! 

 

 早よ終われ、早よ終われ、早よ終われ。

 

 ああ、ダメだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が田舎が嫌いなのと、都会に憧れてるというのだけは分かった。

 

「なにそれ、君の名は。じゃん」と茶化したりはしない。

 

 多分今はその時じゃないから。

 

 

 

 

 

 

 

 話が長すぎて困惑してる。

 

 もう何時間経ったんだよ、二時間ぐらい? 

 

 チラッと公園に建っている時計を見たら三十分しか経ってなかった。

 

 えっ、ウソ。

 

 思わず彼女に目を向けた。

 

 そうしたら、何かに取り憑かれたかのように話し続ける彼女は、本当にナニカに取り憑かれていた。

 

 えっ、ヤバ。

 

 そしてそのナニカをよく観察すると、なんと人外だった。

 

 ヤッバ。

 

 何がヤバいのか自分でもよく分からないけど、なんだか今、無性に腹が立ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 常時身に纏っている星の炎の出力が大幅に上がった。

 

 しかも威力も増大していた。

 

 いやあ怒りのパウアーって凄いっすね。

 

 こんなのパーフェクトセルじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 人外を握り潰してから、彼女のトークが止まった。

 

 いや、それなら喋り続けてくれた方が助かるんだが。

 

 と思いつつもやはり何も言わない。

 

 背中を伸ばすために立ち上がり、そのまま適当に自販機でジュースを買ってきた。

 

 そしたら彼女は泣いていた。

 

 急展開が過ぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 いや今メス見せられても困るわ。

 

 ということで彼女に買ってきたジュースをあげた。

 

 鼻声やけどありがとうって言えるその姿勢は好っきゃで。

 

 彼女はペットボトルを両手で包み込むように持ち、膝の上に乗せた。

 

 飲めや! 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が落ち着いてきたところで、彼女の独壇場が再開した。

 

 今度はどうやらあの日の話をするようだった。

 

 ふむふむと聞いていると、なんか展開が変わってきた。

 

 具体的には美人局だと思っていたら、実は俺を保護しようと動いていた、みたいな。

 

 背中にじっとりとした嫌な汗が吹き出してきた。

 

 勘弁してくれよぉ〜。

 

 

 

 

 

 

 

 最後まで彼女の話を聞いた感想としては、擦れ違いって不幸やなって。

 

 クソノッポヤクザだと思っていた奴はどうやら学校の先生で、その他雄二匹は同級生ってことらしい。

 

 なんで彼等を連れてきたかといえば、呪力を認知できる俺がもしも人外という名の樹齢、ではなく呪霊に取り憑かれて殺されたりしないように、だってさ。

 

 あとは呪詛師に狙われても守れるように、だとさ。

 

 いや言うといて〜。

 

 元々は雄二匹だけ連れて行こうとしたけど、ノッポヤクザが勝手について来たらしい。

 

 いやまあ完全には信じられないけど、まあ彼女が嘘をついている訳ではないということは分かった。

 

 星の炎が扱えるようになったお陰で、常時何となく勘が冴えてるからこそ分かったことだけども。

 

 多分まだまだ言ってないことや言ってはいけないことなどがあると思うが、それが先程俺がカフェで彼女を責め立てた話の真実らしい。

 

 まあなんとなくスッキリしたしどうでもいっか! 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女に雄二匹及びノッポヤクザにそういう恋愛的な感情はないか確かめたところ、あるのは友人としての情だけらしい。

 

 良かった良かった。

 

 ナンパして出来たとはいえ前世今世合わせての初彼女だからね、NTRモノは第三者視点だから愉しめるのだ。

 

 はじめての色恋沙汰が、火サスも驚きのドロドロ展開にならなくて本当に良かった。

 

 ……いや良くないな。

 

 返せよ俺の時間! 

 

 

 

 

 

 

 

 話合いが終わると、公園に着いてから一時間強経っていたのでそろそろ帰ろうということになった。

 

 今は片手が手空きなので、彼女の手を握って歩いている。

 

 ごめんなリア充で、と心の中で謝罪しながら駅までの人混みの中を歩いて行く。

 

 駅に近づくにつれて彼女の握る力が強くなっていく。

 

 そしていよいよ駅に到着というところで、俺は思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、あの日の返事を聞かせてくれないか? 俺のファミリーに成ってくれるか否か。イエスならこの指輪を受け取ってくれ」

 

「……YESよ」




この時のオリ主くんは恋愛感情とかそういうのは一切関係なくファミリーに勧誘しているということを忘れてはいけません。

優先順位は、ファミリー集め>>>彼女との恋愛です。

まあ断られる可能性を減らす為に敢えて言わないというのも汚い大人という前世知識の活用っぽくて良いんじゃないですか、知らんけど。
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