ファミリー作りたいのに《夜の炎》しか見つからない件   作:リデルJr.

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夜の指輪

 家に帰ってから気付いたが、夜属性と負属性って似てるようで全然違うよね。

 

 ……まあいっか! 

 

 誰にでも間違いはあるからね、仕方ないね。

 

 とは言ってられないので、急いで負属性の指輪を作っていく。

 

 トゥリニセッテ擬きでは全く負属性を通さないので、どうしようか……。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女からメールが来た。

 

 ……左手薬指に指輪を嵌めて、自信満々な顔をしている自撮り写真付きで。

 

 ごめんな、ファミリーっていうのは家族のことじゃなくてマフィアのことなんだ。

 

 しかもその指輪、多分貴女には使えないっす、知らんけど。

 

 言いたいけど言えないこのジレンマ。

 

 くぅ〜、堪んねぇな、オイ! 

 

 

 

 

 

 

 

「無事家に帰れたようで何より」と返信したところで、負属性の指輪製作を再開させる。

 

 勿論気が逸れないように、携帯はマナーモード。

 

 まずはじめに考えることは、考えることを細分化してリスト化することである。

 

 ・呪力の通りやすさとは何か

 ・呪力を通しやすい素材とは

 ・死ぬ気の炎と明らかに異なる点

 ・トゥリニセッテではいけない理由の考察

 等々

 

 考えれば考えるだけ疑問が溢れ出てくる。

 

 

 

 

 

 

 

 専門家に聞こう。

 

 携帯を開くと、キショいぐらいのメールと着信が届いていた。

 

 ……三十分目を離した隙にコレか。

 

 うーん、重いですwww

 

 とりあえず一番上にあった着信履歴を表示して、その電話番号に電話を掛けてみる。

 

 プルルプルル、というガラケー特有の呼び出し音が何回鳴るか数えてみようと思ったら、一回未満だった。

 

 なんぞこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女に電話して分かったことは、呪力は負の感情から生まれるということと、畏怖されたりするものにも魂が宿るという付喪神伝説みたいなことだった。

 

 情報量が少なすぎる? 

 

 いや、これでも一時間粘って聞いてたんだけどね。

 

 何をそんなに喋ることがあるんだと思ったら、最後にこの指輪のメーカーを聞かれた。

 

 俺が作ったやでー。

 

 と軽く答えたら、なんかデュクシになることをオススメされたった。

 

 プライドが邪魔して聞き返せなかったが、デュクシとは何ぞや。

 

 うーん、(効果音には微塵も興味)ないです。

 

 まあでも(専門用語多すぎて殆ど分からなかったが)彼女は俺の知りたいことを教えてくれたので今話せたのは運が良かったと思うことにする。

 

 それにしても付喪神伝説ということは、だ。

 

 ようは畏れられているものならばなんでも良いってことなんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 夏休みって素晴らしいよね。

 

 京都に帰ってきました。

 

 深泥池の水と青葉山と大江山に居た鬼っぽい人外の角を一本ずつ奪って、いや譲ってもらいました! 

 

 さすが京都やで! 

 

 

 

 

 

 

 

 東京に帰ってきました。

 

 一泊二日です、楽しかったです。

 

 彼女に抹茶のお菓子と油取り紙、そして舞妓さんが挿してたのと似た簪のお土産を渡してきました。

 

 もう彼女、俺があげた物ならどんな物でも喜ぶんじゃない? ってぐらい喜んでくれました。

 

 友達連中用にもお菓子を一杯買い込んできたし、怖い話も考えたしで準備はバッチリ。

 

 

 

 

 

 

 

 そういえばお土産を渡した時に、強い生き物の血を混ぜると呪具としてのランクが上がるかも、って言われたのを思い出した。

 

 強い生物……。

 

 俺じゃね? 

 

 なんか彼女と歴史的和解をした時のマイナス零地点を超える感覚を身体が覚えていたので、その感覚を忘れないように修行をしていたら死ぬ気の到達点に辿り着いた。

 

 その俺の血こそが重要になりそうだ。

 

 到達点に達した所為か否か、なぜか血すらも常時星の炎を纏っているけれど。

 

 勿論炎圧上がりまくってるので、その他の材料がその血の所為で燃え尽きてしまうかもしれないけれど。

 

 出来上がったら多分だけど凄い負属性の指輪になるんじゃないかとは思う。

 

 

 

 

 

 

 

 深泥池の水が蒸発し、鬼の角が燃え尽きた。

 

 結果、未だに燃え続けている炎の血と池の泥、角の燃え滓が残った。

 

 何の成果も!! 得られませんでした!! 

 

 

 

 

 

 

 

 泥は“畏れ”を含んでいるのだろうか、燃え滓はそれでも鬼の一部といえるのだろうか。

 

 分からんからどうしようもない。

 

 取り敢えず泥と燃え滓を燃えている血液を媒介にしてコネコネしてみる。

 

 

 

 

 

 

 

 ゴミができた。

 

 うーん、生臭い泥団子ですね! 

 

 

 

 

 

 

 

 泥団子を嵐の炎で燃やしてみた。

 

 ……めっちゃ熱い。

 

 こりゃヤバい。

 

 部屋燃えるで! 

 

 死ぬ気の零地点突破した雨の炎で威力を相殺、山の炎で同調して温度を下げていく。

 

 白夜の炎で概念ごと燃やし尽くして、しゅーりょー! 

 

 偶には星以外の炎も使わないとね、という教訓だけを残して実験は失敗した。

 

 

 

 

 

 

 

 負属性の謎力があるなら、正属性の謎力が無いのはオカシイ。

 

 と思ったけど、呪う為の力にプラス要素って無いよね。

 

 一応専門家にも聞いてみた! 

 

「すみません、正の感情で生まれる呪力とかって無いんですか?」で送信。

 

「神社とかの神々しい雰囲気って呪力とは正反対の性質ですか?」で追加送信。

 

 返信を待つこと数分、彼女は案の定長文で返信をくれた。

 

 ありがたいっすね。

 

 色々調べてくれたようだけど、結局何が伝えたいのかといえば、「不明」ということだった。

 

 そもそも呪力自体を大っぴらにできないので(権威付けという大人の理由と独自の成果を社会に還元したくないというガキ臭い理由)、研究がまともに進んでいないそうだ。

 

 術式の開発は進んでいるし呪具の製造も進んでいるが、唯一呪力はそのまま呪力として受け入れられているらしい。

 

 いうならばファンタジーでいう魔力理論、俺でいう死ぬ気の炎理論というわけだ。

 

 基本的に、使えるなら何でもいい、という理由で放置されている代表例だ。

 

 なら仕方ないね。

 

 というわけで、解釈の余地が広がっているというのが現在の呪力理論であり、死ぬ気の炎理論でもあるという知見を得た。

 

 

 

 

 

 

 

 そもそも呪力とは何か、死ぬ気の炎とは何か。

 

 そんなことを考えれば、思考が飛躍して宇宙にまで飛び出すだろう。

 

 例えば、この宇宙を構成しているのは何かみたいな。

 

 バリオン四%、ダークマター二十三%、ダークエネルギー七十三%とか言われても意味分からんし、そもそもダーク〇〇って何やねんという新しい疑問はいくらでも湧いてくる。

 

 というか地球の大気構成と似てるよねと思ったのは俺だけじゃないはず。

 

 まあだから何だと言われればそれまでの話でしかないのだ。

 

 解き明かさなくても便利に使えるなら、それはそれで良いじゃないか。

 

 というわけで、呪力と対を為す力は神力であると自分の中で仮定を立てて実証実験に移ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 負の感情から生まれる力が呪力であり、必死と畏怖も呪力を生み出すキッカケになるらしい。

 

 そこで正の感情から生まれる力が神力であるなら、感謝と畏怖の心が神力を生み出すキッカケになるのではないだろうか。

 

 人外が生まれるのは、日本に住む人々が必死に「鎮まりたまえ〜」とかやってた所為らしいし、そこには少なからず畏怖の感情もあったのだろうと考えるとまあ何となくそんなもんかと納得ぐらいはできる。

 

 境内や社に神々しい雰囲気が漂っているのは、何も坊さんが維持管理をしっかりしてくれてるから空気が清浄に保たれているというだけではなく、昔の人が畏怖を込めて作った大仏や御神体が鎮座しているというのも理由の一つだろうし、それに感謝と畏怖を込めて祈る人々の気持ちも大きな波となって個々人に伝わってくるからではないだろうか。

 

 知らんけど。

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず俺の理論が間違ってはいないと仮定するならば、負属性にしろ正属性にしろ、畏怖の感情が求められるわけだ。

 

 というわけで明治神宮と浅草寺に行って御守りを買ってきた。

 

 本当は御神木の枝とか欲しかったけど、流石にそれは罰当たりすぎるので辞めておく。

 

 お守りの中から謎の紙を取り出し、星の炎で燃やしてみる。

 

 といっても透明でよく分からないんだけどね! 

 

 なんとなく死ぬ気の炎じゃない、正属性の謎力を感じた所で燃え尽きた。

 

 うーん、もしかして作り手の祈りも含まれてる? 

 

 というか神力は生み出すものじゃなくて、宿るものなのかな? 

 

 分からん。

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、感謝と祈りを捧げてトゥリニセッテ擬で指輪を作ってみた。

 

 死ぬ気の炎以外に、先程御守りを燃やした時に感じた清浄な力も微妙にだが感じる。

 

 まだよく分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 そもそも俺は負属性と正属性の発生プロセスを間違えているのではないか? 

 

 元はどちらも意志に反応して宿るだけの力であったが、悪徳から生まれた人間は負属性のみを生み出すことができるようになった。

 

 俺発案の、カレールーから作るカレーはテキトーにちゃちゃっと作るけど、スパイスから調合するカレーはきっちりグラム単位で正確に作ってしまう理論によれば。

 

 寝ていても勝手に発生する呪力よりも、祈りや感謝、畏怖等の感情を集積することで宿る神力の方が上位に置かれているからこそ、何らかの御利益を齎してくれるという寺社仏閣のみが現在まで残り続けた。

 

 反対に、災いを起こす禍ツ神を鎮めるための神社がドンドン姿を消していったのは、神社を潰して災いの記憶を風化させることで強すぎる呪霊を産まない措置なのではないか。

 

 俺は性善説派なのであまり信じたくないが、この世界の成り立ちが性悪説だったら人間は悪徳だよね〜、って感じ? 

 

 云々閑雲。

 

 なんかファンタジー小説の設定みたいなことを考えていたら、祈りも感謝も込めずに作ったリングが出来上がった。

 

 ……これって普通の守護者用のリングじゃね? 

 

 

 

 

 

 

 

 まあいいやということで、人間には正属性の力は扱えないと思って諦めよう! 

 

 

 

 

 

 

 

 とでも言うと思ったのか愚か者め! 

 

 俺はエルサレムに行くぞ、ジョジョーッ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 エルサレムで聖人に会ってみた。

 

 流石世界三代宗教の聖地だけあって、敬虔な信者が一杯居た。

 

 ヘブライ語もアラビア語も英語もできないので何を言ってるのか分からないが、「オーライオーライ」と返事をしておく。

 

 REBORNに出てきたイタリア語なら辛うじて分かる程度の語学力を舐めるなよ! 

 

 俺は国数理社だけで中学高校受験を突破した猛者だぞ! 

 

 英語なんて要らん! 

 

 

 

 

 

 

 

 オジサンに連れられて嘆きの壁までやって来た。

 

 オジサンの真似をしようかと思ったが、そもそも無神論者の俺がそれをするのは烏滸がましい様な気がして、いつも通りの二礼二拍手一礼にとどめた。

 

 嘆きの壁は触ってもいいらしいので触ってみると、正属性も負属性も混ざり合ってただ混沌とした畏怖だけが感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 星の炎すら操るこの俺が圧倒された……だと……? 

 

 息をする事すら忘れていた俺を現実に引き戻したのは、ここでもまたオジサンだった。

 

 肩をトントンと叩かれ、行こうかとジェスチャー。

 

 オーライオーライ。

 

 

 

 

 

 

 

 なんだかんだお世話になったので、屋台で野菜と果物をクレープみたいに包んだ軽食を奢って別れた。

 

 サンキューとかありがとうとか言ったけど、伝わったかな? 

 

 最後に握手をして別れたけど、やはり彼のような良い人からも呪力しか感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 イスラエル観光楽しかったです。

 

 でもお土産買うの忘れてました。

 

 聖人は確かに居たけど、その心根が善に寄ってるだけで、流れるエネルギーは呪力でした。

 

 帰って来て早々だが、久しぶりに彼女とお出掛けした。

 

 まあ楽しかったけど、相変わらず彼女の金遣いが荒い。

 

 しかし最近呪霊を倒して貯金が増えたらしく、俺をATMにすることはないなった。

 

 でも荷物持ちは俺なんですね、分かります。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女とマクドに入った。

 

 関西人ならマクドと略して、他の人はマックと略すらしい。

 

 雑談をしながら昼飯を食った! 

 

 やっぱ照り焼きは日本の宝やで。

 

 まあ俺はモスの方が味は好きなんだけどね! 

 

 

 

 

 

 

 

 あの公園で彼女に指輪の説明をした。

 

 基本的に不老不死になること、一生俺と一緒に居てもらうこと、等々。

 

 うんうんで済ませて良い内容では無いんだけど、続ける。

 

 君にはその指輪の真の力は出せないかもしれない、ということも言った。

 

 急に彼女は不機嫌な顔をした。

 

 どうせなら十全に使ってみたいらしい。

 

 なので「それは君が使う呪力とはまた別の力を励起させるという物だ。けれど、所詮は似て非なる力だからもしかしたらイケるかもね」と思い付きで言ってみた。

 

 似て非なる力。

 

 ほら、お互い分からないことだらけって意味では似てるよね? 

 

 しかもお互いに闇色。

 

 オラッ、似てるって言え! 

 

 

 

 

 

 

 

 気合いってスゲー()。

 

 呆然とする俺の目の前で、確かに彼女は成し遂げたのだ。

 

 彼女の指輪からは、確かに()属性の炎が噴き出していた。

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