ファミリー作りたいのに《夜の炎》しか見つからない件   作:リデルJr.

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 あの後、彼女にどうやったのか聞いたら、得意げな顔で「純愛よ」と、ただそれだけ。

 

 ファーッ! 

 

 愛こそが最も歪んだ呪いなのかもしれない、と恐怖を抱いたことはみんなには内緒だよ。

 

 脳内で彼女に対する恐怖をXカリバーで切り刻み、銀河の彼方まで放り棄てた。

 

 そして何事もなかったかのように平然とした表情に戻し、指の先を軽く切って彼女の指輪に血を擦り込んだ。

 

 初ファミリアになってくれたことへの感謝と、お返しとはいわないが良い感じに守護者を強化してくれるように祈る。

 

 頼むぞ星炎ッ! 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の指輪は透明な炎で包まれている。

 

 彼女は全く気づいていないようだが、今まさに()属性の炎の純度が上がっている。

 

 まあ長年死ぬ気の炎に触れてないと分からないのは仕方ないけども。

 

 反面、リングは彼女の指の上でドンドンと目に見える変形をしていった。

 

 まず中心に埋め込んだ宝石から五枚の花弁の様な物が生成された。

 

 そして闇色だった宝石が、黒に限りなく近付いた紫、すなわちより昏く深い闇色に変化した。

 

 更にリングから棘の生えた蔦のようなものが生成され、彼女の指に巻き付いた。

 

 痛そう(小並感)。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の指に巻かれた蔦は更に変化して、チェーンになった。

 

 邪魔じゃね? 

 

 

 

 

 

 

 

 リングの進化が終わり、もう一度彼女に炎を灯してもらった。

 

 先程までとは出力・質ともに大幅に変化しており、死ぬ気の炎素人処女の彼女でも理解(わか)らされたようだった。

 

 リング自体の変化についても、宝石は闇、環は紅と翠、チェーンは透明がかった翠に落ち着いた。

 

 ……ちょっとダサくなって、いやまあ良いんじゃないっすか(震え声)。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女にリングの変容について尋ねられた。

 

「もしかしてアンタ、私を縛りたい欲求でもあるんじゃねえか?」と腹立つニヤニヤ顔をしてきたので、キメ顔で「失礼だな、純愛だよ」と言っておいた。

 

 もちろん冗談だけどね! 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか変な空気になったので現地解散です。

 

 ファミリーとマフィアのことは最後に言い逃げしようと思っていたのだが、そもそも荷物すら持たずにさっさと走って逃げられたのでどうしよか。

 

 ……えっ、持って帰らなアカン感じか、これ? 

 

 

 

 

 

 

 

 持って帰りました。

 

「とりあえず貴女の荷物は預かっています、どうすればいいですか?」で送信。

 

 秒で返信がきた。

 

 これから課外授業があり数日帰れないので預かっていて欲しい、とのこと。

 

 いやそんなにも長期間この部屋に大量の服を置いとくのは嫌なんだが。

 

 幸いまだ昼過ぎなので、俺が持って行くということで話が付いた。

 

 お前が取りに来いや! (自業自得)

 

 

 

 

 

 

 

 東京郊外に位置する人外の森まで大荷物を抱えてやって来た。

 

 いつもならスルーしてくる人外も、両手が塞がっていると見るや否や襲い掛かってきた。

 

 別に蹴りでも対処できるけど、側にガガーリンがいるので任せる。

 

 ガガーリン、キミに決めた! 躱して、つばさでうつ! 

 

 

 

 

 

 

 

 以前ガガーリンを見つけた森の奥地を更に踏破した先に、まさに『平安時代の京都』と呼ぶべき建築物が乱立していた。

 

 まあ元京都住みから言わせてもらうならば一言、ごちゃごちゃしすぎて寧ろ風情が無いな、とだけ。

 

 そもそもこういう立派な建造物はただ建てれば良いというわけではないのだ。

 

 周囲との調和をもって……(以下略)

 

 

 

 

 

 

 

 まあこんなところで許してやろう。

 

 さて早く彼女を見つけなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女から教えてもらった場所に行っても建物がないんですが。

 

 どういうこと? 

 

 一応寮の写真は送ってもらったが、平屋なんか大体どれも一緒やん。

 

 どれやねん、マジで。

 

 ……携帯の電波も繋がらんし、どうしたらええねん。

 

 

 

 

 

 

 

 例のノッポヤクザに見つかった。

 

 そういえばコイツは教師らしい、こんな建物だらけの学校見たことないけど。

 

 林間学校の施設か! つってな!! 

 

 ガッハッハ。

 

 要件を聞かれたので彼女の荷物を届けに来たとだけ伝える。

 

 俺の言葉を聞き終えると携帯を取り出して会話していた。

 

 流れ的に多分彼女に連絡を入れてくれたっぽいので、そこだけは軽く頭を下げて感謝しておく。

 

 だがその後は俺の個人情報をネタに話し掛けてきたので全て無視していたら、「いやあ、嫌われちゃったね」だとさ。

 

 うるせェ!!! どんっ!! 

 

 とまあネタは置いといて、頼むから喋り掛けないでくれ。

 

 なんか気持ち悪いんだよ、この人。

 

 性格とかじゃなくて、雰囲気が。

 

 まるで神の如き力を持ったチート転生者から、情報を引き出されるためだけに喋り掛けられている気分だ。

 

 どこまでも此方を下に見ているのに、口調だけは取り繕っている感じといえばいいのか。

 

 多分「剃りが合わない」の究極系ってこんな感じなんだろうな、また一つ勉強になったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 ノッポヤクザが再び彼女に連絡していた。

 

 待ち合わせ場所が清水寺の前で通じるあたり、やっぱパクりなんやなって。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が走って来た。

 

 もっと早く来いや、気まずいとかそんなレベルじゃなかったぞ! 

 

 なんなの、呪力で身体強化とかできないの? 

 

 へー、不便(聞いてない)。

 

 彼女の後から土煙を巻き上げるほどの爆速で陽キャっぽい方の雄が来た。

 

 なんだよ、身体強化出来てんじゃん! 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女に荷物を引き渡し、明日からの課外授業頑張れよと伝えていつも通りスタコラサッサと退散する。

 

 ……あれ、建物の配置変わってませんか、バグですか? 

 

 記憶を頼りに見覚えのある建物を目印に森へ抜けようと思ったのだが、どうも出られない。

 

 もしやこれが噂に名高いエルフ族の結界魔法・迷いの森ですか!? 

 

 

 

 

 

 

 

 ぐるっと一周してこんにちわ。

 

 建物群から抜け出したかと思えば、目の前に彼女とノッポヤクザに雄二匹、あとは和製ターミネーターが居た。

 

 どうやら一周目のループでは抜け出せなかったようだった。

 

 一回でダメなら二度三度と試すまで。

 

 

 

 

 

 

 

 周回すればする度に待ち人が増える謎。

 

 早くここから出してくれ、エルフ様! 

 

 

 

 

 

 

 

 パ、パンダ!? 

 

 アイエエエ!? パンダ!? パンダナンデ!? 

 

 

 

 

 

 

 

 ノッポヤクザがいい加減諦めたらウンタラカンタラとか言ってきたが無視。

 

 アイツの言うことは聞かん! 

 

 まあ大体構造は把握出来たのだ。

 

 次で出れる、はず! 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきまでの脳内敷地マップがゴミになりました。

 

 地形総入れ替えされちゃってます。

 

 ファック! 

 

 

 

 

 

 

 

 深く息を吸って、ゆっくり吐き出す。

 

 人の土地ということもあり敬遠していたが、どうしても出してくれないのでゴリ押しを敢行する。

 

 この際だ、あまり修行出来ていない呪力とやらの底力を体験させてもらおう。

 

 彼女に渡した夜のリングを思い出しながら、まずは爪先に薄く森の炎を灯し、呪力とやらを纏った逆の掌を切って血を出す。

 

 そして星のリングに掌から流れ落ちる血を擦り込み、リングの進化を促すように一瞬、大気が歪むほどの炎圧で星の炎を噴出する。

 

 

 

 

 

 

 

 パキパキと嫌な音が鳴ったと思ったら、リングが粉々に砕け散った。

 

 俺は進化の片鱗すら見せずに砕け散ったリングを呆然と見詰めていた。

 

 そんなことをしている場合ではないと慌てて大地の炎で手の皿の上に引力点を作り破片を回収。

 

 ガガーリンが入った匣兵器『ロクドウ』の中に破片を仕舞った。

 

 何がダメだったのかはあとで考察するとして、予備として持っていた虹のカケラ擬で作ったスターリングを嵌める。

 

 そして気合いダァ──! 

 

 

 

 

 

 

 

 気合いで負属性の炎を灯せたので、極夜の炎でブースト。

 

 パリッパリッと極夜の炎の出力を増す毎にリングが壊れていく。

 

 コレはアレだな、星の炎にしなくて正解だったパターンだ。

 

 さあ、リングが使えなくなる前に最後の一押しだ。

 

 負属性と極夜属性の炎を最大出力で放出し、リングが砕け散る正にその瞬間。

 

 握り込んだ拳を振り切り、拳に纏わりついた闇炎は周囲の建物群を穿った。

 

 

 

 

 

 

 

 迷いの森結界を破ったことで分かったことは、俺が認識していた平屋や豪華建築の殆どはハリボテですらない幻覚であったということだ。

 

 やられたなとシンプルにそう思う。

 

 有幻覚を習得しておきながら、その特性を掴みきれてなかったのだ。

 

 これはぐうの音も出ないほど俺の完敗だ。

 

 勝負に勝って試合に負けた。

 

 敗者は大人しく(全力ダッシュで)去るのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってきたら夜だった。

 

 いやあ今にして思えば、閉じ込められたと気づいた時点で夜の炎を使った瞬間移動でさっさと帰れば良かった! 

 

 ムキになって走って逃げる必要なかったじゃん。

 

 いつも走って逃げ切れているからと、知らず知らずの内に自分で縛りプレイをしていた気分だ。

 

 今日はもうトゥリニセッテ擬で星の指輪を五個ぐらい作ってお終いにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 今日は昼から友達と遊ぶ予定があるので、それまで星の指輪量産計画を実行しておこう。

 

 昨夜の分も合わせて、累計二十個の星の指輪が完成した。

 

 ああ、昨日今日だけで超一級品の鉱石が殆ど無くなってしまった。

 

 高いんだよな、コレ。

 

 また買わねば……。

 

 

 

 

 

 

 

 昨日と同じ要領で、今度は星のリングに負属性の炎を灯す。

 

 確か彼女はそうしていた筈だから。

 

 そして負属性の炎を灯しているリングを星の炎で包んだ後、血を垂らす。

 

 そして待つ……。

 

 

 

 

 

 

 

 リングが砕けてはそれを集めて『ロクドウ』に送り、砕けては送りを繰り返すこと十数度。

 

 もうそろそろ成功させてくれても良くないか? 

 

 負属性の炎を灯し星の炎でリングを包む。

 

 リングに血を垂らして、待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 全部ダメでした。

 

 ああ、シンドい。

 

 心が壊れる。

 

 前世で廃課金して推しが引けなかった時の記憶が蘇る。

 

 うわああああああああ! (精神崩壊)

 

 

 

 

 

 

 

 ガガーリンを撫でて癒されよう……。

 

 ああ、リングないんだった……。

 

 ああ……。

 

 

 

 

 

 

 

 と思ったけど、指輪無くても死ぬ気の炎を精密操作できるんだった。

 

 設計上は不可能だが、もしかしたらプロトタイプ特有のバグがあるかもしれないので、指の先から炎を出して匣兵器に星の炎を注入してみる。

 

 ……なかなか出てこない。

 

 ガガーリーン、出ーておいでー! 

 

 

 

 

 

 

 

 やはりリングが無いと駄目なのか、一向に匣が開く様子はない。

 

 匣兵器の自体は星属性だが、中に格納されてるガガーリンの属性は負属性であるということを悪用して、呪力をそのまま匣に流し込んでみる。

 

 ……やっぱりダメだったか。

 

 もう今はいいや。

 

 とりあえず着替えます! 

 

 

 

 

 

 

 

 友達とゲーセンに行ってきた! 

 

 バチくそ楽しかった。

 

 クレーンゲームをお金の制限なく楽しめるのは控えめに言って最高。

 

 アーケードゲームでも欲しいカードが出るまでレンコ出来るし、やっぱり金の力は偉大だ。

 

 

 

 

 

 

 

 帰りに寄った食べ放題の焼肉屋で、美人局彼女と仲直りすることになった話をしたら皆興味津々だった。

 

 呪霊や呪力のことは知られると本当にヤバいらしいので何も話さないで誤魔化した。

 

 俺が作った話はこんな感じだ。

 

 彼女の親が探偵事務所の所長で、一緒に来ていたのは事務員の人だった。

 

 なんでそんな人たちを連れてきたのかといえば、指輪を贈るぐらいの男がどの程度のものか見極めるためだったらしい。

 

 しかも俺の個人情報が筒抜けだったのは、その所長が仕事の合間に調べていたからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 凄まじい展開に会場は大盛り上がりした。

 

 まあ細かいところまで聞かれなくてよかった。

 

 あと結局勘違いだったからよかったが、自作指輪を捨てずに持ち続けていたことにはドン引かれた。

 

 因みに今回の焼肉代は割り勘だが、百円以下の端数は俺が受け持つことになった。

 

 祝われる側が多く払わなければならない日本の風習はオカシイと思います! 

 

 

 

 

 

 

 

 腹一杯かつ幸せな気分で家に帰ってきた。

 

 あっ、そういえばガガーリンはどうしようか。

 

 そう考えたところで、机の上に放置していた筈の匣兵器が無くなっていることに気付いた。

 

 そしてその匣兵器の代わりに、虹色に輝く宝石の中に黄金の八咫烏のシンボルが入った黒環のリングがあった。

 

 シンプルな見た目のリングだが、その見た目に反し観る者を萎縮させる不思議な威圧感があった。

 

 黒環の表面には、イタリア語で大空・嵐・雨・晴・雷・雲・霧・夜を意味する言葉が、裏側には、大地・沼・川・森・山・氷河・砂漠・朝を意味する言葉が彫られている。

 

 そして宝石が嵌められてある台座の裏には星を意味するイタリア語が、そして意識を集中させないと見えないが八咫烏の中には日本語で透明な『呪』の文字が浮かび上がっていた。




死んだ爺ちゃんも「『しんぷる・いず・べすと』じゃ」って言ってた
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