挿絵はいつもの通りAIに依頼したが、これアドマイヤベガさんでは? と思わなくもなかった。
「ねぇ。旅行、行かない?」
そんな言葉と共に、突然旅行の誘いを受けたトレーナー。
「前にもあったね、こんなことが」
ちょうど一年前、商店街の福引を当てたミスターシービーの急な誘いに散々振り回されたトレーナーが苦笑する。
「うん。前と違う温泉宿で山奥にあるんだけど」
悪戯げな瞳を輝かせるミスターシービー。
「山の温泉宿か。寒くないかな?」
そんなトレーナーの言葉に、ニンマリと笑みを浮かべる。
「雪見ができる露天風呂って良いよね。トレーナーも好きでしょ、雪見酒」
その言葉に光景を思い浮かべるトレーナー。
「そうだなぁ。うん、シービーからのせっかくのお誘いだし、行こうか」
満面の笑みを浮かべるミスターシービー。
「じゃ。決まり。予約は任せて」
そんなミスターシービーの顔を見て
「そうだな。頼むよ」
と任せてしまったトレーナー。自らの迂闊さに臍を噛むことになるのはミスターシービーが宿をとった後のことだった。
「トレーナー、宿取れたよ。露天温泉の宿。有馬終わったすぐ後の日程だけど、良いよね? その頃だと雪が降る日が多いらしいよ。温泉で雪見酒ができるかも」
トレーナー室にやってきたミスターシービーが宿が取れたことを伝える。
「お。露天風呂か。雪見酒もできるとはありがたい。準備しておくよ」
トレーナーに伝えるとさっさと部屋から出るミスターシービーだったが、その直後、ひょいと覗き込むように首を出して、さも当然のように爆弾を放り投げていった。
「あ、そうそう。そこの温泉って混浴だけだってさ。じゃ」
手を振り姿を消すミスターシービー。
「了~解。混浴かぁ。……え? 混、浴? ……! シィ~ビィ~! ちょっと待てぇぇ」
我に返ったトレーナーが慌てて廊下に走った時、すでにそこにミスターシービーの姿はなかった。
「と~ちゃく。ん~。いい所だね、トレーナー」
「あぁ、ついに来てしまった。幾ら高等部を卒業しているからって教え子と二人だけで温泉旅行。しかも混浴オンリー。
「まぁまぁ、ここまで来たんだからさ。覚悟を決めなよ、トレーナー」
ひきつる表情のトレーナーにまぁまぁと背中をポンポンと慰めるミスターシービー。
お待ちしておりました。と受付で渡された鍵は、離れの一部屋分のみ。
当然のように受け取るミスターシービーと、慌てて別部屋をとろうとするトレーナー。
押し問答の末、強引に別部屋をとろうとしたトレーナーにかけられた宿の女将の「他のお部屋は改装中ですべてふさがっておりまして」という言葉に仕方なしに同室を了承するトレーナー。
宿の女将たちとミスターシービーのアイコンタクトに、トレーナーはついぞ気づかなかった。
離れに入ると早速荷物を放りだし、のんびり過ごす二人。
宿の野性味あふれる夕食に舌鼓を打ち、食後の運動とばかりに卓球でラリーに興じる。
部屋に帰り、まったりと時間が過ぎると、ミスターシービーがトレーナーの浴衣の襟をつかむ。
「じゃぁ、そろそろ覚悟を決めて温泉行こっか、トレーナー?」
「襟を離してくれ、シービー。ここまで来たら逃げないよ。シービー、君こそ本当にいいんだな?」
「良いよ? 私はトレーナーに見られて隠すような恥ずかしい身体はしてないつもりだから」
その言葉を聞き、立ち上がるとミスターシービーの腰に腕を回すトレーナー。仲良く廊下を歩いている二人の後姿を見かけた宿の従業員は、あらあらと微笑を浮かべていた。
ミスターシービーとトレーナーの腕は互いの背に廻され、ミスターシービーの尾はトレーナーの腿に巻き付いていた。
湯けむりが立ちのぼる露天風呂。
静かに舞い降りる雪が、岩肌に淡く積もっていた。
湯けむりの向こうに白雪が音もなく舞い降りる。
岩囲いの露天風呂に、肩まで浸かる二人。
ミスターシービーは髪をゆるく結い、耳と尾が湯気に包まれて揺れている。その視線は遠くを見つめていた。
雪明かりに照らされたトレーナーは、どこか嬉しそうな、そして少し照れくさそうな顔で湯船に浸かっている。
「……この景色、まるで時が止まったみたいだね」
彼女の瞳は、どこか懐かしいものを映しているようだった。
トレーナーは黙って隣に座り、湯の温もりと雪の冷たさの対比を味わっていた。
言葉はいらない。ただ、この瞬間が永遠であればいいと願うばかりだった。
「ねえ、トレーナー。君は、過去に戻れるとしたら、何をしたい?」
トレーナーは何も答えず、湯に浮かんでいる盃に手を伸ばし、燗酒を注ごうとする。
その手を止め、ミスターシービーがトレーナーの手にある盃に燗酒を注いだ。
「ねぇ。質問に答えてよ。君は、過去に戻れるとしたら、何をしたい?」
盃を呷るトレーナーに、ミスターシービーがその目をじっと見つめ、真剣な表情で同じ質問を再度問いかけた。
「ごめん。何をしたいか色々考えてみたけど、そうだな……。うん、やっぱり」
愛馬からの真剣な問いかけに、彼は少し考えてから歌を詠む。
ー 露天にて 君と交わせし 雪見酒 誓い新たに 君を護らん ー
詠み終え、愛馬を横目で見るトレーナー。
トレーナーからの思いもかけなかった歌に、キョトンとした表情を見せたミスターシービーだったが次の瞬間、ボンッと音をたてるかのように顔を赤らめた。
「あー。まさかトレーナーからそんな歌が出るなんて思ってもいなかった。短歌なんて詠めたんだ」
「茶道とか何らかの文化的教養ってやつができないと、トレセン学園のトレーナーにはなれないからね。学園生は名家出身も多いから。これで質問の答えになったかな? シービーお嬢様?」
「私はお嬢様って柄じゃないよ。じゃあ、私からもお返し」
赤くなった顔をぱたぱたと扇ぎながら歌を返すミスターシービー。
ー 湯の香り 君の吐息に 溶けゆきて 永久に願わん この縁かな ー
ミスターシービーはトレーナーに笑いかける。だが、その瞳には、熱いものが揺らめいていた。
先ほど、自分を護る、そう言ってくれた彼の言葉。
それは、この先どんなことがあっても、自分は一人ではない。と教えてくれる、温かい光のようだった。
「ところでトレーナー。さっきの質問、少し変えるね。君が過去に戻れるとしたら、何を変えたい?」
先程詠まれた歌の余韻で暴れる尾を必死で抑えつつミスターシービーが再度問う。
「何も変えないよ。君と出会えた今が、何より大切だから」
その答えに、ミスターシービーは微笑んだ。
その笑顔は、雪よりも静かで、浸かっている湯よりも温かかった。
「……ふふ、君らしいね。私も、この先どんな時代が来ても、君の隣で風を感じていたいな」
その言葉に、トレーナーはそっと杯を差し出した。
「はい。どうぞ」
雪見酒が、ふたりの誓いを静かに祝福する。
二人は期せずして湯けむりの向こうに、未来がぼんやりと浮かんでいるように見えた。
「なぁ、シービー。湯けむりの向こうに、何か見えないか?」
そんなトレーナーの言葉に
「この湯けむりの向こうに、何か見えるかって?」
微かな笑みを浮かべるミスターシービー。
それはきっとふたりで歩む道だ。と、そう思えた。
「……ふふ、君と一緒なら、どんな未来でも悪くないかな」
温泉旅行から数日が経ったある日の午後。
トレセン学園のグラウンドに、柔らかな風が吹いていた。
ミスターシービーはいつものように、気まぐれに、しかし確かな力強さでターフを駆けていた。だが、その走りはどこか違っていた。以前にも増して伸びやかで、軽やかで、まるで風と戯れているかのような自由さがあった。
その様子に気づいたトレーナーは、彼女が走り終え、お気に入りの木陰のベンチに寝転び、風に揺れる木々を眺め始めたところで声をかけた。
「どうしたの、シービー。なんだか楽しそうだね。調子も良さそうじゃないか」
「……うん。絶好調だよ、トレーナー」
寝ころんだまま汗をぬぐいながら、ミスターシービーはいつものように少し悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「どうしてだと思う?」
その瞳は、あの雪見の夜を思い出しているようだった。
「なんだか、色々吹っ切れたみたいだな。何か心境の変化でもあったか?」
トレーナーがそう尋ねると、ミスターシービーはまっすぐ彼を見つめ、少しはにかんだように答えた。
「だって、護ってくれる人がいるってわかってるから、思いっきり走れるんだ」
その言葉に、トレーナーは一瞬言葉を失う。
ミスターシービーはそんなトレーナーの表情を見て、くすくすと笑った。
「そんなに赤くなって、どうしたの? トレーナー」
「……うるさい」
トレーナーは照れくさそうに顔を背け、小さく呟いた。
その背中に、ミスターシービーは穏やかな笑みを向けた。
それは、あの雪見の夜に交わされた誓いが、今この瞬間に、確かな温もりとして彼女の心を満たしていることを示していた。
「……ねえ、トレーナー。あの時の言葉、覚えてる?」
トレーナーは頷いた。
「もちろん。君を護るって心から思った。今も、これからも」
ミスターシービーは微笑みながら、そっと手を差し出した。
その手は、どこか儚げで、それでいて確かな温もりを宿していた。
「風って不思議だよね。姿はないのに、確かにそこにある。君の想いも、きっとそんなふうに私を包んでくれるんだよね」
二人はしばらく言葉もなく、風の音だけを聞いていた。
それはまるで、時の流れがふたりを優しく包み込んでいるようだった。
「君とならどこまでも走れる気がするよ」
ミスターシービーの言葉に、トレーナーは静かに拳を握り、あの温泉での誓いを改めて心に刻み込んだ。
「さてッと、練習練習。たまには私も頑張らなくちゃ。ね、トレーナー」
そして、ミスターシービーは再び軽やかに走り出す。
その走りは、もう何一つ迷うことのない、未来への一歩だった。
そんなふたりの未来を優しく導くように、風が木の枝をサワサワと優しく揺らしていた。
ひょっとしたら、宿でこんな場面もあったかも(挿絵:AI製)
ねぞうがわるいとたいへんですね。
短歌をイメージした絵をAIに作ってもらいました。
最初に見た時、お前、だれだ!? となりました
別作品の涼月の西洋画風の絵に引っ張られたようです。
作中に入れようかとも思いましたが、画風が違い過ぎ。
CB(らしきウマ娘)がせめて服を脱いでいてくれれば……。
作中挿絵の作成条件?
本文書いて完成させたら、どこを挿絵にしようかと考えて、
湯けむりが立ちのぼる露天風呂。から、そして少し照れくさそうな顔で湯船に浸かっている。までの文章まるごと入れて、これに合う絵描いて、と。
以後延々と死闘。本文書くより時間かかった。ある程度妥協して、画像を保存した後で二人の手前にお盆に入ったとっくりとお猪口を浮かべて。と条件入れたらサイズや位置や内容が……。
最後はGeminiに
この画像の二人の手前にバランスの良いサイズでお盆に入ったとっくりとお猪口を浮かべて
と依頼して作ってもらいました。
【挿絵表示】
これも作ってもらいましたが、なんだかマルゼンスキー?
GeminiはGeminiで最初の画像がダメダメだったし……。