上原家に引き取られる話Re'   作:清らかクッキー

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まず、長らくお待たせしてしまって申し訳ありませんでした。
そして、書き方を変える都合上1から始めた方が良いと判断した為、新しい作品として投稿させていただきます。
前作を応援していただいた皆さん、どうか新しい作品もどうぞよろしくお願いします。


エピソード0

 

 今僕は

 

 

「雪、ほっぺにご飯着いてるよ」

 

 

「えっ、どこ?」

 

 

「逆だよ。ほらっ、じっとしとけ」

 

 

 とっても

 

 

「フッフッフ~、ゆっきーは食いしん坊ですな〜」

 

 

「雪らしいね」

 

 

「焦らなくても大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幸せです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は以前、父親に虐待されていた。元々DV気質だった父親に度重なる罵倒、暴力を繰り返されていた。最初はお母さんだけが暴力を振るわれていた……僕のことを守るために。お母さんはとにかく優しかった。今思えばなんでこんな人と結婚したんだろうとつくづく思う程に。パチンコに負けて腹を立て、僕に殴り掛かろうとした時は僕を抱き締めて守ってくれた。酒に酔い熱湯をかけようとした時は父親を止めようとしてお母さんが掛けられた。身体も気も弱かった僕を父親から何度も守ってくれた。

 

 でも、僕が7歳になる前にお母さんは死んでしまった。朝、目が覚めるといつも優しい笑顔で「おはよう」と、語りかけることも無く冷たくなった身体で横たわっていた。

 泣いた。ひたすら泣いた。お母さんの亡骸に縋り付き泣く僕を父親は一瞥してどこかへ行った。……その日からは地獄の日々だった。

 

 今までお母さんが代わりに受けてきた事が全て僕に降りかかった。僕は父親の事が全く分からなかった。

 

 

 なんでお母さんが死んだのに悲しまないの

 

 

 

 なんでいつもそんなにおこっているの

 

 

 

 なんで僕をなぐるの

 

 

 

 なんで僕から

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母さんを奪ったの

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時僕の中で何かが音を立てて崩れ落ちた。それが何なのか僕には理解出来なかったが、その瞬間から痛いという感覚が無くなった。どれだけ殴られても、熱湯をかけられても、不思議と痛いという感覚は無く、何も感じることが出来なくなった。

 今思えばその時僕は壊れた(おかしくなった)のだろう。

 

 それからは早かった。今まで泣き叫んでいた僕がいきなり泣きやみ、痛がりもせずただ殴られる。その姿は父親には不気味に映っただろう。僕ですら思う、あの時の僕は普通ではなかった、と。

 

 その日を境に父親が暴力を振るう機会は減った。───尤も僕をストレスの捌け口に使うことには変わりはなかったが。

 

 暫くそんな生活が続いていたある日、父親はお酒に酔って帰ってきた。“よくあることだ”と普段と変わらずお母さんがいる部屋の隅でうずくまっていると今まで1度も入ってこなかった父親が部屋に入ってきた。不思議に思っていると次の瞬間服を脱ぎ出した。ますます意味が分からず固まっていると今度は僕の方へ荒い息を吐きながらゆっくりと近づいてきて僕を押し倒した。そして、僕の服に手をかけ脱がそうとしてきた。何をされるかは分からなかったけれど僕は本能的に逃げた。幸いにも酔った父親はすぐには追いかけてはこなかった。

 必死に逃げた。誰かに助けを求める為に靴も履かずにひたすらに走った。食べ物もろくに貰えず痩せ細った身体を懸命に動かし走った。

 だけれどやっぱり、十分な栄養が行き届いていない身体ではすぐに限界を迎えた。

 

 

(……身体が……うまく、うご……かない)

 

 

 

 酸素も足りなくなり視界が霞む。

 

 

 

(息も……うまく、できない……)

 

 

 

 ふと、足元を見れば真っ赤な血が滲み、爪が剥がれ誰が見ても今すぐ病院に行かなければならないと分かる状態の足があった。痛みを感じることが出来ないが、もう足は前には進まなかった。そのまま地面に倒れ込み、蹲ることが今できる精一杯の事だった。

 

 

 

(………もう、いいよね。……僕、頑張ったよね)

 

 

 

(お母さんも……褒めて、くれる……よね)

 

 

 

 朦朧とする意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ェ、………

 

 

 

 誰かが………話かけてる。

 

 

 

『………あし………………だよ

 

 

 

 もう…………静かにして。

 

 

 

 

 

 

 

 もう……………楽にさせて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………うぅぅん。」

 

 

 

 意識が少しずつ戻ってくる。

 

 

 

(眩しい。)

 

 

 

 次第に、閉じている瞼に明るさが灯る。

 

 

 

(死んだのかな。)

 

 

 

 時間をかけてゆっくりと瞼を開く。

 

 

 

(………天井?)

 

 

 

 目を開くと白い天井、視界の端には棒にぶら下がっている何か。

 今まで見たことの無い景色だ。尤も家の中と家から見える外の景色しか見たことがない僕にはきっと、何もかもが真新しい物だろうに。

 

 

 

(これが、天国の景色なのかな……)

 

 

 

 生憎、天国に行ったことは無いのでこの場所が天国なのかはたまた地獄なのかは分からない。

 とりあえず、周りを見渡そうと上体を起こしてみる。

 

 

 

 

(……起きれない)

 

 

 

 上体起こそうと試みるが、身体が思うように動かない。腕を動かそうにも白い布が巻きついてあり、なおかつ透明な管のようなものが伸びており棒の先にぶら下がっているパックのような物に繋がっていて腕ですら動きそうにない。

 ならば立ち上がろうと思い足を動かそうとするが、結果は言うまでもなく動く気配すらない。

 

 死後の世界とはこれしきの動作もできないような場所なのかと思っていると、扉が開く音と誰かが入ってくる気配がした。

 

 

 

「失礼しますねー。今日も意識は……えっ」

 

 

 

 人だ。

 音のした方へ視線を向ければ、そこには人がいた。そして、こちらを見て驚いているように見える。

 

 

 

「だっ、大丈夫ですか!?私の声、聞こえてますか!」

 

 

 

 かなり大きな声で話しかけてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………うん、意識もはっきりしているし呼吸も安定しているね。何か変なところは無いかい?」

 

 

 

 あの後僕に話しかけてきた女性はすぐに別の人を呼び、その人から色々なことを確認された。

 

 

 

「……身体が、動かせない………です」

 

 

 

「……そうか。申し訳ないけれど、それは暫く我慢してくれ。」

 

 

 

「………なんで。」

 

 

 

「…………今の君身体は何故生きていられるのか不思議なほどにボロボロなんだ_________」

 

 

 

「………えっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕の身体を調べていた女性───柏木さんは今まで起きた事を全て教えてくれた。

 曰く、道端で死にかけていた僕を発見しここまで───病院と言う所まで、運んで来てくれた家族がいたこと。

 曰く、その時の僕はいつ死んでもおかしくない様態だったということ。

 曰く、僕の身体の傷跡から虐待だと判断した柏木さんらが警察に通報し、家を調査したところお母さんの遺体も発見され父親が逮捕されたということ。

 曰く、今生きているのは奇跡だということ。

 

 

 

「………こんなところかな。この他に何か聞きたいことはある?」

 

 

 

「………大丈夫……です」

 

 

 

「……そっか。とにかく今は身体が治るようにゆっくり休むんだよ。」

 

 

 

「……はい」

 

 

 

「うん、いい返事だ……。あっ、そうそう。君を助けた家族にさっき君の意識が戻ったと連絡を入れたから多分もう少ししたら来ると思うよ。」

 

 

 

 僕を助けてくれた家族、か。どんな顔をして会えばいいんだろう。

 

 

 

「あんまり気にすることじゃないよ。助けて貰ったことを感謝して、その可愛い顔を見せればいいだけさ。」

 

 

 

 

(“可愛い”か………)

 

 

 

 久しぶりに聞いたその言葉に柏木さんにお母さんを重ねてしまう。お母さんはよく二人っきりの布団の中で僕にそう囁き寝付くまで頭を撫でてくれた。お母さんが生きていた頃はまだ幸せだった。あんな家庭の中でもお母さんと一緒なら我慢出来た。だのに父親はいとも簡単にその幸せを奪っていった。

 

 

 

 …………許せない

 

 

 

 

「雪くん。大丈夫かい?」

 

 

 

「……ッ。…………大丈夫です。」

 

 

 

「……そうか。っと、来たようだよ」

 

 

 

 

「ッ!先生、あの子が起きたって!」

 

 

 

「上原さんとりあえず落ち着いてください。雪くんは大丈夫ですから」

 

 

 

「あっ、……すみません。」

 

 

 

「大丈夫ですよ。ふふっ、よっぽど心配だったんですね。」

 

 

 

「あ、当たり前ですよ!!だって、死んじゃうかもしれないって……」

 

 

 

 

 どうしてこの人は赤の他人である僕をこんなにも心配してるのだろう。特段仲が良かったわけでも、ましてや血の繋がりすら無いというのに。

 

 

 

「……あっ、ごめんね雪くん。改めまして上原かおりです。体調は大丈夫……じゃないよね。」

 

 

 

「……大丈夫です。あと、助けていただきありがとうございました。」

 

 

 

「ふふっ。礼儀正しいのね。子供なのに偉いわ〜。」

 

 

 

 

 礼儀正しい?

 父親は敬語で話さないと機嫌が悪くなる人だったから自然と敬語になってしまう。………これも直さないと。

 

 

 

 

「……上原さんそろそろ。」

 

 

 

 

「あっ、そうですね。」

 

 

 

 

 

 何がそろそろなのだろう。帰ってしまうのかな?そんな事を考えて不思議そうに上原さんを見つめていると、上原さんの口から衝撃の言葉が聞こえた。

 

 

 

「……雪くん。私たちと家族にならない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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