♪~~♪♪
「………んぅぅ。」
心地よいそよ風が部屋の中を通り過ぎ、春の訪れを感じる今日という日。僕はスマホのアラームによって目を覚ました。
「………何時?」
まだ重たい瞼を開き枕元に置いてあるスマホに手を伸ばす。アラームを消し、時間を見ると6時半。そしてその下には“土曜日”の文字が。
「…休みなのに……」
昨夜アラームの設定を変えるのを怠った自分を少し恨みながら今日の朝食当番はお母さんだった事を思い出しもう少し寝ていられると思い、もう一度夢の中へ行こうと眠りにつく
「んにゃ。」
事は出来なかった。
上原家の家族である猫のもみじが、僕の口に前足を器用に置き『起きて〜』と、言ってるかのように声を出す。
「……おはよう、もみじ。」
「にゃふ~。」
とりあえず起きてもみじの頭を撫でながら朝の挨拶を返すと、気持ち良さそうな声を出す。
凄く可愛い。
全身の色は黒だが、足の所だけ白く靴下を履いているみたいになっていて、お腹には紅葉模様がありそれが名前の由来になっている。人見知りなのかあまり人に懐く子ではないみたいだけど一度懐くとベッタリ甘えてくる1歳の女の子。
「ふにゃ〜」
「ふふっ。すっかりふやけちゃった…。」
お腹を見せてすっかり服従のポーズをしているもみじを撫でながら今日の予定を思い出す。
ひまりお姉ちゃんは部活でお昼までいなくて、ひよりお姉ちゃんは講義が無いから家に居るらしくてお母さんはご飯を作ったら仕事をするらしい。小説の締切が近いらしく最近疲れ気味だ。後で甘い物を持って行ってあげよう。そしてお父さんも仕事だから、とりあえず……
「する事ないな……。」
「んにゃ?」
§
じっとしていても仕方が無いので1階に行き顔を洗いリビングに行く。するとひよりお姉ちゃん以外の皆が揃っていた。
「雪〜、おはよー!」
「あらぁ、もう起きちゃったの?せっかくの休みなのに。」
「もみじに起こされちゃったから…。」
「もみじは雪の事大好きだからね。」
こんな緩い感じが我が家の朝である。
僕も食卓に着き朝ごはんを食べる。……うん。美味しい。朝ごはんはお母さんと僕が交代で作るけれど、やっぱり人に作ってもらった方が美味しいし、何より嬉しい。
「はぁ〜、部活行きたくないよ〜」
「何かあったの?」
いつも部活となるとやる気になり元気なひまりお姉ちゃんが今日は珍しく乗り気ではない。お母さんもそれが気になって聞いたのだろう。
「だって〜、最近部活ばっかで雪と遊べてないんだもん。」
「それはしょうがないでしょ。好きでテニス部に入ったんだから。」
「それはそうだけど〜……。」
「……頑張ろ?」
「ううぅぅ~……。」
どうしよう……、中々やる気出してくれない。ひまりお姉ちゃんのやる気を出す方法はあるにはあるけど……。
『うぁ〜!走り込みばかりヤダ〜!!』
『が、頑張ろ?』
『走るのつ〜ら~い~!!』
『えっ、え〜と…。あっ!僕のケーキ食べていいから。』
『私をケーキで釣れる単純な獲物だと思ったのか!?』
正直思ってます。
『もっとヒーリング効果のあるやつがいい〜!!』
『…ヒーリング?』
ヒーリング効果が期待される物といったら、音楽とか好きな動物の動画とかハーブティーとかあとは……
『マッサージと『ひまり!行ってきマース!』か?』
§
『さぁ〜雪、約束のマッサージお・ね・が・い♡』
『う、うん……』
『ほらぁ〜もっと身体くっつけてよ〜♡こんな風に、ね?』
『えっ!?あっ!んん゛ッ…♡』
正直あの時はお母さんが止めてくれなきゃ危なかったと思う。ひまりお姉ちゃんの目が怖かったし……。他の方法を探さないと。
「おはよぉ〜。ひまり何ごねてんの?」
「あら、おはよう。雪と遊びたいって。」
「あ〜。……ひまり、ケーキ買ってきてあげるから頑張りな。」
「えっ、ホントに!?」
「ホントホント」
「雪のあーんも付いてくる!?」
「付く付く~」
なんかしれっと僕も景品にされた気がするけど……。というか、ケーキでいいんだ。……なんか負けた気がして悔しい。
「なら頑張る!行ってきまーす!!」
「朝からひと騒動ね〜。」
「……むぅ。」
「雪?どうかした?」
「なんでもないよ……。」
帰ってきたらケーキより良いって事見せなきゃ。……膝枕とか嬉しいかな。
「ふーん……、まぁいいや。とりあえず雪、ご飯食べたら行くよ。」
「えっ、どこに?」
「デート♡」
§
「……なんで待ち合わせ?」
あの後ひよりお姉ちゃんの事を待っていたら「先に駅で待ってて♪」と言われたのでとりあえず着替えて駅で待っている。
ネエネエアノコカワイクナイ?
エッ?アッ!ホントダ!ヒトリナノカナ?
コエカケテミナイ?
エー、コウイウノハミテルノガイインダヨ
なんか見られてる気が……怖い。
「ゆ~き!」バンッ!
「ひゃうっ!」
「おまたせ〜♪」
「脅かさないでよぉ……」
「んー、ムリ♡」
私服に着替えたひよりお姉ちゃんは流石と言って良いほど様になっている。元々スタイルが良い為今日みたいなボーイッシュな服装さえも着こなしている。
可愛さだけでなく僕に足りないカッコよさも備えるとは…。少しで良いから分けて欲しい。
「なーに考え事してるの。」
「…何でも着こなしてて羨ましいなって。」
「え〜。そんな褒めても何も出ないよ〜。」
そう言ってほっぺをグニグニといじり出す。分かりやすく照れてる姉に何も抵抗できずにいる僕。そんな2人を微笑ましそうに見るオーディエンス。
ただでさえ人前が苦手だと言うのにこんなに注目されると…。
ダメだ。気持ち悪くなってきた。
「ッ!ごめんごめん、行こっか。」
「…うん。」
見てわかるくらい顔色が悪くなっていたのか、焦った様子で移動を促すひよりお姉ちゃん。なんだかんだ言っても優しくて大好きなお姉ちゃんだ。
とりあえずほっぺから手を離そうか。
§
「あ〜むッ。……ん〜、美味しい~!」
あれから少し歩いて目的地である新しく出来たカフェにやってきた。新しく出来たばかりだからか、お客さんの数は多いが座ることはできたのでラッキーだった。
内装も白を基調とした落ち着いた雰囲気で、所々に入ったダークブラウンカラーがより居心地の良さを感じさせる。
そんな中お目当てのいちごのタルトを食している姉は幸せそうな顔をしている。
「はむっ。~~っ!」
「雪も美味しい?」
かという僕もチョコレートケーキに舌鼓を打っているのだが……美味しい。
「うん。」
「そっかそっか〜。喜んで貰えてるようで何よりだよ〜。あむっ。んん~!」
ここのお店のケーキは絶品でその気になれば2つはペロリと平らげてしまいそうなほどだ。
……まぁ、本当に2つ食べそうな人は今この場には居ないけど。にしてもひよりお姉ちゃんのタルト、美味しそうだなぁ。
「ふふっ。こっちも食べる?」
「…いいの?」
「うん。だって食べたそうにじっと見てるんだもん。」
「うぅぅ。」
そんなにじっと見ていたのか僕は。恥ずかしい。とはいえ気になっていたタルトなので一口貰うとしよう。
「はい、あ〜ん。」
「あ〜、はむっ!……っ!!美味しい。」
「ふふっ。良かった~。…ねぇ、私にも一口頂戴?」
そう言って口を開けて待っている姉。勿論断る理由も無いので一口あげる。
「あむっ。ん〜!こっちも美味しい!」
「…また来ようね。…今度はひよりお姉ちゃんも一緒に。」
「そうだね~。…今度一緒に来れなかったら雪がどうなるんだろ?」
「僕限定なの!?」
「それは…ねぇ?」
「うぅぅ……。」
ひまりお姉ちゃんのタガが外れたら何も抵抗出来ずに玩具にされる事は目に見えてる。正直抵抗出来る気がしない。それ程までに暴走したひよりお姉ちゃんは恐ろしいのだ…。
朝回想した事なんてまだ優しい方だ。……あの時ってもしかして計画的犯行だったのかな?勉強は僕の方が出来るけど、ひまりお姉ちゃんは時偶に恐ろしい程頭が回るんだよねぇ。
「おーい雪〜。魂が4次元に行ってるよ〜?」
「…はっ!?」
「おー、戻ってきた。そろそろ出よ〜買い物もしたいし。」
「わかった。…何買うの?」
「服だよ〜」
ふむふむ…この前も買ってた気はするけどまた何か欲しいのかな?僕はいいか、特に困ってない「雪のね。」し?
§
結局あの後ひよりお姉ちゃんによる僕のワンマン着せ替えショーが1時間程行われた…女性物の服で。
ちゃっかり店員さんも混じって来たのは驚いた。どうせなら止めて欲しかったけど。
そしてひよりお姉ちゃんが特に気に入った水色のワンピース、花音さんが着てそうなゆるふわ系の物を半強制的に購入し今日一日着ているよう命じられた僕はたった今、そのワンピースを着ながらケーキを食べさせている。
誰にって?
勿論ひまりお姉ちゃんにだ。
「あっ、あーん。」
「あ〜ん♡んふ~!美味しい~!!それに雪も可愛い~♡」
「あっ、ありがとう…。」
「はぁ〜部活頑張った甲斐あったよ〜。ありがとうね、雪!」
「ううん、頑張ってるひまりお姉ちゃんの為だから…。」
「天使〜♡」
「ふふふっ…大袈裟だよ。」
まぁ、本当に頑張ってるもんね、部活に勉強にAfterglowにバイトに。ひまりお姉ちゃんが満足できるならこれくらいの事は喜んでやるつもりだ。
「あっ!ケーキ食べたら撮影会ね!」
「……え?」
「雪に着て欲しい服沢山あるんだよね〜!」
「……ふぇぇぇぇぇぇ~!」
撮影会はお母さんの制止が入るまでの間、2時間14分に渡って行われました。
「にゃっ!」
小説とは関係ありませんが。
前島亜美さんの笑顔に沢山救われてきました。降板はとても悲しいですが前島亜美さんのご健康とこれからの人生が素晴らしいものでありますよう願っております。
今まで私達に最高の彩ちゃんを見せて下さりありがとうございました!