Ace Combat -Retrieval of the sky-「空の奪還」   作:鳳翔

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#2 First Mission -初任務-

基地の中で、偶然クラウンと出会った。

クラウンは、俺がIUNにいた頃の隊長だ。

 

「よぉトリガー、久しぶりだな。ああ話は聞いてる。レーベンをやっちまったんだとな。もうお前は俺以上の存在だよ...。」

「いやぁ、そんなことないですよ。それにクラウンもちょっと良い地位貰ったって聞いてますよ?まあそれはそうとして...、」

「どうした?」

「レーベンのあの機動、間違いなく例の『ミスターX』のフルコピーか、そこから更に戦闘経験を積んで強化されたものです。翼端オレンジの、覚えてます?」

「クソ、あいつなのか...。」

「どうかしました?」

「いや...風の噂に聞いたんだがな。あの無人機の野郎、戦闘経験を積んで定期的に自動でAIデータを更新するって話があるんだ。」

「要するに、戦えば戦うほど、あっちも強くなる。それに基礎戦闘力がこっちと向こうじゃ段違いだ。俺たちがあいつと戦って経験を積んで強くなっても、向こうも強くなるから追いつけない。」

 

それが本当ならば、奴らとの交戦は日に日に困難を極めることになる。

 

「工場を潰したり出来ないのか?」

「それが、主要業務は地下深く、トンネルの奥で行われてるらしいんだ。戦車部隊が突入しようにも、分厚い装甲で入口を固められてるんだとよ。」

「そうか...。野郎との戦いはそう簡単には終わらなさそうだな。」

「ああ。おっと、新聞社の取材がもうすぐだ。すまんがそろそろ戻る。」

「ハハ、人気者は辛いな。またどこかで会おうぜ、トリガー。」

「ああ、会えるといいな。」

 

俺は「人類初のADFX-10撃墜者」として新聞やテレビの取材が立て込んでいた。「ADFX-10を人類が初めて空中戦で撃墜」のニュースは翌日の朝刊の一面を飾っていたし、そのニュースによる世界中の沸き上がり様は相当だったらしい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

レーベンの撃墜には、継続的に確実にダメージを与えられるレーザー兵器が有用なのではないかー。その議論が生まれたのは、IALAの設立からそう遅くなかった。

 

2021年末にはエルジア王国は隕石迎撃砲「ストーンヘンジ」全基の可動部を復旧しレーザー砲に改造する計画を始動し、それと競い合うように諸外国も迎撃システムの開発を始めた。

 

しかし、どれもこれも一時的に数を減らすためのものだけに過ぎない。いくら各個撃ち落としても、毎日のように世界各地の工場からレーベンが飛び出す。

最終目標は、彼らを完全に世界から消し去る事だ。

 

グランダーIG社は一連の経済的打撃でほとんど倒産直前まで追い込まれていた。しかし、その残党が今でも工場を動かし続けているという。

彼らを、どうにかして止める必要がある。

 

IALA作戦司令部はその計画も立て始めていると、これまた風のうわさで耳にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

いよいよ実戦配備だ。

 

訓練部隊を解散し、実戦部隊に再編成する。

 

世界中からパイロットが集まったとはいえ、レーベンと好き好んで戦いに行くやつは居ない。と俺が言っても何の説得力もないが。

志願兵は合計で1000人強だ。それを200のチームに分ける。大体1チーム4~6人だ。

 

IALAの実戦航空部隊の任務は、地上軍の攻略を上空から支援する近接航空支援と、レーベンの空中からの根絶。この2つだ。

 

どうやらどんな任務でも最低でも4チーム、20機ほどが固まって動くらしい。任務内容にもよるが、レーベンの推定会敵数は3から5。相当な被害を覚悟しているのだろう。

 

有名なエース部隊の猟犬なだけあって、俺たちガルム隊に最初に来た任務はかなりハードなものだった。しかもあの「メビウス」中隊との共同任務だ。

 

朝4時半。

 

ブリーフィングルームに入り、開始を待つ。

続々と続いて人が入ってくる。俺には、かの有名なメビウス中隊ともう1隊との共同任務、ということしか聞かされていない。

 

司令官が入って来て、ブリーフィングが始まる。

 

「君たちの初任務は、南ベルカのグランダーIG社の主軸工場の機甲突入部隊を輸送する輸送機10機の護衛だ。グランダー社はこの動きを察知し、大量のレーベンを送り付けるつもりらしい。その攻撃から輸送機を援護せよ。輸送機がサピンの海岸に到達後は全車両をパラシュートで空挺投下した後、輸送機のパイロットがカプセルに入りパラシュートで脱出し機体を捨て、君らは基地へ帰還する。」

 

まさに「捨て身」の作戦だ。

 

なにより長距離移動がきつい。最後にはこのザップランドに戻ってくるとは言え、長距離のフライトは体にこたえる。

 

「なお、スプリング海を横断する長距離フライトのため、空中給油機KC-10が6機随伴する。メビウス、ガルム、ゴーレム隊の18機の活躍に期待する。以上、解散。」

 

ゴーレム?

 

クラウンとブラウニーのいるあのゴーレムか?

 

また会えるのか。

それにブラウニーと話すのはいつぶりだろうか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今ではすっかり愛機となったF-15C。

 

通常ミサイルは120発ほど積んでおいた。SASM(命中せずとも爆発しダメージを与えるミサイル)は12発。レーベンにこいつをやみくもに打てばダメージが蓄積してくれるとは思えないが、当てれそうな瞬間は何度もあった。

 

1番機のサイファー、2番機のピクシー、4番機の俺、5番機のカウントはF-15Cだ。ただの偶然だが、唯一F-14Dに乗るバートレットが少し孤独そうにも思えた。

 

サイファーの機体は、主翼の両端が深い青。尾翼にも同じ色が塗ってある。

ピクシーのは、右翼が赤い。昔右翼を失っても帰還してきた時より、「片羽の妖精」と呼ばれるようになったと聞いた。

 

隊長のサイファーから、ピクシーと順に格納庫から出て、滑走路へタキシングする。

 

朝日の照らす滑走路から、輸送機C-17が重そうに離陸していった。

 

2番機、片羽の妖精に続きテイクオフ。後ろには、タキシング中のゴーレム隊のF-16やらF-18、F-14が見える。

 

初めてザップランドの訓練空域を離脱する。ここから先は、レーベンが飛んできても戦うしかない。

 

初の大規模作戦に、懐かしさも少し覚えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ノースオーシア州。

オーシアの信託統治領で、かつて南ベルカと呼ばれていたこの地に、ノースオーシア・グランダー・IG社の工場がある。

 

かつての環太平洋戦争で、「ラーズグリーズ」がごっそり爆破してしまった施設。

 

グランダー社はこの施設を莫大な時間と金をかけて復旧させ、巨大な無人機工場に仕立て上げた。

 

その工場に、朝早くから忙しそうにコンピュータをいじる男たちと、管制画面を見つめる大柄の男がいた。

 

ディエゴ・キャスバー・ナバロ。

 

ベルカの雪の大地が似合う男ではない。彼はオーシアより遥か南、レサス民主共和国の軍司令官だ。

 

なぜ彼がこんなところに居るのか。

その謎は、いずれ解き明かされることとなる。

 

「こいつなら、100パーセント我々が負けることは無い。」

 

「こちら第1トンネル射出管制センター、射出準備完了しました。全システムオールグリーン。」

 

「よし!」

 

「射出カウントダウン開始!」

「10!9!8!7!6!」

 

「5!4!3!2!1!」

 

「ゲフィオン、ロンチ!」

 

スクリーンに、トンネルのカタパルトから射出される無人機の姿が映し出される。

 

その機影は、レーベンのものでは無い。

 

ADFX-11。

 

通称「ゲフィオン」。

 

最新鋭のプロトタイプ機だ。

 

白い雲を残して飛び去っていく機影は、まっすぐユージア大陸の方へ向かっていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「こちら、AWACSロングキャスター。これより作戦を開始する。全10機の輸送機は、4、3、3機の3グループに、正三角形の形で陣形を展開する。」

「前方に展開した輸送機4機をアルファ、後方向かって右の3機をブラボー、向かって左の3機をチャーリーとする。」

「メビウス隊、貴機らはアルファの護衛を行え。ガルム隊はブラボー、ゴーレム隊はチャーリーをそれぞれ重点的に護衛しろ。なお空中給油機及びAWACSは3グループの真ん中に展開する。」

 

それぞれのグループが互いに800mくらい離れていく。

 

「あと、悪いが俺は食いながらやらせてもらう。腹が減ると判断が鈍るんでな。」

「とんだ食い意地だな。」

 

とは言っても、無人機が飛んでくるまでは護衛機はお留守だ。

そういえば、チャーリーの護衛に回ったのはゴーレム隊だったな。

 

「よぉブラウニー、元気してるか?」

「この声...トリガー?居たの!?」

「ああ、俺も『ゴーレム隊』って言われるまで気づかなかった。」

「クラウンに『IALAにいる』『レーベンを墜とした』ってことは聞いてたけど...。なんとか元気にしてるわよ、こっちは。そっちはどうなのよ?」

「こっちはまぁ...マスコミの取材が落ち着いてからは楽にやれてるな。」

 

こうして話していると、フォートグレイスにいた時のことを思い出す。

 

俺たちはここが空の上なことも忘れて喋りまくった。

再会の喜び、ってもんだろうか。

 

「にしてもあの時はヤバかったよなー、お前。翼端オレンジに追われてさ。」

「ああ...あれね。思い出したくも無いわ...。」

「そうか...。あのー...ブラウニー。」

「どうしたの?」

「すごく言いにくいんだが...。」

「?」

 

「やっぱりやめておこう。」

「何よもったぶっちゃって!」

「いや、お前の士気に関わるかもしれない。ザップランドに生きて帰れたら、そこで話す。」

「よぉトリガー、女の子に愛の告白ってか?黙ってないで言っちまえよ!ヒューヒュー!」

「うるっせぇ!カウントお前は黙ってろ!」

 

もちろん伝えようとしたことは「好きです、付き合ってください!」なんて内容じゃない。

レーベンの機動が、ミスターXのものであるということだ。

このことは、あいつと実際に戦った奴と、俺がそれを伝えたクラウンと、レーベンの開発関係者以外知らないだろう。

もっとも、戦って生き残ったやつが、世界には俺しか居ないのだが...。

 

...腹減った。

 

俺は、軽食用に持ち込んでいたコンビニのサンドイッチを口にした。

 

何せ昨日買って袋開けっ放しにしてたやつだ。冷蔵庫に入れてたとは言え、パンはパサパサだ。

 

こいつは失敗だった。口の中の水分を全部こいつに奪われる。水筒の水がすぐ減ってしまった。

 

まあ、未開封のチュロスとホットドッグに期待しよう。

 

にしても、小一時間飛んでいるがレーベンとあまりにも遭遇しない。

こんな重要作戦、何十機も飛んできてもおかしくないんだが。

 

それともなにか、とんでもない超兵器でも用意しているんだろうか。

 

「トリガー、何食ってんだ?」

 

そう話しかけてきたのはサイファー。サイファーは俺の前方で護衛に着いている。俺のことは見えようは無いはずだが...?

 

「隊長、どうしてそれを?」

「無線のマイク、入れっぱなしだぞ。ガサゴソガサゴソ言ってんだ。」

「あっ...」

「それに、お前意外とよく食うだろ。それに今朝緊張して朝飯あんまり食えてなかったみたいだからよ。」

「ああ...よくお分かりで。」

「サイファーは人を良く見てるんだ。細かいとこにもな。完全犯罪を仕掛けても、こいつにだけはバレる自信がある。」

「ピクシーも似たようなもんだろ!今日はかけるケチャップの量が少ないとかなんだとか、お前も大概だぞ!」

 

相変わらずこの2人は仲がいい。

 

「それで、何食ってんだ?」

「昨日の食いかけのサンドイッチを...」

 

「警告!ロングキャスターから全機へ!正体不明の飛翔体が接近!この速度はレーベンでは無い!」

「だとしたらなんなんだ!」

「巡航ミサイルだ!ただこんな型のミサイルは見たことがない!ひとまず、アーセナルバードの空中炸裂弾頭ミサイル『ヘリオス』の着弾予測データを適応し、レーダーにデータリンクする!おそらくヘリオスでは無いが、レーダー上の円から離れるんだ!」

 

突然の緊急事態。レーダー上に現れた赤い円。まずい、輸送機数機が円の中だ。

 

下に逃げよう。

 

こういう時の俺の勘は当たる。

 

「お前ら、下だ!」

あまりの緊張に隊長たちをお前ら呼ばわりしてしまったがそれどころではない。とにかく、ひたすら下に降下しレーダー上から円を消す。

 

「着弾地点から離れろ!早く!急いで!」

輸送機たちも散り散りに散っていく。

 

「着弾まで5...4...3...2...1...」

 

「着弾、今!」

 

ドゴォォォォォォという轟音と共に、真上に横方向の衝撃波が見える。着弾地点の近く、上にいたやつらはまとめて吹き飛んだ。

 

生き残った。

 

勘が当たりだ。

 

「メビウス2よりロングキャスター、メビウス5、ロスト。」

「こちらゴーレム2。ゴーレム3ロスト。」

「輸送機も2機やられた!給油機も1機爆散だ!なんなんだあれは!?」

「続けて飛来を確認!着弾まで20...19...」

 

「ロングキャスター、下です!着弾地点より下にいれば生き残れる可能性があります!」

「本当か!?もうこの際信じるしかない!全機高度を下げろ!着弾地点より高度を下に取れ!」

 

輸送機や護衛機、給油機たちが一斉に降下を始める。

 

「7...6...」

 

「高度を下げろ!急げ急げ!」

 

「3...2...1...着弾!今!」

 

頭上にまた同じ爆発が見える。

爆散した味方機はいないようだった。

 

「トリガー、お手柄だ!あいつを避けるには着弾地点より下に高度を取ればいい。偶然とはいえよく気づいてくれた。ありがとう。」

 

ただまだ油断は出来ない。

また、とんでもない事が起こりそうな予感がする。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「SWBM、着弾を確認しました。第2弾も順調に飛行中です。」

「輸送機、護衛機数機の撃墜を確認。」

「ゲフィオンはSWBMを発射後も順調に作戦空域へ接近中です。」

「間もなく第2弾着弾します。」

 

「おい、奴ら高度を下げたぞ!」

「クソ、これじゃあ...!」

「SWBM、着弾!」

「損失は確認できず!」

「もうあいつにはSWBMが積んでないぞ!」

「まあ、第1弾の打撃でも十分な損失でしょう。」

「ああ...あとはゲフィオンを信じよう。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

謎の空中爆発ミサイルの襲来で俺は、予感の的中を悟った。

あまりに飛んでくるレーベンの数が少ない、何か新兵器を用意しているのだろう、という予感だ。

 

「さらなる飛翔体の接近は確認できない。攻撃はひとまず止んだと思われる。」

「ふぅ~よかった!」

「生き残ったぜ!」

隊の空気は完全に緩み切っていた。

俺はそんな状況に少し危機感を感じたが。

 

「落ち着けよ!気が早すぎるぞ。」

 

そう一喝したのは、メビウス1だった。

 

「これからもさらに別の攻撃が来る可能性だってかなり大きい。気を緩めていると死ぬぞ。」

 

そうして再び空気が引き締まったその時。

 

「待て...今度はなんだ!?」

「ロングキャスター、どうした?」

 

「ボギー1、ハイスピード!方位2.9.0!距離2000!不明機は敵機と判断する!」

「この反応はレーベンとは違うものだ!」

「ミサイルじゃないのか!?」

「それとも違う!何者なんだこいつは!?」

「あと10秒後にエンゲージ!」

「どうしてそんな近距離まで捉えられなかったんだ!?」

「分からん、ステルス性があるのかもしれん!」

「そういう手品か!?」

 

「待て...レーダー上から反応が消えた!?」

 

「どういうことだ!?」

 

「言ってる場合じゃねぇ!来るぞ来るぞ!」

 

突然、目の前の1機の輸送機が爆散する。

 

「おい!輸送機が!」

「ミサイルはどこからだ!?」

 

俺の目が輸送機にくぎ付けになり、油断したその瞬間。

 

ん!?なんだ!?

 

キャノピーの左を何かが大きな音を立てて飛んで行った。

 

航空機には見えない。

というかそもそも物体として捉えられなかった。

鳥の群れか何かか?こんな時に...そう思っていた時だった。

ピッピッピッ...ピピピピピー

 

ミサイル!?

 

「ガルム3、ミサイル!かわせ!」

「ガルム3!ブレイク!ブレイク!」

 

何だと!?いつの間に後ろに!?

 

急いで機首を引き上げながら操縦桿を左に倒す。

目の前をミサイルが飛んでいく。

何とか避けきったようだ。

 

しかしいつの間に俺の近くに...?

 

「こちらガルム2。敵機を視認。敵はレーベンではない。繰り返す、敵はレーベンではない!」

 

グランダーの新兵器か。

くそったれ!

 

しかし機動はレーベンそのものに見えた。

 

しつこく背中を追い、必中位置を見極め撃つ。

やる事は同じだ。

 

そう思っていた。

 

あいつはまっすぐ抜けて行ったあと、やはりクルビットで俺にヘッドオンを仕掛けてきた。

 

クソ、よりによってターゲットは俺かよ...!

 

「ガルム3、エンゲージ。」

 

俺はこれを言うのも忘れてヤツの背中を追うのに夢中になっていた。

 

「全機!ガルム3を支援しろ!」

「ネガティブ!俺には近づけない!」

「ガルム1、2、メビウス4から7、ゴーレム1から4は引き続き輸送機のそばに付け!輸送機の周りをがら空きにさせてはならん!敵はほかが始末する!」

 

ヘッドオンを回避し俺が180度反転、数機でヤツの背中を追う形になった。

しかしヤツの速度があまりにも速い。ロック可能距離まで追いつくことが不可能だ。

 

...おかしい。

 

ヤツはあまりにも遠い距離まで引き離していった。

まさか撤退だなんて言わないよな?

 

ヤツはかなりの距離引き離した後、突然クルビットして反転した。

ちくしょうまたヘッドオンか。その手は食わんぞ。

 

俺はヘッドオンを避けてやろうということで頭がいっぱいだった。

 

!?

 

隣を飛んでいたのクラウン機のちょうど真上に謎の光の玉が現れた。

 

「クラウン、大丈夫か!?」

 

「どれだけ動いても着いてきやがる!」

 

これは...プラズマ兵器?

 

「『Fuel Over Heat』だと!?」

 

燃料過熱...?

さっきからアフターバーナーを吹かし続けているから多少燃料温度は上がるものの、警告音がなるほど無理をしているつもりは無い。

 

まさか、この火の玉が...?

 

そう思った瞬間、クラウン機にしつこく付きまとっていた光の玉が消え、真上を敵機が通り過ぎて行った。

 

「こちらゴーレム1。燃料が過熱し冷やさなければならない。すまんが一度離脱する。」

「了解。」

 

「全機に告ぐ、こちらロングキャスター。不明機と地上施設のマイクロ波送受信を感知!更新先の施設は...ノースオーシア州のグランダーIG社の所有する工場だ!」

 

「こちらガルム3。確証はないが、光の玉はおそらく何らかの方法で機体の燃料を過熱させ爆破するカラクリだ。長時間捉え続けられると機体が吹き飛んじまう。」

「なんだそいつぁ!?聞いたことねぇぞ!?」

 

「クソ!燃料温度が下がらない!どうして!?」

「第2エンジンから出火!右翼の燃料タンクからも...!」

「ダメだ!機体の姿勢が保てな」

 

「また1機!輸送機のロストを確認!」

 

やっぱりそうだ。

あの光の玉に、輸送機が1機墜とされた

あの様子だと生存者はいないだろう。

 

「ガルム3の言う通りだ!」

 

「残り6機!」

「守りきれるのか!?」

 

あいつを放っておけば、輸送機どころか護衛機、給油機まで全滅しちまう。

 

その時、さっきまで共にクラウンの反対側を飛んでいたリボン付きのF-22、メビウス1が突然話しかけてきた。

 

「こちらメビウス1。ガルム3、着いてこい。」

「えっメビウs」

「いいから着いてこい!」

 

言われるがままにメビウス1について行く。

 

「いいか、俺があいつの囮になる。お前はそれをしつこく追って撃ち落とせ。いいな?」

「はっ、はははは、は、はい...」

「何テンパってんだよ!」

 

「あとな、俺もたまにあいつを撃つ。撃てる時はな。オイ、他の奴らは下がってろ!こいつと下手に戦うと死んじまう!」

「ま、まままたどうして俺を!?」

「お前ならあいつを墜とせる、お前の戦ってるところを見て確信した。」

 

お前ならあいつを墜とせる。

 

そうだ俺はレーベンを殺ったんだ。こいつだって...!

 

そんなことを考える暇もなく、リボン付きのラプターはやつを見事に食いつかせていた。

 

「トリガー、追え!」

 

がむしゃらにあいつの背中を追う。

 

すると、あいつの機体が突然消える。

 

「光学迷彩か!?」

「あいつが見えないなら俺を追え...!」

 

「メビウス1、ミサイル!回避!」

 

リボン付きのラプターが、空中を舞う。

 

本当にあの中には人間が乗っているのか、そんな疑いを持つほどに、とんでもない機動だ。

 

光学迷彩が消え、敵が再び現れる。

メビウス1の直上に光の玉。

 

「メビウス1、あの玉だ!避けて!」

「噂の電磁兵器はこいつか...!」

 

メビウス機はPSMを連発し敵を撹乱。光の玉を避けきった。

 

「こいつの誘導性能は言ってもそんなに高くねぇな...!」

 

メビウス1は太陽と反対方向に向かってまっすぐ飛んでいく。

アフターバーナー全開で追いかける俺。

 

ピピピピピピピピピ...

 

ロックしろ...!

 

捉えろ...!

 

ピーー

 

Fox2!

 

通常ミサイルとSASMをそれぞれ2発、合計4発を集中砲火だ。

 

「当たってくれ...!」

ミサイルを感知し敵機が上方へ回避。

しようとするも、SASM2発が敵の少し離れたところで炸裂。敵機の左エンジンから出火した。

 

「命中!命中!」

「すげぇ...!」

「あの2機の機動...どうなってんだ!?」

「あいつらが頑張ってる間に、俺達はとにかく逃げるんだ!」

 

出火したエンジンだが、すぐに消火された。賢い野郎だ。

 

囮になって飛んでいるメビウス1は、「今のこの機動...黄色中隊の...?」などと独り言を言っていた。

 

「いいぞトリガー、トドメを刺せ!」

 

また敵機が光学迷彩を発動した。

だが完全に隠れられる訳では無いらしい。機影をかたどったオレンジっぽい光が依然としてメビウス機を追いかけている。

 

メビウス1が左上に避けた。

追いかけるオレンジ色の光。

俺は光の少し先を読んで機首を上げた。

メビウス機が反転。なお追いかけるオレンジ色の影。

 

ここだ!

 

俺はHUDのレティクルすら出ていない機銃を、ヤマカンでぶっぱなした。

 

カカカカカン!

 

当たったか!?

 

しかし致命傷は与えられなかった。

 

光学迷彩が消え、敵機があらわになる。

 

俺も、さすがのメビウス1も、体力の限界が近い。

 

メビウス機の動きが少し鈍ったその瞬間。

 

「メビウス1、チェックシックス!」

「なんだと!?」

 

敵機の機銃弾がメビウス機に命中。

 

「クソっ..俺としたことが!」

「被害状況を!」

「エレベーターと...右エンジンか!それ以外は無事だ!だがだいぶん機動性が鈍っちまった!」

 

まずい、またあのプラズマ兵器だ。

 

「メビウス1!上!上!」

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

右エンジンを被弾したメビウス機が全速力で回避。機体が右にそれていく。

 

「何とか避けきったか...。俺もやれるとこまでやってみるが...。」

 

「メビウス1、あとは1人で始末します。相手も手負いです。やれます。」

 

「...信じていいんだな...?」

「...はい!」

 

「じゃあ俺はみんなのところに戻ろうと思う...。頼んだぞ...!」

「了解!」

 

輸送機の連中は全速力で空域を離脱し、かなり遠い位置にいた。

 

大丈夫だろうか。

 

まああのリボン付きだ。信じよう。

 

あいつは依然悠々と飛び回ってる。エンジンにSASMを食らった後は少しばかり機動性が落ちていた。おそらく出力が下がり、左右で出力を合わせるために右エンジンの出力も絞ったのだろう。

 

しかし侮っちゃならん。手負いの状態でメビウス1を被弾撤退させた野郎だ。気を引き締めていこう。

 

俺があいつを追いかける構図は変わっていない。

しかし。

 

あいつは一気に目の前で反転し、ヘッドオンを仕掛けてきた。

それを避けきったあと、後ろでまた反転し背中に付かれた。

 

幸いこいつにはレールガンやレーザーは積んでいないようだった。

飛んでくる機銃弾とミサイル。どうにか上方向に避けるも機銃弾の数発を被弾。被弾した箇所が良かったのか、自機の機動性はまだ衰えていない。

 

ただアンテナをやられた。長距離の無線が通じねぇ。

 

孤独な戦いになるぞ...。

 

緩やかなカーブを描き反転し真っ直ぐ飛んで行ったあいつの背中に付こうとするも、敵機はPSMを繰り出し全く前に出てくれない。

 

ようやく目の前に捉えた。ロックオンしFox2。とにかくがむしゃらにミサイルを撃ちまくる。

 

SASMに少し期待したが、敵機はコブラとフレアで全て回避。そしてまたもや後ろに付かれる。

 

その時だった。

 

被弾していたラダーを無理に動かしたせいで左の垂直尾翼が吹き飛んだ。

機体のバランスが一気に崩れる。

何とかトリムやロールを駆使して体勢を建て直すことは出来たものの、これ以上の戦闘継続は無理と言っても過言ではない。

 

それどころか...最悪だ。

電気系統が損傷してイジェクトもできない可能性が高い。

 

このままここで死んでいくしかないのか。

何とか敵にロックを避けに避けているものの、この動きもそろそろ限界が来る。

 

敵機は真後ろ、すぐそこにいる。

 

少し機首を上に上げた時。

 

ピッ...ピッ...

 

ロックオンの警告音だ。

 

この近距離で撃たれては、フレアを撒いてももう間に合わないだろう。

 

脱出もできない。

 

ああ、俺はこのままここで死んでいくんだ。

 

あの世に行けば、死んで行った基地の連中に会えるだろうか...?

 

やっぱり俺にはこいつは墜とせなかった...。

 

時間が遅く感じた。

 

過去の思い出が走馬灯のようにフラッシュバックする。

 

ああ、楽しかったなぁ...。

 

ピピピピピピ...。

 

さようなら...。

 

...

 

ドォォォォォォォォォォォン!!

 

ふと我に返る。

 

警告音が止まっている。

 

なんだ。

 

何が起きた。

 

「トリガー!無事か!?」

 

左横を飛ぶF-15。

 

「ブービー!無茶しよって!」

 

目の前にやってきたF-14。

 

「大丈夫!?」

 

右横にやってきたF-18。

 

「カウント...ブラウニー...教官...?」

「無茶しすぎよ、あんたは!」

「トリガー、お人好しは早死にするぜ?」

 

「でもどうして...?」

 

「帰ってきたボロボロのメビウス1を見てな、向こうはただ事じゃねぇと思ったんだ。」

「ハハ、そうか。まあメビウスだもんな。」

「?」

「んや、何でもねぇ。」

 

「ロングキャスター、こちらゴーレム2。ガルム3の生存を確認!アンテナを損傷している模様、長距離通信が出来ない。」

 

「トリガー、AWACSから指示が来た。ゴーレム2が護衛しつつ、ユージア大陸近くのタイラー島にある航空基地跡に着陸し輸送機を待て、って話だ。2人だけの空中デート、楽しんでこいよ?」

「ちょっと、馬鹿なこと言わないでよね!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ゲフィオン、レーダー上からロスト!」

「なんだと!?」

「撃墜されたものと思われます!」

「あのゲフィオンが!?」

「はい。先程通信が途絶しました。」

「ちくっしょう...!」

 

真っ暗になった管制画面を見つめながら、ナバロは唇を噛んだ。




最後はトップガン的展開しか思い浮かばなかったです。
どうでしたか?やっぱりなかなかドッグファイトを言葉で書き表すのは難しいです。
なんか感想とかあったら、ぜひ書いてってください。
まだまだ続きますよー?
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