Ace Combat -Retrieval of the sky-「空の奪還」 作:鳳翔
目が覚めるとそこは病院だった。
たくさんの人に囲まれ、起きた俺に皆安堵しているようだった。
そうだ。俺はザップランドで刺されて...
サイファーから話を聞いた。
ここはザップランドにほど近いコンベース港にある大学病院らしい。
幸いにも傷は浅く、少しの施術で済んだと聞いた。
どうやら刺された晩の翌朝だそうだ。
刺された腹がたまに痛む。
1度刺されて俺は倒れた。刺したやつは死んだと思って慌てて血の着いたナイフを持って逃げているところを衛兵に見つかり、現在警察署で留置されているらしい。
また俺を殺しきれなかったか、あいつは。
血を流して倒れていたところを発見してくれたのは、食堂に忘れ物を取りに来た「サラマンダー隊」隊長だった。発見されたのはおそらく刺されて1分も経っていない頃で、その早期発見が幸いしたらしい。
コンベース港、か。
オーレッドを焼け野原にしたエルジアの潜水艦の艦長は、「コンベースの英雄」との異名を持っていたな。
コンベース港の「無敵艦隊」ことエイギル艦隊を全滅させ、当時の艦隊旗艦、今では国際指名手配犯の「マティアス・トーレス」にトラウマを埋め込んだのは、ISAF所属のメビウス部隊だ。
マティアス・トーレス...。
彼は、この海のどこかで、今でも巨大潜水艦を操り潜伏しているらしい。
主に彼の捜索に当たっていたのは、かつて俺が所属していた「IUN-PKF 国際停戦監視軍」だ。
初めてレーベンと遭遇したのも、彼を捜索する対潜哨戒機の護衛中だった。
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にしても、ベルカにしてはやることが雑だ。
あいつらなら、スナイパーを雇って遠くからヘッドショットで狙撃するとか、それくらいしてもいいもんだ。
突然部屋にやってきて正面からナイフで一突き、というのはなかなかに無理がある。
実際俺達はIUNの頃、ハーリング元大統領を救出する作戦でベルカの陰謀にかけられたことがある。
IFFを偽装し見方機を偽った航空機が作戦空域に侵入、おそらくかつての「灰色の男たち」による作戦失敗の復讐のために 、、ハーリングを殺害しようと目論んだところをAWACS「Sky Keeper」が不審に気づき、その暗殺計画は失敗した。
その事が、頭に引っかかる。
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朝刊の紙面を見て、俺は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「IALAのパイロット ベルカ人に刺される」「全治3ヶ月の怪我」
まったく、ここ数年のマスコミはベルカ人を差別するのが大好きだ。何につけてもベルカベルカ。ナントカ大臣がグランダーIGの平社員と親友だっただけで週刊誌の過激スクープに取り上げられ失脚させられたり。酷いもんだ。
全治3ヶ月なんて嘘だ。刺した側だけ国籍を書くのも明らかな差別表現だ。
ベルカのことが好きか嫌いか、と言われたら好きだ。俺は一度あそこの首都に出向いたことがある。みな人情味に溢れるいい人々ばかりであった。音楽や食の文化も素晴らしい。
しかし世間はみな、「彼ら」のした事だけでベルカ人全てを差別する。
店頭からはベルカ料理が消えた。俺がよく行っていたベルカ料理の店も、ベルカ料理を売っているだけで店の前に「ベルカ野郎め」「消え失せろ」と貼り紙を貼り付けられ、今ではビールとジュース、ちょっとしたおつまみのあるバー、程度になってしまった。「ザワークラウト」「プレッツェル」「シュトーレン」。ベルカ料理がマジックで黒塗りされたメニューボードを見つめながら「こんなこと本当はしたくないんだ」と言っていた。
十数年前のベルカ事変に続き今度の無人機騒動があり、ベルカへの人々のイメージは地の底まで落ちていた。
世界中の政府がこの状況に手を打たなかったかと言えばそうでは無い。
そうでは無いのだが...。
反ベルカ過激派を主張する議員が選挙で当選したり、ベルカとの友好を唱えた議員は選挙でことごとく落とされたり。
今まであった差別抑止の法律・政令を強化し「ベルカ人を含む全ての人種・宗教へのヘイトスピーチ・差別行為に7年以下の懲役または100万円以下の罰金を課す」としようとしても全てを取り締まるのは不可能だ。それにそもそもそれに反対する議員が圧倒的多数を勝ち取り、改正審議の時点で否決されたー。というのは友人の友人から口づてに聞いた話だ。マスコミはこんな話を放送しようともしない。
大抵そんな連中は行ったことも会ったこともないのにでかい口を叩く。SNSでは #ベルカを許すな が毎日のようにトレンド入りだ。そのうち大量虐殺でも始まってしまうのではないかという勢いっぷりに、危機感を覚えざるを得ない。
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退院し、基地に戻れたのは太陽がカンカンに照りつける夏の日だった。連日の暑さと基地の冷房設備の脆弱さにみな喘いでいるようだった。
「待ってたぜトリガー!」
基地に入るなり声をかけてきたのはカウントだった。昔なら(ちぇっ、帰ってきやがった)と悪態をついてもおかしくないこいつだが、いつの間にか仲良くなっていた。まあ空戦の時はライバル心むきだしだが、根はいい奴だ。
ある程度荷物を片付けたら、軍司令に向かう。「病院では盗聴などの問題上話せない」と言われていた話を聞きに行くためだ。
じゃあここなら100%大丈夫なのかと言いたいところだが。
「実は今秘匿作戦を実行中でな...この基地にB-52などの爆撃機が数十機おるだろ。」
「はい。」
「そいつらを、南ベルk...ノースオーs...ノースオーシア・ノースエルジア州にあるハイエルラーク航空基地に動かしとる。」
ハイエルラーク...。俺も大昔に1度お世話になったことがある。
その頃はまだそこが「ノースオーシア州」と呼ばれていた頃だ。エルジアにオーシアの領土の右半分を奪われた今、そこは「北オーシア大陸にあるエルジア領土の北の地方」という意で「ノースオーシア・ノースエルジア州」などという実に訳の分からない名前がついている。
「それで...ハイエルラークで何を?」
「あそこはグランダーIGの根城に近い。あそこを叩けば、無人機の生産ラインに多少のダメージを与えられるはずだ。」
「しかし...スパイの情報によれば工場周辺は高性能なSAMと無誘導爆弾すら撃ち落とすレーザー兵器が護っています。それに半径10kmの範囲はガチガチのレーダー網が目を光らせています。あれでは爆弾をばら撒くことはおろか、遠くから巡航ミサイルを撃ち込むことも出来ませんよ?」
「そうだ、そこでだ...。工場のメイン電源装置をどうにかして停止させれば、全ての防衛システムがストップする。」
「ほう?」
「しかし電源装置は地下の奥深くにある。戦闘機での破壊は不可能だ。そこでだ。君にはガルム隊1番機「サイファー」とタッグを組んでレーダー網の穴をかいくぐり、地上に設置された地盤観測ユニットを破壊して欲しい。そいつは地震などを感知した際に施設保護のために電源をシャットアウトする。そこが破壊出来れば、施設の電源は外部の安全が確認されるまで全て停止する。その隙に、B-52の編隊が50キロ先からLACM"JASSM-ER"で飽和攻撃を仕掛ける。具体的な発射数は不明だが、おそらく50発程と思う。」
「観測ユニットの破壊...ですか。」
「そうだ。君ならできるだろう、そう判断しこの役を割り当ててみたが...不服か?」
「いえ...しかしなぜわざわざ2機で?」
「ああ、そうだ。すっかり忘れていた。工場の周りには、合わせて4つのユニットが設置されている。工場があまりに巨大なためだ。だが、ひとつを破壊しただけでは、他のユニットから送られてくる情報を元にシステムが安全と判断し、送電は続いてしまう。4つのユニットを、あまり時間差なく破壊しなくてはならないんだよ。」
「じゃあ4機連れていけば...」
「爆撃機の護衛要員が足りん。」
「あー...」
「それとな、もうひとつ懸念要素がある。かつて軌道エレベーターを護った巨鳥、アーセナルバードの行方が分からないことだ。1ヶ月前、ユージア大陸南西部のタイラー島のマスドライバーからサプライシップが打ち上げられた数日後から、監視衛星がアーセナルバードを見失っている。敵がなにか新しい武器を隠し持っているかもしれない。そんな状況だが...、できるか?」
「ええ...。何とかやって見ます。」
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俺たちは1週間後、ハイエルラークへ一時的に異動することになった。
司令官が俺の腹の傷の治癒を気にしてくれたのか、「ザップランドでゆっくり休んでから行ってこい」と気遣われハイエルラークへ向かうのは最後の最後だった。
1日目に飛んで行ったのはメビウス隊、オメガ隊、ヴァイパー隊、レイピア隊等旧IUNの面々、エメリア空軍のガルーダ隊やかつてのエルジア空軍のスコール隊、リジル隊。
次々に離陸していく様を見るのはなかなかに壮観だった。
2日目もラーズグリーズを筆頭に、南の国オーレリアのグリフィス隊、ニノックス隊、アクイラ隊などが飛び去って行った。
3日目、4日目と次々に戦闘機が飛び立っていく。
5日目は、ガルム隊が最後にハイエルラークへ向かう日だ。
基地防衛のための最低要員を残して、それ以外はすべてハイエルラークへ向かう大作戦だ。
ほぼもぬけの殻同然の基地に、F-15のエンジン音が響く。
ガーゴイル隊のF-14が先行して上がっていった。誘導路にはゴーレム隊とメイジ隊がタキシングを始めている。かつての戦友たち、馴染み深い面々だ。(スケルトン隊というのもいたが...開戦直後のIUN-PKFによる両面作戦にて、アーセナルバードの圧倒的攻撃力の前に全滅してしまった。)
先行してすでにハイエルラークへ向かっているのはほかに2中隊。俺たちが完全に最後の部隊だ。
ちなみに、腹の刺し傷は主治医の努力もありほぼ完治していた。
タキシングを終え、滑走路上で待機。
「ガルム2の離陸を確認。ガルム3、離陸を許可する。」
スロットルを最大まで押し込み、滑走開始。
V1...VR!
操縦桿を引き、機首が上がる。
「ガルム3、離陸を確認。ガルム4、離陸を許可する。」
「ガルム4の離陸を確認。ガルム5、離陸を許可。貴機で最後だ。」
「ガルム隊全機の離陸を確認した。グッドラック。」
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なんてことは無かった。
俺たちは無事にハイエルラーク航空基地に到着した。
そこは、本当に北の辺境の地。
俺がかつていた頃は、練習機用の短い滑走路しか無かったのだが、おそらくエルジア軍によって巨大な滑走路が併設されていた。
ザップランドの砂漠に比べれば屁みたいな大きさの駐機場には、B-52、Tu-95と戦闘機が所狭しと並んでいる。
爆撃機は、ざっと数えただけで20機はいる。
これではさしものグランダーも防ぎきれないだろう。
到着の翌日は、朝からブリーフィングだった。
全体的な方針を全員に伝えられたあと、役割によって分けられそれぞれでブリーフィングを受けた。
俺とサイファーの先遣部隊も、一応別室に呼ばれたものの、「まぁ...大体は司令官直々に聞いてるだろうから...復習くらいの気持ちで軽くやっていこうか」とのんびりしたものだった。
そこから作戦当日までの5日間は、暇な日々が続いた。
ブラウニーやクラウン、カウントとだべったり、東の大陸では食えないような料理を食べに行ったり。
北の大地での生活は、なかなかに面白いものだった。
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作戦当日ー。
作戦は真夜中に行うため、朝から基地は大忙しだ。
爆撃部隊は大きくふたつ。ノーリ隊とグレイモス隊の2つに分かれ、ノーリ隊は西から、グレイモス隊は東からそれぞれTu-95、B-52で遠距離攻撃を行う。
先遣部隊の俺とサイファーはさらに忙しい。自機のF-15Cには対地兵装が搭載できないのだ。かろうじて対地攻撃も可能なPLSLを装備する。
先遣部隊の出撃時刻は午後11時半。その10分後には、爆撃機部隊と護衛部隊が離陸する。
俺たちの戦果によってはこの戦況を大きく覆すことになるかもしれないこの作戦だ。いつもより入念に機体の稼働部をチェックし、オイルも差し直す。
「トリガー、しくじるんじゃねぇぞ!」
カウントがハンガーにやってきて言った。
「心配すんな、何とかやるさ。そっちこそ、なんかの拍子で死んだりするなよ?」
「心配すんな!」
出撃時刻が来た。
エンジンに点火し、ハンガーから滑走路へタキシングする。
誘導路の左右で、整備士が手を振っている。
滑走路はライトに照らされ光っている。
「トリガー、心の準備はいいか?」
「はい!」
「よし!ガルム1!ガルム3!フォーメーションテイクオフ!離陸を許可!」
「了解!」
一気にスロットルを押し込み機体を加速させる。
操縦桿を引き離陸。
「ガルム1、ガルム3、離陸を確認した。貴機らの幸運を祈る。」
ハイエルラーク上空の夜景を眼科に眺めながら上昇する。
「こちらはAWACS ロングキャスター。サイファー、トリガー、また会えて光栄だ。」
ロングキャスター。前の輸送作戦の時に管制してくれたAWACSだ。
「敵施設までは意外と距離がない。とはいえ油断するな。いつレーベンが飛んでくるか分からない。」
「ウィルコ」
「敵施設レーダー範囲まであと10マイル。」
「そろそろだトリガー。行くぞ!」
「ー作戦空域が近づいた。まもなく無線を封止する。こちらからの発信は行うが、貴機らからの発信、貴機同士の通信は禁止だ。また一切の兵装の使用も禁止する。」
「ウィルコ。次にお喋りができるのは施設上空だ。トリガー、お前について行く。進路はお前で決めろ。」
「了解。」
レーダー網に入った。作戦空域には雲も多い。そいつをつかって隠れることも出来るかもしれない。
まずは左右のレーダー網の間をまっすぐ進む。突き当たりを左に。高度を下げさらに発見の確率を下げる。
...なんだ?
進行方向右に機体が見えた。
あれは...前進翼?ベルクトとは違う。見たことの無い機体だ。キャノピーがあるあたり有人機だろう。
有人機なのが幸いした。こっちに気づく気配は無い。
「了解。状況オールグリーン。帰投せよ。」
「了解。帰投する。」
左折したあとはしばらく真っ直ぐだ。
「トリガー、道が別れている場合はどちらでも好きに進め。お前らの道のりは俺が追っているから安心しろ。」
了解。と心の中で返事をし、突き当たりのT字路を右に曲がる。
そこであることに気がついた。
左側...ほんの少しの隙間が開いている。なんとか通れば行けるかもしれない。
...いや辞めておこう。
ハーリング元大統領救出作戦でもこんな隙間があったがさすがに辞めておいた。
2度目とはいえ慣れないことをするのは辞めておこう。
右に曲がったあとは、ひたすらに直進する。その突き当たりを左に曲がれば、敵施設はすぐそこだ。
最後とはいえ油断は禁物だ。慎重に慎重に進む。
...レーダー網を抜けた。
「よし、レーダー網を突破した。さあ、派手に行こう。爆撃機の発射準備は既に終わっている。」
「よし行くぞトリガー。お前は右、俺は左の2つをやる。」
「了解。」
目の前の施設には、「Gründer」の文字と赤いエンブレムが見えている。
よし、1個目を捉えた。パルスレーザー射撃用意。
射撃!
バッバッバッバッバッバッ...
「敵施設破壊!」
同時にサイファーも施設破壊を報告した。
「施設2つの破壊を確認。まだ2つ残っているぞ。破壊はスピーディーなのがいいことに変わりはない。」
もう1つもすぐ近くだ。
目標に近づいて...
捉えた!
バッバッバッバッバッバッ...
左右からレーザーが火を吹く。
「最後の敵施設を破壊!」
「よくやった。まもなくグレイモス隊とノーリ隊が巡航ミサイルを発射する。」
よし...!
俺は完全に肩の荷が降りていた。
「グレイモス隊、ノーリ隊、LACMを発射せよ。」
「了解。JASSM-ER、射出開始!」
「ガルム1、ガルム3は爆撃機を護衛中のガルム隊に合流せよ。」
「ウィルコ!」
俺とサイファーがガルム隊本隊に機首を向けようとまさに操縦桿を傾けた、その時であった。
ヴッ...ヴッ...ヴッ...
「なんだ!?」
「こちらガルム1、レーダー照射を受けた!」
「どういうことだ!?」
「敵施設は沈黙しているはずだ!」
「警戒!ミサイル!」
「ブレイク!ブレイク!」
数発のミサイルが飛んでくる。
護衛機が飛んできたか!?
しかし左右を見回してみてもさっきの奇妙な前進翼機は見当たらない。
すると、どこからともなく不安をあおるような轟音が聞こえてきた。
ヴォォォォォォォォォォ...
緊張感が高まるさなか、真横にいるサイファーがすっとんきょうな声を上げた。
「オ...オイ...ありゃ...なんだぁ...?」
サイファーが指さした方向を見る。
真ん中から外側にかけてゆっくりと出現する白い物体。
巨大なプロペラ。
腹に付いたサプライシップ。
俺は確信した。
こいつはー...。
「警戒!巨大な機影を探知!アーセナルバードだ!」
「アーセナルバード!?」
「姿を消したんじゃなかったのか!」
「違う!そのままの意味で姿を消してたんだ!」
「光学迷彩!?」
待てよ...?確かこいつの腹には大量のレーベンが...!!
「レーベンが来るぞぉぉぉっ!!!」
俺はひたすらに叫んでいた。
ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォ...
また奇妙な音を立てて、次々とレーベンが降ってくる。
「クソ、グランダーIGがアーセナルバードを改造していることがはっきりした。奴らめ、IALAが集結するのを待ってたって訳か!」
「巡航ミサイル、全弾発射完了。依然として敵施設への飛行を続けています。総弾数67発!」
「了解。爆撃機の2隊は反転し、至急ハイエルラークへ撤退せよ。追手は仲間が食い止める。」
「UAV、急速接近!」
「ブレイク!ブレイク!」
「ちくしょう!レーザーに機体gー」
「サラマンダー4、ロスト!」
「こんな数のレーベン!どうなってんだ!」
「泣き言言ってる場合じゃねぇだろ!」
「クソ、やってやrー」
「ニノックス4、ロスト!」
「警告!アーセナルバードが巡航ミサイルを発射!こいつはヘリオス!空中炸裂弾頭だ!ノーリ隊、そっちに向かっている!」
「ヘリオス!?なんだそいつぁ!?」
「ハイエルラークの司令部からの命令は!?」
「引き続き、作戦を継続せよ。」
「どういうことだ!?」
「ロングキャスター、繰り返す。作戦は継続だ。」
「クソっ!」
位置的には俺たちがアーセナルバードに一番近い。
「ガルム隊、ラーズグリーズ隊、ソル隊は、アーセナルバードへの直接攻撃を行え。アスク隊、ヴァイパー隊、リジル隊、レイピア隊、ガルーダ隊は、アーセナルバード周辺の無人機と戦え。それ以外の者で爆撃機を護衛する。」
「あんな中を飛べって言うのか!」
そういうのも無理はない。アーセナルバードの周りには、ざっと20機のレーベンが餌に群がるハエのように飛び回っている。
「ウィルコ。ガルム3、エンゲージ。」
「馬鹿トリガー!ウィルコじゃねぇだろ!」
「何もしなければ全滅だ。やるしかない!」
「ぬおぉぉぉ、ちくしょう!」
「今回はハンバーガーを口に運ぶ余裕もない。」
「何食ってんだこんな時に!」
「ヘリオス弾着まで、あと10秒!」
「5...4...3...2...着弾、今!」
ドッゴォォォォォォ
「ちくしょう!爆発をもろに食らった!」
「左翼が消し飛んでる!」
「助けてくれぇぇぇ!!」
「くそっ...!ノーリ2、8、13ロスト。護衛機も何機かやられた!」
「撤退の指示はまだなのか!」
「こちらHQ。アーセナルバードを破壊せよ。」
「無茶いうな!ゴンッ...ザーーーーー。」
「あー...、ガルーダ4の無線機が切れた。」
アーセナルバードの真後ろに付いた。とんでもない数のレーベンだ。流石にこの数と相対すのは人生で初めてだ。
とにかく、まずは2基のメインプロペラの息の根を止めねばならん。
メインプロペラに2発のミサイルと機銃弾、パルスレーザーで総攻撃する。
ただこの間は守りがおろそかになる。バレルロールで飛んでくるミサイルをよけ続ける。
「警告!アーセナルバードが巡航ミサイルを発射した!空中炸裂弾頭だ!グレイモス隊、今度はそっちだ!」
「なんだと!?」
隣にいた翼端オレンジのソル1「アルカンジュ」がミサイルを発射。。メインプロペラ1基を停止させた。
さらに左のメインプロペラへ攻撃を集中する。全員の協力の甲斐あって、メインプロペラが壊れた頃にはサブプロペラ含めほとんどが破壊されていた。
アーセナルバードの翼上から大量のミサイルー、ざっと20初発以上が発射された。数発は俺に向かっている。
「ブレイク!ブレイク!」
上に向かって発射されたミサイルは、自分に向かって旋回し真っ直ぐ飛んでくる。
飛んできてるのはー4発。
正面からのは全て避けきったが、こいつら地味に誘導性能が良い。反転して追いかけてくるのでフレアーで撹乱した。
「5...4...3...2...ヘリオス着弾!今!」
「なんだこいつぁ!!」
「ちくしょう!!ちくしょう!」
「機体維持不能!ダメだ!!墜ちる!」
「エンジンから出火!」
「...クソったれ!!グレイモスの1番機、4番機、10番機、17番機がやられた!」
そこにまたとんでもない情報が耳に入った。
「ちくしょう!無人機がレーザーでひとつ残らず巡航ミサイルを破壊してる!」
「なんだと、どういうことだ!」
「本当にひとつ残らず!」
「クソっ!!ベルカ野郎め!」
くそったれ、情報量が多すぎる。
「巡航ミサイルが破壊されては作戦は失敗だ!エギル隊、ヘイロー隊、ゴーレム隊、メイジ隊、ガーゴイル隊で巡航ミサイルを攻撃するUAVを破壊せよ!急げ!」
「ダメだ!奴らミサイル破壊が早すぎる!」
「やったぜ!UAV1機撃墜!」
「他のやつの獲物を追うな!そうでなくても空は混んでるんだ!」
他部隊がUAVをあしらってくれている間、俺たちはアーセナルバードへの攻撃に専念しようとした。
しかし、光学迷彩がアーセナルバードを左右から包み始める。
「オイ!巨鳥が消えたぞ!」
「どうなってる!」
いや...見える!
よーく目を凝らすと、光学迷彩の不完全さというか、少しだけ輪郭が浮かんでいる。
俺はとにかくありったけの機銃とパルスレーザーを撃ち込んだ。
おそらく何かを壊したんだろう、「DESTROYED」の文字がHUDに浮かんだ。
そこに突然赤いリングが浮かぶ。
APSーActive Protection Systemの準備動作だ。
「全機アーセナルバードから離れろ!電磁バリアが来るぞ!!」
「電磁バリアぁ!?」
「なんのことだ!!」
「いいから離れろ!!」
次の瞬間、アーセナルバードの周りにAPSが展開される。
「クソ!翼をかすっただけなのに!ダメだ!脱出できなー」
「アクイラ4、ロスト!」
「制御不能!制御不能!オメガ11、イジェクト!」
「オメガ11、ロスト!」
「うおぉぉぉぉっ!ちくしょおぉぉぉっー」
「レイピア7、ロスト!」
「ダメだ!損害が大きすぎる!撤退指示はまだなのか!」
そこで、ロングキャスターが口を開いた。
「作戦参加中の全機へ、司令部より撤退の指示が出た。全機、現在当っている任務を全て放棄し方位1-8-0方向へ全速力で撤退せよ。メビウス隊、ラーズグリーズ隊、ガルム隊、ガルーダ隊は殿に入れ。ただ先遣部隊のガルム1とガルム3は撤退せよ。」
馬鹿司令部がっ...!!判断が遅いんだよっ...!!
俺は唇を噛みちぎりそうになった。
「なぜもっと早くに撤退させねぇんだ!」
「もっと早く命令が出ていれば俺の僚機も死なずに済んだのに!!」
「こちらHQ。話はデブリーフィングで聞く。全機作戦空域から撤退せよ。」
「ふざけんじゃねぇ!!もう黙ってろ!!ちくしょう!!ちくしょう!!」
「こちらロングキャスター。巡航ミサイルの着弾を確認した。命中したのは3発のみだ。」
こみ上がる様々な思いを何とか抑え、戦域外へまっすぐ向かう。
ー案の定UAVが5機くらい背中に引っ付いてきた。
次々飛んでくるミサイル。
ミサイルだけなら何とか避け切れる。
避け切れるのだがー。
奴ら、レーザーとレールガンを乱射してきやがる。
とにかくバレルロールのしっぱなし、フレアーも撒きっぱなしだ。
体にGが山ほどかかり、意識が朦朧とする。
何とか意識を取り戻しつつ、戦域外へ逃げる。
もう必死だった。
生きることしか考えていなかった。
機銃弾を何発か食らったが知ったことでは無い。
途中、撤退支援に来たメビウス3とガルーダ1が何機か撃ち落としてくれた。
少し重荷が降りたかと思えば、今度はヘリオスが飛んでくる。
燃料なんて気にせず、ひたすらにアフターバーナーをふかして逃げ続ける。
こんな地獄、もう懲り懲りだ。
ーやっと戦域外に離脱した。
UAVは俺を追いかけるのをいつの間にかやめていた。
これで一安心、したい所だが新たな問題があった。
燃料が足りない。このまま滑空すれば何とか間に合う。
俺はフラップを下げ、ハイエルラークまで滑空した。
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結局燃料は尽きたものの、ハイエルラークの基地に戻ってくることが出来た。
東の空に、太陽が登ろうとしている。
「ガルム3、よくぞ戻ってきた。着陸を許可する。」
まだ1週間も過ごしていないハイエルラークの地が、なぜか凄く安心感を与える。
「ガルム3の着陸を確認。誘導路デルタからアルファを通りハンガー23へ駐機せよ。」
機体をハンガーに停め自室に戻ると、一気に疲労感がどっと襲ってきた。
いつぞやの両面作戦と、今回の作戦が重なる。
約200機がハイエルラークから離陸した。
だが、基地に戻ってきたのは50機前後であった。