Ace Combat -Retrieval of the sky-「空の奪還」   作:鳳翔

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前回文章があまりに薄かったので改善。すまん。


#6 Principality of Belka -ベルカ公国-

「ラジオの前のそこの君ィ!元気してるかぁ!?今日もこの電波はゼット様がジャックしたァ!」

 

元気な声。アネア大陸に来てから皆が虜になったラジオ番組だ。

 

「自由エメリア放送」。周波数はAM 765kHz。

みなこの周波数でラジオが始まると自分の部屋にこもりラジオの前に座り込む。

 

かく言う俺もこのラジオのファンのひとりだ。

 

「今日はみんなに大事なお知らせがあるんだァい!なんと、この空を取り返す英雄たちの部隊、IALAから独自に番組要請が来たんだァ!てなわけで今日からは、いつものメニューに『IALAの戦況報告』も追加だァ!ブッソーな話題は6年前以来だが、引き続きよろしく頼むぜィ!じゃあ、今日もまずはグレースメリアのお天気予報だァ!」

 

なんと、ゼット様とIALAがコラボ!?

 

いや嬉しい。普通に嬉しい。

 

現在アグリオスはヴィトーツェ上空を周回中。時に飛来するレーベンを破壊しつつ、発着艦訓練を行っている。1日1回の訓練にも大分慣れてきた。1週間後には実戦配備がなされるという。

 

艦内での生活は、意外と優雅だ。今日もサイファーとピクシーが酒を飲みながら語り合っている。

 

「警報!敵機接近!対空防衛システム稼働開始します!」

 

今日もやってきた。大抵はミサイルかレーザーが撃ち落としてくれるから心配ない。

 

...じゃあ俺たちの存在意義って何だ?別にザップランドに居て良くないか?

 

浮かんではいけない疑問が浮かんだ気がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今のところ、IALAとグランダーIGは拮抗している。これといって進展もない。

 

しかし、きっとこいつが切り札になってくれるだろう。きっとそのはずだ。

 

アグリオスの主な任務は、ニンバス散弾ミサイルによる防空圏構築と、自らが発する妨害電波による味方の保護。

 

我々の最初の作戦は、グランダー社工場制圧を目的とした輸送部隊の護送だ。

 

「機甲部隊はザップランドからファーバンティまで陸路で進軍する。ファーバンティまではザップランド所属のドレイク隊が護衛し、そこから輸送機に戦車を積み込み工場上空まで護衛、空中投下、必要に応じてレーベンを破壊する。」

 

前と似たような作戦だ。一抹の不安が残る。

 

1週間後にはアンカーヘッドに移動を開始する。

 

ああ、このラジオもあと1週間で聞き納めか。

放送が終わったラジオの電源を切りながら、少し悲しくなる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ラジオの前のそこの君ィ!元気してるかぁ!?」

 

訓練の後の楽しみが始まった。

 

「今日もこの電波はこのゼット様が乗っ取っt...」

「番組の途中ですが、グレースメリアより速報をお伝えします。」

 

「オイオイ、なんだってんだ?」

 

カウントが不満そうに言う。

 

「エルジア国家情報局の独自調査によると、ノースオーシア・ノースエルジア州を拠点とする武装組織『ノースオーシア・グランダーIG』と、ベルカ公国政府の間に資金援助など特別な関係性があった模様です。詳細はまだ公表されていませんが、エルジア国家情報局は本日19時より、特別会見を開くとしています。...」

 

「国家ぐるみの活動、か...。」

「こりゃめんどくさい事になりそうだぞ...?」

 

メインホールのソファに座りながら、自販機の缶コーヒーをすする。

 

「あんた...レーベンを何機か1vs1で墜としたそうだな。」

「ああ...まぁ...1機だけですけどね。」

「どうすりゃ墜とせるんだ?俺にも教えてくれ。」

 

そう聞いてきたのは、紅茶片手のブレイズ。

 

そういう質問が一番困る。

 

「いやぁ...まぁ...適当に相手のケツ追っかけてがむしゃらに撃ちまくってたら墜ちてましたねぇ...。あの1戦で機体にだいぶ傷を負いましたんで、挑みに行くのはお勧めしませんけど。」

「なるほどな...。よかったらこんど模擬戦でもやってみないか?」

「良いですね。」

「よし、そうと決まれば善は急げ、明日の朝9時からってコマンダーに相談しておく。」

「あ、よろしくお願いします。」

 

しばしの沈黙が続く。

 

「トリガー、お前はコーヒー派か。」

「ええ、まぁ...。前の戦争の時からずっと。」

「そうか...。苦くて飲めねぇんだよなぁ、俺。」

「あそこの「ミルクコーヒー」、ってやつ結構甘いですよ。」

 

そういうとブレイズは、1ドル片手に自販機に向かい、ピっとそれを押した。

 

「ミルクコーヒー」を握りしめ、こちらに戻ってくる。その手には結婚指輪がはめてあった。

 

プシュッ。

 

彼は恐る恐る缶に口をつけ、一気にすすった。

 

「ん、、、。」

 

「うまい。」

「でしょう?」

「もう1本。」

「早っ。」

 

結構気に入ったらしい。

 

「にしても、グランダーが国と結託とは、おっかねぇな。」

「ですねぇ...。」

「だとしたらあんまり追い詰めん方が良いかもしれんぞ?いわゆる『ベルカ式国防術』ってやつをされちゃたまったもんじゃねぇからな。」

「アハハ...。」

 

出来るだけ笑ったつもりではいるが、微糖くらいの苦い笑いが顔に浮かんでいただろう。

 

1995年、連合軍に追い詰められたベルカは自国のこれ以上の侵攻を避けるためバルトライヒに7発の核を自ら撃ち込んだ。世間はそれを教訓に武器を捨てようと誓ったとは建前で、そこから今までに軽く4回は戦争になっている。その皮肉も込め、世間は「バルトライヒの惨劇」を「ベルカ式国防術」と揶揄した。

 

「あんたも、グランダーのスパイに殺されかけたんだろ?」

「ええ。」

「生きててよかったよ...。ほんとに。2度も仲間を失うのは御免だ。」

 

「2度...?」

 

「ああ...。言ってなかったか。」

 

彼はソファに座りなおした。

 

「これは...俺の今は亡き3番機の話だ。」

 

「オーシアがかつてグランダーIGの戦闘機を使ってたのは知ってるだろ?」

「ええ。」

「ある作戦で、あいつは被弾したんだ。『アルヴィン・H・ダヴェンポート』。TACネームはチョッパーと言ってな。俺は目視で見てたんだが...。その時のあいつの被弾は至って軽いもんだった。」

 

「それが...みるみる機体の調子がおかしくなって、あいつは最後脱出して機を何もないところに墜とすことになったんだ。」

 

「それが...気づいたら電気系統まで逝っちまっててな...。そのままあいつは...。」

 

俺は唾をごくりと飲み込んだ。

 

「墜ちた。」

 

「これまで散々声も聞きたくねぇって愚痴ってたAWACSに『へへっ、良い声だぜ』って言いながら、避難中のスタジアムのど真ん中に突っ込んでったんだ。」

 

「それは...。」

 

「そもそもあの程度の被弾でそこまで機体の調子が悪くなるわけねぇんだ。元々その戦争はベルカが仕組んだ戦争でな...。『第1次ベルカ事変』は覚えてるだろ?その邪魔者が、俺たちラーズグリーズ隊だったんだ。奴らはありとあらゆる手を尽くして俺たちをオーシア軍から引きずり降ろそうとした。そのためになら何でもした...。」

 

そう語る彼の目には涙が浮かんでいた。

 

「クソっ...チョッパー...。」

 

「俺たちにとってIALAの諸作戦は、あいつの弔い合戦でもある。2回目のかたき討ちだ...!」

 

「ああすまない...。少し取り乱してしまったか...。」

「いえ...大丈夫です。貴重なお話を、どうも...。」

 

「んじゃ、明日はよろしく頼むぞ。」

「はい!」

 

ラーズグリーズに3番機が居ない理由が分かった。

 

では、基地に来た頃に見た5機は何だったのか?

 

「正直者にしか見えねぇんじゃねぇのか?」

 

観衆の誰かがそういったのを覚えている。

 

きっとそうだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ブルーハ1、発艦を許可する。」

「ブルーハ5、続いて発艦せよ。」

 

「模擬戦の管制機『コーストアイ』が先行して上がっている。ブルーハ1、5はそちらの指示に従え。」

 

その日が来た。

アグリオスったらAWACSすら運用できるんだから驚いたもんだ。まあ艦載用のE-2Cではあるけれど。

 

スロットル全開で、ブレイズの残した飛行機雲の後を追うように飛び立つ。

 

「こちらAWACSゴーストアイ。これより臨時編成を実施する。ブレイズ、貴機のコールサインはアルファ1だ。トリガー、貴機のコールサインはブラボー1だ。」

「ブラボー1了解。」

「アルファ1了解。」

 

「トリガー、頑張れよ!」

 

アグリオス艦内からの声が聞こえるように無線機を手配してくれたらしい。

 

「レーダーでロックオンするか機銃のヒット判定に捉えた方の勝利だ。下限高度は500m。なお、ADMMレーダーの使用は禁止する。これより模擬戦を開始する。」

 

「模擬戦だからって手加減はしねぇよ?」

「ええ。」

 

「開始!」

 

アルファ1を目の前に捉える。

 

ヘッドオンなんて真似はしない。下に避け、反転してブレイズの背中を追おうとする。

 

180度反転し、ブレイズの機影を確認...居ない!?

その瞬間、ヴッ...ヴッ...とレーダー照射の音がした。

 

下か!?

 

180度ロールすると、まっすぐ突っ込んでくるブレイズ機の姿。

 

「早速1本取られたな、だがそうはさせん!」

「お前のレーベンとの交戦記録映像を片っ端から漁ったんだよっ!どう動くかはお見通しだっ!」

「マジかよ!?」

 

マジかよこいつ。てかそんなもの残ってたのか。

 

無線ではアグリオス艦内で仲間たちがキャッキャしてる声が聞こえてくるが、だんだん耳に入らなくなった。

 

目の前をまっすぐ抜けて行ったブレイズを追いかける。

 

再び機首上げ、上を旋回しながら飛ぶブレイズの機影を確認しつつ真後ろに付く。

しかし旋回状態でなかなかレーダー範囲に捉えられない。

 

2人とも互いのケツをぐるぐる追い回す状態が続いた。

流石にGで体が限界に近づいてくる。

 

その時ブレイズ機が突然速度を落とした。

 

「よっと!」

 

次の瞬間、PSMを繰り出した。

この状況でさらにハイGターンとは...何食って生きてんだ?

 

がっちり後ろに付かれた。

 

「やるじゃねぇかっ...!」

 

またレーダー照射でロックオンを試みてきたが、そこはうまく逃げ切る。

 

1度体勢を立て直す。

 

オートパイロットを起動しまっすぐに機体を戻す。

まっすぐついてくるブレイズ機。

 

スロットルを一気に下げ、速度が400を切ったところでハイGターンを使い機首上げ。

 

その瞬間、体にかなりのGがかかる。

 

機体は空中で1回転しブレイズ機の真後ろへ。

 

「なんだとっ!?」

 

今度は俺がブレイズを追う形になる。

しかししぶとく避け続けるブレイズ。

 

次の瞬間、いきなりブレイズが真下に避けた。

ちくしょう、レーダーで捉えられねえ。

追うように機首を下げる。

 

しかし、ブレイズの機影がどこにも見えない。

おかしいな...また変なとこにいるんじゃないだろうn...

 

その時、俺はブレイズがとっくにPSMで旋回して俺の腹の下にくっついていることに気が付かなかった。

 

ヴッヴッヴッヴッ...ヴーーーー。

 

「よし!撃墜!」

「ちくしょう!」

 

「今回の勝者はアルファ1だ。各機帰投せよ。」

 

「なかなかよかったぞ、トリガー。」

「勝った人に言われましてもねぇ...。」

 

アグリオスのグライドスロープに乗りながら、今度の反省をした。

 

...いやブレイズ強すぎ。

PSM使うの上手すぎ。

ありゃ勝てんて。

「けどいつか勝つ。」

 

「お、その意気だ。」

 

え、俺今もしかして口に出してた?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「これより、アグリオスは機甲部隊輸送護衛任務に向かう。」

 

司令官がそう言った。

 

「現在機甲部隊は、シラージ自治州付近を進行中である。我々はファーバンティで部隊と合流、部隊を乗せた輸送機をスーデントール上空まで護衛する。」

 

その時、アグリオスの機体が大きく右に傾く。

 

「たったいま、本艦がファーバンティへ進路をとった。みんな大好き自由エメリア放送も、しばらくお別れだ。」

「インターネットラジオで聞けるぜ。」

「その手があったか!」

 

それは盲点だった。これでゼット様の声をいつまでも聞いていられる。

 

「ブルーハ隊は、ファーバンティ上空で本艦より発艦、輸送部隊の近くに付き輸送機を護衛せよ。以上だ。解散。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今日も仕事かよ。内心ではそう思う。

 

俺はユークトバニア首都シーニグラードのしがないサラリーマン。

年収も決して良くはなく、家族もいない。それどころか毎日毎日残業続き、いわゆるブラック企業だ。

 

出勤までまだ時間があるのでココアを飲みながらニュースを見ている。今日も「偉大なる同志」云々と喋っている。ないよりはマシってとこだ。

 

「次のニュースです。エルジア王国の...。」

 

ニュースを聞き流しながら、ふと窓の外を見る。

いつもの曇り空。

 

...遠くにゆっくり動く機影が見える。

 

レーベン?

 

いや、あんなに遅いわけが無い。

まあいいか、と思いつつカーテンを閉める。

 

ああ、そろそろ出勤時間か。

部屋の鍵を確認し、ネクタイを締め、ドアを開けて家を出る。

 

ボロボロの地下鉄に乗って勤務先へ。

 

駅から出た。

 

...なんだ?

みんな空を見上げている。

 

その瞬間、「ゴォォォォォッ」という音と共に羽を広げた巨大なクジラのような浮遊物体がビルの上を通り過ぎて行った。

 

「オイ!なんだありゃ!?」

「こんなの見た事ねぇぞ!?」

「驚いた...こいつぁ現実か?」

 

誰も、あれがなんなのか分からなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ほらトリガー、そろそろだぞ!」

「んぁ...むにゃぁ...んぇ?」

「そろそろ出るぞって言ってんだ!」

「んえ...あぁ...ふぇっ!?」

 

寝ている間にファーバンティに着こうとしていたらしい。

 

「起きたか?早くハンガーに来い!」

「はっハイ!!」

 

ハンガーに走る。割と長時間の任務なので途中で自販機でペットボトル入りの麦茶を2本買っておいた。コーヒーを飲みたいところだが、カフェインの利尿作用があるのでさすがにやめておく。

 

ハンガーで服を着替え、急いで色々なチェックをする。

 

コックピットに乗り込む。

 

「計器は...異常なし。無線は...大丈夫。よしok。」

 

準備が終わった。

 

「トリガーいけるか?」

「ああ、問題ない。」

 

「よし、ブルーハ1よりアグリオス、まもなく発艦する。」

 

横のハンガーから、ブレイズとトーシャの機体が出ていく。

 

「アグリオスよりブルーハ1、発艦を許可する。」

「了解。」

 

ブルーハ1が飛び立った。

 

「ブルーハ1アウェイ。」

「ブルーハ2、発艦を許可する。ブルーハ3は発艦位置につけ。」

「了解。」

 

次々と飛び立っていくCFA-44A。

 

「ブルーハ5、発艦を許可する。」

「了解。」

 

スロットルを一気に押し込み発艦。

また全機が上がるまで待機だ。発着艦訓練で結構慣れはしたが、やはり長い。

 

眼下にファーバンティの街並みが見える。あれは...レイカークレーターか?名前は聞いている。

 

「ブルーハ隊全機の発艦を確認。ブルーハ隊は、離陸してくる輸送部隊と合流せよ。」

「ブルーハ1了解。」

 

「こちらAWACSゴーストアイ。これより輸送機護衛任務を開始する。ブルーハ隊は、方位2-1-0へ向かい、離陸してくる輸送機と合流せよ。」

「了解。全機隊形を維持したまま方位2-1-0へ向かえ。」

「ブルーハ4了解。」

「ブルーハ5了解」

「ブルーハ18了解。」

「ブルーハ9了解。」

「ブルーハ21了解。」

「ブルーハ12了解。」

「ブルーハ6了解」

 

...多いわ。

 

「ブレイズ...23人も大変じゃないですか?」

「まあな...最初は流石に困惑したが、今はもう慣れてしまった。」

 

「まあ僕たち自慢の隊長ですから。」

そう答えたのは14番機「アーチャー」。

「ええ。」

と相槌を打つのは俺の真横の7番機「エッジ」。

 

こうやっていちいち判別していかないとほんとに会話に追いつけない。

 

「ドレイク隊、こちらブルーハ1。これより輸送機の護衛任務につく。」

「お前らが噂のクジラの艦載機部隊か。前の二の舞だけはしたくない。地上移動中の機甲部隊の損害はゼロだ。こいつらをこのまま全員無事に送り届けてくれ。」

「了解。俺たちがついたからには1機も殺らせん。」

「ウィルコ。頼もしいな。では俺たちはここで撤退する。」

「了解。任務ご苦労であった。」

 

「輸送機は全部で11機だ。ブルーハ1、2は1番機の護衛に付け。ブルーハ3、4は2番機、5、6は3番機の護衛だ。...」

 

「ブルーハ5了解。」

 

護衛対象のC-5は目の前だ。輸送機に機体を近づけバンクする。

 

「こちらブルーハ5『トリガー』。これより貴機を護衛する。」

「こちらブルーハ6『アバランチ』。よろしく頼む。」

「こちら3番機。こいつの後ろには戦車が2台のってんだ。こいつらを無事にスーデントールまで守ってほしい。頼んだぞ。」

「ウィルコ。」

 

輸送機と合流した後、アグリオスと合流。ファーバンティを出発した。

 

カウントの機体のラジオは、グランダー社とベルカ公国についてひたすらに喋っている。

 

俺は麦茶を飲みながら考えた。

 

ベルカ公国、か。

 

何か起こるのではないか。

 

俺は、少し胸騒ぎがした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ここはスーデントールにほど近いウスティオの対空レーダーサイト。

 

俺はそのレーダーの監視役。レーベンが空を支配した今、もはや1日中寝ていてもいいような暇な職業になってしまった。まあ金が貰えるならいい。

 

今日も、ただ飛来して来る数機のレーベンを眺めるだけのお仕事だ。

 

ほとんどの時間はSNSやゲームをして過ごす。窓際部署と言っても良いだろう。一緒に喋る人もいない。12時間ごとの交代制、それぞれ1人ずつだ。

 

「あ、レーベン。」

 

今日も、口をぽかーんと開けながらレーダーとにらめっこだ。

 

やることもないし、望遠カメラで観察してみる。

 

ただひたすらに真っ直ぐこっちに向かって飛んでいる。

あと20秒くらいで真上を通過するだろう。

 

レーベンがウェポンベイを開き、爆弾が見える。

そしてその爆弾を、投下した。

 

「へー、あいつ爆弾も搭載できたんだ。」

 

「...ばっ爆弾!?」

 

投下された爆弾がこっちへ真っ直ぐ降ってくる。

 

「にっっ...逃げろぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

急に我に返った俺は、部屋のドアを開け、別室の皆に逃げろと伝え外へ飛び出す。

 

ドアを開けた瞬間、耳をつんざく爆発音とともにレドームが破壊された。

 

真上を通り過ぎる機影。

 

逃げ惑う人々。

 

「はっ...はぁ...??」

 

「と、とりあえずディレクタスの本部に報告せねば...!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ファーバンティから海を越え、ノルトランドまで一直線に飛ぶ。

 

アグリオスによる強力なジャミングにより、レーベンは近づいてこない。

以外と気楽だ。

 

じゃあなぜ民間輸送でもジャミングを使って輸送させないのかって?

 

そんなに電子戦機はねぇんだよ。

 

...まあいい。

 

海上は、空が無人機に支配されて以来一層込み合っている。

ほら、あそこにも。あそこにも。あそこにも。タンカーやコンテナ船、客船が見える。

船を望遠鏡でよく見てみると、皆甲板に上がって空を仰いでいる。

 

「見ろよ、まるで空にクジラが泳いでるみたいに不思議そうに空を見てやがるぜ。ハッハ!」

 

...視界の左上には、空飛ぶクジラことアグリオスが飛んでいた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

海も半分を超えたという時、突然AWACSが本部と通信を始めた。

 

「どういうことだ?」

「○※△☆...。」

「HQ!何を言ってる!?」

「%○×#...。」

「クソっ...!」

 

「どうした、ゴーストアイ?」

ブレイズが異変に気付く。

 

「...ゴーストアイより作戦参加中の全機へ、HQより撤退の指示が出た。」

 

「どういうことだ!?」

「司令部は何を言ってる!?」

「はぁ!?」

「理由は分からん。だがとにかく、急いで撤退しろとのことだ。」

「何だと!?」

「ここまで来て撤退などできるか!!」

「とにかく、最上位からの絶対命令だそうだ。全機、ひとまずファーバンティの基地に戻るぞ。」

「クソっ...!」

 

ここにきて急に撤退?

 

進路反転しながら、俺は首をかしげる。

 

その時、ゴーストアイが呼出音を鳴らして喋り出した。

 

「...たった今司令部が連絡をよこした。」

 

「ベルカ公国がウスティオ共和国に宣戦を布告した。宣戦同時攻撃だ。首都ディレクタスを含む各都市が攻撃を受けている。」

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